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日本の『旭日』旗とナチスドイツの鉤十字(ハーケンクロイツ)旗と東京オリンピック

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所要時間 約 9分

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旭日旗に「ハーケンクロイツはアーリア人種の勝利のために戦う使命を表している」同様の定義はあるのか?

次々と問題を作り出し、対立を続ける日本と韓国

                                    

写真 : 日本の植民地支配からの解放を記念する8月の光復節に、日本の旭日旗使用に対する抗議のデモ行進を行うソウル市民

                  

ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 2019年10月29日

                 

韓国は2020年の東京オリンピックで日本が『旭日』旗を使用することを禁止するキャンペーンを強化しています。
これは太平洋戦争中の日本の統治下での歴史に起因する日韓の外交紛争の新たな火種を提供することになりました。

                    

9月、韓国のスポーツ省は国際オリンピック委員会(IOC)に『旭日』旗の使用を禁止するよう要請しました。
『旭日』旗のは多くの韓国人にとって、日本の軍国主義と植民地支配の象徴となっています。

                

しかしIOCからいかなる関与も引き出せなかった韓国の国会議員はつい最近、東京オリンピックでの『旭日』旗の使用禁止を求める決議を採択し、『旭日』旗はナチスドイツの鉤十字旗と同様の性格を持つものだと説明しました。

                  

9月、韓国のメディアは、与党民主党の議員の発言を次のように伝えました。
「戦争を象徴する『旭日』旗は平和の象徴であるオリンピックにはふさわしくない。」
「鉤十字(ハーケンクロイツ)旗はナチスドイツを象徴するものであり、ヨーロッパ人に侵略と残忍さに対する恐怖を思い起こさせるのと同様、旭日旗はアジア人と韓国人にとって悪魔の象徴のようなものである。」

                 

写真 : 旭日旗の禁止を求める決議について説明する韓国の与党民主党の国会議員。

                

これに対し東京オリンピックの主催者側は、旭日旗は日本で広く使用されており政治的な意味合いはないと主張し、大会中旭日旗の一般的使用を制限する計画はないと述べました。

                     

大日本帝国海軍が第二次世界大戦の戦前戦中にアジア太平洋地区における占領政策で使用した旭日旗は、上る太陽を模した赤い円から16本の光線が外側に伸びるデザインの旗で、1954年には海上自衛隊によって隊旗として採用されました。

                    

日本の外務省は今週、韓国内で広がる抗議活動に対応するため、旭日旗について改めて定義し直すと見解を公表しました。
外務省のウェブサイトでは現時点で旭日旗が日本文化の不可欠な部分の一つであると説明し、「国際社会においても広く受け入れられている」とつけ加えています。

              

こうした諍いの原因は、極東の隣国同士の劇的な関係悪化の結果もたらされたものです。
関係の悪化は昨年、韓国の最高裁判所が朝鮮半島が日本の植民地支配の下にあった時代、日本の鉱山や工場で働くことを強制された韓国人に補償するよう日本企業に命じた後に始まりました。

                    

日本側はすべての賠償請求は戦後締結された日韓平和条約によって解決されたと主張しています。

                

                

裁判所の判決はまず貿易紛争を引き起こした後、観光業に影響し、そして現在では東京オリンピックにまで波及しています。

              

日本のアスリートは長い間、国旗の日の丸を自分たちのシンボルにしてきましたが、韓国人は来年の夏の東京オリンピックの会場で日本人の観客が旭日旗を打ち振ったりする懸念を口にしています。

              

旭日旗が持つ歴史的に象徴的な背景が二国間の緊張関係に影響を与えたのはこれが初めてではありません。
昨年、韓国の観艦式に日本の自衛隊の艦船が参加する際に旭日旗を掲揚しないよう求めたため、日本側は自衛隊の艦船の派遣を取りやめました。

                 

そして今月日本は自国で開催する観艦式に韓国を招待することを取りやめ、日本政府はその理由として無「両国が互いにこうした交流を行うための環境がまだ整ってはいない」との認識を明らかにしました。

             

元々は封建時代に諸侯の家紋として採用されていましたが、明治維新後の1870年に各藩の軍を合わせた日本軍の旗として採用され、1889年に大日本帝国海軍の軍艦旗として採用になりました。
旭日旗は日本の極右勢力が日常的に使用していますが、商業デザインにも使用され、さらにはリベラルな立場をとる朝日新聞のロゴとしても使われています。

            

               

オリンピック憲章は次のように述べています。
「オリンピック会場、通路、その他の関係する場所においては、いかなる種類のデモや政治的、宗教的、人種的プロパガンダも許されない。」
IOCは現在のところ、来年の東京大会でこの憲章に違反する可能性のある案件が発生した場合には、ケースバイケースで対応すると述べるにとどまっています。

                

https://www.theguardian.com/world/2019/oct/29/south-korea-compares-japans-rising-sun-flag-to-swastika-as-olympic-row-deepens
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「ハーケンクロイツはアーリア人種の勝利のために戦う使命を表している」アドルフ・ヒトラー(Wikipediaより引用)
と明確な定義がされているのに対し、旭日旗については大日本帝国が意匠の意味について何か明確な定義をしたということはなさそうです。
ウィキペディアの旭日旗の項には
『戦時のプロパガンダ映画における描写』として
「ウォルト・ディズニー・プロダクション(現:ウォルト・ディズニー・カンパニー)は、第二次大戦の時期に複数、ドナルドダックを主人公とする戦争プロパガンダ映画を制作しているが、その内、ドナルドダック・シリーズに含まれる『総統の顔』、『ドナルドの襲撃部隊』の2作品、および、財務省からの依頼で制作されたためにシリーズに含まれない『新しい精神』、『43年の精神』の2作品では、敵国として日本軍を象徴する旗として旭日旗が登場し、同様にドイツ軍を象徴する旗としてハーケンクロイツが登場するのと対置して描写されている」
との記述があります。( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%AD%E6%97%A5%E6%97%97 )
となれば、記事中の韓国の国会議員のように「旭日旗は戦争を象徴するものだ」とまで断定できる根拠はない、ということになるでしょう。

                    

ただし、日本は旭日旗を海上自衛隊の隊旗として正式に採用したのであれば、最悪の部類の人間たちが大切な隊旗をヘイトスピーチなどの場で弄ぶようなことはさせないようにすべきでしょう。

                          

日韓においては旭日旗の解釈より10月21日づけのガーディアンの記事を翻訳ご紹介した際の感想、「何気ない広告表現も政治問題化してしまう現在の外交関係」の方が問題なのだと思います。
もっと言えば、内政に不都合が生じると権力機構はそこから国民の目をそらすために仮想敵を作り出し、それに対する敵愾心を煽る『愛国政策』を行う。
現在の日韓両国のその通りの姿が問題なのだと思います。

『戦争は悪』一貫して戦争の恐しさを訴え続けた映画製作者としての人生

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戦争を始めた日本人自身も飢餓、虐待、大量死に苦しんでいた - 太平洋戦争

戦場では人間は殺すか殺されるか、それ以外に選択肢はないのです
全力で自由を守り抜き、そして嘘のない世界を実現しよう

               

写真 :
2019年10月11日、東京のスタジオでインタビューに応じる大林宣彦監督。
大林さんは末期の肺がんと診断されていますが、発病はずっと以前のことであり、長い間闘病生活を続けながら仕事もこなしてきました。
大林監督の映画製作キャリアは40年に及び、40本以上の映画、数千のテレビ番組、コマーシャル、その他のビデオを制作してきましたが、その間ずっと自分自身に正直であり続けました。
その中で大林監督は、繰り返し戦争の恐ろしさについての警告という同じメッセージを送り続けてきました。

