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星の金貨 東日本大震災や音楽、語学、ゴルフについて語るブログです。

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テロ、そして戦争 : 史上最大の隠ぺい《2》

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国家の安全保障を優先するため、法律を無視したスパイ活動を行う先例を作ったブッシュ政権

 

デモクラシー・ナウ 2018年1月5日

ジェームズ・ライゼン:

こうしてブッシュ政権による史上最大規模の盗聴疑惑を巡る報道について、ブッシュ大統領の2期目の再選がかかる大統領選挙を目前に控え、私たち、政府関係者、ニューヨークタイムズ編集関係者の間で話し合いが始まったのです。

加わったのは当時のCIA長官のジョン・マクラフリンと部局長クラスの彼のスタッフ、私とニューヨークタイムズのワシントン支局長だったフィル・トーブマン、そしてアメリカ政府関係者です。

アメリカ政府関係者は私たちが記事にまとめた内容は事実ではないと主張し、公表しないように求め続けました。

彼らはこう言いつづけました。

「もし仮にこの記事が、ここに書かれているようなことが公にされれば、アメリカ政府にとっても深刻な事態になるが、君やニューヨークタイムズにとっても深刻な問題が起きることになるぞ。」

 

エイミー・グッドマン:

ジム、あなたのお話を続ける前に …

 

ジェームズ・ライゼン:

ええ?

 

エイミー・グッドマン:

まずはアメリカ政府がこの『ステラー・ウィンド(恒星風)』というプログラムでいったい何をしていたのか、まずその全容についてご説明ください。

ジェームズ・ライゼン:

解りました。

 

エイミー・グッドマン:

そもそもアメリカ政府が国民全員の盗聴という行為を、それも非合法のまま行なおうとしたその目的について。

ジェームズ・ライゼン:

『ステラー・ウィンド(恒星風)』は大きく分けて2つの部分で構成されていました。複数の側面を持っていたのです。

それまでアメリカの国家安全保障機関(NSA)は海外で暮らす外国人のスパイを監視することを目的とする機関であり、実際にそうしてきました。

後に分かった事ですが、ブッシュ政権はその性格を一変させ、本来外国人のスパイを監視するはずの機関を国民を監視するための組織として利用するようにしたのです。

そしてブッシュ政権は外国諜報活動偵察法を司る裁判所からのいかなる捜査令状もなしに、外国人と国際電話で通話していたすべてのアメリカ人の会話の盗聴を始めたのです。

その中には通話記録だけでなく、電話した記録、通話先のログ、電子メールアドレス、メッセージなどをアメリカの全土で収集していました。

 

そしてこれが9.11同時多発テロが発生して以来、アメリカ国内で行われていたすべてのスパイ活動の概略であり、私たちが調査をして判明したことです。

エドワード・スノーデン氏も後にこの件に関する内部告発を行いましたが、中身は同じです。

スノーデン氏はブッシュ政権の終わりまでに、それがどのように始まりどこまで拡大したのかを克明に記した詳細な証拠を公開しました。

 

エイミー・グッドマン:

そしてそれはブッシュ大統領の再選がかかる大統領選挙の直前の事だったのですね?

ジェームズ・ライゼン:

その通りです。

エイミー・グッドマン:

問題は捜査令状が無いアメリカ国民の盗聴を行ったり電子メールの閲覧したことによる、プライバシー侵害問題ですね?

ジェームズ・ライゼン:

そうです。

エイミー・グッドマン:

それを政治信条に関わらず片っ端から行ったのですね?

ジェームズ・ライゼン:

そうです。

エイミー・グッドマン:

そして、もしその時そのままこの報道が行なわれていたら、民主党ケリー対共和党ブッシュの大統領選挙では重要な役割を果たしていたはずですね?

 

ジェームズ・ライゼン:そうなったと思います。

もし選挙直前にこの問題が記事になって公表されていれば、どんな結果になっただろうと何度も考えました。そしてご存知の通り、この記事は公表されることはありませんでした。ですからどのような結末になったか、今となっては知りようがありません。

それはきわめて大きな影響を与えた可能性があります。

現実に起きたことは、私たちは記事を書いて原稿を揃え、新聞社と会議を行ったということでした。

一緒に記事を書いたエリック・リッチブラウ記者と私は担当の編集者であるレベッカ・コーベットと共に、ニューヨークに行ってビル・ケラーとジル・アブラムソンと会いました。

ワシントン支局長であったフィル・トーブマンも同行しました。

そして結局ケラーは選挙前にこの記事を公表しないことにしました。

その決定までには私たちの間で、きわめて緊迫したやり取りがありました。

非常に緊迫した内容のやり取りがあったのです。

 

エイミー・グッドマン:

続けてください。

ジェームズ・ライゼン:

大統領選挙が終わった後、エリックと私はニューヨークタイムズの編集陣にもう一度強く記事の掲載を迫りました。

私たちが執筆した記事をニューヨークタイムズの紙面に掲載するよう、再度申し入れをしました。

2004年12月私たちは記事をリライトし、掲載を迫りました。

しかしニューヨークタイムズの編集陣は再び私たちの要求を黙殺したのです。

エイミー・グッドマン:

それはどんな根拠に基づくものですか?
ジェームズ・ライゼン:

ブッシュ政権側の主張は同じでした。アメリカ国内でのテロの発生を未然に防ぐためには、アメリカ国内の通信内容をすべて盗聴することが最も効果的な方法だという主張です。

盗聴こそがテロ対策計画の中で最も効果的なのだということが最大の論点でした。

アメリカにとって今最も大切なことはアルカイダと対決することであり、もし私たちがこの記事を公開するのであれば、アメリカの国家安全保障を傷つけたという責任をとらなければならない。

それが彼らの基本的な主張でした。

その主張にニューヨークタイムズの編集陣も同意したのです。

 

エイミー・グッドマン:

それに対するあなた方の主張は?

