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民意を無視し、事実を捻じ曲げ、虚構を語る首相の改憲

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選挙後にまた態度をひるがえし。改憲を強調し始めた安部首相
安倍首相の野心を阻止することはリベラル派の人々の共通の政治目標

              

山口まり / AP通信 / ワシントンポスト 2019年7月22日

              

安倍首相は7月22日月曜、前日に投票が行われた参議院議員選挙の結果について与党が過半数を制して勝利した結果は有権者が彼の方針に信任を与えたことを証明するものだと述べ、日本の平和主義憲法を改定するための国民的議論を開始すべきだとの持論を展開しました。

              

しかし現実には自民公明の与党連立政権は改選前より議席数を減らし、衆議院よりは権限が小さいとはいえ参議院における3分の2の圧倒的過半数から後退し、憲法改定の発議に必要な衆参両院における3分の2の議席の占有という状況からは後退することになりました。
その結果、安倍首相の憲法改定という長年の目標は遠のくことになりました。

                 

しかし安倍首相はあきらめていません。
彼は決意を新たにし、憲法改定に関する議論を開始するよう呼びかけ、野党の保守派からの支持を得るため改訂内容に柔軟性を持たせようとしています。

                 

「少なくとも議論を行なうべきであり、有権者もそう判断しました。」
安倍首相は記者会見でこう語りました。
「与党と野党の垣根を越えて3分の2の支持を得ることができる改訂案を作成したいと思っています。」

                

安倍首相は野党の憲法改定反対派から保守派や無所属議員を切り離し、その支持を得ることを期待しています。

            

しかし立憲民主党党首の枝野幸男氏は、日本の有権者は3分の2の議席の確保を阻むことにより安倍首相の改憲への取り組みにノーをつきつけたのだと語りました。
「安倍首相の選挙キャンペーンの中身は本当に独りよがりのものでした。憲法改定は有権者にとっては非常に優先度が低い問題です。」
枝野氏はこう続けました。
「我々が目にした結果は、有権者の3分の1以上が憲法を劣化させてしまう自民党の改憲案を許さないと言っているというものでした。それこそが民意であることは明らかです。」

            

憲法改定問題は日本の有権者を分断し、安倍首相の野心を阻止することはリベラルの立場に立つ人々の共通の政治目標になりました。

                 

               

安倍首相と右翼の支持者たちは、米国が起草した戦争放棄を宣言している日本国憲法を改定するために長い間キャンペーンを続けてきました。
彼らは日本国憲法を日本の第二次世界大戦の敗北と屈辱の遺産と見なしています。

                

2012年末に就任して以来、安倍首相は日本の戦時中の残虐行為を無かったもののように扱い、日本の防衛上の立場を拡大し軍事能力の増強をを推進してきました。
安倍首相はこれまでは憲法を書き換えるのではなく戦争の放棄をうたう第9条の解釈を変更し、自衛隊が国土の防衛だけでなく米国や他の同盟国が敵の攻撃を受けた際に日本が軍事力を行使することを可能だとしました。

           

一部の超保守強硬派の支持者に支えられた彼の憲法改定キャンペーンは、急速な高齢化と人口減少が進む中で雇用、経済、社会保障の問題が深刻化していることを懸念する多くの有権者の支持を集めることに四苦八苦しています。

                 

安倍首相は憲法改定に対する支持を拡大するための手段として、日本の自衛隊を合法的な正規軍として規定することを第9条に書き加える改定案を提案しています。

              

https://www.washingtonpost.com/Japan’s Abe pushes charter change despite election results
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小学校から中学にかけ残酷なシーンを繰り返し見せられたベトナム戦争が1975年に集結した当時、高校生だった私は単純に世界や日本の政治や社会というものは進歩していくものだと信じていました。
それが21世紀に入ってから日本やアメリカの政治がここまで劣化するとは思ってもいませんでした。

              

いうまでもなく安倍政権やトランプ政権の政治がそうさせているわけですが、これら政権はそれを支える私たち国民の質が投影されたものでもあるわけで、その点が悩ましいところです。

                      

参院選の前、ベトナム戦争と当時の田中角栄首相のエピソードが話題になりました。
「70年代、アメリカから日本に対してベトナム戦争派兵への圧力が強まった時、当時の田中角栄首相は『どんな要請があっても、日本は一兵卒たりとも戦場には派遣しない』と答えたというのです。

ベトナム戦争がアメリカ社会をどれほど荒廃させてしまったかを考えれば、田中角栄首相の判断は明らかに日本を救ったと言えるでしょう。
しかしその後田中角栄氏は、アメリカ側からもたらされた情報によって『巨悪事件』に発展したロッキード事件によった失脚してしまいました。

                  

米国にとって、同盟国は必ずしも民主主義国家である必要はないということをかつて書いたことがあります。
南米チリの選挙によって初めて誕生した社会主義政権・アジェンデ政権が軍部のクーデターで崩壊した際、『アメリカの支援を受けた反共主義を掲げる極右組織が次々に誕生し、CIAが右翼勢力に対する公然非公然の支援を行い政権打倒の動きを強めるなど次第に政情が不安定化』(ウィキペディア)していったことが念頭にありました。

                   

今アメリカが巨額の軍事費に苦しみ、イラクやアフガン派兵により社会の荒廃が進んでいることを考えると、海外での軍事オペレーションへの『同盟国日本に対する派兵圧力』が強まっていることは容易に想像できます。
しかし現在の首相は憲法第9条を盾にそれを頑として撥ねつけた田中角栄氏ではありません。
長年その第9条の廃止を主張し続けてきた人物なのです。
『CIAが右翼勢力に対する公然非公然の支援を行い、日本の平和主義打倒の動きを強め』てはいないでしょうか?

            

私たち市民が自分自身で危機感を持って、憲法第9条と日本の平和主義を守るのだという覚悟が必要です。

【 山積する緊急課題を放り出したまま勝利宣言した安倍自民党 】《後編》

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安倍首相の女性問題への取り組みは「見せかけだけの飾りもの」

多様な背景を持つ候補者を幅広く支援する新進気鋭の『れいわ新選組』に集まる期待

                                   

モトコ・リッチ / ニューヨークタイムズ 2019年7月21日

                

野党の中にはできるだけ多くの女性候補者を立候補させることにより、自分たちの個性を打ち出そうとした政党もありましたが、結果は女性が245の議席のうち56議席、ようやく4分の1を絞めることになりました。

              

昨年制定された法律の下で、日本の政党は男女平等の実現ために努力するよう奨励されています。
今回の参院選では候補者の28パーセントを女性が占め、日本の選挙として新記録を樹立しました。
立憲民主党の候補者名簿のほぼ半数が女性でした。

                 

安倍氏はことあるごとに「女性が輝く社会」という言葉を口にしますが、自民党の女性候補者は6人に1人にすぎず、安倍内閣の女性閣僚はたった1人しかいません。

                 

「家事のしすぎが日本を滅ぼす」の著作で知られる佐光紀子さんは安倍首相の女性問題への取り組みは「見せかけだけの飾りもの」だ、と語りました。
佐光さんは妻が働いていない男性への税の減額措置や、出生率が低いにもかかわらず公的支援が受けられる認可保育所の待機児童の数の多さを指摘しました。

                

佐光さんはシングルマザーと2人の身体障害者を含む、多様な背景を持つ候補者を幅広く支援している新進気鋭の『れいわ新選組』に魅了されたと述べました。
れいわ新選組は今回の選挙でALS(筋萎縮性側索硬化症)患者で車椅子に乗った候補者である船後靖彦(ふなごやすひこ)氏と、脳性麻痺で車椅子生活をしている木村英子氏が議席を獲得しました。

                    

人口の2割が70歳以上の日本では選挙期間中、すべての主要政党が国民年金制度に焦点を当てることになりました。

                   

選挙の2ヵ月前、日本政府の金融規制当局である金融庁は、国の社会保障制度はもはや年金生活者全員の生活水準を一定の条件のもとに支えることはできなくなると警告しました。
この金融庁の報告書には、日本の長寿命化を考えると平均的な夫婦が老後を問題なく暮らすために年金とは別に個人で約2,000万円貯蓄する必要があると書かれていました。

                   

安倍政権の担当閣僚はこの報告書を受け取ることを拒否し、選挙期間中安倍氏は低所得者の年金を約60,000円引き上げると公約したのです。

                

しかしそうした公約も投票日前日の土曜日安倍首相の最後の集会で「安倍やめろ!」「貧しい人々を虐めるな!」と叫んでいた抗議者たちの間ではむなしいものになりました。

                  

安倍首相は今以上に多くの女性や高齢者の就労を奨励することによって年金の財源は確保できると語り、当初の予定どおり、秋には消費税を10%に引き上げることを確約しました。

