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【 放射線科学の世界的権威が明らかにする・日本の黒い塵、その正体 】《第1回》[フェアウィンズ]

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所要時間 約 6分

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メルトダウンした原子炉内で生まれた?
未知の異常な出来事により生み出された、高濃度の放射線を放つ黒い物体

フェアウィンズ 7月10日

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今週フェアウィンズは、放射線に関する世界的権威であり、数種類の放射性値同位元素について専門的研究を行っているマルコ・カルトフェン氏との対談を特集します。

マルコ氏とアーニーはつい最近福島第一原発からもたらされた高濃度の放射性物質を含む、あるサンプルを検証しました。

録音の音質がばらついてしまうのに備え、『浪江町で採取した塵の放射線学的分析(Radiological Analysis of Namie Street Dust)』と言うタイトルでポッドキャストによる配信も行っていますので、そちらもご利用ください。

7月10日水曜日のフェアウィンズ・エネルギー・エデュケイションの番組にようこそ。
今日はボストン化学データ社の社長であり、ワーチェスター工芸研究所の博士課程研究者統括責任者でもあり、さらにはアーニー・ガンダーセン同様フェアウィンズのチーフ・エンジニアを務めるマルコ・カルトフェン氏にご参加いただきます。

マルコ・カルトフェン : この場にお呼びいただき、感謝申し上げます。
ガンダーセン : 私もあなたとお仕事ができることを、ことのほか喜んでおります。

NWJ : マルコ、私はあなたが福島の立ち入り禁止区域の周辺で採取した、サンプルについて検証したレポートに目を通す機会がありました。
あなたが採取した土壌サンプルから、どのような発見をしたか詳しく説明していただけますか?

カルトフェン:今回の特筆すべき事故について、私が非常に特徴的だと感じる点のひとつは、実に様々なデータが存在する、ということです。

こうしたデータを検証するために大勢の人々が福島に赴き、サンプルを収集して検査を行い、あるいは環境調査を行い、得られた結論が何によって生じたのか、再び収集、検査、調査を行うという事を繰り返してきました。
そしてそれらの調査の結果、周囲の土壌などと比較して著しく放射線量の高い、地面や道路の上にある、日常は見かけない黒い塵についての情報を繰り返し聞かされたのです。
それはあたかも福島第一原発の事故で放出された放射性物質の塊りそのもののようでもあり、未だ招待は明らかではありませんが、特定の渓谷、あるいは側溝などで採取されたほか、人々が持ち込んできた例もありました。

Kaltofen
私たちはその物質のサンプルを少量手に入れました。
放射線量が高いため、大きな塊にしておくのは危険だと考えられるのですが、一連のテストを行うことにしたのです。

ガンダーセン : 日本の事故現場周辺に存在した、その正体不明の物質について説明していただけますか?
この物質は事故の全体像を物語るものではないと考えられますが、他には例を見ない特殊なもののように考えられます。
その物質は今回の事故の、どのような点に関わって来るのでしょうか?
物質からはセシウム134とセシウム137が検出されたという事であり、当然福島第一原発からのものと考えられますが。

カルトフェン : 話が少し前後します。
私たちがワーチェスター工芸研究所で見たものは、福島第一原発周辺で採取された200種類に上る土と塵のサンプルでした。
そして我々がこれから検証するものは確かに福島第一原発から放出されたものであるけれども、放射性物質そのものではないという点に留意する必要があるでしょう。
まず福島第一原発から放射性物質を運んできたと考えられる、この物質の大きさを確認しておく必要があります。なぜならどのようにしてその場所に到達したのか、その状況を検証する手がかりを与えてくれると思われるからです。
そして事故を起こした原子炉内で、どのタイミングで、どの場所でその物質が作り出されたのか、その事も推論できると考えられます。

そこで私たちはこの黒い物質を他のサンプルから切り離し、独自の検証を行う事にしました。
まず私たちは、走査型電子顕微鏡を使い、写真撮影を行ないました。
さらにガイガーカウンターとガンマ線スペクトル解析機を使用することにより、より一層その正体に近づくことが出来たと考えています。

120801
申し上げましょう。
この物質はこれまで私たちが採取したどの土壌サンプル、どの塵とも異なっています。
この黒い物質を構成しているのは一種類の成分です。
これは単一の物質なのです。
土はいくつもの物質の混合物、つまり鉱物の破片、小さな生き物の死体や植物の破片、そして塵などによって構成されていますが、この物質はそうではありません。

顕微鏡で見てみるとよく解りますが、同種の成分により均一性が保たれています。
そして周囲にあった土などとは明らかに異なっています。

さらには福島第一原発の周辺でこれまでに採取されたどの土、どの塵などと比較し、非常に強い放射能を帯びています。

その点から考えても、この物質は他とは同一に論じることはできません。
自然界に存在する土などでは無く、これまで経験したことが無い異常な出来事、それがこの物質を生んだと考えてよいのではないでしょうか?

〈 第2回につづく 〉

http://fairewinds.org/podcast/japans-black-dust-with-marco-kaltofen

【 なぜ今日この事態に至ってしまったのか?福島第一原発の『危機』】《後篇》

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凍土対策、これまでの愚策の上にさらに愚策を重ねる、その危険は無いのか?
解決に向けた正攻法は汚染水の浄化、しかし頼みの綱の浄化装置は…

ティム・ヒューム / アメリカCNNニュース 9月4日


▽ 汚染水の放射線量は?

7月、東京電力は福島第一原発の原子炉建屋付近に設置した試験用の井戸のひとつから採取した汚染水から1リットルにつき500,000ベクレルの放射性トリチウム(三重水素)を検出したことを明らかにしました。
日本の安全基準に基づけば、飲料水に含まれる放射性トリチウムの限度量は1リットルあたり300ベクレルです。

9月には汚染水の貯蔵タンクと配管類付近で、放射線量の急激な上昇が確認されました。
最も高かったのは、貯蔵タンクの最下部の縁の部分で、1時間あたり1,800ミリシーベルトの線量が計測されました。
別の2つのタンクの底の部分では、それぞれ毎時220ミリシーベルトと70ミリシーベルトが計測されました。

東京電力はさらに配管の下に付着していた、乾燥した汚れから毎時230ミリシーベルトの放射線量が計測されたことも明らかにしました。

先進国で暮らす人々は、環境中から1年間に3ミリシーベルトの被ばくをするといわれています。

専門家によれば、短時間に1,000ミリシーベルトの被ばくをした場合、人間は吐き気を催し始めます。
5,000ミリシーベルトの放射線被ばくが2、3時間続いてしまうと、死亡する可能性が高くなります。

第一原発大規模工事
▽ 現在の汚染状況から予測される危険は?

「福島第一原発の敷地内で発生している問題をすべて合わせると、東京、あるいは周辺の市町村に対する潜在的脅威となり得るでしょうか?」
「なりえない、そう考えてよいと思います。」
前出のフリードランダー氏が答えました。

「では再び大きな地震に襲われて貯蔵タンクが倒壊、あるいは破裂した場合、再び大混乱に陥ることになるのでしょうか?」
「必ずそうなるでしょう。」

そして公表された放射線量が存在する環境で、現場の人々が作業をすることになれば、深刻な健康被害が発生する危険性があります。
どの段階でか、汚染水を海洋中に投棄する必要に迫られる可能性を指摘する専門家もいます。

▽ 現在の状況は、どれぐらいの危険をはらんでいるか?

「事故発生当時の汚染状況と、その後の2年半、どういう状況が続いたのかを検証する必要があります。たとえば今、この瞬間だけ海水の検査をしても、それ程の放射線量は検出されないと考えられます。」
フリードランダー氏がこう語りました。
「海流の存在、そして太平洋がきわめて広大なことを考えると、事故発生当時に存在していた汚染はだそして現在、福島第一原発周辺では消費・流通を目的とした漁業の操業は行われていません。

NRC Barett
「原子力発電所を運営していたのが良心を持った企業であれば、現在利用が可能な中で最高水準の技術を用い、汚染水を浄化することに努めるでしょう。最新の技術を使えば、かなりの程度まで汚染水を浄化することが可能です。ただし現在の技術では、海に流れ出してしまった汚染まで処理することは不可能です。」

▽ どうすれば、放射性物質を汚染水から除去することが可能になりますか?