ジェームズ・ライゼン:

私たちが主張したのは、国民全員の通話を盗聴するのは違法行為、または憲法違反の可能性が高いという事でした。

ブッシュ政権が30年前にアメリカ議会によって作られた制度を迂回しようとしてことははっきりしていました。

1978年アメリカ議会は、国家安全保障目的で米国内のアメリカ人やその他の国々の人々の監視を行う場合の法的手順を定める「外国情報監視法」を可決成立させました。

そしてこの制度が正しく適用されるように、外国諜報活動偵察法(FISA)裁判所と呼ばれる非公開の裁判所を設立しました。

米国政府が国内でのスパイ行為を行なおうとするときは、この裁判所に行って捜査令状を取らなければならないことになっています。

私たちはブッシュ政権がこの手続きを採らずに、国民全員の盗聴を行っていたという事実でした。

ブッシュ政権は正規の手続きを採らないことを決定し、FISA裁判所を無視し、誰にも知らせずに大規模な盗聴活動を始めました。

これが世間に漏れれば、誰もが違法行為だと気づく手法を採用したのです。

さらに私たちが調べ上げたのは、テロリストも自分たちの会話が盗聴されていることを知っていたという事でした。

テロリストにとって大した秘密ではありませんでした。

大きな秘密は米国政府が自国の法律を無視していたことでした。

私たちはこのことを問題視し、記事を公開すべきだと考えていました。

しかしニューヨークタイムズの編集方針に対し、ブッシュ政権の国家安全保障に関する主張の方が優先される結果になったのです。

 

《3》に続く

https://www.democracynow.org/2018/1/5/the_biggest_secret_james_risen_on

+ – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – +

 

みなさんは現在の日本の政権運営が、怖いほどアメリカの軍産複合体の利害に合致していると思われたことはありませんか?

《1》でアメリカCIAが登場しましたが、オリバー・ストーン監督の『もうひとつのアメリカ史』を見た私は、その謀略の卑劣なやり方がもたらす残酷な結果に唖然とせざるを得ませんでした。

その常套手段は自分たちの利害に反する政治体制が存在する地で暴力的右翼にふんだんに金をばらまいて騒乱状態を作り出し、人々に別の秩序を求めるよう仕組むというもの。

私は現在の日本の首相の『復活劇』について、そのお膳立てをしたのはまさにこの勢力ではないか、そう思ってきました。

復活を果たした首相は防衛予算の増額を続け、思惑通り米国製の高額な兵器の購入推進を宣言しました。

『美しい日本』とは国民が質素倹約に励み、高額な米国製兵器の購入に勤しむ、そんなものであるはずがない!

そうお感じになりませんか?

テロ、そして戦争 : 史上最大の隠ぺい《1》

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所要時間 約 11分

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政権に不都合な真実を隠すため、政府高官・諜報機関の幹部・大手メディアの幹部が秘密裏に会合していた

一度は情報提供を決心しながら数ヶ月間ためらい続けた内部告発者が明かした国家ぐるみの陰謀

どんな手を使ってでも手に入れろ!強欲、権力、そして終わらない戦争 - アメリカを支える影のメカニズム

 

デモクラシー・ナウ 2018年1月5日

今日は元ニューヨークタイムズの記者ジェームズ・ライゼン氏においでいただいています。

ジェームズ・ライゼン氏は2017年8月にニューヨークタイムズを退社し、アメリカ合衆国のインターネットメディアである ジ・インターセプトに国家安全保障問題の特派員として参加しました。

そしてこの度15,000語からなるドキュメント『史上最大の隠ぺい:テロとの戦いの陰で - ニューヨークタイムズ記者としての私の人生』と題するドキュメントを発表しました。

 

この衝撃的な内容のドキュメントは9/11以降の主要な国家安全保障上の問題を報道するための闘いと、ブッシュ政権が令状なしで国民を対象に盗聴を行っていた事実を含めた真実の報道を、彼自身が編集に関わっていたニューヨークタイムズとアメリカ政府の双方が抑え込もうとしたことなどが綴られています。

彼は後にこの報道で国内報道部門のピューリッツァー賞を受賞することになりました

ライゼン氏は、CIAとホワイトハウス両方の高官とニューヨークタイムズの幹部編集者が秘密裏に会合を行っていたことも暴露しました。

ライゼン氏は一連の報道について情報源を明らかにすることを拒否し、裁判所に告発され最高裁まで争い、刑務所に収監される寸前まで行きましたが、オバマ政権が事実上黙認したことにより刑務所行を免れました。

 

エイミー・グッドマン:

今日、私たちはニューヨークタイムズで長年調査報道を担当してきたジェームズ・ライゼン氏をお迎えしています。

今週、彼は「史上最大の隠ぺい:テロとの戦いの陰で - ニューヨークタイムズ記者としての私の人生」と題する著作を発刊しました。

ドキュメントは9/11以降の主要な国家安全保障上の問題を報道するための闘いと、ブッシュ政権が令状なしで盗聴を行っていた事実を含めた真実の報道を彼自身が編集に関わっていたニューヨークタイムズとアメリカ政府の双方が抑え込もうとしたこと、そして政府高官とニューヨークタイムズの編集部の幹部がつながっていたことなどが語られています。

ライゼン氏は一連の報道で2006年にピューリッツァー賞を受賞することになりました。

ライゼン氏は、もしこれらの報道が2004年時点で発表できていれば、ジョージ・ブッシュ対民主党のジョン・ケリー候補の一騎打ちとなった大統領選挙の結果を変えた可能性があったと語っています。

しかしアメリカ政府の圧力を受けたニューヨークタイムズ紙は、ライゼン氏が真実を暴露した著作を自らの手で出版するまで、1年以上にわたりライゼン氏が取材制作した記事を発表することを拒否しました。

 

ジ・インターセプトの新しい記事では、ライゼン氏は、CIAとホワイトハウス両方の高官とニューヨークタイムズの幹部編集者が秘密裏に会合を行っていたことも暴露しました。

ライゼン氏は、ブッシュ政権とオバマ政権の両方から刑事告発を受け、彼の著書「戦争国家:CIAの秘密史」にまとめられることになった6年間の機密情報のリーク元を明らかにするよう要求されました。

しかしライゼン氏は取材源を明らかにすることを拒否したためこの裁判は最高裁まで争われることになり、刑務所に収監される危険性が現実のものとなりました。

しかし最終的にオバマ政権が実質的な告発の取り下げを行ったため、ライゼン氏は収監を免れました。

打ち続いた試練に対するライゼン氏の答えは、さらに別の著作を書きあげることでした。

『どんな手を使ってでも手に入れろ!強欲、権力、そして終わらない戦争』

そして今、ジ・インターセプトの彼の最初の大作である

『史上最大の隠ぺい:テロとの戦いの陰で - ニューヨークタイムズ記者としての私の人生』

を発表しました。

 

ジェームズ・ライゼン:今日はお招きいただき、ありがとうございます。
エイミー・グッドマン:まずはブッシュ政権による捜査令状なしで行われた大規模な電話盗聴事件についてお話をうかがいます。

アメリカ国民のほぼ全員を対象とした大がかりな盗聴については、10年ほど前にエトワード・スノーデン氏も暴露していました。

この当時、つまりジョージ・ブッシュ大統領の2期目の選挙直前、なぜニューヨークタイムズは事実を確認した時点での公表をしなかったのでしょうか?