                 

主要野党は5党すべてが増税しないことを公約に掲げました。

                  

土曜日の安倍首相の集会に参加した支持者の一人は、自分は退職後政府の年金に頼るつもりはなかったと語りました。
「私は自分の面倒は自分で見ます。」
運送会社を退職した65歳の蓮見一郎氏は安倍首相が率いる自民党を支持すると語り、次のように続けました。
「安倍首相は国益を最大限に守る日本で初めての首相です。」

                

反対派にとっては、安倍氏を首相官邸に送り込んだ流れを変えることは決して簡単なことではありません。

               

ハノイ大学マノア校でアジア問題を研究するクリスティ・ガベラ準教授は次のように述べました。
「野党は往々にして反安倍、そして反体制という位置にその身を置く傾向があります。しかしその場所で新しい、人々を興奮させられるほどの政策アイディアの基盤を作り上げるのは難しいかもしません。」

                 

https://www.nytimes.com/Shinzo Abe Declares Victory in Japan Election but Without Mandate to Revise Constitution
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なるほど、と思える指摘が随所に見られる記事でした。

                        

まずは最後のハノイ大学ガベラ準教授の指摘について。
野党が『反対ばかりする』という批判から解放されるための、重大なヒントが隠されているのではないでしょうか?
安倍政権との対立軸を明確にし、今以上に幅広い国民の支持を得ていくためには、現在の日本国憲法、なかんずく第9条の下でこれだけ安心安全な国家が築けるのだという明快で理解しやすいビジョンが必要だということです。

私は日本共産党の政策や指摘が一番理論的かつ合理性が高いと思っていますが、日本人の多くは理論ではなく感情で動いてしまう傾向があります。

どころか今回の参議院選の結果を見て感じたのは、国政という一人一人にとって極めて重く切実な問題について、日本人というのはなぜこうも雑な考え方しかできないのだろうという嘆きです。

しかしそれが日本の厳しい現実である、というところでこれまでは終わっていました。

            

ところがれいわ新選組がこれまでの政党と全く違うやり方で現実を変え始めています。

参議院の議場がバリアフリーになるようですが、れいわ新選組は身障者の方お二人を比例代表で当選させ、議場に送り込むことにより参議院のバリアフリー化を実現させました。

私は目の覚めるようなやり方だと思っています。

山本太郎氏とれいわ新選組なら、『新しい、人々を興奮させられるほどの政策アイディアの基盤を作り上げる』ことができるかもしれません。

                 

彼らなら世襲議員たちが作り上げた、腐敗臭を放ちながら誰のために機能しているのかかまるでわからない権力基盤にひびを入れていくことができるかもしれません。

ベルリンの壁崩壊も、始まりは人の手に握られたノミとハンマーだったのですから。

【 山積する緊急の課題を放り出したまま勝利宣言した安倍自民党 】《前編》

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所要時間 約 9分

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選挙中は経済政策を強調、選挙後は一転して改憲を訴え始めた安倍首相
日本のメディアは今回の参議院選挙について、意図的に小さな扱いにとどめていた
棄権した多くの人間には参議院議院選挙の最中だという認識すらなかった

          

               

モトコ・リッチ / ニューヨークタイムズ 2019年7月21日

           

7月21日日曜日、安倍首相は国政選挙での勝利を宣言しました。

              

急速に高齢化する人口、アジアの近隣諸国との緊張関係、そしてホワイトハウスに陣取る予測不能の行動をする相手との貿易交渉などの山積する課題を前に、安倍氏は史上最長の就任期間を持つ首相になる道を確保しました。
安倍首相率いる自民公明の保守連立政権が参議院議席の過半数を獲得したのです。

                  

しかし今回の選挙は安倍首相にとってもう一つの意味での勝利という点で言えば、そうではない結果となりました。
安倍首相が率いる自公連立政権は、1947年当時日本を占領していたアメリカ軍の下で制定公布されて以降一度も改定されたことがない平和憲法を修正するという彼の長年の野心を実現するために必要な議席数を確保できなかったのです。

                   

「我々はこれまでも安定して過半数を獲得してきました。」
安倍氏は日曜日の夜に大勢が判明した段階でこう語りました。
「そして有権者は安定した政治の基盤を望んでいたのだと思います。」

                  

安倍首相率いる自民党と連立与党の公明党が引き続き政権を担うことになりましたが、安倍首相は図らずも12年前の衝撃的な出来事を思い出しました。
第一次安倍内閣当時、選挙で自民党が屈辱的な敗北を喫した結果、安倍氏はわずか1年足らずで首相を辞任せざるを得なくなりました。
安倍氏は2012年に政権復帰した後は安定した政治基盤を築き、現段階で延長された総裁任期を務めており、史上最長の首相になるまで、残すところちょうど4か月となりました

                 

                    

安倍首相は今回の選挙で憲法改定の具体的手続きを開始するために十分な議席を確保できなかったことの意味を、努めて軽く見せようとしています。
「私たちが3分の2以上の議席を確保することは問題ではありません。」
の過半数を獲得するかどうかではありません」
と安倍氏はこう語りました。
「問題は我々が安定した政権基盤を築けるかどうかなのです。」

                 

それでも圧倒的勝利を得られなかったことは、安倍氏の最も重要な目標の1つを遠のかせることになりました。
憲法は戦争の放棄を宣言していますが、安倍氏はことあるごとに日本が軍事力を強化することを可能にするためにこの条文を変更したいという願望を表明してきました。

                

選挙戦の期間中、安倍氏は憲法改正への執着をあまり表には出しませんでした。
その代わり国の財政安定を保証することに集中し、トランプ大統領との個人的な関係を強調する一方、いくつかの野党に対してその政権担当能力に疑問を突きつけました。

「私たちはこう言ってきました、あなたは安定した政府と混乱がどちらを望むのですか?」
安倍氏は21日こう語りました。

                

経済へのテコ入れ、低下し続ける日本人の出生率の引き上げ、会社の管理職と政治の世界に女性の思い切った登用をすることなど、安倍氏がこれまで掲げてきた公約のいずれもが実現には程遠い状況にあるにもかかわらず、安倍首相は選挙で勝利しました。

多角的に検証すれば、安倍氏の成功は国民が自民党の政策に信頼を置いているというよりは、力を持った反対勢力が欠如していることによりもたらされたものであるようです。

                

                

「野党はダメです。」
土曜の夜、たまたま自宅近くで安倍氏の演説会が開かれたため思い立ってやってきたという68歳の麦倉誠さんがこう語りました。
「何と言っても自由民主党ですよ。」

             

今回の投票率は49%弱で、参議院議員選挙としては史上2番目に低いものになりました。
南日本での大雨により投票行動が減殺された可能性もありますが、初めからあきらめてしまっている人々の存在も原因になっている可能性があります。

               

「棄権した人々は、自分たちが投票しても結果には影響しないと思っているのです。」
武蔵野大学政治学部のドナ・ウィークス教授がこう語りました。
 
アナリストの中には、メディアが今回の参院選を軽視する報道体制をとったことも投票者の関心を低下させる一因となったと述べています。
上智大学の政治学者、中野耕一教授が次のように述べています。
「たくさんの人々が棄権しましたが、彼らには現在参議院議院選挙の最中だという認識すらなかったのです。」

                  

安倍首相は米国のトランプの機嫌を取り続け、中国の習近平との関係改善するため様々な働きかけを行い、自分を自由主義社会の政治的リーダーの一人として認識させようと懸命でした。
今年5月に訪日の際、アメリカ大統領トランプは7月の日本の参議院選挙が終わるまでは、厄介な貿易交渉を持ち出すつもりはないとツイートし、安倍氏の取り組みは実を結んだように見えました。

                 

こうした目に見える形の外交面で活動は、日本の舵取りを任せるべき相手として安倍氏は最良の選択肢だという意識を有権者に植え付けることに貢献しました。
安倍氏にはさらに戦後ほとんど一貫して政権を握ってきた政党の総裁を務めているというアドバンテージもあります。

                  

「日本を現在の形にしたのは自由民主党です。」
日曜日の早朝、浅草で投票を済ませた80歳の宮郷由紀子さんがこう語りました。
「私たちは先進的な技術、科学、情報、そのほかすべての面にわたって日本の豊かな暮らしを楽しんでいるのではありませんか。」

                    

一方、主要野党5党の支持者たちは、自分ちが支持する政党を立ち行かせるために苦労を重ねています。
選挙が行われる都度、古い党の分裂再編が行われ、新しい政党が生まれています。

                  

ランド・コーポレーション(RAND Corporation)の日本担当の政治学者ジェフリー・ホーナング氏は次のように述べています。
「繰り返される選挙の中で一貫して同じ主張を展開することは難しいものです。その点安倍氏と自民党はそうするための便利な基盤を築き上げているのです。」