               

影山ゆり/ AP NEWS 2019年10月27日

                  

大林宣彦氏は現在81歳、末期の肺癌を患っていますが、闘病は随分前に始まり、その数十年にわたる映画製作人生を特徴づけてもきました。

                      

大林監督の映画製作キャリアは40年に及び、40本以上の映画、数千のテレビ番組、コマーシャル、その他のビデオを制作してきましたが、その間ずっと自分自身に正直であり続けました。
「私は同じことを続け、決してぶれることはありませんでした。」
東京事務所での大林監督は車椅子に座り、弱っているようにも見えましたが、目には輝が宿り、茶目っ気たっぷりにインタビューに答えていました。

                  

大林監督の作品には彼が第二次世界大戦中に育ったことが色濃く反映され、日本が行った侵略と近隣諸国での残虐行為だけでなく、日本人自身も飢餓、虐待、大量死に苦しんでいたことが刻み込まれています。

                

「(あの時代以降)誰でもいつでもボタンを押すことができました。」
大林監督はまるでそこに核ミサイルの発射ボタンがあるかのように机を叩きながらこう語りました。

             

映画には力があるという彼自身の信念について力強く語った最近のAP通信とのインタビューでは、彼の声は優しくはありましたが怒りが滲み、彼の信念を反映するものでした。
彼が作る映画は、ある重要なことを問いかけているのだと大林監督が語りました。
「あなたは今、どこに立っているのですか?」

            

               

「映画の力は決して弱くはありません。」
彼は語り、そのような考え方があることにが怒りを滲ませました。
「映画とは自由を表現するものです。」

              

金を稼ぐ、有名になる、あるいは観客に迎合しようとして映画を作ったことは一度もない、大林監督は誇りを込めてこう語りました。

             

大林監督は10月27日から11月5日まで開催される東京国際映画祭で、日本映画の価値を高めることに貢献した一人として表彰されることになっています。

               

「大林さんは、夢幻的な視覚表現で「映画の魔術師」と呼ばれています。」
映画祭の主催者は声明の中でこう述べました。

              

                 

上映される大林監督の作品の一つに、完成したばかりの上映時間3時間の『Labyrinth of Cinema / 海辺の映画館 キネマの玉手箱』があります。
この作品は反戦がテーマであると同時に、映画製作へのオマージュでもあります。
主要な登場人物は若い男性ですが、彼らは古い映画館に出かけて行き、そこでのっぴきならない状況に落ち込みます。
それぞれに映画界の巨人、フランソワ・トリュフォー(フランスの映画監督)、マリオ・バーヴァ(イタリアの映画監督)、ドン・シーゲル(アメリカの映画監督)が仮託された名前を持っています。

           

また1985年の作品「ミス・ロンリー」は、大林監督が育った広島県の絵のように美しい町、尾道市で撮影されました。
尾道市は、小津安二郎監督の古典的名作「東京物語」の舞台でもあります。

               

きらびやかなイメージを持つ万華鏡のように、大林監督の作品は彼のトレードマークになったモチーフでいっぱいです - 色彩豊かな日本の祭り、流血、まるで機械人形のように行進する兵士たち、流れ星、曲がりくねった石畳の道 - 見ているとまるで夢見るような童話の世界にいるような感覚に陥ります。
大林監督は子供時代から映画に興味を示し、手づくりでアニメーション・クリップを作成したこともあります。

               

               

大林監督の平和主義は、軍医であった父親によって幼いころにすでに強いものになっていました。
父親は、医師は味方の兵士だけでなく敵の命をも救うことができると常々語っていたことを、大林監督は覚えています。

               

少年だった大林監督が映画監督になる決心をしたことを打ち明けると、父は彼に8ミリのカメラをプレゼントしました。

                

大林監督が黒澤明監督の作品についてこう語りました。
黒澤監督をスターダムに押し上げた『七人の侍』や『用心棒』などの作品は商業主義的なもので、真の傑作は晩年に製作した『どですかでん』、そして長崎への原爆投下によってもたらされた幾多の苦しみについて綴った『八月の狂詩曲』などの作品であり、これこそが真の黒澤作品だと語りました。

                

大林監督は黒澤監督のことを親愛の情を込めて「黒さん」と呼んでいたことを覚えています。
そしてどれほど心を込めて映画作りをしてきたかについて、触れたことがありました。

               

多くのハリウッド映画作品とは異なり、大林監督の作品には悪役と戦うヒーローのような明快なプロットはありません。
他の多くの日本の映画と同様、アクション満載のシーンの連続も最大限に盛り上がる派手なエンディングもありません。

                  

                 

その代わり、彼の映画はどこが始まりでどこが終わりなのか、終わったと思うとまた始まり、各シーンが織るように入れ替わり、まるで時空を旅しているような感覚にとらわれます。

              

大林監督は、戦争が人類にとって『悪』であるかどうかと尋ねられると、意外な質問を受けるものだと驚いた様子を見せました。
歴史を通じて人々が直面してきたことは、大林監督にとって非常に難しい問題です。
「戦争というのは敵に殺されるか敵を殺すか、そのどちらかなのです。」
彼はそう語りました。

              

大林監督は次の映画製作に取り組んでいますが、健康状態を考えると時間がかかるかもしれないことを認めました。

                    

大林監督は映画制作することの生涯の目標について、『愛しています』という意味を手話で表現しました。

                  

「全力で自由を守り抜きましょう、そして嘘をなくしていきましょう。」
大林監督がこう語りました。

                    

https://apnews.com/96d6b265021c4bdd8011b041add3a543

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現在の日本の首相の度し難いところは、どうやら戦争というものをまるで通常の外交手段の一つであるかのように認識しているらしいことです。

彼には絶対の確信があるのでしょう。

「自分が実際に戦場に立つことは絶対にない。」

何十キロも歩かされた後に、前線で体の芯まで冷えるような雨に打たれながら地面を掘り、下がぬかるむ塹壕で眠らなければならない。

それでもなんとか眠ろうとしていると砲弾や銃弾が飛んできて、手足を吹き飛ばされのたうちまわる。

                

この人間の認識する戦争というのは、安全な場所から様々に指揮命令する(彼に的確な戦闘指揮ができるとは思えませんが)ことなのでしょう。

             

第二次世界大戦において、旧日本軍というのは一般市民はもちろん、兵士の命を大切に守ろうという精神は持っていませんでした。

戦争になれば、敵に勝つ以外の価値は全て第二義、第三義、否それ以下にされてしまいます。

今私たちが大切にしているいくつものことを捨てて、見も知らぬ『敵』を殺すこと破壊することに専念しなければなりません。

そして見も知らぬ『敵』も、ためらうことなく私たちを殺すことを命令され、私たちに向かってくるのです。

そのことは決して忘れてはならないことです。

ユニクロ、戦時中の従軍慰安婦の犠牲者女性を揶揄したと非難され韓国のテレビCMを中止

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何気ない広告表現も政治問題化してしまう現在の日韓関係

隣国との感情的緊張関係により、経済・外交の好機を失い続ける日韓両国

                  

ソウルのユニクロの店舗前での抗議

                 

ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 2019年10月21日

                 

ユニクロは戦時中の従軍慰安婦の犠牲者である女性たちを揶揄したとして非難を受けた後、問題になった韓国内の広告のテレビ放映を中止しました。

            