結局あなたが著作によって公表せざるを得なかった事実についてお話しいただけますか?

ジェームズ・ライゼン:

あれは2004年の春の事でした。

私はこの情報をもたらした内部関係者と一緒に事実の確認していました。

話が進む中、情報提供者はこう語りました。

「私がつかんでいる情報は、多分現政権にとって最大の秘密のはずだ。その内容を今ここであなたにすべて話してしまうのは、さすがに恐ろしい。」

私はこのまま口を閉ざされてしまったらどうしようと内心焦り、この情報提供者に対し詳細について話すように説得しようとしましたが、彼はその場では話そうとしませんでした。

そこで私はその後数ヶ月にわたってこの情報源との会合を続けようと決心したのです。

 

しかし数か月たっても彼は隠された事実について話そうとはせず、私も半分あきらめかけていました。

そして最終的にこの件について断念する前に、再度彼にこう語りかけました。

「あなたが今まさに関わっていることについて、何とか話してはくれないだろうか?」

この時になってやっと、この情報提供者は知っていることについて語り始めたのです。

結局彼が語ったのは約10分から15分の間でしたが、明らかになったのはブッシュ政権の下で始まった国家安全保障機関(NSA)による国内での非常に規模の大きなスパイ活動についてでした。

全アメリカ人の電話での会話を捜査令状なしで盗聴すること、すべての電子メールの収集と会話記録の収集でした。

後に分かった事ですがこの大規模な機密収集のコードネームは『ステラー・ウィンド(恒星風)』というものでした。

そして、私はこの内部告発の内容の裏づけができる他の人間を見つけました。

さらにニューヨークタイムズ・ワシントン支局で私の隣にデスクがあったエリック・リッチブラウ記者も同様の情報をつかんでいました。

そこで私たちは一緒に仕事を始めたのです。

そして2004年の秋までに主要な取材を終わらせ、資源の概略について執筆を終えました。

 

次に私は国家安全保障機関(NSA)の正面玄関を入って長官のマイケル・ヘイデンに接触することにしました。

そこでまず私はNSAの報道官に電話をし、多少はったりをかけてこう言いました。

「今すぐヘイデンと話をする必要があるんだ。」

ところが驚いたことにはったりが効いて長官本人が電話に出たのです。

そこで私はエリックと一緒に書いた原稿を一番初めの部分を読み上げたのです。

電話を通して長官がはっと息をのみ、ぎょっとした様子がはっきりと伝わってきました。

しかし彼はこう言って電話を切りました。

「何であれ我々がやっていることは合法的であり、国家の安全を守る上で、気も解っているはずだが、有益なことしかやっていない。」

 

そして次のできごとが起きました。私が電話した直後の事だと思っています。

国家安全保障機関(NSA)長官のマイケル・ヘイデンはニューヨークタイムズのワシントン支局長だったフィル・トーブマンに電話しました。

それが多分、私たちが制作した記事を公開すべきかどうかというニューヨークタイムズとアメリカ政府の間の長い秘密交渉の始まりだったのです。

 

《2》に続く

https://www.theguardian.com/news/2017/nov/16/a-mission-for-journalism-in-a-time-of-crisis

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この記事を翻訳していて、確かにアメリカという国家を支えている要因の一つに『終わらない戦争』があることに気がつきました。

イラク、アフガニスタンはもちろん、シリア、イエメン、スーダン…

ベトナム戦争は戦争という手段が、現代においてはもはや何一つ解決しないことを教訓として残しました。

そして現代における戦争が、10年や20年という単位では解決不可能な極めて深刻な問題を作り出すことも教訓として残しました。

ベトナム戦争でアメリカが行った『枯葉作戦』の後遺症により、戦争終結から50年が過ぎた今も枯葉剤による障害児の出産が続いています。

現代においては戦争というものが何も解決しないどころか、解決不能の問題を次々と作り出すという事を私たちは肝に銘じなければなりません。

仕組まれる危機・ミサイル避難訓練に隠された動機、狙いは憲法改定

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平和憲法を廃止して大幅な軍備拡大を可能にするため、あらゆる手段を使って演出される『戦後最大の安全保障上の危機』

専守防衛という考え方を逸脱し、自衛隊に軍隊としての役割を強く求める自民党の改憲案

 

アメリカCNNニュース 2018年1月22日

もはや北朝鮮情勢が一定の落ち着きを取り戻したにもかかわらず、第2次世界大戦終結後初めてミサイル着弾を想定した避難訓練に加わったのは、灰色のベストを身に付けた数百人の東京都の住民たちでした。

1月22日月曜日におこなわれたこの避難訓練は、翌月韓国で開催される冬季オリンピック大会の開催準備の一環として、韓国を訪問中の北朝鮮代表団が首都ソウルで演奏会の開催の可能性について言及したその直後のタイミングで行われました。

 

北朝鮮と韓国の関係改善の兆しが明らかになりつつあるにもかかわらず、安倍晋三首相は北朝鮮の核・ミサイル開発の脅威が「前例のない」「差し迫った」ものであると繰り返し警告しています。
「第二次世界大戦以降、日本を取り巻く安全保障情勢は最も厳しいものであると言っても過言ではない。北朝鮮に核兵器とミサイルの開発を、完全に検証可能かつ不可逆的な方法で放棄させる必要がある。」と述べました。
昨年9月、北朝鮮は北海道の上空を通過させる形で大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を行いました。

このミサイルはその年に北朝鮮が日本の方向に発射した2基のミサイルの1基であり、日本国内の懸念が拡大し、第2次世界大戦の敗戦後に成立した日本の平和主義憲法の廃止を求める安倍首相の立場を強める結果となりました。

▽ いつものやり方で…

 

大きな地震や津波が度々発生する国柄もあってか、22日に行なわれた避難訓練では参加したボランティアの人びとは、テキストメッセージと拡声器からの指示に従い、迅速かつ整然と予め決められた地下の避難場所に移動しました。

訓練の開始からわずか10分で訓練は完了しました。

部分的にアミューズメントパークを使って行なわれたこの訓練は、この数か月間全国のもっと小規模な市町村で行われたミサイル発射を想定した訓練の集大成であり、大都市での物理的対応をどうするかという課題の下で行われました。

PAC-3パトリオット・ミサイル防衛システムを備えた首都圏には約3,500万人が住んでいます。

しかしこのシステムは、実験段階においてもその性能に対する評価は一定していませんでした。

 