                 

それでも有権者は憲法改定という安倍氏の長年の宿願については拒否する姿勢を見せ、安倍自民党は10議席を失いました。
安倍氏の改憲プランを支持するかどうかで国民の意見は二分され、約半数は安全保障を強力なものにするヴィジョンを支持し、残りの半分は平和主義を強く支持しています。

                

「私は憲法の改定を支持しません。」
こう語る43歳の赤石恵美子さんは野党の候補者に投票しました。
「現在の与党政権は傲慢すぎます。」
と語る映画制作会社で働く赤石さんは日曜の朝、東京近郊の調布投票所で投票しました。
「現在の政権は自分たちがやりたいことなら平気で何でもしています。」

                 

後編に続く
https://www.nytimes.com/Shinzo Abe Declares Victory in Japan Election but Without Mandate to Revise Constitution
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うつろに響く安倍自民党の参院選勝利宣言

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所要時間 約 11分

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日本国憲法第9条の平和主義をことさらに貶めてきた安部首相

               

飽くことなく戦争を繰り返す世界で、日本が平和主義をつらぬく立場を作り上げた憲法第9条

            

日本の民主主義と国民の基本的人権を葬り去るための設計図・アベ改憲との戦いが始まる

                 

                

ドイチェ・ヴェレ  2019年7月21日

             

7月21日に投票が行われた日本の参議院議員選挙参院で安倍首相率いる連立与党が勝利を宣言しましたが、平和憲法の改定に必要な3分の2以上の議席確保は難しい状況です。

                

日本の公共放送NHKの報道によれば、安倍首相が総裁を務める自由民主党と連立を組む公明党が、21日日曜日に投票が行われた参議院選挙で、改選124議席中少なくとも71議席を確保し過半数を制する見込みだとつたえました。

                    

安倍首相が宿願としている憲法改定を行うためには、安倍首相は参議院で全議席の3分の2以上、今回の選挙では77議席を必要としていました。
これにより安倍首相は、国内外に反対意見の多い憲法改定を実現させるためには与党以外の保守派の政党や無所属議員の支持を獲得しなければならなくなりました。

                    

安倍首相は選挙結果を歓迎するという意味の発言を行い、与党の勝利は有権者が彼の政策を支持していることの表れだと主張しました。

                 

「国民は政治的安定を選択し、我が党の政策を着実に実行し、日本の国益を守るための外交政策を推進するよう求めたものである。」
安倍首相はこう述べました。

                  

正式な結果は月曜日の朝が過ぎるまでは明らかになりません。

今回の選挙では約1億600万人の国民に投票資格がありましたが、投票率は50%を下回る可能性があります。

               

▽ 憲法改定

                

今回の選挙では370人の候補者が議席を巡って争いました。
参議は総議席数245議席で、その半数が3年ごとに改選されることになっていますが、立法府としての立場は衆議院の採決の方が優先されることになっています。

                 

安倍首相とその同盟国である日本維新の会と無所属の候補者は日本の憲法改定のための手続きを開始するため、全議席の3分の2の過半数、すなわち85議席を獲得することを目標としていました。

                  

                

主に米国によって起草された日本国憲法は、第二次世界大戦終結後の1947年に制定されて以来修正されていませんが、安倍首相はかねてから任期中に平和主義を掲げる第9条に変更を加えたいと語ってきました。
安倍首相の任期は2021年に終了します。

               

こうした姿勢に批判的な人々は、軍事行動を正当化することによって日本が米国が主導する海外紛争に巻き込まれる危険性があることを懸念しており、憲法改定問題は大衆を国論を分裂させています。

                

2012年12月に再度首相に就任した安倍氏は、公約として経済の復活と防衛力の強化を掲げていました。
64歳の安倍氏は今年11月まで首相の職にとどまり続ければ、日本最長の在職期間を持つ首相になることになります。

              

これに対し野党は、経済成長の鈍化、雇用条件の悪化、および公的年金制度の破綻寸前の状況に与党が対処していないと主張しています。
さらに今年10月に実施される消費税率引き上げによって日本経済が打撃を受けるとして警告しています。

                  

【 日本国憲法は今後どうなる?見通せない平和憲法の未来 】

                    

第二次世界大戦における日本の降伏をきっかけに起草された日本国憲法は、民主的プロセスを確立し、天皇の役割を明確に規定し、日本の平和主義的な性格を確保しました。
当時憲法の起草に関わった人々は徹底的に議論を戦わせましたが、それから数十年の歳月が過ぎました。
今また新たな動きが顕在化し、日本が正規軍を維持する権利を回復すべきだという認識の普及に励んでいます。

                     

日本国憲法第9条:「永久に戦争を放棄する」
日本国憲法第9条は日本の平和主義を明確に規定しています。
その第1項で「日本国民は,国権の発動たる戦争と,武力による威嚇又は武力の行使は,国際紛争を解決する手段としては,永久にこれを放棄する。」と規定し、さらに第2項では「陸海空軍その他の戦力は,これを保持しない」と規定しています。
これに対し安倍首相は現在、 国が常設の正規軍を保持することを禁じる憲法の一部を改正することを提案しています。

              

▽ 認識への疑問

                 

日本国憲法は常設の軍隊の保持を禁じていますが、実際には日本は世界で最も装備の充実した軍隊を整備し維持しています。
これについて日本政府は日本が攻撃を受けた場合に、国土を防衛する上で必要不可欠だとしてその存在を正当化してきました。
安倍首相はこうした現状を正当なものとして明文化するため、憲法を修正することによって実現させたいと考えています。

              

▽ チェック&バランス、そして国民投票

           

安倍首相が率いる与党は憲法改定を発議するために必要な衆参両院で過半数の議席を占めていますが、まだ機は熟していないと見ています。
成立以降一度も書き換えられたことがない日本国憲法を改定するには、衆参両院で3分の2の賛成票を得た上で国民投票にかけられることになります。
国民投票によって改定が承認されるためには単純多数決が必要です。

           

▽ 生き続ける平和主義の理念

             

憲法を改定すべきかどうかについて、日本の世論は二分されていますが、ほとんどの世論調査では、日本の有権者が憲法に記されている平和主義の理想を維持したいと望んでいることを示しています。
政権よりの読売新聞が行った世論調査でも回答者の35%だけが安倍首相が主唱する自衛隊の存在の明記を望んでいますが、42%は反対の意思を明らかにしました。

             

▽ 政治的分裂

          

安倍首相は自民党と同じ志向を持つ保守派の支持を受けながらも、ビジョンを実行する上で多くのハードルに直面しています。
憲法改定に前向きな議員の間からも安倍首相の提案に対しては異論が出ました。
しかしそうした事態に慌てる様子もなく、参院選挙後に自公連立政権の勝利が確定するとこう語りました。
「何があろうと自分は人々の生活と平和な暮らしを守るという決意を新たにした。」

                     

https://www.dw.com/en/pm-shinzo-abes-party-claims-victory-in-japans-upper-house/a-49678218

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最後のパラグラフの安倍首相の「何があろうと」というのは、どんな国難が降りかかろうと、という意味ではなく、どのような反対に会おうとも憲法を改定してみせるという決意表明なのでしょう。

安倍自民党の日本国憲法改定草案は、日本の自由主義と民主主義を葬り去るための設計図

こんなエコノミストの記事をご紹介したことがありました。(【 国家権力の一層の強化を狙う安倍政権 】https://kobajun.biz/?p=31070)

アベ改憲の目的を一言で表現するなら、まさにそういうことになるでしょう。

今朝、SNSを見ていたら現在の自民党の改憲案は極右団体に作らせたものだという書き込みをされている方がいらっしゃいました。

だとしたらこれほど国というものを馬鹿にした、国民を愚弄した、そして現在の政権の程度の悪さを象徴する話はありません。

そしてそのような政権が改憲を口にすることを当たり前のように捉える日本人にも問題はないでしょうか?

またエコノミストの引用になりますが、

「日本人は政治の在り方に対する考え方があまりにも安易」なのではないでしょうか?

(【 低迷する選挙の投票率、日本の政治を劣化させ、国の運命を衰退させる 】https://kobajun.biz/?p=36432)

そして日本人は「程度の悪い政治家を議会から排除したいという程度の願望」すら持ち合わせていない。

こんな指摘を私たちはどう受け止めるべきでしょうか。

今回の選挙では『れいわ新選組』という新な『民意の受け皿』を山本太郎氏が作り上げ、その主張には職業政治家が持ち合わせていない生活者の実感がにじみ出ていました。

こうした『芽』を立場を超えて大切に守り育てることもまた、日本の民主主義を守る戦いのひとつなのではないでしょうか?