第二次世界大戦の戦前戦中、アジア各地の日本軍の管轄下の施設で行った売春行為は強制されたものだという元従軍慰安婦の証言に対し、ユニクロが放映したコマーシャルビデオの韓国語の字幕は証言内容に疑問を呈しているようにとれるという指摘を受け、同社は15秒のCMの放映を停止したと発表しました。

              

今回のユニクロの決定は、戦前戦中の冷気指摘事実をめぐっての日本政府と韓国政府と確執が外交論争に発展して何ヶ月も続いた後に行われました。
両国の争いは昨年、韓国の最高裁判所が朝鮮半島が日本の植民地であった当時、日本国内の鉱山や工場での強制労働を課された韓国人に対し賠償をするよう日本企業に命じたことがきっかけで激化しました。
日本側は、すべての賠償請求は戦後締結された日韓平和条約によって既に解決済みであると主張しています。

              

日韓の争いは貿易問題に波及した後、観光部門にも拡大し、さらには来年開催予定の夏の東京オリンピックの準備などを巡っても問題が起きています。

              

               

問題になったユニクロの広告では、97歳のモデルのアイリス・アプフェルが13歳のデザイナーケリス・ロジャースに、自身の13歳当時どんな服装をしていたか尋ねられます。
アプフェルは「昔の事は思い出せない。」
と答えます。
しかし、韓国語の字幕付きバージョンでは、「なんとまあ、80年以上前に起きたことなんてもう思い出せないわ。」
という字幕が表示されます。

               

韓国の元従軍慰安婦や強制労働に従事させられた徴用工などの虐待されたとする証言に対し、日本の右翼の政治家や学識関係者などが疑問を呈していることを受け、韓国内の一部の視聴者がユニクロの広告の過去に言及する発言について、韓国内の視聴者の一部が元従軍慰安婦や元徴用工を揶揄しようとするものだと解釈したと、韓国の英字紙コリアヘラルドが伝えました。

                   

こうした指摘に対し、ユニクロは数日で韓国内でのCMのテレビ放映とYouTubeでの動画配信を中止し、同社は元従軍慰安婦や元徴用工に対して一切害意を持っていないと釈明しました。

                 

「問題の広告はフリースの25周年を記念して各国で放映されている広告シリーズの一つであり、政治的または宗教的な課題や、組織的信念などとは無関係ですが、多くの方々が不快に感じたことを重く受け止め、広告の放送中止を決定しました。」
その上で同社は韓国語の字幕の表現について、単にアプフェルとロジャースの年齢の差を強調することを意図したつもりだったと表明しました。

                        

                  

歴史研究者の一部は、大日本帝国の陸軍が最前線に設置した売春宿に、約20万人に上る女性と少女(そのほとんどが韓国出身)を強制的にあるいは騙して送り込んだと考えています。

                 

韓国に186店舗を展開するユニクロは、韓国の日本製品ボイコットのターゲットの中でも、格好の標的の1つにされています。

                

https://www.theguardian.com/world/2019/oct/21/uniqlo-accused-mocking-wartime-sexual-slavery-victims-south-korea
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私はこの記事に取り上げられたCMを実際に見ていないので、「抗議を受けなければならないほど」の、あるいは「抗議しなければならないほどの」問題だったのかどうかわかりませんが、「問題」はこうした抽象的な個人の述懐のような表現まで『攻撃性がある』と思われるほど日韓関係が悪化してしまっていることの方だと思います。
『嫌韓』ということについて、隣国との関係でこれほど馬鹿げた態度はないと私自身は思います。

               

日韓について直接考えると解りにくいので、フランスとドイツに置き換えて考えてみましょう。
ごくごく大雑把な捉え方ですが、ヨーロッパ最大の工業国ドイツと農業国フランスが協力すれば比類ないパワーを発揮しますが、長大な国境線を持つ両国が一度争えば第一次・第二次世界大戦のような地獄が出現します。
第一次・第二次世界大戦は前線にいた兵士だけにとどまらず、ユダヤ人をはじめ様々な場所の様々な立場の人々が地獄を体験させられました。
しかし第二次世界大戦後にドイツが自国の歴史に対する真摯な検証と謝罪を重ねたおかげで、今やフランス・ドイツが中核を形成するユーロ圏という強大な経済圏を形成し、それぞれか孤立していた時よりもその国際的立場は強力なものになりました。

                     

所詮資源のない島国である日本が『世界第3位の経済大国』でいられるのも、様々な分野のネットワークを世界に張り巡らせているからです。
そのネットワークの肝心の足元を『嫌韓』だの『差別』だの、最も愚劣な動機で破壊する意味がわかりません。

靖国神社建立150年、禍根を残す戦争犯罪者の合祀

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太平洋戦争がなぜどのように起きたかを知った今は、私は戦争犯罪者の合祀に反対する - 戦死者遺族

ここに祀られている人々の大半は、徴兵され、会ったこともない他人を殺すよう命じられ、そして自分自身が死んでしまった - 戦死者遺族

戦争犯罪者の合祀は戦死した他の多くの人々を追悼する思いを汚すもの - 戦死者遺族

           

                  

ケリー・オルセン/ アルジャジーラ 2019年10月18日

               

アジアの中で最も激しい政治的論争の渦中にある宗教施設の一つは、自然が作り出す静寂が印象的な島国にあります。

                

靖国神社は銀杏、糸杉、カエデの木に囲まれています。
東京の中心にある緑豊かなこの場所は、日本の原始宗教である神道における重要な、そして一方では国論を二分する精神的役割を果たしています。

                 

在位が1868年から死亡した1912年に及んだ明治天皇は、1869年に明治維新の内戦で亡くなった戦士の魂を祀るために靖国神社を創設しました。
さらにその後、日清戦争、日露戦争、第二次世界大戦と武力紛争によって死亡した人びとが祀られるようになり、その数は250万人に上ります。
しかし1978年、「A級戦争犯罪者」の名で知られる第二次世界大戦後の国際軍事法廷で有罪判決を受けた14人の日本の民間および軍の指導者が合祀されたその日から、国論を二分する論争の対象となったのです。

               

国家主義者にとって神聖な場所である靖国神社は、こうして特に中国、南北朝鮮、台湾からの批判を集中的に集める場所になりました。
そして日本国内にも靖国神社は日本の軍国主義的・植民地主義的な過去の行動を正当化していると批判する人々もいます。
一方、靖国神社の存在を支持する者は、日本には他の国と同じように戦争で死んだ人々を追悼する権利があるはずだと主張しています。

                 

しかし靖国神社で祈りを捧げている人々でさえ、有罪判決を受けた戦争犯罪者が一緒に祀られていることについて、戦って死んだ他の多くの人々を追悼する思いを汚すものだと主張しています。

                 

近くの不動産会社に勤務する片木豊さん(59歳)はほとんど毎日通勤途中に靖国神社に参拝し、祀られている霊に祈りを捧げています。
「当時の法律によって徴兵され、そして戦地に送り込まれ、本来日本に対する害意など持っていなかった全く見知らぬ人間と戦って殺すように命じられ、その挙句亡くなってしまった気の毒な人々が本当に大勢いるのです。」
片木さんの大叔父は太平洋戦争末期の沖縄戦で命を落としました。
「私たちは彼らに対し頭を下げるべきです。」

                 

             

靖国神社に対しては年に3回国際的なスポットライトが当たります。
8月15日前後、第二次世界大戦における日本の降伏記念日であり、国会議員、閣僚、首相が訪れます。
また4月と10月には季節の祭典や重要な儀式が行われます。

                

秋の4日間の祭礼は10月17日木曜日に始まり、時折雨が降る中、伝統の衣装に身を包んだ神官と神社関係者が厳かに捧げ物をする中、外国人観光客を含む観光客が写真撮影をしていました。