訓練に参加した東京都在住の松本俊子さんは昨年の北朝鮮のミサイル発射実験に言及し、「ミサイルの着弾に対する備えができた」とCNNの取材に答えました。

 

2017年3月、日本で初めてのミサイル飛来に対する避難訓練が秋田県男鹿市で行われましたが、引き続き9月には北海道の滝川市と岩見沢市でも行われました。

しかし2018年1月には公共放送NHKが北朝鮮が大陸間弾道ミサイルを発射したという誤った警告を出したため、結果的に予定していなかった訓練が行なわれることになりました。

NHKアプリを携帯電話にインストールしていた人が受信したメッセージには、「NHKのニュースアラート、北朝鮮がミサイルを発射した可能性があります。日本政府のJアラート:至急建物内や地下に避難してください。」とありました。
NHKはすぐに謝罪を行いました。

「北朝鮮ミサイルについて先に送られたニュース警告は間違いであり、日本政府はJアラートを発信していません。」

この間違いは数分で修正されました。

今回の誤報はアメリカ50州の内のハワイがすべての市民に誤って「大陸間弾道ミサイルによる攻撃」の警告を誤って送ってから数日後に発生しました。

原因についてNHKは従業員が 「間違ったボタン」を押したためだとしています。

 

▽反戦抗議

 

引退生活を送っている東京在住の三田村みやこさんは

「北朝鮮は何を考えているかわからない。」

と語り、次のように続けました。

「北朝鮮がもし本当に東京を攻撃したら、どれ程深刻な被害を受けることになるか考えるととても恐ろしいです。」

日本政府は、北朝鮮の攻撃に備えて一般市民が訓練することは必要な事だと語りました。

「避難訓練の実施についてはいろいろな意見があることは把握している。しかし現実にミサイルが日本上空に飛来している。」

末永洋之内閣参事官はこう述べ、次のように続けました。

「日本政府は国民に安全と安心を提供するためには、どのような行動が必要かを国民が理解することが重要だと考えている。」

 

東京で避難訓練が行なわれたすぐ近くでは、少人数の2つの反戦グループがサインボードを掲げ、小冊子を配布しながら、安倍政権が北朝鮮の脅威を政治利用としているとして大きな声で抗議活動を行っていました。

安倍首相が率いる保守派の自民党は戦後の日本の平和主義憲法を改定しようとする議論を展開しています。

この動きに批判的な人々は、自民党が提案している改定が純粋な意味での自己防衛を逸脱し、自衛隊に軍隊としての役割を強く求める内容になっていることを懸念しています。

さらに安倍政権は主に米国からの軍事装備の大規模な新規購入を発表しました。

抗議活動をしていた伊藤友子氏はCNNの取材に対し、ミサイル避難訓練を「戦争の練習」と表現しました。

「安部政権は国民の意向を無視しています。逆に私たち国民全員を精神的に支配し、戦争に向け心の準備をさせようとしています。戦争というのは、往々にしてこの種の小さなことがきっかけとなる場合が多いのです。」

「些細な事のように見えるかもしれませんが、実際の意味は大きく、彼らはすでに戦争を始めたのかもしれません。」

 

https://edition.cnn.com/2018/01/22/asia/tokyo-missile-drill-intl/index.html

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テレビ報道などを見て、ミサイル避難訓練についてはいくらプロパガンダだとは言え、ずいぶんあくどいやり方をするものだと思っていました。

見過ごせないのは、こうした訓練をさせられたり見せられたりしているうちに、どうしても『北朝鮮の脅威』が現実以上に大きなものになることです。

これは人間の心理として仕方がないことであり、そこを狙って国民の洗脳を進めようという意図があるとすれば、まさにあくどいとしか言いようがありません。

 

隠された洗脳という事であれば、私自身高校時代の日本史の教科書を思い出します。

第一次世界大戦は世界規模の戦争の惨禍というものが、人間にとってどれほど破壊的なものであるかを強く認識させ、世界的に軍縮へ向かおうという機運がようやく高くなりました。

しかし第一次大戦の特需により経済的恩恵を強く受けた米国と日本は戦艦や巡洋艦を大量に建造し、いわゆる建艦競争という逆の現象が起きました。

日本の場合は軍部の要求通りの艦隊整備を行なえば財政が破たんする危険性がありましたが、国内にそれを止める機能はありませんでした。

結局1921年のワシントン条約によって建艦競争に強制的に一定の歯止めがかかることになり、米国英国に対し日本の戦艦・航空母艦の保有割合は10対6ということになりました。

当時の国力から考えて『その辺りかな』と思える数字だと思うのですが、当時の日本は『自国防衛のため』『対米7割』を主張しましたが、米英に容れられませんでした。

この辺り、私が使わされた日本史の教科書には『米英に不公平を押しつけられた』というニュアンスの記述がされ、ごく当然のことのように自分の感覚の中に入りこんできました。

 

しかしその後、世界史をさらに深く学習した視点からこの辺りの事情を紐解けば、日本の『防衛力強化』(この時代の日本は1910年に併合した韓国や日露戦争によって権益を得た中国東北部、いわゆる満州までが含まれます)というものが、実は『帝国主義的権益の強化』であったことが理解できるようになりました。

改めて考えれば、軍拡に正論などあるはずがないのだと気がつきました。

 

こうした教科書の洗脳効果を狙った加筆訂正というものは、自民党の一党支配が続けられる中でこれまで目立たないように行なわれてきたのだと思います。

それが安部政権になって、森友学園の問題に代表されるように、何事も目立つようになりました。

要はやり過ぎなのだと思いますが…

 

だからこそ、私たちは声を挙げるべきなのだと思います。

無言でいることは、それを受け入れたことになってしまいます。

避難訓練している脇でその不当さを訴えるのは随分と勇気がいると思いますが、こうした方々がおられることに敬意を表したいと思います。

危機の時代のジャーナリズム《5》

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変化の時代に必要なのは、市民の目線に立ってものを考えるメディア、そして報道

世界的にも国家的にも地方においても個人的にも危機に直面し、人々は不安を抱き続けている

今日のように価値観が混乱している社会にあっては、一般市民の権利と人権を守ることが急務

 

キャサリン・ヴィナー / ガーディアン 2017年12月8日

ほぼ似たような裕福な背景を持つ人々は、危機的な時代の到来によって悪影響を受ける人々に対する充分な理解を示したり、あるいは危機が生み出されている場所まで出かけていくという事はまずしません。