「すでに存在している技術でほぼすべての放射性物質について、検出不能のレベルまで除去することが可能です。」
1種類、放射性トリチウムだけは取り除くことがてきません。
「放射性トリチウムを取り除くためには、全く異なる技術が必要になりますが、この規模でそれを行うことは不可能なのです。」
この問題を除けば、汚染水を海洋中に放出できるレベルまで浄化することは、既存の技術を使って可能なのです。

▽ 汚染水の漏出を止める、そのための選択肢

東京電力は原子炉建屋とタービン建屋周辺の土地を地下まで凍結させることにより、地中にバリアを築き、地下水が流れ込まないようにする対策を提案しました。
これによって流れ込んだ地下水が汚染され、放射性物質を敷地外や海洋中に運び出さないようにしようというものです。

しかしこれほど大規模に地中を凍結させるためには、技術的な難問を克服する必要があります。

破壊された原子炉建屋周辺の地中を凍結させるためには、建屋の周囲に強力な冷却剤を注入するための数千本のチューブを埋め込まなければなりません。

この技術は元来トンネル工事の前段に利用されてきたものですが、福島第一原発の現場のような巨大な現場で利用された実績はありません。


▽ 計画通り機能するのか?

フリードランダー氏によればこの技術は、たとえば建設現場などで『一時的な解決手段』として利用されてきただけのものであり、福島第一原発の現場のような大規模な現場で、長期間の対策として利用することにはほとんど効果を見込めません。

フリードランダー氏は現実的な選択肢、それは汚染水を海洋に放出できるよう、浄化作業に専念することだと述べています。
「原子炉建屋、タービン建屋の汚染を除去し去るには、40年以上という長い年月が必要なのです。」
フリードランダー氏がこう語りました。
「そして地下水脈の源を突き止め、その経路を割り出し、ちかすいの流れ込みを根本的に止める方法を検討すべきです。」
「そうすることで原子炉建屋、タービン建屋付近に地下水が流れ込まないようにする方法があるはずであり、それ以外に1日あたり400トンもの汚染水が作り出される問題を解決する方法はありません。」

「もしあなたの家の地下に水が流れ込んできたら、これ以上に確実な解決方法は無いはずです。建造物の地下に水が流れ込んできた場合の対策、その技術はすでに確立されたものがあるのです。」

「40年もの間地中を凍結させる、そんな対策が持続可能な解決策だとはとても考えられません。」

〈 完 〉

http://edition.cnn.com/2013/09/04/world/asia/japan-fukushima-nuclear-crisis-explainer/index.html?iid=article_sideba
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まさにこの稿の準備をしていた28日夕刻、、汚染水浄化装置の切り札『ALPS』が稼働わずか1時間30分で異常をきたし、またも浄化作業を断念せざるを得なくなったというトラブルを、NHKのニュースが伝えました。

「何をやってるんだ…」
思わず口にでました。
解決が遅れれば、被災者の方が苦しまなければならない日々が一日延びるのです。
その繰り返しの中で、命を無くされた方もいるのです。

【 なぜ今日この事態に至ってしまったのか?福島第一原発の『危機』 】《前篇》

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すべては東京電力の、間に合わせ・その場しのぎの対策が招いた
東京電力の事故後の対応は決めて場当たり的なもので、長期間安全を保つことなど望むべくもない

ティム・ヒューム / アメリカCNNニュース 9月4日


この4半世紀で最悪の原子力発電所事故が発生してから2年以上が経過しましたが、事故によって破壊された福島第一原発は、未だに非常に毒性の高い状態がつついています。
この状況を受け、日本政府は自らが直接新たな対策を実施する旨表明せざるを得なくなりました。

東京電力はこれまでトラブルが発生する度、その場しのぎの対策ばかりを行い、繰り返し非難されてきましたが、電力事業を所管する経済産業省の茂木大臣は、そのやり方を『もぐらたたきゲーム』に例えました。

日本政府は直接福島第一原発の汚染水の問題の解決に乗り出すに当たり、これまで試みられたことも無く、検証もされていない対策を実施するための費用として、約470億円の国費を投入することを明らかにしました。

▽これまでの経緯

2011年、東京の北約240キロ地点にある、東北地方太平洋岸にある福島第一原子力発電所が津波によって水没し、当時稼働中だった原子炉にとって極めて重要な設備である冷却装置を停止させました。
このため3基の原子炉がメルトダウンし、大量の放射性物質を大気中に放出、1986年のチェルノブイリ事故以来最悪の原子力発電所事故が発生したのです。

発電所を襲う津波
事故発生以来、東京電力はメルトダウンした核燃料が再び過熱して事故が拡大しないよう、毎日数百トンの水を送りこんで冷却を続けなければならない状況に追い込まれています。

この冷却のため使われた水は、直接核燃料に触れることにより高濃度に汚染されてしまいますが、この汚染水が毎日400トンずつ増え続けています。
汚染水は「とりあえず」そのまま保管する目的で「急造された」タンク内に貯蔵されていますが、タンクの数は1,000基前後に上り、実にオリンピック・プール160杯分の高濃度汚染水が福島第一原発の敷地内に貯ってしまっているのです。

福島県沖合の海水の汚染について調査を行っていた科学者たちは、福島第一原発から恒常的に汚染水が漏れ出している可能性について、この1年指摘を繰り返してきましたが、東京電力がその事実をやっと認めたのはつい最近になってからの事でした。

8月になって東京電力は、問題の急増されたタンクの1基から約300トンの高濃度汚染水が漏れ出したことを明らかにしました。
事態を重く見た日本の原子力規制委員会は、国際原子力事象評価尺度(INES)の暫定評価をレベル3『重大な異常事象』に引き上げました。これは福島第一原発のメルトダウン事故自体レベル7と判定されたことを除けば、その後最も深刻な状況に陥っていることを現すものです。

その後の調査で、複数の貯蔵タンク、そして配管類から汚染水が漏れ出している可能性があることが判明しました。
国際原子力機関(IAEA)によればレベル3『重大な異常事象』は、「一般市民の被ばくの可能性は高くは無いものの、特定の地域で予測を超えた深刻な汚染が進行している」状況を指すものです。


▽ 汚染水漏れが発生する原因は?

これまでに汚染水漏れを起こしたタンクは、鉄板の継ぎ目をゴム製のシールドで補強したタイプのもので、この場所にある1,000基のタンクの内約350基がこのタイプです。
これらのタンクは事故の直後に増え続けた汚染水を、何とか収納するため急造されたものですが、事故発生から2年半が過ぎ、そのほころびが見え始めたものです。

アメリカの原子力技術者で、原子力発電所の管理責任者でもあったマイケル・フリードランダー氏は、CNNの取材に対し、以下のように回答しました。
このトラブルは東京電力が事故発生直後、緊急に対応するため間に合わせに急増したはずの設備をそのまま使い続けたために発生した問題であり、東京電力の事故後の対応が如何に場当たり的なものであり、長期間安全を保つことなど望むべくもない、その事を証明する実例である。

「危機が最高潮に達していた当時、彼らが対応しなければならなかった課題の優先順位を考えれば、汚染水タンクを急ぎ作り続けたこと自体は、責められるべき事ではありません。」
フリードランダー氏がこう語りました。
しかし緊急時の対応を終えた後も、東京電力はこの問題に長期間どう対応するかのビジョンを示そうとはしなかったのです。
「毎日400トンずつ高濃度汚染水が途絶えることなく増え続ける、それを解決する手立ては目下のところ存在しません。」

汚染水タンク01
「東京電力が採った対策は、いずれも持続可能なものではありませんでした。
福島第一原発の敷地内には大量の高濃度汚染水を貯蔵するタンクを、敷地の周囲には大量の放射性廃棄物を置き並べたものの、それらを処分するための長期的・永続的な解決策は無い、それが現実なのです。」

▽ 問題はそれだけなのか?