                    

この儀式は、今年5月に在位が始まった新しい徳仁天皇が正式に即位する予定の日の数日前に行われました。
さらには1910年から1945年の間に日本の植民地であった韓国との関係が、この数十年で最悪のレベルにあるタイミングで実施されました。

                  

靖国神社は今年で創建150周年を迎えます。
かつては静かな鎮魂施設の一つにすぎませんでしたが、1978年に行われたA級戦犯合祀によりたちまち政治的象徴性に満ちた場所に変わってしまいました。

              

明治天皇の孫であり第二次世界大戦当時在位していた裕仁天皇は、A級戦犯の合祀以降、靖国神社を訪れることはありませんでした。

                

歴代首相のほとんどは靖国神社と距離を置いていましたが、全員がそうであったわけではありません。
中曽根康弘元首相は1985年に日本の首相として初めて靖国神社に参拝しました。

              

2001年から2006年まで首相を務めた小泉純一郎氏は頻繁に靖国神社を訪れました。

                      

国家主義者である現在の安倍首相は日本が積極的な外交政策と軍備の拡大を進めていますが、7年近くの任期中一度靖国神社に参拝し、非難を浴びました。
10月18日木曜日、安倍内閣の衛藤晟一(えとうせいいち)一億総活躍・沖縄北方・少子化担当大臣がこの2年で初めて靖国神社を参拝した閣僚になりました。

                   

直ちに中国外務省のスポークスマンが衛藤氏を強く非難しました。
「大日本帝国が行った侵略行為の歴史的事実について、日本の一部の政治家が再び誤った行為を行った。」

               

写真 : 小泉純一郎元首相(左から2番目)はしばしば靖国神社に参拝し、中国、韓国、台湾などから非難を浴びました。

                 

▽ 政治の道具

                 

米国ケンタッキー大学で歴史学を専攻し靖国神社に関する著作もある竹中明子准教授は神社をとりまく状況について、その時々の権力者のナショナリストとしての程度に応じて和らいだり緊張したりする傾向があると述べています。
1985年に当時の中曽根首相の参拝により靖国神社をめぐっての緊張状態が生まれ、小泉元首相の参拝によって再燃し、安倍首相の参拝により三たびこの問題が表面化することになった、竹中准教授がこう指摘しました。

                

「日本の右派は靖国神社と国家との関連性を維持し、神社が廃れたりしないように様々な取り組みを行っていると考えられます。」
竹中准教授がこう語り、次のように続けました。
「一方で中国と韓国は日本の首相による靖国神社参拝に対する自国民の怒りを、自国のナショナリズムの形成と強化に利用しています。」

                  

「この問題は彼らにとってある意味非常に便利な政治ツールになりました。こうした事情から私は今のところこの問題に解決策があるとは思っていません。」

                

政治的プラグマティズム(現実主義)も一役買っています。

               

2013年12月の安倍首相の靖国神社参拝により、日本と中国との緊張が一気に高まりました。
中国は当時すでに尖閣諸島(釣魚島)問題をめぐって日本と争い、しばしば暴力的な反日抗議行動も発生する沸騰点達していました。
しかし、近年においては両国の関係は徐々に改善に向かっており、2020年には中国の習近平国家主席による日本公式訪問が予定されています。

              

安倍首相は2014年以降は靖国神社参拝を避けていますが、今年も行ったように真榊と呼ばれる儀式的な捧げ物を都度都度に贈っています。

            

そして天皇自身は出席しませんが、神社の春と秋の例大祭には皇室の使者も訪れます。

               

写真 : 2019年10月17日、靖国神社参拝の後VIP専用玄関で鷲尾英一郎衆議院議員を見送る神社関係者。

                

▽ 静寂の世界

           

神道は日本における多層的宗教的構造の一部分を形成しているにすぎません。

                

日本の宗教事情の複雑さを物語る光景が17日木曜日に靖国神社境内で見られました。
一人のカトリックの修道女が神社の境内をやってきて本殿の前を通り抜ける際、祀られている戦没者の霊に敬意を示すためにお辞儀をしました。

                  

79歳のこの女性の父親は戦争中に中国で兵士として死亡し、靖国神社に祀られています。
彼女は時に応じて弟と待ち合わせをし、祈りを捧げています。
「私たちの父はこの場所で休んでいます。」
彼女はこう語りましたが、亡くなったのは自分が4歳か5歳の時だったため、父に関する記憶はほとんどないと語りました。

               

彼女は最近、靖国神社について何かが間違っていると一層強く感じるようになりました。
「太平洋戦争がなぜ、どのように起きたかを知るようになった今、私は戦争犯罪者である人々の合祀に反対します。」
彼女はこう語りました。
しかしこうした考えを明らかにするとどのような仕打ちを受けるかわからない、そうした懸念から彼女は自分の名を明かすことを頑なに拒みました。

                

軍関係の団体が多く関わっていることを勘案すると、靖国神社は第二次世界大戦中の日本の行動について反省しようとしない人間たちの拠り所になってしまいました。
神社の敷地内にある博物館では、国家主義的な視点を通して戦前戦中の事実を詳しく解説しています。

                 

政治的論争の的になることが多いことから、恐らくはいわば怖い物見たさで靖国神社を訪れる中国人観光客もいます。

             

さすがに自分の考えを喜んで公開する人はほとんどいませんでしたが、アニメ映画や漫画本のファンで日本でインターンシップをしている台湾出身の21歳の大学生、ジミー・スーさんが正直に感想を語ってくれました。

                     

彼は母国台湾が日本の植民地だった当時の歴史、そして一部の台湾人が日本に対し憎しみを抱いていることから、ぜひ靖国神社というものを見てみたかったと語りました。

                  

靖国神社という空間を支配する静寂に魅了された彼はこう語りました。
「こうして私はこの場所に立っている、ただそれだけですね。」
「特別なことは何もありません。」

            

写真:10月17日の秋の例大祭の期間中、靖国神社境内を歩く神官。

                

https://www.aljazeera.com/news/2019/10/yasukuni-caught-controversy-japan-struggles-history-191018003603691.html

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中東に自衛隊を派遣、米国主導の有志連合には参加せず

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軍事的緊張が続く地域に自国の軍艦を派遣することは、日本では非常にデリケートな問題 

安倍首相は海外などでの日本の軍事的役割をなし崩しに拡大してきた

                 

                            

山口まり/ AP通信 2019年10月18日

                 

2019年10月18日金曜日、東京の首相官邸で会見する菅官房長官。
日本への石油の安全な輸送を確保するために独自に自衛隊を派遣すると発表する一方で、米国が主導する武力攻撃から商業用タンカーを保護することを目的とする有志連合に参加しなくても、日本政府はアメリカ政府と緊密に協力し続けると述べました。

                     

日本政府は10月18日金曜日、中東地域を航行する民間船舶を保護するために米国が主導する有志連合に参加しないことを決定しましたが、日本への石油の安全な輸送を確保するため、独自に自衛隊を派遣する準備を進めていると述べました。

                  

安倍内閣の菅官房長官は日本がイランの攻撃から商業タンカーを保護することを目的とする有志連合に参加しなくても、米国政府と緊密に協力し続けると述べました。
「中東の平和と安定は、日本を含む国際社会にとって非常に重要な問題です。」
菅官房長官は記者会見でこう語り、次のように続けました。
「どのような対策が最も効果的かを包括的に検討した結果、独自の対策を我が国単独で追求することにしました。」

                  