限られた階層の人々によってコントロールされているメディア組織は、市井の人々が『ニュース』だと考えている問題に改めてニュース性を見出す可能性は低いと見るべきです。

こうした組織内の議論は、必然的に参加者が共通して持っている特権に影響されて形作られることになるのです。

 

2017年6月に火災で71人の犠牲者を出したロンドン市西部のグレンフェル・タワーについては、住民が何年も前から危険性を指摘していました。

この事件の報道の中でチャンネル4のニュース・プレゼンターのジョン・スノーは、住民たちの警告に耳を傾けなかったことは、メディアが

「エリート階級の話にばかり耳を傾け、 そうでない人々に対しては関心が希薄で、関連性を見出そうともしないし、関係を持とうともしない。」"

からだと述べました。

ガーディアン編集長のゲイリー・ユンゲはもっと厳しい表現を用いました。

「彼らは『私たち = 一般市民』ではないのです。 そうした彼らの考え方は報道の場で明らかにされることはありませんが、自分たちが市民としての目線に立っていない事には気がついています。」

もしジャーナリストたちが一般市民の生活から遠ざかることになれば、彼らは本当のストーリーを見逃すことになり、その結果人々からの信用を失うことになります。

ガーディアン自身もこのような課題から免れるわけではありません。

スタッフ全員があらゆる価値観を共有している訳ではありません。

新聞社としての歴史、目的、そして価値観を基にこうした問題に私たちガーディアンは取り組んできたつもりですが、まだまだ道半ばといったところです。

 

一方現在権力の座にある者は、メディアが民主主義制度の中で本来果たすべき公共的役割をねじ曲げ、メディアに対する不信を自分たちに有利に利用しようとしています。

ドナルド・トランプが繰り返す「フェイク(偽の)ニュース」発言、メディアに対する「アメリカ人の敵」呼ばわり、英国閣僚メンバーがほのめかした放送局は英国のEU離脱問題を報道する際には『愛国的立場』を明確にしなければならないなどの発言がそうです。

トルコ、ロシア、ポーランド、エジプト、中国、ハンガリー、マルタなど多くの国々では、自由な発言に対する圧力が強まっています。

ジャーナリストたちが迫害され、攻撃され、時に殺害されることさえあります。

今日のように価値観が混乱している社会にあっては、一般市民が持つ当たり前の権利を守ることが急務です。

世界的にも国家的にも地方においても個人的にも危機に直面し、人々は不安を抱き続けています。

気候変動、難民問題、世界経済の動向すら左右する強力な超富裕層の台頭など、特に地球的規模の危機が最も深刻です。

 

私たちがこれまで気がつかなかった大きな変化に、人類が直面しているという事を理解するところまでは簡単です。

哲学者のティモシー・モートンが『トラウマのようなすべての座標の喪失』と表現した圧倒的なそして急激な技術的、環境的、政治的、社会的変化は、私たち全員がまさに今直面している事なのです。

 

こうした世界的な大変動は多くの国々の政情を不安定なものにしており、これまでの2年間に様様々な衝撃と驚きを生み出しました。

英国のEU離脱に関する国民投票の予想を覆す結果は、英国をきわめて不確実な未来に向かわせることになりました。

泡沫候補の一人に過ぎないと見られていたドナルド・トランプの大統領当選。

欧州全域で発生した既成政党への支持の崩壊。

そしてエマニュエル・マクロンの予期せぬ台頭などがありました。

これら一連の出来事は、そのようなことにはならないと断言していた内部関係者、そして専門家たちを混乱に陥れました。

英国では2017年6月に行われた突然の解散総選挙では、特に若者の間で労働党自身が長年にわたり顧みることの無かった社会主義政策に対する支持が急増し、結果的に労働党党首のジェレミー・コービンが20年にわたる保守党の政権支配を実現させてきたルールブックを引き裂きました。

アメリカでは民主党大統領候補のバーニー・サンダースが、同様の政策を打ちだし選挙戦前半を盛り上げました。

 

貧富の格差の著しい拡大は従来の政治的権力層と富裕層の憤慨の的になっています。

2017年10月にはパラダイス・ペーパーの公開という内部告発により、世界の超富裕層がこれまでの120年間で最大の富の集中を実現させたことが明らかになりました。

パラダイス・ペーパーには、その多くの人間が課税を免れるため手の込んだ巧妙な手段を講じていることが明らかにされました。

 

現在明らかになっていること、それは従来採られてきた様々な手順や方法が持続不可能になっているという事です。

私たちは作家のナオミ・クラインの表現を借りれば、

「新自由主義の魔力は消えうせ、実際の経験の重さと山のように積み上がった証拠によって粉々に砕かれた」

という歴史的転換点に立っています。

クラインは、新自由主義について「人々が共に暮らす空間を傷つける経済プロジェクトの略語」と定義していいます。

このように市場原理は結局すべてに対する答えを持っていないという可能性があります。

不平等を悪化させるということの「根本的な意味合い」を多くの人々は理解して来なかったと語るフィナンシャル・タイムズのコラムニストであるマーティン・ウォルフは、グローバリズムに対する政治的な逆行は、第一次世界大戦とロシア革命と同じ規模の、世界の仕組みの根本的な変化を現実のものにする可能性があると語っています。

 

私たちの近隣やそれぞれの地域社会では、広範囲にわたり資金的な行き詰まりにより図書館、学校、公共医療機関などの運営が継続不可能となり、閉鎖に追い込まれて市民生活が崩壊し、その跡地が安価で不動産デベロッパーなどに売却されています。

こうした状況に対する我々の怒りが、政治を揺るがしている潮流をどれほど大きなものにしているかを想像することは難しいことではありません。

 

あなたのような一般市民が小さな町で苦労を重ねている間に、大都市で暮らす富裕層がまんまと税金逃れをしている光景を目にすると心が痛みます。

高齢者は地域社会の人びとが支え合う暮らしが消失してしまったことを嘆いています。

若い人たちは思うような仕事を見つけることができず、生きがいを持って働くという事が出来なくなってしまっているのです。

 

《6》に続く
https://www.theguardian.com/news/2017/nov/16/a-mission-for-journalism-in-a-time-of-crisis

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ローマ法王、2018年新年のメッセージは『長崎の少年』

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1945年に米国海兵隊のカメラマンが撮影した、死んだ弟を背負い火葬するために墓地に向かう少年の姿

『移民の脅威』を煽る政治家たちが暴力と人種差別を撒き散らしている

 