地下水についても、似たような問題が発生しています。
福島第一原発の外、山側から敷地内の地下に流れ込む地下水が、汚染のひどい原子炉建屋・タービン建屋付近で汚染水となってしまうのです。

7月東京電力は海側に汚染水の漏出を食い止めるための防護壁を建設したものの、それを超えて汚染水が海に流れ出してしまっていることを認めざるを得なくなりました。

〈 後篇に続く 〉

http://edition.cnn.com/2013/09/04/world/asia/japan-fukushima-nuclear-crisis-explainer/index.html?iid=article_sideba
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数日前に掲載した「自民党はこれからも『原子力ムラ』の肩を持ち続けるのか?その見識がこれから問われる【 ニッポン、これからのエネルギー 】エコノミスト( http://kobajun.biz/?p=13992、 http://kobajun.biz/?p=14004 )について、「自民党はこれからも『原子力ムラ』の肩を持ち続けるのか」という表現・翻訳はあたらないのではないか?!というご批判をいただきました。
確かに原文を忠実に翻訳すると、そうはなりません。

しかし、私は福島第一原発の事故発生以来、アメリカ、イギリスを中心に各国一流メディアの原子力発電に関する記事を、ほぼ毎日翻訳し続けてきました。
翻訳した原子力発電関連記事の数は300本なのか、400本なのか、500本なのか自分でも解りませんが、この作業を続けてきたおかげで、今や自分の中に世界中のメディアの『総合世論』とも言うべきものが出来上がりました。

「自民党は『原子力ムラ』の肩を持ちつづけている」、この表現はこうした背景の中から出てきたものです。
その点、ご理解をいただければ、と思います。

【 とことん後手に回り続けた、その結果、汚染水問題は悪化した 】

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グレゴリー・ヤッコ元米原子力規制委員会委員長、日本の対応の遅れを指摘
事故の初期に必要な対策を怠った結果、今日の巨額の対策実施が必要になった

AP通信 / ワシントンポスト 9月24日

米原子力規制委員会
アメリカ合衆国原子力規制委員会の元委員長であるグレゴリー・ヤッコ氏は24日火曜日、壊滅的破壊を受けた福島第一原発では、事故直後から汚染水の問題は認識されていたにもかかわらず、その対策を後回しにし続けたため、現在の深刻な事態に至ったものだと指摘しました。

巨大地震と巨大津波により3基の原子炉がメルトダウン起こした福島第一原発では、溶け落ちた核燃料の冷却を続けるため大量の水を継続して送り込む必要があるが、その際汚染水の漏出が起りうる、その事実は日本の当局者もアメリカの当局者も、共に認識していたはずだとヤッコ氏が指摘しました。

ヤッコ氏は日本がこの問題に本格的に取り組む、その対応のあまりの遅さに驚いていると語りました。
「いずれこのことが大きな問題になる、それは最初から分かっていたはずでした。」
ヤッコ元委員長は、東京での記者会見でこう語りました。
「私が一番驚いたのは、なぜこれほど事態が悪化するまで、問題を先送りしていたのかという点です。そして汚染問題も先送りされ、結局は海を汚染し続けていたことが明らかになったことで、私はもう一度唖然とさせられました。」

福島第一原発で3基の原子炉がメルトダウンを起こして重大な危機に陥っていたとき、アメリカと日本の当局者は直ちに大量の水を送りこんで溶け落ちた燃料を冷却する必要を認識しました。
しかし冷却に使われた水は高濃度に汚染され、その保管が後々問題になることも解っており、いったいどれだけの量の水を送りこむべきか、急いで検討しなければなりませんでした。

汚染水タンク05
日本側は原子炉格納容器付近と原子炉建屋に大量の水を注ぎこむことにより、地下水の大規模な汚染が発生することを恐れていましたが、アメリカ側は大気中に放出される汚染物質を最小限に留めるために、原子炉を冷却し、安定した状態に保ち続けることを主張しました。
しかし汚染水問題に対処し続けなければならないという『危機意識』は、いつの間にか失われてしまったのです。
この問題を軽視する姿勢が、全ての対応を遅らせることになったのだろう、反原子力発電の市民グループの招待により日本に滞在中のヤッコ氏がこのように指摘しました。

ヤッコ氏は昨年、アメリカ国内の原子力産業界からの圧力が強まり、米国原子力規制委員会の議長を辞任しました。

日本の当局者はこの7月になって初めて、事故直後から汚染水が太平洋に流れ込んでいた事実を確認しました。
事故発生当時政権の座にあり現在は野党の立場の民主党は、汚染のひどい原子炉建屋・タービン建屋付近の地下に防護壁を築き、汚染水の漏出を防ぐ計画が持ち上がったものの、東京電力が財政問題を理由にこのプランを拒否し、結局は延期されたことを先週認めました。

海洋中への汚染水の漏出をブロックするための鋼鉄製の防護壁の建築だけは工事が始まり、来年完成することになっています。

FR24 破壊された福島第一原発
福島の危機が続いていた間、首相の特別補佐官を務めた民主党の馬淵澄夫議員は、先週18日に開催された党の会議の席上、2011年6月に東京電力が地下に防護壁を建設すると政府に約束したものの、当時財政難に陥っていた東京電力がさらに巨額の負担を強いられることになれば、『一般市民に混乱が生じる』として、公表しないよう求められたと語りました。

AP通信が24日に入手した2011年6月13日付けの東電内部のメモは、以下の必要性を認めていました。
汚染物質が地下水脈に入り込み、最終的に海に流れ出ないようにするためには、粘土と土を混ぜ合わせたスラリー(液体と不溶性の固形物質を混ぜ合わせたもので、コンクリートを作る水とセメント、紙を作る水とパルプなどがある。- 引用 : SPACE ALK)製の防護壁を原子炉建屋とタービン建屋周囲の地下に建設しなければならない。

この計画は2011年4月に原子炉2号機から大量の汚染水が漏れ出したことを受け、「これ以上海洋を汚染しないようにするため」政府に提出されたとメモに印してありました。
そして政府の認可が降り次第、建設を始めることが約束されていたのです。

メモはこの対策を実施するためには約1000億円の資金が必要であることを強調、果たして日本政府の原子力関連の予算からこの資金が供与されるかどうか、大きな懸念があると述べています。
結局東京電力は、2012年7月に国営化されることになりました。

漏水防止護岸工事
今月の初めに明らかにされた声明では、東京電力は地中に防護壁を築かなかった理由として、設計が複雑であったことに加え、原子炉建屋付近の汚染がひどく、作業が困難であったことを理由に挙げていました。

福島第一原発の事故収束・廃炉作業の内容については、東京電力と日本政府に対する内外の批判が止むことはありませんでしたが、地下水脈への汚染物質の流れ込みと溶け落ちた核燃料を冷却する際に作りだされた汚染水を貯蔵しているタンクからの漏水トラブルにより、批判は高まる一方です。

日本政府は、汚染水を海洋に放出できるようにするための最新の汚染水浄化装置を稼働させるための資金、そして福島第一原発の敷地外の地下水がこれ以上汚染されないようにするため、原子炉建屋とタービン建屋周辺の地下を凍結させる凍土対策に、国の予算を投入することになっています。

http://www.washingtonpost.com/world/asia_pacific/ex-us-nuke-safety-chief-says-fukushima-water-leak-deteriorated-while-japan-waited-too-long/2013/09/24/70938424-24db-11e3-9372-92606241ae9c_story.html
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この問題についてはとにかく、ニューヨークタイムズが掲載した記事、【 度重なる失態、発生が続くトラブル、深まる一方の福島第一原発の実態に対する懸念 】( http://kobajun.biz/?p=13729 )にあった以下の指摘につきると思います。

「日本の原子力産業界、すなわち原子力ムラは、排他的であり、しかも利益をグループ内で独占しようという傾向が強いことで知られていましたが、福島第一原発の事故を起こしたことで一般社会や外部からの批判が一気に高まる可能性がありました。
そこで中央官庁の官僚たちはこれまでもそうしてきたように、この批判をかわし、原子力ムラを守ろうと動いたのです。
その結果が今日まで行われてきた事故収束・廃炉作業であり、事業規模と予算ばかりが膨らんで結果が出ない、悪い意味での『公共事業』に他ならなかったのです。」

この点に関しての真剣な反省、そして検証が無い限り、『失われた2年半』がさらに長引く可能性があるのではないでしょうか?