日本のエネルギー需要は石油の輸入に大きく依存していますが、イランとは独自に友好関係を維持しており、米国が主導する有志連合に参加することには消極的です。

                    

日本の安倍首相は、アメリカ政府とイラン政府との緊張関係を和らげようとしたことがあります。
アメリカのトランプ大統領は昨年、イランと世界の主要各国との間で交わした2015年の核開発合意から一方的に離脱し、さらにはイラン経済を悪化に追い込む制裁を再開したため、米国とイランの関係は悪化しています。
イランはこれ以降、核開発合意の条件を破り始めました。

               

ペルシャ湾一帯の緊張状態には、同海域で石油タンカーが押収される懸念が含まれています。

              

菅官房長官は日本はまずオマーン湾、北アラビア海とその周辺海域での情報収集を目的として、海上自衛隊の軍艦を配備する予定であると述べましたが、米国とイランの軍事的緊張の焦点となっているホルムズ海峡は含まないと語っていました。
しかし軍艦の派遣の規模や時期については未定であるとみられています。

                  

               

軍事的緊張が続く地域に自国の軍艦を派遣することは、日本では非常にデリケートな問題であり、その平和主義的な戦後憲法の下では軍事力の使用を国の自衛のみに厳しく制限しています。

               

しかし安倍首相は海外などでの日本の軍事的役割を、なし崩しに拡大してきました。

           

今年6月、日本企業が運営するタンカーがオマーン湾で武力攻撃され、アメリカ政府はイランの革命防衛隊による攻撃だと主張し、日本に対し米国主導の軍事有志連合に参加するよう求めたことを明らかにしていました。

                 

https://www.apnews.com/6f0583f360934afbbe824e6df743a540
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自国の領土のみならず日本の権益がある場所ならそれを守るためにどこにでも軍隊を派遣するというのであれば、その大概軍事政策はアメリカと変わらなくなってしまうのではないでしょうか?

               

安倍政権はなぜこれ程、軍事力の拡大や軍事力の行使に執着するのでしょうか?
今、アメリカから大量のF-35戦闘機を日本が購入することが問題になっていますが、安倍・トランプ会談の結果1機当たり40億円も高い価格で買わされることになったとの指摘を含め、問題や疑惑が数限りなくあります。

40億円の割増金額で140機も購入したら、6,600億円という巨額の金額が日本の国庫から出て行くことになるのです。
今、原発マネーの『還流』が問題になっていますが、上乗せされた6,600億円はそのままアメリカ国内に留まったまま終わるのですか?

               

さらにこうした戦闘機は買ったらそれで終わりではありません。
高額な燃料費や、消耗品代や格納や整備のための施設など、所有している限り多額の費用が発生します。
そして専用の弾丸や搭載用ミサイルを十分な量確保しておくことは兵站の基本です。
それらに利権は絡まないのでしょうか?

            

              

F-35戦闘機を購入し維持していく費用全ては、私達国民が税金を課されるという形で負担していかなければなりません。
そのことに国民がこれほど無関心でいるということは驚くべきことです。

消費増税、暗雲を呼び込んだ安倍政権

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成果が見えない大規模金融政策・消費税引き上げへの対抗措置・さらなる金利引き下げには金融不況の懸念も
増税後の様々な『景気対策』も、パターン化された消費行動をしなければメリットなし
弱含みの日本経済を支えてきたのは消費支出、なのに消費税を引き上げた安倍政権

                

              

エコノミスト 2019年9月26日

                

今年の初め、現在開催中のラグビーワールドカップの5試合を開催する九州の大分市で、主催者がバーとレストランのオーナー向けの説明会を開催しました。
説明会の会場では予想される事態の具体例として、片手に5杯のビールジョッキを手にしている南アフリカのラグビーファンの写真が含まれていました。
ラグビーファンのビールの消費量はハンパじゃありません、説明会の参加者は警告を受けていました。
実際に2007年にフランスで開催されたラグビー・ワールドカップでは、南アフリカ対フィジー戦が行われた際、マルセイユ市内のビールが足りなくなってしまいました。
さらに4年前にアイルランドがアデレードでプレーしたときも、同様の事態が起きました。
バーやレストランの所有者へのメッセージははっきりしていました。
「ビールをしっかり在庫しておいてください!」

                

日本の小売業者が9月に入り在庫を抱え込んでいるのは、ビールをがぶ飲みするラグビーファンのためだけではありません。
小売業者は、増税後に税務署から今まで以上の税金を徴収されるのを避けようと駆け込み需要に走ろうとする消費者にも対応しなければなりません。

               

10月1日(スコットランドがサモアと対戦した後、そしてフランスとアメリカが対戦する前)、日本は消費税を8%から10%に引き上げます。
消費税は生活用品、車、新しい家、雑誌、レストランでの食事、酒など、日本人が購入するほとんどすべての商品とサービスに課されます。
消費税引き上げ後は10%のレートにより、実質的に人々の可処分所得は減ってしまうことになります。
このため消費者は増税前に買い置きできるものは買ってしまおうと考えているのです。

                   

                 

人気のある税金などあるはずがありませんが、日本の消費税をめぐっては他国には見られない丁々発止の駆け引きが行われてきました。

              

1979年当時の内閣は初めて消費税の導入を承認しましたが、世論の猛反発に遭遇し、この考えを捨てざるをえませんでした。
1987年再び消費税導入の法案が上程されましたが、再び世論の反発により取り下げられました。
1989年、やっと3%の消費税が導入され、1997年に5%に引き上げられましたが、深刻な景気後退に貢献することになりました。
日本経済は、安倍晋三首相の新政権によって消費税率が8%に引き上げられた2014年にも失速しました。

                

安倍首相は政府の財政状態を改善するため、2015年に消費税を再度10%に引き上げることを公約していました。
しかし公的債務がGDPの150%を超えたこの時も増税は2017年まで延期され、今年10月まで延期されました。
ラグビー・ワールドカップ観戦のため海外から訪れた人々から称賛される時間厳守に対する日本の自慢の評判は、財政政策には当てはまらないようです。

               

こうして延期が繰り返された消費税の引き上げですが、日本経済が引き上げに耐えられる状態なのかどうかはわかりません。
アメリカと中国との貿易戦争に日本と韓国との争いも加わり、日本の輸出は9か月連続で減少しました。
中国への輸出は今年8月に前年同月比で12%減少し、韓国への輸出売上は9%減少しました。
製造業者が設備投資を減少させているのに合わせ、ホテル、小売、物流などのサービス業も事業の拡張計画が中止されているため、事業分野の投資活動は振るいません。

                  

こうした状況から日本経済が成長できるかどうかは消費支出にかかっています。
日本の第2四半期の経済成長は100%でしたが、それを支えたのは消費支出の伸びでした。
しかしこれ以上消費者のポケットからもっと多くの消費支出を引き出すのは難しくなっているようです。

                

                

                

2014年の消費税引き上げの際は、直前まで大規模な駆け込み需要が発生しました。
特に住宅建設と自動車、家具、家電製品などの大型耐久消費材は劇的な購入ブームの後、今度は大変な不況に見舞われました。
しかし今回はそれほどの動きは見られませんでした(グラフ参照)。
確かに住宅建設業者は新居を購入しようとしている人の住宅建設に忙しく取り組んでいます(販売契約が4月以前に交わされた物件には8パーセントの税率が適用されます)。
中央銀行である日本銀行によれば、エアコンの需要も押し上げました。
しかしそれ意外には目立った動きは見られません。

               

もちろん、消費者はぎりぎりの段階でいくつか(ビールを含む)高額ではない商品を購入しようと待ち構えているかもしれません。
大きな駆け込み需要が発生しなかったからといって、この後不況がやってこないとは限りません。