クリス・ベインズ / インディペンダント 2018年1月1日

1945年8月アメリカ軍海兵隊のジョー・オドネルはそこで起きることを記録するため、長崎市内の墓地で待ち構えていました。

そこに現れたのは、火葬するため死んだ弟を背負ったひとりの少年でした。
2018年の新年を迎えるにあたり教皇フランシスコ1世は、国際紛争が多発する現代世界の脅威について率直な気持ちを表現するため、一枚のカードを公表しました。

カードには1945年の長崎の原子爆弾の被害者の写真が印刷されていました。

 

バチカンが2018年1月1日に公開・配布したカードには、火葬にするため死んだ兄弟を背負ったひとりの日本人の少年が墓地に向かう写真が印刷され、裏面には「戦果(the fruit of war)」という言葉が印刷されていました。

この写真は米海兵隊の写真家ジョー・オドネル(Joe O'Donnell)がアメリカ軍の日本へ原子爆弾を投下し、第二次世界大戦が終了した直後に撮影されたものです。

フランシスコ1世が発行したカードには、法王自身の筆跡による次の言葉が書かれていました。

「幼い少年の悲しみは、血がにじむほど自分の唇を噛むというジェスチャーの中にのみ表現されています。」

そして法王の自筆のサインが添えられていました。

この写真を撮影したオドネル氏は、アメリカ軍が行なった長崎と広島への原子爆弾投下による惨禍と傷あとをその後4年間に渡り記録し続けました。
オドネル氏が撮影した写真は、毎年1月1日に祝われるローマカトリック教会の世界平和の日の前に、バチカンの広報部門によって公開されました。

 

バチカンのアナリストであるジョン・アレン氏は、

「フランシスコ1世は世界中至る所で武力奮闘が繰り返されている現在の状況を『第三次世界大戦』と断言し、ローマ法王に選出されたその日からずっと世界平和の実現に力を尽してきました。今回のカードの公開もそうした取り組みのひとつです。」

カトリック教徒のためのブログ『Crux』の記事中、アレン氏は次のように書いています。

「教皇は武力奮闘によって子供たちが経験させられている不幸な苦しみについて語り、子どもたちが少年兵士として徴用されている現実が、世界にとってどれ程危険な事かについても話をされました。」
「今回、長崎の少年の写真を改めて全世界に向けて発信した背景には2017年後半、かつての冷戦が最も危険だった時と同様に核兵器使用の脅威が拡大し、核兵器使用をちらつかせる北朝鮮に対し、アメリカ大統領トランプは『炎と怒りで(北朝鮮全土を灰にする)という脅迫で応じるなど、世界を破滅のふちに追い込む危険性が再び高まっている現実があります。』

 

ローマ法王のフランシスコ1世は、バチカンの聖ペテロ広場で4万人を超える人々の前で新年を迎える講話の中で、アメリカ大統領のトランプがメキシコとの国境に沿って壁を築くという動機についても批判し、『移民の脅威』を煽る政治家たちが暴力と人種差別を撒き散らしていると述べました。

法王は移民と難民について、世界で最も弱く、最も貧しい人々であると表現し、次のようにつけ加えました。

「どうか私たち人類が彼らの心の中にある希望の火を消し、平和への希望を脅かさないようにしてください。」

「平和の実現については、誰もが平等な権利を持っています。

しかし多くの人が長くて危険に満ちた逃避行を行い、自分たちの人生を危険にさらさなければならない状況に追い込まれています。彼らは日々、緊張と苦しみを強いられているのです。」

 

http://www.independent.co.uk/news/world/europe/pope-francis-nagasaki-photo-fruit-of-war-atomic-bomb-victims-japan-joe-odonnell-world-day-of-peace-a8136746.html

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ノーベル平和賞受賞ICANが日本に核兵器禁止条約への参加を呼びかけ

 

ロイター 2018年1月17日

昨年ノーベル平和賞を受賞したキャンペーングループICANのリーダーは、核抑止戦略が平和をもたらすことはないと語り、日本に対し核兵器禁止条約に参加するよう呼びかけました。
来日した核兵器廃絶のための国際キャンペーン(ICAN)のベアトリス・フィーン常任理事は、北朝鮮が国際的な圧力に抵抗しながらミサイルと核開発を続けるの受け日本が米国の『核の傘』への依存を強め続けている状況について、次のように語りました。
「核抑止力という考え方がもし本当に平和を作りだすのであれば、私たちは北朝鮮の核兵器開発を歓迎すべきです。では、北朝鮮の脅威によって強化されている核抑止戦略が本当の意味での平和を実現したでしょうか?そんな事実はありません。」

フィーン氏は東京での記者会見でこう語りました。
「現実は逆です、私たちはリスクを大きくしています。現実に私たちは核兵器の存在そのものが危機を引き起こすという、明確な証拠を見ているのだと考えます。」

ICANは、昨年7月に世界122カ国が採択した核兵器禁止のための国連条約の成立を推進した非政府組織の連合体です。
世界で唯一核兵器による被害を受けた国である日本は、核兵器国保有国が参加しない形で条約を結んでも核兵器の無い世界は実現できないと発言し、国連の交渉に参加しませんでした。

結果的に日本政府はこの条約に署名をしていません。
「核兵器廃絶のためには日本が行動しリーダーシップをとることが必要です。日本は核軍縮についての道徳的説得力を発揮できるはずであり、それは安倍首相が核兵器禁止条約に加わることから始まります。」

 

https://uk.reuters.com/article/uk-nobel-prize-peace-japan/nobel-peace-laureate-group-urges-japan-to-join-nuclear-arms-ban-treaty-idUKKBN1F522S

北朝鮮の核ミサイルはどこに照準を合わせている?

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なぜ核兵器なのか?/どうやって手に入れたのか?/本当に水爆を保有しているのか?

米国韓国の合同軍事演習が北朝鮮の核・ミサイル実験を誘発、これに米韓が報復の『軍事演習』を繰り返す悪循環が続く

 

アルジャジーラ 2018年1月1日

▽ 北朝鮮の核破壊能力とその動機

 

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は2018年の年頭の演説の中で、次のように語りました。

「今や米国全土が北朝鮮の核兵器の到達範囲内にあり、その発射ボタンは私のオフィスの机の上に置かれている。」

北朝鮮の航続距離が最も長い大陸間弾道ミサイル(ICBM)である火星15号型ミサイルは、理論的には約13,000km先の目標を攻撃する能力を持ち、基本的に地球上のほとんどの場所をその照準内におさめます。

照準の外にあるのは南米大陸と南極大陸だけです。

この理論値は2017年11月29日に海面に着水するまで約53分前に飛行した火星15号型(ファソン15)の性能の分析を基に推定されたものです。

 

15号型に先立ち、北朝鮮は7月初旬、理論的には10,400kmの航続距離を持つ火星14型ミサイルの飛行実験を行いました。

火星14型は約45分間の飛行の後、日本の領海内に着水しました。

さらに9月15日、北朝鮮は日本の上空を超えて約3,700kmを飛行した火星12型ミサイルの実験も行いました。

火星12型は4,000kmの航続距離を持ち、グアムを含むアメリカ領の太平洋諸島すべてが射程範囲に収まることになります。

▽ 北朝鮮のミサイルを撃墜することはできるか?