自民党はこれからも『原子力ムラ』の肩を持ち続けるのか、その見識がこれから問われる《後篇》

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【 ニッポン、これからのエネルギー 】
一般市民の取り組みが、日本の電力事情を変え始めた
日本のエネルギー政策に、ついに真の公共性が現実される、その日は来るのか?

エコノミスト 9月21日

安倍甘利
2011年3月の福島第一原発の事故以前から、自民党内にも原子力発電の推進に批判的立場の人々が居て、影響力を振るおうとする甘利経済産業大臣のような原子力業界の擁護者と対峙してきました。
これら原子力発電に反対の立場の人々は、再稼働の推進は2016年に行われる次の選挙の際、マイナス要因になると考えています。

また自民党と連立を組む公明党は、反原子力発電の立場を明らかにしており、その影響も無視はできません。

しかし一方では、今後の日本経済に明るい見通しが広がる中、ある程度原子力発電に依存することもやむを得ないという考えが広がる可能性もあります。

それでも政府のエネルギー諮問委員会の委員を務める再生可能エネルギーの専門家である植田和弘氏は、12~15基以上の原子炉が再稼働される見通しは無いだろうと語りました。
こうした見通しは日本の原子力ムラにとっては大きな失望以外の何ものでもありません。
3.11以前、彼らは日本の発電量の半分を原子力発電によって賄おうとしていたのですから。

しかし今日本はもっと長期的展望に立って、エネルギー問題に取り組もうとしています。

AOL Feb25-2
2011年以降新設された補助金制度などを活用し、太陽光発電のような再生可能エネルギーによって発電を行う独立系(大手電力会社以外)の電気事業者の数は3倍に膨らみました。
水力発電を含む再生可能エネルギーは今や全電力の10%を供給するところまで成長し、かつて原子力発電が目指した『全電力の半分を供給』の実現も現実味を帯びてきました。

それでも、懐疑論を否定しきることはできません。
各電力会社は日本全国の送電網をその手に握ったままです。
ということは、送電を一方的に拒否することもできるという事です。

そして人口密度の高い、山だらけの国土のどこに太陽光パネルや風力タービンを設置するのかという問題もあります。

東京大学のポール・スカリス誌によれば、風力発電は1平方メートルにつき2ワットの発電が可能です。
太陽光発電は同じ1平方メートルにつき20ワットの発電が可能です。
これに対し、原子力発電は1平方メートルにつき1,000Wの発電が可能です。

4号機建屋
こうした原子力発電の不在を埋めるため、日本は石油、天然ガス、石炭を使った火力発電を、久しぶりにフル稼働させています。
今年5月、日本はアメリカから価格の安いシェールガスを輸入する許可を合衆国政府から得ました。
これにより日本は、エネルギー輸入の費用を大幅削減する道が開け、エネルギー安全保障に関する懸念を軽減することができました。

福島の巨大事故発生の後、ほとんどの原子力発電所が停止したにもかかわらず、日本国内で大規模な停電が発生しなかった理由の一つに、2011年直前、余力を持った火力発電所が数多く存在していたことが挙げられます。

もう一つの大きな理由は、日本全国で行われた省エネルギーの取り組みでした。

日本再生可能エネルギー基金によれば、2011年以降東京だけで1割の電力消費削減を達成しました。
省エネルギー装置の需要は、飛躍的に拡大しています。
電球の売り上げに占める発光ダイオード(LED)の売上高は、2009年の3%から、今では30%以上まで急拡大しています。
フィリップス電機の日本法人の責任者であるダニー・リスベルク氏によれば、2015年には白熱球も蛍光灯も過去の遺物になりかねない勢いです。

そしてこれまでも何度も俎上に上っていながら、延び延びにされてきた提案、電力の自由化、それに伴う発電手段の多角化も発電コストや電力料金の引き下げに貢献することになるでしょう。

東京電力・広瀬
福島での大失態が明るみに出てしまい、今や批判の矢面に立たされている国内最大の電力会社東京電力が苦境に立つ今、日本政府が発電と売電の事業を分割化し、地域ごとの電力市場を開放して価格競争を行う政策を実現するための、またとない好機が訪れています。

富士通総研の高橋洋氏は、もしこの改革が成功すれば、エネルギー・ミックスにおける原子力発電の割合は低下せざるを得ないと同時に、再生可能エネルギーなどの非原子力発電業者の顧客が着実に増加することになるだろうと予想しています。

そうなれば日本のエネルギー政策に、ついに真の公共性が現実される、ということになるでしょう。

〈 完 〉

http://www.economist.com/news/asia/21586570-shadow-fukushima-worlds-worst-nuclear-disaster-after-chernobyl-hangs-over-japans-energy
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日本経済の真の自由化、真の構造改革を言うなら、まずは電力の自由化を実現してください。
そう願う声が日に日に高まっているのではないでしょうか?

持続的成長を可能にする、透明で公正な競争、それを電力の分野においてぜひ実現させていただきたいものです。

今話題になっている柏崎刈羽の再稼働についても、日本のためでもなんでもなく、「東京電力の経営のため」。
そんな理由で「世界最大規模 = 世界で最も危険な」原子力発電所を、福島第一原発の事故で原子力発電所を運営する資格など無い事を露呈した電力会社の手に、ゆだねてしまっても良いのでしょうか?

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【 寄る辺なき衆生 】

ニューヨーカー 9月13日
(掲載されている写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

NYK 1
マット・ブラックの写真集「The People of Clouds」は、特殊な言語であるミステク語を話す、メキシコ先住民族の移民労働者を題材にしています。
マットが初めて彼らを目にしたのは、故郷、カリフォルニア州セントラル・ヴァレーの彼の家の近くでした。
その時彼は19歳、1990年代でした。
「写真を撮影していたとき、彼らの中で変化が起きている事に気がついたのです。」

「彼らはメキシコの深南部の僻村からやってきました。」
文化的にも言語的にも孤立していた彼らは、アメリカにやって来て繰り返し虐待されるという運命に落ち込みました。

「最も低い賃金で働き、最も高い小作料を支払い、常に強制退去させられるかもしれないという脅威の下で生きなければなりませんでした。」

働かされる子供たち、彼らを虐待する農場主、日雇い労働、家族全員が暮らすのは鶏小屋より劣悪な環境の住居…
マットは彼らの現実を目の当たりにし、混乱しました。
故郷を捨て、アメリカ合衆国までやって来て、なぜこんな暮らしをしているのか?