            

日本政府は今回の消費増税の影響が5年前よりもはるかに軽微なもので済むことを願っています。
今回の増税の幅は1パーセントだけ小さくなりました。
しかし5年前の(5%から8%の)増税の際は、その後すぐに2度目の(8%から10%の)増税が行われるという予想がありました。
2014年初めに駆け込み需要が発生したのは、両方を回避する、つまり10パーセントになる前に5パーセントのうちに必要になるものを買ってしまおうという動きだったのです。
この時消費者はその後何年もの間交換しなくて良いように自動車、家具、その他のありとあらゆる耐久性消費財を購入したのです。

                  

増税分は今回、いくつかの措置によって軽減されることになっています。
政府は今回の増税分の一部を育児と年金に充てます。
自動車の排気ガス規制について基準ごとに異なる税率を統一します。

                       

                

また政府の支援により数千の小規模小売業者がカードまたは携帯電話などを使ってキャッシュレスで購入する顧客に、製品価格の最大5%に相当するリベートまたは「還元ポイント」を提供します。

                

さらに政府はいくつかの例外を作り、免除措置により消費増税による家計負担の軽減を強調しています。
10パーセントの税率は、食品(レストランで食事をする場合除く)、飲料(アルコールを除く)、および新聞(日刊新聞の定期購読に限る)には適用されません。

                 

つまり人々が経済不振を伝える定期購読の新聞を読みながら、緑茶を飲みテイクアウトの食事をとるというパターン化された行動が有利になるのです。

                     

日本経済へのどのようなダメージが生じても、原則として日銀は対抗措置を発動する可能性があります。
引き上げを目前にしたスピーチで、黒田晴彦日銀総裁は、今回の増税の影響は以前と比較して「限定的なもの」になるとの観測を明らかにしました。
しかし黒田総裁は現実がまだ明らかになっていないせいか、今回の増税についてかなり楽観的に捉えている様子でした。
「この後さらに消費税が引き上げられることを想定しても…日本経済はトレンドとして潜在成長率を超えて成長し続けるだろう。」
黒田総裁は2014年にこう語っていました。

             

そして彼が目にした現実は、その後の6か月間、日本経済の成長は潜在成長率を約1.5ポイント下回るというものでした。
は黒田氏が再び不愉快な驚きに遭遇した場合は、日本銀行は短期金利をさらにゼロ以下に引き下げるか(ベンチマーク金利はこの4年間約マイナス0.1%でした)、あるいは国債購入の枠を拡大する可能性があります。

                

しかしこれ以上の金利引き下げは、銀行業が成り立たなくなってしまうことを懸念する金融関係者と虎の子の貯蓄の先行きを心配する一般家庭の両方から人気がありません。
効果がない場合すら考えられます。

               

日銀の理事会のメンバーで金融緩和推進派の片岡剛史氏が指摘したように、日本銀行は政策に適切に緩急をつけることなくインフレの見通しを繰り返し引き下げてきました。
こうした事態に、現在の金融緩和政策は合理的ではないと考える理事会の緊縮派にこれまで緩和政策を支持してきた理事も加わって、これ以上の金融緩和を行っても効果はないと考える敗北主義が広がりつつあることを示唆しています。

                 

その敗北論は理解しやすいものです。
インフレは当初、2015年には2%に上昇する予定でした。
しかしその見通しは実に6回改定されました。
現在日銀は、インフレが「徐々に」2%に増加しつつあると述べるに留まっています。

                  

日本が自慢する時間厳守に関する評判は、金融政策に関しては当てはまりません。
日本銀行の理事にできることは、とりあえず酒を飲むぐらいのことしかありません。

                 

https://www.economist.com/asia/2019/09/26/a-tax-hike-threatens-the-health-of-japans-economy

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どこにこのタイミングで国民一般に増税をする国があるか?!

経済学の講義を一通り聴いたことがあれば、当然抱かざるをえない感想です。

専門的な分析と解説については経済専門サイトに譲り、ここではサブタイトルの『新元号と日本型不況』というちょっと違う視点から見てみます。

                    

日本は令和という新元号の発布について、メディアが全く無意味にお祭り気分を盛り上げました。

日本では10世紀から11世紀にかけて政治の荒廃し天変地異が続く間、やたらと元号を変えた時代がありました。

元号に使われた文字が良くないために大災害や飢饉などが発生したのだという発想が基礎になっていますが、令和を煽った日本のメディアの頭脳構造も1000年前とさほど変わってはいないのかもしれません。

17世紀後半に一世一元制となった日本では、もうやたらと改元することはできなくなりましたが、もしその制限がなければ現在の政権なら元号を繰り返し変えるようなことも平気でやるかもしれません。

その都度、多額の国家予算が広告業界に流れ込むわけですから。

                  

私の言う『日本型不況』というのは、お金をかけるべき部門に投資せず、過剰な軍備や不要なインフラなど政治家の利権が存在する周辺にばかり国家予算を投入する政治が作り出す不況です。

具体的には教育予算や研究開発予算などを削り、オリンピックや無内容なイベントに税金が浪費されていく政治です。

その場限りのお祭りばかり派手にやって、本当の意味での発展を支えていく国にとって最も大切なはずの人材が、育って行く機会すら与えられないままどんどん見捨てられていきます。

                     

こんな政治を10年も続ければ、日本が先進国から衰退国へと脱落するのは当然ではないでしょうか?

現在の政権の最大の罪が、消費増税という弱者を一層追い詰める政策によって明らかになりました。

ガーディアン写真集 : 台風19号(ハギビス)の傷あと・その惨状

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「まずまずには収まった」と二階俊博自民党幹事長が評した台風19号の被害の実際の状況は

1000年に一度の巨大地震と巨大津波に遭遇し、今度は史上最強の台風の襲来を受けた私たち

                    

10月14日(月)長野県長野市の冠水した被災地を駆け抜ける救助車両。

ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 2019年10月14日

                

日本の台風19号(ハギビス)は10月12日(土)の夜に大雨を伴いながら東京の南に上陸し、各地の都市とやその周辺地域を水没させました。
死亡者数は70名を超え、多くの人々がいまだに行方不明になっています。
救急隊員が現場に急行し、ヘリコプターが浸水した建物から人々を引き上げ、行方不明者を探すため警察官が水没した地区で体の半分以上水に浸かりながら捜索を続けています。

                    

長野県の千曲川で大洪水に見舞われた浸水地域を捜索する警察官。
水没し泥だらけになった自動車。
10月13日(日)福島県郡山市の洪水の様子。
10月14日(月)長野県の浸水地域の捜索地域にゴムボートを担ぎながら向かう救助隊員。
10月14日(月)長野県の千曲川流域の洪水が起きた地域から救出された女性。
10月13日(日)千葉県で台風上陸の直前に発生した竜巻によって破壊された建物の瓦礫の中を捜索する救助隊員。
10月13日(日)千葉県で台風上陸の直前に発生した竜巻によって破壊された建物と転倒した自家用車。

                      

10月13日(日)千葉県市原市の竜巻によって被害を受けた地域の空撮写真。
10月13日(日)埼玉県川越市の浸水地域で水没してしまったヘリコプターを見つめる住民。
神奈川県川崎市の水没した住宅地の周囲を捜索しながら泳ぐ救助隊員。
10月14日(月)長野県の千曲川流域の洪水が起きた地域を飛ぶ自衛隊の救助ヘリコプター。
10月13日(日)水没した長野県の新幹線車両基地。
宮城県角田の浸水地域で自衛隊員によって救助される地元住民。
長野県千曲川の氾濫で発生した大洪水の中、ボートを運ぶ救助隊員。
栃木県佐野市の洪水が起きた地区で娘を背負って泥水の中を進む女性。