低迷する選挙の投票率、日本の政治を劣化させ、国の運命を衰退させる

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重大な問題を解決できないまま、当たり前のように政権に居座り続ける与党自民党
日本人には「程度の悪い政治家を議会から排除したいという程度の願い」すら無い
今回の参議院選に立候補した自民党の議員たちは、自民党幹部の門番か守衛のような存在

           

                

エコノミスト 2019年7月18日

               

7月21日日曜日、日本は参議院選挙の投票日を迎え、245議席のうち今後6年間124議席に誰が座ることになるかが決まります。
しかしもし選挙ポスター、やかましい声をあげて走り去る選挙カー、鉄道の駅前で開催される演説会がなければ、ほとんどの人は今は選挙中だと意識することはないでしょう。
投票を行うことはテレビ番組の中でも混雑したカフェの中でも、話題の中心ではありません。

             

事実、関心の低さにより投票率が50%を下回ることを懸念するアナリストもいます。

         

日本の政治は激しく揺れ動いているわけではありませんが、だからと言って健全というわけではありません。

                 

すべての年齢層において選挙の投票率は長期間低下を続けています(上のグラフ参照)。
そしてまだ選挙権が無い若い世代が無関心なままでいると、投票率の低下は加速することになります。

                 

18歳から20歳までの世代の投票率の低下傾向に大差はありません。
そして選挙制度への信頼性も低下を続けています。

                   

アメリカのシンクタンク、ピューリサーチセンターが2018年に行った調査では、日本の民主主義制度に満足していると答えた日本人はわずか40%で、1年前に比べて10%ポイントも低下しました。

                                    

この政治への信頼と関心の低下は、人々にとって差し迫った問題が無いからではありません。
今回の選挙の主な争点は3つあります。

               

1つ目はかねて計画されていた消費税の8%から10%への引き上げです。
これは現時点でGDPの250パーセントにまで膨らんでいる日本の巨額の公的債務の返済に充てるとされているものです。
しかし多くの経済学者は今回の引き上げにより長期に渡り低迷が続いている日本経済を再びつまずかせてしまう可能性があると懸念しています。

             

もうひとつは年金問題です。
金融庁は退職後の高齢者世帯が人並みの生活を維持しようと思うなら、公的年金の他に自力で2,000万円貯めなければならないという泣きたくなるような現実をつい最近明らかにしました。
安倍政権はこの問題をもみ消そうとし、矮小化しようとし、問題そのものの存在を否定しようと躍起になりました。

                 

3つ目は自衛隊の存在を完全に合法化するための憲法の平和主義条項の修正案です。
この実質的な国軍について、日本は名前だけは自衛隊としてきました。
一方で安倍政権は憲法第9条を完全に廃止するという考えは捨てました。

             

この憲法第9条の修正は与党自民党のマニフェストの冒頭にかかげられた公約ですが、世論調査によれば有権者の過半数は反対しているとみられます。

                 

これだけの悪条件が揃っているにもかかわらず、今回の選挙でも自民党は快勝するとみられています。
自民党はこの65年間、わずかな期間を除き日本の政権与党として君臨してきました。

                

こうした日本の現実についてオーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のアウレリア・ジョージ・マルガン氏がこう語りました。
日本人には「程度の悪い政治家を議会から排除したいという程度の願望」すらほとんどないのです。

             

「日本は実質的に一党独裁国家なのです。」
社民党の吉川元(はじめ)氏がこう語りました。

              

かつての民主党の元議員である中林美恵子氏のように、日本の有権者はその政策の多くを支持していたにもかかわらず、野党には充分な機会を与えようとはしないと嘆く人々もいます。
混乱が続いた民主党政権時代は日本の有権者に野党に政権を委ねることについての警戒感を植え付けました。
そして北朝鮮の核開発計画、中国の軍事的台頭、アメリカの保護主的経済政策などのイライラさせられるような外交上の問題を解決するには経験の豊富な側に政権を委ねるべきだという考えが強くなったのです。

               

選挙に関しては大部分の選挙運動についてたった12日から17日間に制限する法律の下では、新しい政党や候補者が有権者の注意を引きつけた上で理解しやすいメッセージを伝えることは困難です。

             

駅前や選挙カーによる選挙運動では、候補者の名前を連呼するだけで精一杯です。そうする時間しかありません。」
こう語るのは、東京大学のケネス・モリ・マックエルウィン氏です。
仮に野党が政権の座に就いたところで、何十年もかけて自民党と密接に結びついてきた日本の官僚組織は、自民党相手に機能したようには機能するつもりはないでしょう。

            

長年にわたる自民党の支配は、日本の政治を老齢男性の占有物のようにしてしまいました。
今回の選挙はすべての政党に対し女性候補者をもっと多く立候補させるよう国会が決議して以降、最初の選挙です。
7月21日投票の選挙では立候補者総数370名の内、女性候補者が28パーセントを占めますが、これは新記録です。
しかし自民党候補者のうち、女性は15パーセントにとどまっています。

               

安倍首相を含む多くの自民党議員は彼らの父親からそのまま議席を引き継いだ人間たちです。

                 

今回の参議院選に立候補した自民党の議員たち自身が、自民党が他の政党と比べて社会的に進歩的な考えかたを持っていないということを証明しています。
「彼らはまるで総裁の役割と必要な資質について非常に古い考えしか持っていない自民党幹部の門番か守衛のような存在なのです。」
アメリカのブリッジポート大学のリンダ・ハスムラさんがこう語りました。

             

例えば、自分が同性愛者であることを公に認めた日本の政治家はほとんどいません。
29歳のレズビアンである村上真理さんは、投票に行くと日本の大政党が同性婚にはん対しているために、自分が「社会的に無視されている」と感ると語ります。

                  

安倍首相の長年の任期は数々の問題を悪化させてきました。

       

これまでの選挙戦での連続的な勝利とかつては自民党内で勢力を競っていた派閥の弱体化により、自民党内に安倍首相の反対勢力はほとんど存在しません。

               

最近掲載されたリベラル系の朝日新聞の社説は、
「政府の行政府と立法府との関係が健全な民主主義社会において不可欠な緊張関係を失い、それが現政権の突出した傲慢さと規律の弛緩につながってしまった」と嘆きました。

            

安倍政権の閣僚たちは、国民への情報提供と公の議論をすることに極めて消極的です。

          

国会が4月に予算を可決して以降、衆参両院の予算委員会はただの一度も会議を開催していません。
安倍首相と個人的につながりのある森友学園に国有地を法外に安い価格で売却した問題について、安倍政権は明快かつ詳細な説明を行うことを拒否したままです。

              

最大野党の立憲民主党は日本の健全な民主主義の復活を最大のテーマとする選挙運動を行っています。
朝日新聞は今回の参議院選挙について次のように書いています。
「日本の有権者がこの国の健全な民主主義を取り戻すための選択をする機会になるだろう」

                 

しかし日本人が健全な民主主義を取り戻すことは難しそうです。

                 

ニューサウスウェールズ大学のマルガン氏は、日本の有権者が自公連立政権から圧倒的多数の議席を取り上げ、憲法9条の改定を妨げることになる、その可能性はないわけではないと語りました。
しかし選挙前の世論調査は、それすら現実にならない可能性を示しており、そうなれば
「国民はますます政治から遠ざかり、安倍政権の強権ばかりが目立つことになるでしょう。

                     

https://www.economist.com/asia/2019/07/18/japans-dull-election-is-a-sign-of-ailing-politics

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『公開18時間前』とある記事を大急ぎで翻訳しました。

でもせめてあと2日早かったら、と悔やまれます。

それにしてもエコノミストの指摘はいつも通りしんらつです。

「日本人には「程度の悪い政治家を議会から排除したいという程度の願望」すらほとんどないのです。」

「自民党の参議院選候補者はまるで総裁の役割と必要な資質について非常に古い考えしか持っていない自民党幹部の門番か守衛のような存在なのです。」

言われて「なるほど」と感心してしまいます。

しかしこうした指摘を自分の反省材料として受け入れられる日本人は何割いるでしょうか?