 

米国、韓国、日本は北朝鮮が弾道ミサイルを発射した場合、これを察知して破壊する能力を持つミサイル迎撃システムを装備しています。

しかし一般的には迎撃成功の確率は高いものではありません。

 

2004年米国はミサイル迎撃システムの完成を宣言しましたが、その後実際に行われた迎撃実験では数多くの失敗例が発生しました。

韓国には、ソウル南部の星州郡に6基の高高度防衛(THAAD)システムが実戦配備され、日本もパトリオットとイージス弾道ミサイルシステムを装備しています。

 

▽北朝鮮は核兵器による攻撃能力を持っているか?

北朝鮮は、小型化した核弾頭をミサイルに搭載する技術をすでに完成したと主張していますが、これらの主張は個別には検証されていません。

核兵器による攻撃を可能にするためには、北朝鮮はミサイルに装着可能なまでに核爆弾を小型化する必要がありますが、その技術は未完成であり実験も未だ行なわれていません。

2016年3月、北朝鮮の朝鮮中央通信社は、小型の核弾頭であるとする小さなボールのような物体の前に立つ金正恩(キム・ジョンウン)の写真を公開しました。

2017年9月朝鮮中央通信社は金正恩(キム・ジョンウン)総書記が大陸間弾道ミサイル(ICBM)に搭載可能な水素爆弾だとする物体を子細に検証している写真を公開しました。(写真上)

 

▽ 北朝鮮が保有する核兵器の規模はどのぐらいか?

 

北朝鮮は核兵器保有を「質と量」で継続的に維持可能だと主張していますが、米国の関係当局者はその数は60基前後だと推定​​しています。

独立した立場の専門家は、北朝鮮は年間6基のペースで新しい核爆弾を製造するのに十分なだけのウランを所有していると見積もっています。

 

2016年9月、アメリカ首都ワシントンにあるジョンズホプキンズ大学のジーグフリード・ヘッカーは、一年間で6個の核爆弾を製造するのに充分な量の高濃縮ウランを生産したと推定しました。

ヘッカーは2010年、北朝鮮の寧辺(ヨンビョン)にある核兵器製造施設を見学した経験を持っています。

専門家と各国政府は、北朝鮮国内の原子炉運転の様子をとらえた衛星画像の解析結果からプルトニウムの生産量を推計しています。

▽ 北朝鮮は水爆を保有しているか?

 

2017年9月北朝鮮は6回目の核実験を実施しましたが、爆発させたのは水素爆弾であると主張しました。
核爆弾の規模は約100キロトンと推定され、最初地下23kmのマグニチュード6.3の地震として検知されました。
試験場から400km離れた中国でも微弱な振動が検知されました。
水素爆弾であれば、第二次世界大戦でアメリカが広島に落とした原爆よりも1,000倍の威力を持つ可能性があります。
2016年1月、北朝鮮は最初の水素爆弾に成功したと主張しましたが、この時の核実験の影響を調べている核科学者は、爆発の規模について水爆相当とすることについて疑問を呈しました。

 

▽ どうやって核兵器を手に入れたのか?

北朝鮮は独力で核兵器開発を推進していると考えられています。
その核兵器開発計画は、旧ソビエト時代の1965年に寧辺(ヨンビョン)に原子炉を建設した時から開始されました。

そして2006年に初めて核実験に成功したのです。
北朝鮮は豊渓里(プンゲリ)で2017年に6回目となるとなる核実験を実施しました。

 

核実験の兆候は4月から確認されていました。

衛星画像の確認を行っていたアメリカの監視機関は、実験場と考えられるトンネルから労働者が水を汲み出している様子を確認し、核実験の実施が近づいているとする報告を行っていました。
アメリカに拠点を置く各研究機関の研究者は、北朝鮮は寧辺(ヨンビョン)原子炉が作り出すプルトニウムに加え、他の施設が生産する高濃縮ウランの両方の核爆発を起こさせるための豊富な供給源があると主張しています。

 

寧辺(ヨンビョン)核開発施設はソビエト連邦の当時の技術者の力を借りて建設されたものの、現在はロシアと中国は北朝鮮に核兵器を供給したり核兵器製造への協力を拒否しています。
中国は1953年には朝鮮戦争で北朝鮮の援軍として戦いましたが、北朝鮮の核兵器開発計画については地域の政治的安定のために強く反対しています。

 

朝鮮の核開発計画に関与していたのはパキスタンとインドです。

2004年、パキスタンを代表する原子力工学の科学者アブドゥル・カデル・カーン博士(写真上)は、遠心分離機を含む原子力技術を北朝鮮を含む他国に売却したかどで自宅軟禁状態に置かれています。

2016年の国連報告書では、インドの技術研究所が北朝鮮に対する制裁措置に違反し、2012年の銀河3号ロケット打ち上げに関与した北朝鮮学生に「宇宙機器」に関する特別訓練を施したと非難しました。

 

▽ 北朝鮮はなぜ核兵器実験を繰り返しているのか?

 

北朝鮮政府の声明の分析結果によれば、北朝鮮の指導部は核兵器を次のように見ています。

 

① 国家の安全保障を担保する
② 経済発展と繁栄を手にする
③国際舞台における尊敬と威信を得る
4月には、北朝鮮の外交通商部長官は次のように述べました。

「我々はすでに強力な核抑止力を手にしており、米国の先制攻撃に抗して手をこまねていているつもりはない。」

また北朝鮮政府は毎年行われているアメリカ軍と韓国軍の合同軍事訓練について、北朝鮮侵攻のためのリハーサルであるとの見解を示しました。
北朝鮮の朝鮮(チョ・ミョンナム)国連代理大使は、次のように発言しました。

「米国と韓国のこうした敵対的な活動のために、我が国は国防能力を強化するため核戦力を中心とした先制攻撃力の強化に努めている。」

北朝鮮はアメリカのCIAが金総書記を暗殺しようとしていると非難しましたが、CIAのマイク・ポンペオ長官は「北朝鮮からの深刻な脅威」のための専用ミッション・センターを部内に設立したことを発表しました。

 

▽ 北朝鮮はすでに宣戦布告しているのか?