                  

https://www.theguardian.com/world/gallery/2019/oct/14/the-aftermath-of-typhoon-hagibis-in-pictures

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台風19号が去った後、友人の一人に思わず私が話したのは、

「1000年に一度の巨大地震と巨大津波に遭遇し、今度は史上最強の台風の襲来を受けた私たちは、どんな時代を生きているのだろうか?」

ということでした。

東日本大震災の方は人智をもってしても如何ともしがたいという類のものでしたが、台風の巨大化は地球温暖化と密接に関わるもののようです。

災害列島と言われる国土で暮らす私たち日本人としては、例えば温暖化の問題とまったく向き合うとしないトランプのようなアメリカ大統領に対しては、厳しい批判を向けるべきでしょう。

                 

しかし、ここで「しかし」と言わなければならないのが現在の日本の政治です。

批判どころか、トランプに対する日本の首相の態度は話に聞く太鼓持ちの態度そのものです。

会談などの際は批判するなど思いもよらないという卑屈さを全身で表現するありさま。

そして政権与党の幹事長の「まずまずには収まった」発言。

弱者はどこまでも報われない政治構造になっています。

                        

温暖化について、一言。

「原子力発電は地球温暖化の解決手段などではない。原子力発電所は使用済み核燃料を安全に保管し続けるために膨大な量の二酸化炭素を排出する。」

フェアウィンズ・エデュケーションのアーニー・ガンダーセン氏の指摘です。

CNN写真集 : 台風19号(ハギビス)の惨憺たる被害

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「まずまずには収まった(二階俊博自民党幹事長の発言)」台風19号の被害の実相

増え続ける死者、拡大し続ける被害、かつて経験したことのない破壊

               

10月14日(月)福島県郡山市の洪水に襲われた現場で遺体を運ぶ警察官と消防士。

             

米国CNN 2019年10月15日

                  

台風19号ハギビスは土曜日、東京の南西にある伊豆半島に午後7時前上陸しました。NHKは14日時点で25人が死亡、175人が負傷、18人が行方不明になっていると伝えました。

                 

気象庁は警戒レベル5の緊急気象警報を発令し、消防庁によると少なくとも8つの都県で合計9万3,000人以上に避難勧告が行われました。

            

10月14日(月)川越市内の被害を受けた家屋の清掃をするボランティアの男性。
10月14日(月)、多数の車が転倒している道を走り抜ける軽自動車。
10月13日(日)長野県の千曲川の堤防が決壊し、泥水に沈んだ住宅地。
10月13日(日)川越市内の浸水地域から住民を避難させる消防署員。
10月13日(日)宮城県丸森町で子供達も加わって泥をかき出す住民。
10月13日(日)千葉県で台風19号の到達前に竜巻に見舞われ、破壊された家屋と乗用車。
10月12日(土)三重県伊勢市内で増水する五十鈴川の様子を不安そうに見つめる住民。
10月12日(土)千葉県市原市で竜巻の被害に呆然とする住民。
10月12日(土)静岡市内の中学校の体育館に避難した住民。
10月12日(土)洪水に見舞われた東京都内の住宅地で逃げ遅れた住民を捜索する救助隊員。
10月12日(土)市原市で竜巻によって破壊された家屋。
10月12日(土)東京のコンビニエンスストア
10月12日(土)東京都内の多摩川河川敷の水没した店舗。
10月12日(土)市原市で竜巻による被害の様子。
10月12日(土)東京都内で台風の襲来に備えて土のうを積む住民たち。
増水した多摩川の様子を見つめる親子。
ここまでCNN。以下はAP通信
2019年10月14日(月)長野県長野市穂保地区で泥に覆われた通りを歩く2人の捜索救助隊員。 救助隊は今なお土砂崩れの泥土をかき分け、台風で行方不明になった人々を捜索しています。
台風19号は36人もの死者を出し、中部・関東および東北地方で深刻な被害をもたらしました。
10月13日(土)岩手県釜石市でラグビー・ワールドカップに出場しているカナダの選手ジョシュ・ラーセンが、ナミビアとのラ試合の中止を受け、釜石市内で道路の清掃を行う住民を手伝う様子 。

                       

https://edition.cnn.com/2019/10/12/world/gallery/typhoon-hagibis/index.html

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このような怒りをどう表現すべきか、さすがに言葉をさがしかねています。

もちろん「まずまずには収まった」という二階俊博自民党幹事長の発言、そしてその後の開きなおった傲岸な態度に対してです。

              

被災者・被災地に対するどんな思いやりもない。

長年権力の側にいながら、犠牲になった人々を救うことができなかったという悔恨が微塵もない。

被災者・被災地のために自ら進んで何事かをしなければならないという使命感もない。

                 

なぜ私たち日本人は、こんな人間が権力に極めて近い場所にいることに危機感を持たないのでしょうか?

『慰安婦』像をめぐって紛糾したあいちトリエンナーレ『表現の不自由展』が再開

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『慰安婦』の歴史をめぐり、悪化している日本と韓国の関係
日本では『慰安婦』の問題を公の場で口にすることは長い間タブーとされてきた

                      

2019年8月3日に日本の愛知トリエンナーレで開催された展覧会の芸術作品のひとつ、『慰安婦』像

              

ドイチェ・ヴェレ 2019年10月8日

                 

論争の的となっている戦時中の韓国人女性をモデルとした従軍慰安婦像を特徴とするこの展覧会は、今年の8月初旬に一旦は中止を余儀なくされました。
日本と韓国は、第二次世界大戦の終了以降、『慰安婦』問題をめぐってずっと争い続けてきました。

                     

検閲によって展示を見送った作品を除くアート作品を展示する日本の展覧会は、韓国の戦時中の『慰安婦』像の展示に対する脅迫を受けて一旦は中止を余儀なくされましたが、2ヶ月後の10月8日火曜日に再開されました。

                

あいちトリエンナーレ2019企画展『表現の不自由展』の主催者は新たな安全対策を実施し、展示を再開したことを公表しました。

                

再開された展示会は本来は検閲によって除外された作品を中心に展示し、もともと2ヶ月以上実行する予定でした。
しかし韓国の『慰安婦』像が展示されていたことにより、開始わずか3日後には大きな騒動が持ち上がりました。

               

日本政府は愛知県が展覧会に関する完全な情報を事前に十分に提供提供することを怠ったと主張し、展示会への助成金の撤回を表明しました。

                

              

『慰安婦』という名称で知られる主に韓国の女性と少女約20万人が、第二次世界大戦中、日本軍によって強制的に売春をさせられていたと推定されています。
歴史家は第二次世界大戦中、大日本帝国の軍隊が日本の占領地域において兵士向けの売春宿を組織的に運営していたと指摘しています。

              

この歴史をめぐり、日本と韓国の関係が悪化しています。

                

第二次世界大戦で降伏した後も、日本では『慰安婦』の問題を公の場で口にすることは長い間タブーとされてきました。
この問題は1990年代初頭になってやっと正面から取り上げられるようになり、1992年以降、ソウル市内にある日本大使館の外で元従軍慰安婦の韓国人女性たちとその支援者たちが、日本からの公式の謝罪と金銭的補償を求めてデモを行ってきました。

              

▽「残念な事態」

               