一人でも二人でも増やしたい、まずはそこから変わらなければ日本の政治は変わりようがない…

真剣に考え込みました。

中国の領土的野心を利用する安倍政権の軍事的野心

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日本の再軍備は安倍首相にとって生涯の目標のひとつ
防衛力を強化するよう繰り返し要求し、安倍首相の軍備拡大の後押しをしていたトランプ

              

             

エミリー・ワン / AP / ワシントンポスト 2019年7月3日

             

写真 : 日本の海上自衛隊の将校に混じってブルネイ沖を航行中のヘリコプターキャリアJS出雲の操艦をするベトナム海軍のルー・フー・ハイ中尉。
この写真は日本・ASEAN会場乗組員共同訓練が行われた際に撮影されました。
南シナ海での中国海軍の存在感が高まる中、日本とASEAN諸国は防衛協力と戦闘能力の強化・連携を模索しています。

             

いずも - 日本最大の軍用艦のひとつヘリコプター空母・いずもは、日本の自衛隊がどこに向かって進んでいるのかを象徴的に表現しています。
日本で初めて編成された水陸両用旅団からの部隊も長期にわたるこの海洋訓練に参加しました。

               

いずもはインド洋太平洋海域への2か月間の出張を終え、フィリピンの米海軍基地があったスービックを出港しました。
南シナ海とその周辺では中国による広範な領海侵犯が長期間にわたり繰り返されています。
いずもは駆逐艦のむらさめ、あけぼのと一緒にアメリカや他の国々との一連の共同訓練を終えたところです。

             

             

第二次世界大戦後に公布された日本国憲法に平和主義が明記されていること、そして紛争の解決手段としての軍事力の行使が禁止されているために、島国である日本がその領海を超えて軍事力を展開する能力は厳しく制約されています。しかし2015年に安倍政権が憲法の解釈の変更を行い、自国とともに同盟国を防衛するために集団的自衛権の行使を可能にしました。

               

安倍晋三首相にとっての生涯の目標のひとつである日本の再軍備とそのための憲法改定に向けて、このことは大きな前進になりました。
この際アメリカ大統領ドナルド・トランプは日米の同盟関係の下、日本が自ら防衛力を強化するよう繰り返し要求し、安倍首相の後押しをしていたと見られています。

                

5月に日本はベンガル湾でアメリカ、フランス、オーストラリアと初めての4か国共同軍事演習を行いました。
フランスは主力艦の原子力空母FSシャルル・ド・ゴールを派遣、米国はミサイル駆逐艦ウィリアム・ローレンスを派遣しました。
さらにカナダ、インド、マレーシア、ベトナム、ブルネイ、フィリピンの各国を加えた訓練も実施されました。

               

                   

日本はいずもを米国製ステルス戦闘機F-35Bsを搭載できる空母への本格的改造を行い、それに合わせ42機のF-35Bの購入を公表しました。
F-35Bは空母での離着陸が可能になるよう設計されています。

                 

発表された購入計画は、戦後の米国との同盟関係において日本がより大きな役割を果たそうとする意図を強調するものです。

               

                

「オリジナルの設計にはなかったもの、あるいは検査れることがなかった新しい何かを取り入れるためには、多くの分野について研究する必要があると考えます。それをしない限りうまくはいかないと思います。」
いずもの本山艦長がこう語りました。

               

アメリカ軍の海兵隊によく似た自衛隊の水陸両用緊急配備旅団の田中康和氏は、最近行われた訓練は将来空母による最前線への部隊輸送を円滑に行うため、同盟各国と地上部隊との連携を強化することを目的に行われたと説明しました。

いずもは搭載機による航空輸送と海上輸送の両方に対応できるため、
「私たちが水陸両用作戦を行う際の対応の幅を大きく広げてくれる。」
と語る一方で、自身も含め自衛隊から参加したメンバーは誰も地上部隊や海上部隊の共同演習の指揮を行った者はいなかったと強調しました。

              

地上部隊は遠距離作戦での最良の方法について尚も模索しています。
装備されている武器の実弾演習に制約があるためです。
自衛隊の水陸両用部隊は緊急時の救急訓練および空母の飛行甲板と格納庫甲板での訓練を実施しました。
そして銃器を使った戦闘訓練ではゴム製の弾丸を使用しました。

                 

中国は南シナ海全体に対する主権を主張して同海域における軍事的存在を拡大し、米国とその同盟国がこの問題に直面さぜるを得ない状況に追い込み、多くの人々を不安にさせてきました。

                

日本の防衛省は2018年1年間の航空自衛隊機による緊急発進が999回に及んだと発表しました。
これは自衛隊が領空の防衛を1958年に開始して以降、2番目に多い回数です。
このうちの64%が中国軍機への対応でした。

            

アメリカ海軍とその同盟国の艦艇は公海上の航行の自由を主張し、中国が占領・領有権を主張している島々の近くを航行することを繰り返して中国政府を激怒させました。
中国政府は領有権をめぐって紛争が起きている島などに最新式の兵器を配備するなどして対抗しています。
この中にはサンゴの環礁の上にコンクリート工事を行った7か所の人工島が含まれています。

               

これらの人工島の中には現在、滑走路、レーダーおよびミサイル基地が整備済みのものがあり、この海域における他国の軍隊活動を監視し、さらにはその活動を抑え込む中国の能力を拡大しています。

                

これまでのところ、不意の遭遇による軍事的衝突などは発生していませんが、誤って紛争に発展する可能性についてすべての関係国が懸念を深めています。

               

ブルネイからフィリピンへの5日間の航海中、いずもはブルネイとフィリピン海軍との最新の訓練で両国から参加した艦艇を率いて、中国が南シナ海の権利を主張するために地図上に引いている『九段戦』近くの海域を航行しました。

              

さらに日本の海上自衛隊は東南アジア諸国から選抜されて参加した若手軍人のための訓練プログラムを実施し、国際海事法に関する講義、人道救援および災害救助訓練、そして航海と通信に関する演習を行いました。
参加者のほとんどは20代、30代の海軍士官です。
「領海および国境線の警備について、今回の訓練で私たちは重要な知識を身につけることができました。」
ブルネイ海軍から参加したムハンマド・ダニアル・ビン・マチュソッフ少尉がこう語りました。
「わが国はマレーシアとベトナムと領海を接しており、今回の訓練は巡視を行う際に役立つ知識を提供してくれました。」

             

中国の軍事的存在が高まり続ける中での訓練の背景は明らかでしたが、海上自衛隊の補給艦隊の江川宏司令官は次のように語りました。
「今回のインド太平洋地域への派遣は、特定の1カ国を対象とした訓練ではありません。」

                     

https://www.washingtonpost.com/

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その数100,000人とも言われています。

アフガニスタン派遣から戻って退役した後、心を病んでアメリカ国内でホームレスになった若者の数です。

改めて戦争の愚かさを痛感せざるをえません。

日本国内で国家主義に付和雷同し軍備の強化を主張しているネトウヨと呼ばれる人間たち、彼らには人生において幸福の記憶というものが無いのではないだろうか?

だから現在の平和な社会に価値を認めようとしない。

平和な社会の中で認められている価値観に反発している。

自分が手に入れられなかった学問や芸術分野などでの成功、それを手にした人々を国家主義社会になれば「非国民!」と罵り攻撃することができる。

なんとかして自分の『下』を作りたい彼らは、韓国人や中国人を理不尽に貶めようとする。

しかし韓国人の不幸と自分の幸福にどんな相関関係があるのか私にはまるで理解できません。

隣国の情勢不安は私たちにとってはむしろ大きなリスクです。

そんなことを最近考えるようになりました。

               

戦争は人生を根底から破壊してしまいます。

太平洋戦争中のアメリカ軍の空襲によって一家が壊滅し、一家が離散し、親に死なれてしまった子供達がホームレス化してしまった家庭がいくつもありました。

無事帰還した日本軍兵士の中にも大量のPTSDの人々が居て、随分苦しまれたようです。

しかし現在の日本の首相は、そして副首相もそんなことを考えたり、まして気遣ったりすることはできない人間のようです。

そんな人間達が主張する日本の軍備拡大を現実にしてしまったら、この先どんな地獄が待っているか、そのことの方を真剣に考えるべきではないでょうか?

年金制度崩壊!なぜ?