「息をのむほどの美しさに溢れた故郷を捨て、家族や親せきと別れ、たどり着いたアメリカでまるで奴隷のように働かされる。
彼ら家族の生活は一変してしまうのです。」

マットはメキシコのサン・ミゲル・クエバスにある彼らの故郷である村々、僻村を訪問し、多くの住民が去って行った様子を撮影しました。
そこではすでに住民の約80%が退去してしまっていました。

人通りがない街、人気のないトウモロコシ畑、そこはすでにゴーストタウンにすぎませんでした。
マットはその場所でひとりの初老の男性に会いました。
「自分はいつ死ぬのか、それしか頭にないよ。」
彼はそう語りました。

ミステク語を話す、メキシコ先住民族のアメリカ合衆国への不法入国は増え続け、アメリカ議会が移民法の再検討を続ける中、マットはミステク語を話す、メキシコ先住民族が国境を挟んでどのような状況にあるのか、その事にこだわり続けています。

「アメリカ人が最近口にした農作物、それはミステク語を話すメキシコ先住民族が収穫した可能性が高くなっている、そう思います。」
マットが続けました。
「彼らは正規の住民登録などされてはおらず、最低賃金をはるかに下回る報酬で働いているはずです。彼らの故郷は今や消滅の危機にさらされ、次の、あるいはその次の世代には固有の言語も、固有の文化も失われてしまわれることでしょう。」

トウモロコシ畑から歩いて帰宅する初老の男性。サンミゲル・クエバス、メキシコ。(写真上)

収穫したトウモロコシを運び上げる少女、サンミゲル・クエバス、メキシコ。(写真下・以下同じ)
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荒れ果てたトウモロコシ畑。サンチァゴ・ミトラトンゴ、メキシコ。
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祖母と一緒にトウモロコシを収穫する少女。サンミゲル・クエバス、メキシコ。
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サンミゲル・クエバスの通り。
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自宅で料理をする女性。サンミゲル・クエバス、メキシコ。
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道端で休憩する家族、サンチァゴ・ミトラトンゴ、メキシコ。
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焼いた後の畑を歩く老人。エル・シルエロ、メキシコ。
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自民党はこれからも『原子力ムラ』の肩を持ち続けるのか、その見識がこれから問われる《前篇》

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福島第一原発の事故後も、圧力をかけることを止めない『原子力ムラ』
多くの日本人は、安全で平和なより良い将来のため、原子力発電を廃止したいと考えている

 

エコノミスト 2013年9月21日

 


今週、日本国内でただ1か所稼働していた原子力発電所が停止しました。
本州の日本海側にある大飯原発3号機、4号機が定期保守点検と安全検査のため停止しました。

この大飯原発の3号機、4号機に加え、福島第一原発で3基の原子炉がメルトダウンを起こしたことが原因となり、以降停止が続いている国内の50基の原子炉の再稼働がいつ行われるか、確実なことは何も決まっていません。
2011年3月、巨大地震と巨大津波が東日本各地に壊滅的被害を与える以前、日本は国内の電力の30%を原子力発電で賄う、世界有数の原子力発電大国でした。

そして今、1970代以降、2度目となる全原子力発電所の停止という事態を迎えました。

昨年12月に政権の座に返り咲いた自由民主党は、全ての原子力発電所の一時停止による、経費の増大を警告しています。

経済産業省は原発を停止している分、代替の火力発電に必要な原油、天然ガス、石炭の燃料の輸入代金として2013年末までに、日本は9兆2000億円(約930億ドル)の追加出費が必要になるとの試算を明らかにしました。
これに急激な円安と石油価格の上昇が日本経済にとっては逆風となり、この30年間で初めて貿易収支が赤字に転落しました。

 


日本国内の企業、そして消費者は世界有数の高額な電気料金を請求される事態となっています。

こうした状況を背景に、電力事業分野の運命共同体である日本の電力会社、政府官僚、一部の研究者、そして重工業各社、いわゆる日本の『電力ムラ』は、自民党に対し原子力発電所を再稼働させるよう圧力を強めています。

安倍晋三首相は、可能ならその願いをすぐにでも容れたいという立場です。

今年の始め、安倍政権は日本のエネルギー政策から、原子力発電の削減という方針を削除しました。

福島第一原発の事故をきっかけに大きな盛り上がりを見せた首相官邸前の抗議行動は、参加者が減少し、原子炉の再稼働に向け道は開かれているように見えました。

しかし実際の状況は、そんな単純なものであるはずがありません、

まずは福島第一原発の事故を受け、権限が強化された原子力規制委員会の存在があります。
原子力発電所の再稼働させるためには、原子力発電が活断層その他の要件を検証した脱上で、安全と判断する必要があります。
世界の巨大地震の5分の1が集中する日本の地震を引き起こす、その主な原因となっているのが活断層です。

010110
さらには原子力発電所が立地する周辺の市町村の了解を取り付ける必要がありますが、多くの日本人が安全で平和な、つまりはより良い将来のため、原子力発電を廃止したいと考えています。

そこへ持ってきて、今回の福島第一原発の一連のトラブルの発生が、原子力発電にとっての状況を一層不利なものにしました。
最近になって毎日数百トンもの放射能汚染水が太平洋に流れ込んでいた事実が発覚し、いち早い再稼働などという目論見は消し飛んでしまいました。

こうした状況を考えれば、安倍首相ならずとも慎重にならなければなりません。
もし原子力規制委員会が日本で最も古く、危険な原子力発電所の再稼働は認められないと決定すれば、自民党といえどそれを覆すことは許されません。

人員不足に悩む原子力規制委員会は、再稼働を早めたいとの意図から、新たな安全基準の策定を急ぐよう政治的な圧力を受けました。
しかし、活断層の上の原子炉については監視を怠らないようにしています。

そして安倍首相も、原子力発電に反対する国民感情をなだめるには至っていません。
首相にとって原子力発電所が立地する、各地の市町村は問題ではありません。
これまで政府と電力会社は、僻地にある経済的にも恵まれない地区で気前よくカネをばらまき、あらゆる問題を金で解決し、原子力発電所を建設してきました。
これら原子力発電所が立地する市町村の中からは、再稼働を求める声も上がっています。

CBS 再稼働反対
しかし、少し原子力発電所から離れてしまえば、事情は異なり、反対意見が積み上がる一方です。

本州北西部にある新潟県には世界最大規模の柏崎刈羽原子力発電所がありますが、同県の泉田裕彦知事は県民の70%が同原発の再稼働に反対していると語ります。
泉田知事はもし原子力規制委員会が再稼働の許可を与えた場合、新潟県知事にはそれを止める権限は無いと語っています。

それでも圧倒的人気を誇る地元の政治家たちは、日本政府や電力会社と対等に渡り合おうと必死の構えでいます。
〈 後篇に続く 〉

http://www.economist.com/news/asia/21586570-shadow-fukushima-worlds-worst-nuclear-disaster-after-chernobyl-hangs-over-japans-energy
+ – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – +

原子力発電の新しい安全基準、国内の報道だと「原子力発電所の安全を一日も早く実現するために」という論調でしたが、欧米のメディアは「一日も早い再稼働のため」だとしています。
こうした『見解の相違』も興味深いところです。

平明に見れば、日本の産業界が原子力発電に巨額の投資を行なったことは、『欲に目がくらみ、合理的に未来を見通すことが出来なかった』ということになるでしょう。
それを一日も早く認めることが、これ以上傷口を広げないことにつながる、合理的な判断をお願いしたいところです。

【 本当の困難はこれから始まる – 福島の事故収束・廃炉作業 】

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汚染水問題は立ちはだかる困難な作業の、ごく一部に過ぎない
スリーマイルより「遥かに悪く、複雑な」福島第一原発の事故現場
これから始まる本格的な事故収束・廃炉作業、その方がはるかに困難で危険

山口まり / AP通信 / アメリカNBCニュース 9月13日

NRC Barett
元アメリカ原子力規制委員会のメンバーで、スリーマイル島事故の際は収束作業を率いた経験を持つ専門家は、福島第一原発の事故収束・廃炉作業はスリーマイル島事故の際の作業を上回る困難さが伴い、現在大きく取り上げられている汚染水の問題は、その一部分を構成しているに過ぎないと語りました。

元米国原子力規制委員会のメンバー、レイク・バレット氏は今月、福島第一原発を運営する東京電力によって、これから数十年の月日を要する事故収束・廃炉作業の外部アドバイザーを委嘱されました。
バレット氏は原子力規制委員会の一員として、10年間スリーマイル島事故収束作業を率いた経験を持っています。