「一部のアーティストの作品の展示ができなくなったことは非常に残念です。日本最大の芸術祭の一つであるこの愛知トリエンナーレを友好的な雰囲気の中で最後まで開催したいと思います。」
大村秀章愛知県知事は10月7日にこのように語りました。

                

今年8月、大村知事は愛知トリエンナーレの主催者が多くの脅迫的なメール、電話、ファックスを受け取ったと述べていました。

              

                   

近年、元慰安婦を支援する韓国の活動家は『慰安婦』の名誉を守るために、世界中の公共の場に数十体の慰安婦像を設置してきました。
そのうちの多くは韓国国内に設置されました。

              

これらの「慰安婦」像に対し日本政府は苛立ちを募らせ、ソウル市内の日本大使館前に設置された「慰安婦」像を撤去するよう韓国政府に迫りました。

              

日本には、女性たちが組織的に挑発されたり、旧日本軍から女性たちを誘拐してくることを請負っていた業者がいたということに異論を唱える人間たちがいる一方、女性たちが自ら高給の売春婦になったのだと主張する保守派の人間たちもいます。

                 

https://www.dw.com/en/japan-reopens-exhibit-closed-over-censored-comfort-woman-statue/a-50735236
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私個人の話ですが、第二次世界対戦前後の日本を題材にしたドラマなどを見ていて一番虫酸が走るのが、反戦的・厭戦的発言や行動をする人に対し『非国民』と罵る卑怯者たちです。
ヤクザ社会でチンピラという下っ端が素人衆に対してやたらと威張り散らしたり迷惑をかけたりするのに似て、思想的右翼といういわば筋の通った人とは異なり、近年世の中を騒がすネトウヨというのはやたらと騒ぎたがり、やたらと噛みつきたがるようです。
言ってみれば右翼界のチンピラともいうべき存在なのでしょうか?

スジの通った右翼の人なら「一緒にするな!」と怒るかもしれません。

             

こういう人間たちの主張をまともに取り上げる行政関係者がいるということは、誠に嘆かわしいことですが、そうした対応が国際社会の顰蹙を買い、日本人に対する軽蔑を買っていることも忘れてはならないと思います。

              

日本人という立場にとらわれているとわかりにくいので、現在のドイツ人とナチスドイツについて考えてみましょう。
もし理知的で思いやりのあるドイツ人がいたとして、そういう人に『ナチ野郎!』と悪罵を投げつける人はまずいないと思います。
でももし横暴で冷酷なドイツ人がいて、多くの人が『人間として許せない』と思う行為をすれば、『ナチ野郎!』と罵りたくなるかもしれません。

               

その意味で戦後70年以上が経った今になって、なぜ世界各地で『慰安婦』が設置される事態になっているのか、私たち日本人はチンピラたちが起こす騒ぎに惑わされることなく、冷静に分析し対処すべきだと思います。

原発マネー還流スキャンダル、関西電力会長が辞任

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福島第一原発の事故調査委員会が厳しく批判した最中、『腐敗と癒着』を続けていた関西電力幹部
自民党国会議員にも飛び火した、原発マネー還流スキャンダル
原発マネー還流スキーム、事前に計画されていたのであれば贈収賄の刑事事件

             

                

山口まり / AP 2019年10月10日

                

写真 : 2019年10月9日水曜日、大阪での記者会見の冒頭で謝罪する関西電力の八木誠会長。
八木会長は高浜原子力発電所が立地する自治体の元助役から、合計3億2,000万円に上る現金その他の金品を受け取った20人の関西電力役員が関係するスキャンダルを理由に辞任しました。

            

日本の電力会社の最高責任者が原子力発電所が立地している町の元助役から合計3億2,000万円に上る現金その他の金品を受け取った役員を含む20人が関係するスキャンダルを理由に辞任しました。

               

関西電力の八木誠会長は、国民の信頼を損なった責任を取って辞任すると語りました。

              

社長の岩根茂樹氏は、今年後半に独立調査委員会が調査結果を公表した後に辞任すると述べました。
2人の役員は2011年から2018年にかけ、関西電力の4基の原子炉が立地する福井県の高浜町の前助役から現金と贈り物を受け取った20人の幹部社員に自分たちが含まれていることを認めました。

              

「関西電力のお客さまを含む人々の信頼を裏切ったこと、そして多大なトラブルを引き起こしたことを深く謝罪いたします。」
八木誠会長は記者会見の席上こう語りました。

              

              

この事件は9月に行われた税務調査中に表面化し、2011年の福島第一原発事故の後になっても尚、原子力発電に関係する行政と日本の原子力産業との間で腐敗した関係が続いていることを明らかにしました。
福島第一原発の事故調査委員会はこうした行政と原子力産業界の癒着について、厳しく批判していたはずでした。

              

先週公表された予備的な内部調査の報告書によると、20人の幹部は7年間にわたり元高浜町の森山元助役から現金、金貨や金杯、高価なスーツの仕立て券などの形で総額3億2,000万円を受け取っていました。

               

この極めて不適切な金品のやりとりは政権与党の自民党の国会議員との間でも行われていました。
世耕前経済産業大臣は、森山氏が顧問を務めていた会社から、2012年から2015年にかけ600万円の政治献金を受け取っていたことを認めました。
世耕氏は森山氏とは面識がなく、「違法なことは何もない」と語っています。

              

安倍首相の政権与党で重職を担う福井県選出の国会議員である稲田朋美氏は、森山氏が役員を務めていた別の会社から、少額の寄付を受けとっていたことを認めました。

                 

               

聞き取りに基づく関西電力の調査に対し金品を受け取った関西電力の役員と職員は、森山氏はしばしば菓子の箱の底に金品を隠して持参したと証言しましたが、いずれも収賄については否定しています。

                 

この報告書で岩根社長を始めとする役員や幹部社員は、受け取りを拒もうとしたものの、森山氏が激昂して原子力発電事業が継続できないようにしてやるなどと脅したため、仕方なく金品を受け取ったと証言しています。

              

岩根社長は当初、2011年3月に発生した福島第一原子力発電所事故が原子力発電に対する国民の信頼を完全に失墜させ原子力産業界が信頼回復に苦慮していた中、影響力のある人間の感情を傷つけて会社に損害を与えることを恐れていたと語っていました。

                 

現時点で刑事告発は行われていませんが、法律の専門家は、こうした金銭の流れが事前に計画されていたのであれば、関西電力の役員が贈収賄の刑事責任を問われる可能性があると語っています。

               

                

報告書によると、関西電力の役員と幹部職員が受け取った金品は、原子力発電所の建設などに関わった地元の請負業者から「取扱手数料」として森山が受け取っていたものです。
地元自治体の職員は、森山氏は町の助役を退職し他のいくつかの会社の役員を退いた後も強力な政治的影響力を振るい続けていたと語りました。

               

森山氏は今年3月に亡くなっています。

                 

https://apnews.com/54fe1d9c6de94995a8d04f66174ab26f

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関西電力の役員が頭を下げている写真を2枚並べてみて、彼らは一体何に対して、誰に対して頭を下げているのだろう?と思いました。
辞任というと何か贖罪を行ったかのような響きがありますが、規定に則り自らた委任する以上、退職金等も全額が支払われる等、経済生活の上で何か不都合が生じるとは考えられません。

             

しかし福島第一原発の事故で原発難民の人々が数限りなく失った大切なものは、いったいどれだけ回復されたのでしょうか?

            

関西電力の役員が頭を下げている相手が、原発難民の人々の痛切な悲しみではない、それだけは言えると思います。
日本の電力会社の原子力発電事業というものが危険なだけでなく、これほど非人間的なものであることを忘れないようにしようと思っています。

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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