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国民の年金を預かる年金積立金管理運用独立行政法人が、直近の四半期に記録的な金額の損失を計上
安倍首相は5年前、普通株式に投資するよう年金積立金管理運用独立行政法人に圧力をかけていた

                 

                

エコノミスト  2019年7月4日

              

今年2019年6月日本の金融業界の規制当局である金融庁(FSA)は、世界で最も高齢化している日本人の年金生活者の生活をどのように支援すべきかという一触即発の議論の場で、爆弾を投げ入れるに等しい見解を公表しました。
それによれば日本の一般的な年金生活者世帯は、公的年金の他に何と2,000万円もの貯蓄が必要です。

           

麻生太郎財務大臣はその後に巻き起こった騒ぎで、日本の年金制度は「決して崩壊することはない。」と主張しました。

             

しかし事態を何とか沈静化させようとする麻生財務相のこの発言は幅広い分野から嘲られることになりました。
週刊誌に掲載された漫画は、金を持っているかいないかで魂を天国や地獄に送り込む手伝いをする麻生財務相の姿が描かれていました。
日本でもトップクラスの金持ち政治家である麻生氏は、個人的には決して貧乏に陥るリスクがないことを揶揄したものです。

             

しかし日本の年金生活者の悲惨な未来の姿は、来るべくして来たものであり驚くには値しません。
真面目な経済新聞の日経新聞は、昨年は改革が行われない限り日本の年金制度は「災害級」の事態に陥ると警告していました。

                               

日本の年金制度は日本人の平均寿命が70歳~80歳の間に留まるという前提のもとに作り上げられたものである、こう指摘するのはシンクタンクのアジア開発銀行研究所の吉野直之氏です。
しかし現時点で赤ちゃんでいる日本人の半数以上が100歳以上の寿命を得ることになると予想されています。
そして現在60代の人々のうち4分の1は35年後も健在でいるだろうと日本政府は推定しています。

                   

20歳から59歳までのすべての労働者は国民年金基金に毎月一律16,410円の保険料を支払わなければなりません。この支払いを40年間続けると現在の基準で1年あたり780,100円の年金を満額受け取ることができます。
企業の労働者や公務員は同時に厚生年金制度への支払いを行います。

                      

しかしいずれの制度も今やバランスを失い、人口減少とともに支払いを続けている人数が減少する一方、支払いを完了した人数が増え続けています。
日本は既に65歳以上の人口が全体の28%を超える3,500万人以上に達しており、2050年までに3分の1にまで増えると予測されています。

               

日本の年金は比較的しみったれたものであり、日本よりも老齢人口の構成比が少ないにもかかわらず、年金行政へもっと多くの予算をつぎ込んでいる国も数カ国あります。

                 

金融庁によれば60代の夫婦一世帯あたりの国民年金の受給額は、平均的家計支出額と比べ一ヶ月あたり50,000円不足しています。
7月2日に厚生労働省が発表した統計によれば、年金生活者世帯の約半数が年金以外に収入源を持っていないことを明らかにしました。

               

さらに日本の年金制度はGDPに対する比率が一定に保たれているため、経済成長が止まり人口の高齢化だけが進んでいる現在、必然的になお一層不十分なものになっていかざるをえません。
金融庁の試算結果は、楽な年金生活を送りたいと考える人々に対し自助努力を促すものです。
シンクタンクである年金シニアプラン総合研究機構の高山憲之氏は、リスク回避志向が非常に強い日本人にもっと大きなリスクを負う投資を求めることになると語っています。

                 

現在日本の1兆8,300億円の家計資産は、郵便局や銀行などの金利ゼロの口座に預金として保管されています。
こうした預金の保有者は1世代前に起きた金融バブル崩壊をまざまざと記憶しています。

                   

高齢世帯の実質資産額がこの20年間ほぼ横ばいという状況の中で資産の運用方法が多様化するということは、難しさもある一方ビジネスチャンスでもあると語るのは金融庁の遠藤俊英長官です。

            

アジア開発銀行研究所の吉野氏は嘘偽りのない日本とアメリカの比較について説明してくれました。
アメリカでは主要な資産クラス(投資対象となる株式、債券、不動産、貴金属などの資産の種類や分類のこと )の価値が日本よりもはるかに速いスピードで上昇していますが、一方で損失のリスクも大きく、その点が日本の多くの投資家を悩ませています。

世界最大の投資ファンドである日本の年金積立金管理運用独立行政法人が、直近の四半期に記録的な金額の損失を出したことにより、リスク負担に対する不安は今や爆発寸前です。

                 

5年前、日本の安倍首相は年金積立金管理運用独立行政法人の責任者たちに対し、日本の国債を処分して総資産の半分を普通株式に投資するよう圧力をかけました。

               

日本はこの後続いて高齢化に見舞われる他の国々の先例となるでしょう。
世界銀行は、2050年までに世界の主要国の老後の資金が合わせて400兆ドル不足することになると予測しています。
前例のない思い切った投資が解決策の一つになるかもしれません。

             

日本政府は65歳から70歳まで定年年齢を引き上げようとしています。
「最も安易な解決方法は、すべての国民が可能な限り長く働き続けなければならない状況をつくることです。」
と、吉野氏が指摘しました。

              

しかし参議院議員選挙の投票日を目前に控え、安倍首相はこの問題には触れるべきではないと感じたことでしょう。

https://www.economist.com/finance-and-economics/2019/07/04/japanese-people-need-to-put-more-aside-for-retirement

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この問題もアベ政治というものには明らかに『良心が欠如している』、その事を証明しているのではないでしょうか?

年金積立金管理運用独立行政法人は本来長い間延々と少なからぬ金額の年金をかけ続けてきた(当然ながら私自身もそうですが)人間に対し、老後の生活資金の保証をすることが第一であるはずなのに、現在の政権が自分たちへの支持率を浮揚させるために本来なら許されない危険にさらしていた。

そして記事中にあるように

『年金積立金管理運用独立行政法人が、直近の四半期に記録的な金額の損失を出した』

こんな事を繰り返していれば、人口の高齢化が年金崩壊の最大の原因でないことはもはや明らかです。

           

                

私たちは日本の政治に良心を取り戻させるために今すぐ、最大限できることをしなければなりません。

何もかも失ってしまってからでは遅すぎるのです。

戦う!東京新聞 望月記者 《後編》

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日本記者クラブの制度を当然と考える記者の多くが、政府官僚と対決することを避けている
まるで一般常識を語るようにして望月氏の徹底追及姿勢を批判する権力の取り巻きジャーナリスト

             

                  

モトコ・リッチ / ニューヨークタイムズ 2019年7月5日

               

日本記者クラブの制度を当然と考える記者の多くが、政府官僚と対決することを避ける傾向にあるという批判が高まっています。
彼らが言い訳として構えるのが記者クラブから追放されたくない、意図的なリークも含め政府高官から時折漏れ聞こえてくる機密情報を特権的に手に入らなくなるというものです。

              

この春それを象徴する出来事がありました。
一人の男性記者が記者クラブの特権を使って引退を決めた野球界のスターであるイチロー選手に日本政府が国民栄誉賞を与えるつもりがあるのかどうか菅官房長官に直接尋ねたのです。

             

結果的に日本記者クラブの制度は多くのジャーナリストの調査報道への意欲を奪い、日本国民が自分達の政府について知るべきことが伝えられないままになっていると、ジャーナリズムに関わる人々が指摘しています。

         

NHKの元プロデューサーで現在は東京の武蔵大学社会学部教授の永田浩三氏は、
「現在日本ではたくさんの不透明な政治家がらみのスキャンダルが発生していますが、質問することが本当に困難な立場に追い込まれています。」
「日本のメディアは今、するべきことができない重度の機能不全に陥っているのです。」

                

望月記者は記者クラブの因習を厳しくはねつけたため、参議院選挙の対応に追われる日本政府はこの問題を一時棚上げにしました。

               

昨年12月、望月記者は地元沖縄の有力者がこぞって駐留するアメリカ軍の規模の縮小を求めているにもかかわらず、日本政府が大規模な米軍基地建設事業を進めていることについて菅官房長官に質問しましたが、彼女が質問している最中に、内閣官房室は記者クラブに対し彼女が『事実を誤認している』と非難するメモを突きつけました。
メモにはそれでも望月氏が今後行われる記者会見に出席することを妨げはしないと書かれていましたが、彼女を擁護する立場の人々は彼女を黙らせようとする陰険な試みであると疑っていました。

             

望月記者が勤める東京新聞は今年2月異例の全ページにわたる社説を掲載し、その中で権力を握る側がジャーナリストの質問を妨げたり規制することはできないと宣言しました。」

               

写真上 : 望月氏は東京新聞のニュースルームで、
「現政権は常に事実を国民の目から隠そうとしているます。」
と語り、次のように続けました。
「そだからこそ私たちが突き止めていかなければならないのです。」

               

今年3月には首相官邸前に約600人ほどが集まって「真実のために戦おう」「記者への個人攻撃はやめろ」などと抗議の声をあげ、望月記者への支持を表明しました。
今年6月には望月記者を題材にとったジャーナリスト者を主人公にした映画が公開され、さらに近々彼女を主題にしたドキュメンタリーも公開される予定になっています。

                    

望月記者は子供の頃は女優になりたいと願っていましたが、政治学の学位を取得して大学を卒業した後、全国紙数社の就職試験を受けましたが、採用になりませんでした。
しかし東京新聞に新人記者として入社し、地方局の警察担当としてキャリアをスタートさせました。
彼女はたちまち頭角を現し、東京地方検事局を担当する重要なポストにつくことになりました。

               