バレット氏は、3基の原子炉のメルトダウン、大規模な放射能漏れ、そして莫大な量の高濃度汚染水が貯まっているという事実が、これから行われる東北太平洋岸にある福島第一原子力発電所の事故収束・廃炉作業を、非常に複雑で困難なものにしていると語りました。
「スリーマイル島と比較した場合、福島第一原発の事故現場の方が状況はより一層悪く、複雑な様相を呈しています。」
東京における記者会見で、バレット氏はこのように語りました。

NRC Barett 2
金曜日遅くにAP通信が行った独占インタビューでバレット氏は、今問題になっている福島第一原発の汚染水漏れは、これから取り組まなければならない著しく困難な作業と比較すれば、「人間の健康に与える脅威は小さく、懸念するには及ばない。」と語りました。

そして現在起きている汚染水問題は『過剰なほど大きく』取り上げられ、その事によってかえって事故収束・廃炉作業の全体の進行を遅らせてしまう結果につながっていると語りました。

1979年、原子炉の炉心がメルトダウンを起こしたペンシルベニア州スリーマイル島の事故では、対処しなければならなかった原子炉は1基だけでした。
そして放出された放射性物質は一棟の建物に閉じ込められ、処理すべき汚染水の量は8,000トンでした。

しかし巨大地震と津波によって壊滅的な破壊を受けてしまった福島第一原発では、メルトダウンした3基の原子炉の事故収束・廃炉作業はなお一層複雑で困難なものとならざるを得ません。
それに加えて大量の放射性物質を環境中と海洋に放出した複数回の水素爆発による破壊によって、原子炉建屋などの建造物は著しい損傷を受けています。

日本の当局者たちは、事故直後から放射能に汚染された地下水が福島第一原発の敷地外に漏出している事実を把握していました。
それに加え貯蔵タンクからも高濃度の汚染水が漏れていることが明らかとなり、懸念は一層深まることになりました。

第一大破壊
メルトダウンした原子炉の核燃料を冷却し続けるためには莫大な量の水を必要とし、それが高濃度に汚染されてしまっているにもかかわらず、それによって一般市民が被ばくする可能性は極めて低いと、バレット氏が語りました。
これらの汚染水は法律で定められた限度以下にまで放射線量が下がるよう浄化作業が行われ、その上で太平洋に放出されることになっており、その事の周知を徹底することにより、長く続いてきた懸念を軽減することが出来るだろうとバレット氏は語ります。

しかし東京電力は大規模な漏出事故が先月発生したタンクの近くで採取した地下水のサンプルから、高濃度の放射性トリチウムが検出されたことを12日木曜日に認めました。

大量の汚染水は、破壊された3基の原子炉の溶け落ちた核燃料を冷却するため、絶えず水を注ぎ続けなければならない、そしてタービン建屋の地下部分に大量の地下水が流れ込む、その両方の原因によって作りだされ、太平洋への漏出が懸念されているのです。

漏水防止護岸工事
最も高濃度の汚染水はタービン建屋の地下部分に溜まっていますが、その『管理は適切に行われている』とバレット氏が語りました。
原子力規制委員会はこの汚染水の量はやく最大90,000トンと見積もっており、12日木曜日東京電力に対し、漏出の危険性を最小限にするための対策を早急に実施するよう求めました。

9月7日、2020年の夏の大会の東京への招致が決定した国際オリンピック委員会の席上、投票に先立ち安倍晋三首相は、福島第一原発の汚染水漏れの問題はコントロール下にあると、きっぱりと断言しました。

この汚染水問題に対処するため、日本政府が直接対応すると公約し、高額な費用を要する福島第一原発の原子炉付近の地下を凍結させる凍土対策に、政府の資金を拠出すると公約しました。
この凍土対策は原子炉建屋とタービン建屋の基礎部分に地下水が流れ込んで汚染されてしまうのを防ぐため、冷却剤を流し込むための配管を縦横にめぐらし、建屋周辺を凍結させてしまおうというものです。
さらに最新の浄化装置を稼働させ、太平洋に放出しても環境に影響を及ぼさないレベルにまで、汚染水から放射性物質を取り除いてしまう対策を同時に行います。

東電委員会
同じく東京電力の外部アドバイザーに就任した、アメリカ原子力規制委員会の元委員長のデール・クライン氏は、この汚染水処理の問題について、絶えず冷却を続けなければならない溶け落ちた核燃料を取り除かない限り、この問題の根本的な解決は無いと語りました。
「少なくとも10年間は続くことになります。」
13日、クライン氏がこう語りました。
「汚染水、それは東京電力がこれから長期にわたり取り組まなければならない問題なのです。」

http://www.nbcnews.com/id/52998830/ns/us_news-environment/t/ex-us-regulator-fukushima-cleanup-complicated/#.UjqYeX809Vt

【 フランス、24基の原子炉を廃炉に!】[GRD]

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アメリカでは、新たな原子力発電所建設の準備を始めることも許されない
豊富な資金を使って、政治家を自在にあやつる原子力産業
エネルギー政策の中心に原子力発電を据えれば、その国のエネルギー・コストはきわめて高いものにつく

 

ナタリー・ベネット / ザ・ガーディアン(英国) 9月16日

ヒンクリーポイント
現代のように経済問題、そして環境問題に難題が山積する時代には、政治的な方針転換はあって当然というべきでしょう。
しかしほんの2年ほど前なら到底できなかったはずの方針転換を、私たちは目の当たりにすることになりました。

英国自由民主党、かつては原子力発電と核兵器に対し、明確に反対の立場をとっていたはずの同党は、国会の投票で原子力発電所の「限定的な」利用を受け入れるとの提案に、賛成票を投じたのです。

かつては原子力発電技術において世界一の技術力を誇っていた日本が、唯一稼働していた大飯原子力発電所を定期点検のため停止させる、今回の決定はそれと時を同じくして行われました。

ここで先進国社会において、原子力発電がどのような状況に置かれているか、ここでもう一度点検してみましょう。

ドイツは、2022年までにすべての原子力発電所を段階的に廃止すると公約しました。

アメリカでは新たに原子力発電所を建設するための準備を「大々的に始める事」すら、もう許されません。

仏・フェッセンアイム
原子力発電に対してあれ程積極的で、その事が近隣諸国の懸念の的となっていたフランスでさえ、限定的ではありますが、原子力発電所の段階的廃止の計画を明らかにしました。

2025年までに24基の原子炉の停止を決めたのです。

なのになぜ英国だけは先進国社会の中で他とは異なる、原子力発電に対し積極的な動きをしているのでしょうか?

それは全くの戯言だった、私たちがそう断言できる英国政府のひとつの公約があります。
現政権は「これまでの政権の中で、最も熱心に緑の政策を推進する」と公約しました。
しかし現実は、最も熱心な政権支持者でさえ首をかしげざるを得ないものでした。
『2030年までの二酸化炭素削減法案』をエネルギー関連議案に含めることを拒否、断熱性が低く、暖房経費が高額に上る英国内の家屋の改善のためにたった1ペニーの出費も行いませんでした。
結局現政権は緑の政策に関わる人々からはどのような支持も得ることなく、代わりに従来の産業界からの支持を固めただけでした。
現在の英国政府は、緑の政策に対し、最も後ろ向きな態度を露呈したのです。

なぜそうなってしまったのでしょうか?
英国には一定の方向性を持たない、混乱したエネルギー政策しかないからでしょうか?
それぞれの発電方法について検証を行い、証拠を積み上げていくという作業をしていないからでしょうか?
多分、そうしたことも理由の一つに上げられると思います。

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それとも、原子力発電産業界が未だに多額の現金を手に、政界に対し強力な現金攻勢をかけているからでしょうか?
こうした行為は省エネ技術の開発を地道に進めている企業や、再生可能エネルギー産業界などには到底無理な行為ですが…