取材のために望月記者は検事局の局長の自宅の外に駐車した黒いタクシーの中で眠り、その間タクシーメーターは回り続けていましたが相手が朝の散歩に出てくる間で辛抱強く待ち続けました。
しかしタクシー会社からの請求書を見た新聞社は、彼女の持ち場を変えることにしました。
結局望月記者は首都圏担当記者として戻ることになりました。

             

               

2人の子供を出産した後、望月記者は経済担当デスクに移動し、そこで日本企業が軍用機器を輸出している件について何本かの暴露記事を書きました。

                

そした望月記者が全国の人々から初めて注目されることになったのは2年前のことです。

            

                

菅官房長官の記者会見で、安倍首相が影響力を行使した疑いがある利益誘導スキャンダルに関係する山ほどの文書について詳細な質問を繰り返し、事実の存在を国民の眼前に描き出してみせたのです。

           

結局その事実を証明する文書を実際に入手したのは他の新聞社の記者であったため、望月記者に対して次のような批判をする記者クラブのメンバーが現れました。
望月記者は結果を出すことに失敗し、やったことは芝居じみたものだった、と。
しかしこうした発言をした記者たちは、自分たちが何者であるか一切明らかにしていません。

             

まるで一般常識を語るようにして望月氏の取材姿勢を批判するジャーナリストもいます。

            

「望月記者にはもっと自制してほしいというのが私たちの正直な気持ちです。」
時事通信社を退任した記者、田崎史郎氏がこう語りました。
「同じ質問を延々と繰り返さないことが大切です。」

             

望月記者が所属する東京新聞の編集長である臼田信之氏は、時折彼女のことが経営上の問題になる場合があると語りました。
「望月記者はしばしば上司が示した方針に従おうとしない場合があります。しかし彼女が明確な意見を持っていることは良いことであり、そしてそれは記者として大切なことです。」
「今日周りを見渡すとおとなしい記者ばかりが目立ちます。望月記者については時々うるさいと感じることがありますが、ほとんどの場合それは良い意味でのうるさいなのです。」

              

https://www.nytimes.com/2019/07/05
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この後編に登場する政権与党、つまり権力を持つ側に都合の良い記者などというものは、隠蔽や改ざんを自分たちが擁護することによってどれだけ多くの力のない人々が尚一層困難な状況に追い込まれてしまうか、そんなことは考えもしないのだろうな、と思います。
その代わり我が身可愛さばかりが先に立つ。
しかも相手も我が身可愛さでは誰にも引けを取らない人物。

                  

『さもしい』という言葉が久しぶりに脳裏をよぎりました。

                   

しかしそうした事実に気がついている私たちの発言や指摘が無力であっては、日本の劣化は悪化の一途をたどります。

300万人もの日本人を殺した太平洋戦争や軍国主義がこの国の美しさを守るために貢献したなどというのは、意見や見解と呼ぶのも愚かしいほどのものですが、それを平気で主張する人間たちをこのまま権力の座に置き続ければ、80年前の悪夢が再び現実になる危険性があります。

戦う!東京新聞 望月記者 《前編》

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質問をどんどんぶつけ、事実を浮かび上がらせていく望月衣塑子(いさこ)記者、日本では彼女は貴重な存在
報道の自由が危ぶまれる日本、望月記者の徹底して質問を続ける姿勢は高く評価されるべきである

              

             

モトコ・リッチ / ニューヨークタイムズ 2019年7月5日

            

首都圏最大の地方新聞の望月衣塑子(いさこ)記者は、ノートパソコン、本、メモを収めたワインレッドの車輪付きのスーツケースを引いて政府の記者会見場に入って行きました。
彼女は背を向けて座りました。
そして他の社の新聞記者たちがお行儀良く質問をした後、飛びかかるように質問を発しました。

                 

日本政府の担当者たちはぐずぐず意味不明の話をしたり、取るに足らない細部について話をして聞く者をウンザリさせますが、望月記者はひるまず答えを要求します。
政府関係者は一様に彼女の質問が長すぎると批判し、ひどい時には完全に無視します。
菅内閣官房長官は北朝鮮について質問する望月記者に対し
「私はあなたの発問に答える義務はない。」
と言い放ち、演壇から飛び降りてつかつかと歩き去っていきました。

                    

43歳の望月記者はまだ大きな政治的なスキャンダルを暴いたり、実業界を揺るがすような事実を暴いたりといったことはまだしていませんが、鋭く追及する質問を数多く行っています。
その姿勢が望月記者を日本の報道の自由を守る民衆の英雄のような存在にしています。

                  

日本の大手メディアの記者たちの多くは、真理の探求者というよりは単なる速記者です。
しかし望月記者がノーという返事を受け入れることはなく、政治家や官僚を繰り返しイライラさせながら事実について問いただすことをやめません。

                

望月記者は自分の使命について
「権力を持つ人間たちがどのように行動しているのかを実際に監視する」ことだと語り、
「政府というものは常に国民の目から事実を隠そうとするものなのです。」
とつけ加えました。

              

質問を繰り返して事実をつきとめる、このような説明はいかなる新聞記者であっても最も基本的な当たり前のことのように聞こえます。

              

「(質問を繰り返し事実をつきとめるという定義は)私たちの中では「だから何?」というほど当然の事です。」表現の自由に関する国連特別報告者であり、カリフォルニア大学アーバイン校医学部のデイヴィッド・ケイ教授がこう語りました。
ケイ教授は日本の報道機関の独立が保たれているかどうか、そのことに懸念を表明しています。

                 

報道の自由が危ぶまれる状況にある日本において、望月記者の徹底して質問を続ける姿勢は「非常に価値があると考えられます。」
ケイ教授がこう語りました。
少なくとも迎合的に過ぎる日本の報道機関の姿勢に従うことを拒否することはできるのだということを、望月記者は身をもって証明しているのです。

                

望月記者は日本政府主催の記者会見に出席できる首都圏担当の取材記者であるという点で珍しい存在ですが、男性支配が続く日本の政治の世界で発言力がひときわ高い女性としても際立っています。

              

「彼女はこうした男性社会のなあなあの関係を攻撃しているのです。」
東京大学で社会科学・メディア研究を専攻する林香織教授がこう語りました。
望月記者の姿勢は「記者会見場で日本のジャーナリストはどう振る舞うべきかという暗黙の了解に反しているのです。」

写真 : 今年4月に東京で行われた記者会見で、菅義偉内閣官房長官は望月記者に対し「私にはあなたの質問にいちいち答える義務はない。」と言い放った。

                 

日本は戦後アメリカ軍の占領下で起草された憲法の条文に報道の自由が明記されている近代的民主主義国家であり、ジャーナリストが「国民の敵」と非難されるような場所ではありません。
しかし現在の日本政府は時に特定のジャーナリストの記者会見場への入場を拒否したり、政治家と報道機関の経営陣との親密な関係を利用して記者たちの行動に制約を加えるなど、まるで独裁政権のような方針の下で行動しています。

               

日本の報道界で望月記者の存在を一躍有名にした舞台は政府の記者会見場ですが、ここには内閣府のいわゆる日本記者クラブのメンバーが出席しています。
記者会見の質問に際しては記者クラブのメンバーが優先され、ときには質問内容を日本政府の役人の検閲が入ります。
(望月記者の雇用主である東京新聞は記者クラブのメンバーです。東京新聞の記者であるために彼女は参加を許されています。)

               

こうした記者クラブは地方の警察署のような小さな組織から首相官邸に至るまで個別に存在し、会員ではないジャーナリストが記者会見に参加することすら妨げたり、政府機関からもたらされる情報を厳しく管理しています。

                 

具体的には今年5月に東京郊外で発生した無差別大量殺人事件では、地元の警察機関は記者クラブのメンバーではないジャーナリストが事件の説明会場に入ることを許可せず、事件についての基本的な事実さえ彼らに明らかにすることを拒否したのです。

                   

https://www.nytimes.com/2019/07/05

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こういう記事がいつか掲載されないかな、と願っていたところ、ニューヨークタイムズに掲載されました。

執筆したのは福島第一原発事故について精力的な報道を行ったマーティン・ファクラー氏の後任のモトコ・リッチさん(女性)です。

               

かつて翻訳したガーディアンの【 危機の時代のジャーナリズム 】( https://kobajun.biz/?p=32830 / https://kobajun.biz/?p=33171 )にこんな一節がありました。

                

「ジャーナリズムの本質は、市民一人一人が抱く疑問の答えを一緒に探し続けること。権力者の代弁者や応援団であることはジャーナリズムの本質に悖(もと)る行為」

            

「『これまでの秩序と態勢を崩壊させる』転換点に立つわたしたちには、ありのままの事実をありのままに伝える報道が必要」

               

「変化の時代に必要なのは、市民目線でものごとを考えるメディア、そして報道」

                

まさに望月記者の姿勢そのものといった感じがします。

そういえば【 危機の時代のジャーナリズム 】を執筆したのもガーディアンの主筆、女性のキャサリン・ヴァイナーさんでした。

                

幸いなことに望月記者にはその報道姿勢を応援する人々がいて、日本の民主主義がまだ死んでいないことにホッとする思いですが、現政権を見る限りホッとばかりしていられません。

私たちが生きているのはその民主主義を実現させるために数え切れないほどの人々が悲劇に見舞われ、血を流し、苦しい思いをした挙句に実現した社会です。

決して安易に崩壊させて良いものであるはずがありません。

日本に関するトランプの無知はあまりにひどすぎる

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日本に対し常識を超えた支配力を持ち続けるアメリカ

トランプは戦略について驚く程無知であり、まともな歴史認識など持ち合わせていない

2003年ブッシュ大統領の合理性に乏しいイラク侵略に加担した日本

                       

G-20サミット出席のためエアフォースワンに搭乗するトランプ

             

ゲイリー J バス / ニューヨークタイムズ 2019年6月28日

                    

トランプ大統領は海外訪問の際に最悪の振る舞いをする、その材料には事欠かないようです。
1年前ヘルシンキでロシアのウラジミール・プーチン大統領と会談する直前、フランスで開催された第一次世界大戦のアメリカ兵戦没者追悼式典への参列を見送った際の理由は「雨が土砂降りだった」(ホワイトハウス談)というものでした。

                    

6月初旬にはロンドン市長を侮辱しました。
しかし大阪で開催されたG20サミットに参加する1週間前の振る舞いに比べれば、誰もが目を剥くというほどではありませんでした。
一連の彼の不安定な振る舞いの中でも飛び抜けてひどいものであり、アメリカ云々以前のトランプ氏の脈絡のない世界に向けた敵意がいかに危険なものであるか、それが客観的にわかる実物教育ともいうべきものでした。

                

伝えられるところでは日本に到着するまでの間トランプ氏は、1951年に署名され1960年に改訂された日米安全保障条約 - それはアメリカの外交政策の重要な柱の一本であり日米同盟の基盤をなすものです - についてアメリカ側から解消することをずっと考え続けていました。

                

6月26日日米安保条約についてフォックスニュースの取材を受けたトランプはいかにも馬鹿馬鹿しいといった口調でこう語りました。
「もし日本が攻撃されたらアメリカは第三次世界大戦を戦うことになる。」
そしてこう続けました。
「しかしアメリカが攻撃されても日本は我々を助ける必要はどこにもない。日本人はソニー製のテレビでその様子を見ていれば良いだけだ。」

                 

トランプ氏の発言は、この人物が国務省のさして重要ではないデスクワークすら担当させてもらえない程戦略について無知であり、まともな歴史認識など持ち合わせていないということを表現しています。

               

                        

トランプ氏は日米安全保障条約が一方的に日本に有利な内容だとほのめかしていましたが、この条約は主にアメリカによって起草されたものです。
大日本帝国が連合国に降伏した1945年8月、第二次世界大戦は終結、その後日本は強権的なダグラス・マッカーサー将軍の監視の下、アメリカ軍が主導する連合国軍の占領下に置かれました。

                  

そして占領が終わった1952年4月、日本は軍国主義と決別し、平和主義と民主主義の理念を受け入れることになったのです。
マッカーサー司令部で当初英文で起草された新しい日本国憲法第9条は、日本が戦争を放棄し、陸軍、海軍、空軍の三軍を永久に保有しないことを宣言しました。

                 

1951年に締結された安全保障条約についてトランプ氏は明らかに過小評価していますが、日本に対し常識を超えた支配力を持つ立場から、アメリカは欲しいものはほぼ全て手に入れることができました。
日本はアメリカ合衆国にのみ、国内とその周辺に空軍及び海軍基地を持つことを認めました。

               

その軍事力は武力攻撃及びソビエト連邦が扇動する暴動から日本を守ることが使命とされていました。
そして1960年の改定により、日本が武力攻撃を受けた場合にはアメリカが防衛するということがより明確になりました。

              

冷戦の最中には民主主義国家日本はアジア地区におけるアメリカの同盟各国の中心的位置を占めるようになり、ソビエト連邦と中国という二大共産主義国家に対する防波堤の役割を担っていました。

1951年、サンフランシスコで米国との二国間安全保障条約に調印した日本の首相吉田茂

                       

さらにトランプ氏は2001年9月11日に米国が攻撃された9.11同時多発テロのときの際、日本がどう対応したかに関する知識も無く、同盟国日本を侮辱しています。
同時多発テロでは日本人の犠牲者も出ましたが、全体の有様を見た日本の人々は深く心を痛めました。

                

そして親米派で保守派の小泉純一郎首相は、同時多発テロで多数の一般市民が虐殺されたことを自国の憲法第9条を見直す機会として利用し、より多くの国際的責任を担うことを自国に求めました。
小泉政権はテロ対策特別措置法を強行成立させ、アフガニスタンでの作戦を展開中だったアメリカ軍を自衛隊が支援することを可能にしました。
ただし平和主義は日本の国是であり、自衛隊は直接の戦闘行動や作戦支援などしていません。

            

ブッシュ大統領が2003年にイラクに侵攻したとき、小泉首相は最も忠実な外国の支持者になりました。
日本は憲法上の制約から侵攻作戦に加わることや直接の軍事的役割を果たすことを憲法上禁止されたまま - 戦後のイラクでの人道支援任務を行うため数百人の自衛隊の地上部隊を派遣しました。水と医療援助の提供、道路や建物の修繕などを行いました。

                 

しかし小泉氏は多くの日本人同様小さくはない誤りを犯しました。
それは結果的にブッシュの合理性に乏しいイラク侵略に加担したことです。

            

しかしトランプ氏が言うような米国を支える姿勢に欠けるという非難はおよそ的外れなものです。

              

日本の右派タカ派の安倍首相に対するトランプ氏の発言は、意図不明の平手打ちを食らわせるようなものです。
自己保身が目的とはいえ安倍首相はトランプ氏との関係を深めようと懸命であり、米国とイラクの関係が危機的状況に陥らないよう仲介の労もとりました。

                 

1960年の改定日米安保条約を調印したのは安倍首相の祖父、岸信介首相でした。
今年5月の4日間に渡った訪日中、安倍氏はトランプ氏のために日本の新天皇との特別な謁見の場を設け、相撲の特別観覧を設定し、さらには皇居での贅沢な宮中晩餐会でもてなしました。
その挙句東京での記者会見で安倍首相の隣に立ったトランプ氏は、数千人の日本の一般市民を殺害する可能性のある北朝鮮が最近行った短距離弾道ミサイルの発射実験に日本が懸念を示したことに対し、自分には関係のない話だと言い放ったのです。

                  

トランプ氏は、無知で恩知らずで敵意を含んだ言動によって何を得ようとしているのでしょうか?
実際に安全保障条約から撤退する可能性は低いものですが、それでも日本との同盟に疑問を投げかけることで、北朝鮮と台頭する中国に日米関係に揺さぶりをかけるきっかけを与えています。

               

            

トランプの言動は明白な理由もなく最も重要な同盟関係を弱体化させ、対立によって引き裂かれた戦略的地域の安定性を損なうものです。

             

しかし私たちはトランプのこうした言動に慣れてしまっており、そこに隠された本当の危険に気がつきにくくなってしまっているのです。

                 

https://www.nytimes.com/2019/06/28

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トランプの愚かさ、そしてやっていることが非常にに危険だということは、エコノミストやワシントンポスト、ニューヨークタイムズを読めばすぐわかることですが、日本に関わるこの記事のような事実については日本のメディアが伝えるべものだと思います。

ところが対トランプにしても対安倍首相にしても、日本の大手メディアは全くの腰抜け、忖度報道一色です。

かろうじて東京新聞や日刊ゲンダイなどのメディアが一線を守っていますが、彼らがいなければ、日本のメディアはまるで大政翼賛会。

その辺りを恬として恥じない、その理由は何なのでしょうか?

今回の参院選の報道にしても、6日付の朝刊第一面の見出しが『投票率が低いものにとどまると予想され、改憲勢力が勝利する見通し』という、予想屋のような内容がでかでかと掲載されているのを見て本当にがっかりしました。

その新聞社が政界通かどうか?などということはどうでも良いことであり、改憲という非常に重要な課題を目前して選挙に日本の国民が興味を示そうとしない、そのことに警鐘を鳴らすのが『言論機関』の役割ではないのか?という怒りを覚えました。

劣化する政治、劣化するテレビ放送、その上新聞報道まで劣化していけば、この国の未来は本当に危ない。

当事者自身にその危機感がないということに、国民として深刻な危機感を井田がざるをえません。

このサイトについて
ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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