どうやらこの辺りに答えがあるのではないでしょうか。

その時々の政府の方針は、資金力の豊富な政治団体の働きかけにより、少なからず左右される、これは秘密でも何でもありません。
その事実はタバコの包装に健康被害についてどう表記するかの問題から、アルコールの最低価格、銀行預金の規制まで、ありとあらゆる分野に及んでいます。

こうした事情から、豊富な政治資金を抱える原子力産業界が原子力発電の『安全性』、そして『放射性廃棄物』に関する議論を封じ込めることは、いとも簡単であり、当たり前の行動だったのです。

イギリスは物理的に国土が狭く、その点日本と似ています。

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その日本において、福島の危機が制御下に置かれているなどとはとても言えない状況であり、発電所周辺ではこれから数十年の間居住不可能な地域が作り出されてしまいました。
もし同じような事故が英国のヒンクリーポイント、カーディフ、ブリストル、あるいはもっと人口稠密な地区に近い場所で発生してしまったら…考えるだけで身の毛がよだちます。
しかし恐れてはいられません、事前に検証する必要があります。

現在日本では、福島第一原発敷地内に汚染水を始め、様々な放射性廃棄物が大量に貯まっているにもかかわらず解決策が見いだせず、状況は事故発生当初よりはるかに悪くなっています。

英国にも放射性廃棄物について、合理的な処分方法などはありません。
にもかかわらず政府は、一度は断念したカンブリア州に高レベル放射性核廃棄物処分場の建設を再び目論んでいます。
現地の議会では地質学者の指摘により、同地が放射性核廃棄物を長期にわたり保管するにはふさわしくないとの指摘を受け、反対の機運が高まっていますが、英国政府は検証のためのプロセスを捻じ曲げることにより、建設を進めようとしています。
しかし手順の変更は可能でも、地質学上の事実まで変える訳には行きません。

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そして原子力発電所の安全性と放射性核廃棄物の問題はこれまで長い間議論され、共に合理的な最終解決手段が存在しないという結論が変わることはありませんでした。

しかしそれのみが、原子力発電を廃止すべき理由ではありません。

もっと解りやすい、明快な理由があります。

コスト、そして建設の着手から稼働までに要する時間です。

建設費用が嵩み過ぎていることが原因で、ヒンクリーポイントC原子力発電所の建設が遅れています。
原子力発電の建設コストは、再生可能エネルギーや二酸化炭素の排出量が同程度の発電手段と比較した場合、著しく高額になっています。

エネルギー政策の中心に原子力発電を据えるという事は、その国のエネルギー・コストがきわめて高いものにつく、そういうことになるのです。

そしてもうひとつ、タイミングの問題です。
ヒンクリーポイントC原子力発電所は建設に14年かかりましたが、稼働させるまでにさらに17年かかります。

地球温暖化による環境破壊を食い止めるため、私たちは二酸化酸素排出の削減のため、大規模な、そして素早い対策の実施を求められています。
実際に効果のある対策を採る必要があります。

水没した京都
しかし原子力発電所の建設には時間かかり過ぎ、完成したころには他の対策はすべて終わってしまっているでしょう。
この事実を見れば、地球温暖化対策としての原子力発電の実施、そんなものは理論的に破たんしていることがはっきりします。

ここまでのご説明で、英国政府がなぜ原子力発電を捨てようとしないのか、お分かりいただけたと思います。
しかし解せないのは、なぜここに来て英国自由民主党がこれまでの方針を転換してしまったか、という点です。

ともあれ事実は事実、原子力発電廃止に向け活動してきた人々、その活動を支持している皆さん、そして有権者の方々は、この党は方針転換してしまったのだという事実をしっかりと心に刻みつける必要があります。

http://www.theguardian.com/commentisfree/2013/sep/16/lib-dems-nuclear-power
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19日木曜日夕刻、安倍首相が福島第一原発の原子炉5号機、6号機の廃炉を東京電力に要請したことが大きく取り上げられました。
福島第一原発の事故発生から2年半以上が経過していました。

ドイツはこの記事にもありますが、2011年にすでに国内の全原子炉の廃炉を決めました。
アメリカもすでにサン・オノフル、ヴァーモント・ヤンキーの2か所の原子力発電所の廃止を決定しています。
そしてフランスも、すでに24基の原子炉の廃止が決まっていました。
実はこの事実、この記事を読むまで知りませんでした、お恥ずかしい話です。

しかしもっと恥ずかしいのは、日本では活断層の上の原子炉ですら、まだ廃炉が決定していないという事実ではないでしょうか?

【 福島第一原子力発電所は、制御下に置かれてはいない 】[AFP]

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「安全を保障する」という趣旨の演説と、どう見ても矛盾している福島第一原発の現実

AFP通信 / フランス24 9月13日

2013年9月12日

2013年9月12日


福島第一原発について東京電力の役員が「今の状態はコントロールできていないと考えている」と発言した後、日本政府と東京電力本社は国民に対し福島第一原発の状態は安定していると改めて強調し、首相の発言と現地の認識の食い違いを否定するため対応に追われることになりました。

山下和彦フェローによる発言はどう見ても、安倍首相がオリンピック招致委員会の実質的な代表として1週間前に行った、「安全を保障する」という趣旨の演説と矛盾しているようです。

野党である民主党が福島第一原発の汚染水問題への対応を検討するため、福島県郡山市で開催した会合の席上、民主党の議員に、「安倍首相はブエノスアイレスで開催された国際オリンピック委員会の総会で、『状況はコントロールされており、まったく問題はない』と述べたが、発言のとおり、状況はコントロールできていると思うか」と尋ねられると、山下氏は「今の状態はコントロールできていないと考えている」と回答しました。
このやり取りを国営メディアであるNHKを始め、日本の主要メディアが一斉に報じました( http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130913/k10014516761000.html )。

この報道に驚いた東京電力本社と日本政府は急きょ対応に追われ、山下氏の発言は汚染水問題に限ってのものであり、福島第一原子力発電所全体の状態について述べたものではないとの声明を発しました。

これとは別に安倍首相の右腕とも目される菅官房長官は記者会見で、山下氏が民主党議員に繰り返し厳しく問い詰められた結果、この発言に及んだものだとコメントしました。
菅官房長官はさらに、東京電力の企業としての公式見解は、安倍首相の発言と何ら矛盾しないと付け加えました。

2011年6月18日

2011年6月18日


2011年3月11日に襲った巨大地震と巨大津波がきっかけとなり、福島第一原発の3基の原子炉がメルトダウンを引き起こして以来、東京電力は溶け落ちた核燃料が再び過熱しないよう、毎日何百トンの水を使って冷却作業を行ってきましたが、その結果、放射能に汚染された水が何十万トンも福島第一原発の敷地内に溜まってしまいました。
東京電力は溶け落ちた核燃料は現在安定しているが、過熱により再びコントロールではない状態に陥らないよう、冷却作業は継続しなければならないと語っています。

汚染水は現在、急造されたタンク内に保管されていますが、これからこの問題にどう対処するのか、具体的な計画を明らかにしてきませんでした。

この急造されたタンクの中のいくつかから高濃度の汚染水が漏れ、地中に浸み込んで地下水を汚染していると考えられています。
汚染された地下水は海洋中に流れ出している模様です。

2020年のオリンピックの開催地を決めるため、東京がイスタンブール、マドリッドと招致合戦を展開し、福島第一原発の汚染水問題に世界中の厳しい視線が注がれる結果となりました。

http://www.france24.com/en/20130913-fukushima-not-under-control-warns-tepco-official
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あの発言はどう考えても納得がいかない、それが世界共通の認識のようです。
それでなくとも世界のメディアは、福島の避難民の人々の窮状、そして福島第一原発の事故現場で働く人々の報われない待遇について、憤りといらだちを募らせていました。

その根拠は「人間としてどうなのか?!」という点につきます。
ところが当の日本の原子力行政の視野のなかには、政府の体面であったり、東京電力の企業としての存続であったり、果ては日本の原子力ムラの存続、そんなものばかりがあったようです( http://kobajun.biz/?p=13745 )。

そして首相までが東京さえ安全ならいいじゃないか、とも受け取れる発言をしました。
日本の政治とは、そういうものなのでしょうか?

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【 数十年を経て葬られる、『汚れた戦争』の犠牲者たち 】

アメリカNBCニュース 9月3日
(写真をクリックすれば、大きな画像をご覧いただけます)

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アレハンドラ・トーレスはあの事件以来初めて、生まれ故郷の村に戻ってきました。
両親が反乱勢力『輝く道』の兵士たちに喉をかき切られて殺された時、4歳だった彼女は、近所の女性のスカートの中に隠れて怯えていました。

事件から30年後、彼女は1980年に始まり、2000年代になって終息した『汚れた戦争』の犠牲となった自らの両唇含む21人の人々を埋葬するため、親類たちと一緒に作業に加わりました。

政府軍部隊、そして毛沢東を信奉する反乱軍の双方が、重大な人権侵害を犯しました。
『真相究明と和解』委員会の最少報告書には、この時の犠牲者が70,000人近くに上ったと見積もっています。
犠牲者のほとんどが貧しい、ケチュア語を話す先住民族でした。
未だに15,000人分の遺体が不明のままです。
ペルーではこの『汚れた戦争』の後遺症が長く続き、このうちの3,000人分の遺体だけが確認され、埋葬しなおされました。

ユーカリの木で作られた白い棺に遺体が収納されると、集まって来た村人は静かに泣きました。
アレハンドラが歩きながらこう語りました。
「センデロ・ルミノソの兵士たちが、丘を駆け下りながら、ケチュア語でこう叫んでいました。
『裏切り者の犬どもめ、死ね!』

チャカ村の人々は、自警団を作った報復のために殺されました。
自警団が武器として用意したのは、石を飛ばすパチンコ、そしてナイフをひもで結びつけた棒切れだけでした。

2013年6月13日、アヤクーチョ(ペルー)の法医学研究所で彼らの父の残骸が収められた棺を調べるアクイリナ・カルデナスルーシアーナの姉妹。
彼らの父は、拷問され、村で自衛団を作った報復に1988年1月8日に殺されたうちのひとりです。(写真上)

6月14日、短い共同葬儀の後、それぞれに家族や親せきの棺を担いで戻る人々。(写真下・以下同じ)
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6月15日、かつて自宅があった場所で涙を流す70歳の女性。彼女の夫も30年前、拷問の後殺害された。
peru03
6月15日、娘に付き添われ、かつての自宅跡を訪れた上記の女性。
peru05
6月16日、共同葬儀が行われた墓地で、殺された父親の棺にすがって泣く男性。
peru04
8月22日、夫の遺体が埋められていた穴の前で、未だに行方不明の息子の写真を胸の前に掲げる62歳の女性。
peru06
8月22日、遺体を埋葬しなおすために新たに掘られた穴。
当時ペルーの政府軍も多数の市民を殺害しましたが、その罪で起訴された将兵はほとんどいません。
そして殺害された市民の身元調査を行う政府機関も存在しません。
peru07
※この事件に関心を持たれた方には、
http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/files/img/publish/alpub/jcas_ren/REN_07/REN_07_005.pdf
にある詳しい資料をご覧ください。

【 福島の避難生活が原因の死者、東日本大震災の直接の犠牲者数を上回る – 調査報告 】

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生活環境に起因する『過労』、長引く避難生活による『消耗』、かかりつけの病院の閉鎖による発病、苛烈な体験を強いられたことによる自殺…
仮設住宅の中は、夏はうだるように暑く、冬の間は凍えるように寒い

アレクサンダー・スミス / アメリカNBCニュース 9月10日

線量検査01
福島第一原発の事故により避難生活を余儀なくされた人々の中の死者数が、同じ地区内の2011年3月に発生した東日本大震災の地震と津波による直接の死者の数を上回ったとする調査結果が公表されました。

国際赤十字社によると福島第一原子力発電所の3基の原子炉がメルトダウンを起こした後、約300,000人が避難民となりました。

日本の代表紙のひとつである毎日新聞は、9日月曜日、この避難生活に関連して約1,600人が死亡、この数は同じエリア内の東日本大震災の地震と津波により死亡した、直接の犠牲者の数を上回っていると伝えました。

2011年の東日本大震災では日本国内で約16,000人が犠牲になりましたが、毎日新聞によると、このうち1,599人が福島県の犠牲者です。

これに対し避難生活を強いられた人々の死亡、『震災関連死』の原因は避難所・仮設住宅の生活環境に起因する『過労』、そして長引く避難生活による『消耗』、さらにはかかりつけの病院の閉鎖による発病などが上位を占めました。
調査によれば、苛烈な体験を強いられたことによる自殺も死亡原因に複数含まれています。

赤十字と赤新月社国際連盟(IFRC)の東アジア地区の広報官フランシス・マーカスによれば、いったいいつになったら戻れるのか、その見通しが未だに立たないことが避難生活を強いられている人々の状況を一層悪いものにしています。

CBS03
「私たちが目の当たりにしているのは、避難民の人々が直面させられている、いくつかの非常に困難な、苦痛に満ちた社会的影響、そして心理的影響です。」
マーカス氏がこう語りました。

「特に年齢の高い世代の人々が苦しんでいます。これらの人々に及ぶ悪影響を最小限のものにするためには、あらゆる側面からのサポートが必要です。人々の苦痛は極めて深刻な状態にあるのです。」

マーカス氏は、この地域でIFRC救援活動の一環として、多くの避難者のもとを訪ねました。
「実際にこれらの人々と会うと、彼らが身ぎれいにした几帳面な人々であることを実感できます。」

大きな駐車場のそばに仮設住宅がずらりと並んでいる中で、彼らは暮らしています。仮設住宅は清潔ですが、居住空間は狭く、避難民の人々は与えられた環境の中で、何とか人間らしい暮らしをしようとがんばっています。

仮設住宅01
しかし仮設住宅の中は、夏はうだるように暑く、冬の間は凍えるように寒いのです。
「汚染の被害が最もひどい場所から避難してきた人々は、いったいいつになったら自分の家に戻ることが出来るのか、その事を心に病んでいます。生きている間に再び故郷に戻ることが出来るのかどうか、それすら全く分からないのです。」

毎日新聞は今回の調査は福島県内の25の市町村を対象にし、災害関連死者の中には避難生活が原因で死亡し、弔慰金の支給対象となった109人が含まれていると報じています。
日本の復興庁は今年3月、福島県内の災害関連死者の数を1,393名と発表していました。

10日ロイター通信が福島第一原発の事故を引き起こした東京電力が、今年8月、高濃度の汚染水が急造した貯蔵タンクから300トン漏れ出したことを認めた後、さらに詳細な調査を受けることになったと報じました。

汚染水06
安倍首相が率いる日本政府は5,000億円の国費を投じ、地中の凍土策を含め福島第一原発の汚染水対策を前進させると公約しました。

安倍首相は2020年の東京へのオリンピック招致を成功させたブエノスアイレスの会場で、福島第一原発で起きているすべての問題は
「完全に制御下に置かれている。」
と演説したのです。

http://worldnews.nbcnews.com/_news/2013/09/10/20420833-fukushima-evacuation-has-killed-more-than-earthquake-and-tsunami-survey-says?lite
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この記事の翻訳につきまして、引用されている9月9日付の毎日新聞の紙面を実際に確認しようとしたところ、折悪しく古紙として処分してしまっており確認ができませんでした。
翻訳内容に食い違いがあればお詫び申し上げます。

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仙台という3.11の被災地の中心にいて考えるのは、同じ被災者でありながら福島の人々だけがなぜこうも苦しみ続けなければならないか、という事です。
未来の見えない仮設住宅での暮らし、想像しただけで暗然となります。

理由はもちろん、福島第一原発の存在でした。
福島の方々の悲劇の検証は、まだまだ足りないと考えています。

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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