 

北朝鮮は1950年の朝鮮戦争以降いかなる国とも交戦状態に陥っていませんが、「挑戦半島統一のための大義の戦争」を開始すると宣言し、「米国が武力によって朝鮮民主主義人民共和国を破壊しようとしている以上、全面戦争も辞さない」と米国本土の攻撃を示唆しています。

北朝鮮は国連の経済制裁に対し「主権を侵害する暴力行為」だと反発したのに続き、アメリカ軍の基地があるグアムを攻撃すると威嚇しました。

 

第二次世界大戦が終わった後の1945年、朝鮮半島は南北に分断されました。

それから5年後、北朝鮮は韓国内に侵入し3年間に渡った朝鮮戦争が始まりました。

戦争は1953年に終結しましたが、戦争の終結を確認する平和条約の締結ではなく、厳密には北朝鮮と韓国がまだ交戦状態にあることを意味する停戦協定のまま今日に至っています。
韓国には2万8,500人のアメリ軍が駐留しており、朝鮮半島は長さ250km幅4kmの非武装地帯で南北に分断されています。

2017年3月、アメリカ軍と韓国との共同軍事訓練が始まったことから、米国と北朝鮮の間では軍事的示威行動や挑発的やり取りが続いています。

 

北朝鮮が大陸間弾道ミサイル実験を行った後の2017年8月29日、韓国の4機の戦闘機が北朝鮮の最新の核実験場への攻撃をシミュレートする訓練を行いましたが、さらにその後北朝鮮はミサイルの発射実験を行いました。

周辺諸国と米国の非難にもかかわらず、北朝鮮はミサイル発射実験を繰り返す挑発的を行い、核兵器による攻撃能力の拡大を図り続けています。

 

http://www.aljazeera.com/news/2017/05/north-korea-testing-nuclear-weapons-170504072226461.html

危機の時代のジャーナリズム《4》

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フェイスブックはヘイトやレイシストに『牙城』を提供する機関であり続けて良いのか?

弱者を平気で攻撃的する人間たちのヘイトや差別行動をエスカレートさせたデジタルメディア

閉ざされたデジタル空間の中を行き来する『曲げられた事実』『脚色された事実』

 

キャサリン・ヴィナー / ガーディアン 2017年12月8日

インターネット社会の誕生により2000年代初頭を支配したユートピア気分は、実はインターネット技術の進化により社会がどう変わるのか、そのすべてを予期していないための楽観的な見通しが作り出したものであることが明らかになりました。

 

ガーディアンが提供したデジタル・タウン・スクエアは、公開討論の場に新たな種類のヒステリーをもたらすことになってしまいました。

弱者を平気で攻撃的する人間たち、性差別主義者、人種差別主義者などに荒らし膨大荒らされることになってしまいました。

監視はデジタル時代のビジネスモデルのひとつであり、私たちの行動や感情は絶えず監視されています。

フェイスブックはニュース編集方針をアルゴリズムの仕組みに置き換えることで、歴史の中で最も豊かで最も強力な出版社になりました。

誰もが議論・討論することが出来る解放された空間の代わりに、何百万というニュースソースの供給者ごとに他をシャットアウトした情報交換空間を作りだし、社会全体をシフトさせたのです 。
こうした変化はリベラルな民主主義にとって大きな脅威となっています。

そして同時にジャーナリズムに対してはデジタル特有の問題を提示することになりました。

印刷物からデジタルへの移行は当初、多くのメディア組織にとっての基本的なビジネスモデル、つまり読者にニュースを届ける際に一緒に広告も配信し、その際の広告収入によって経営を成り立たせるという仕組みを変えるものではありませんでした。

始まってからしばらくの間は、計り知れない規模のオンライン上の読者や利用者が印刷物の読者と広告主の減少を補うことになるだろうと見られていました。

しかしフェイスブックとグーグルが全く新しいデジタル広告手法を開発し、それまであった広告市場を飲み込んでいくにつれて、従来のメディア企業のビジネスモデルは現在崩壊に向かっています。

その結果、多くのニュース組織によって作られたデジタル・ジャーナリズムは、ますます重要性を失っています。

 

アルゴリズム広告(アルゴリズムとは、クローラーと呼ばれる検索エンジンロボットがWebサイトの検索順位を決めるための仕組み)により広告収入を得ているメディアは1人でも多くの読者を獲得することに狂奔し、真偽の確認をおろそかにしたままクリック数を増やすために最も刺激的で極端なストーリー作りに徹底するようになってしまいました。

しかしこれだけ巨大な市場でこれだけのことをしても、もはや十分な収益を確保することはできません
いくつかのサイトでは、「ニュース性のあるものとは、どこかの誰かが公にしてほしくないと考えているものだ」ということを学んだジャーナリストたちが、いちいち電話で確認することもせず、1日に10本というペースで商品化された物語を作大量生産しています。

コロンビア大学教授でジャーナリストでもあるエミリー・ベル博士は次のように書いています。

「プロパガンダ、プレスリリース、ジャーナリズム、広告を一度でも公開すれば、そこはすなわち『コンテンツ』を持っていることになるのです。」

読者はかつて以上に情報の洪水に見舞われています。

毎日膨大な量の「ニュース」を突きつけられ、サイトのページをめくるたびにポップアップ広告が飛び出し、どれが真実でどれが偽物か混乱させられ、有益でも楽しいものでもない現実に直面させられています
多くの人がフェイスブックからニュースのほとんどを得ていますが、それらは本来よりも何倍も脚色あるいは増幅された形で配信されています。

最初はおそらく何も加味されていない情報源から独立したジャーナリストが取材した事実が、アクセス数を増やしたいサイト運営者や選挙の投票結果を左右させたいと考える悪意の演出家によって曲げられてしまった『コンテンツ』に変わってしまっているのです。

 

リッチモンド・スタンダードは、カリフォルニアのベイエリアのウェブサイトですが、自己紹介では「地元のコミュニティ主導の毎日のニュースソース」ということになっています。

それを素直に信じて自分のニュース源のひとつに加えている人は、このサイトを実際に運営しているのが多国籍巨大石油企業シェブロンだとは気がついていないでしょう。

ファイナンシャル・タイムズによれば、シェブロンが所有するリッチモンド製油所が2012年8月に引き起こした火災によって市内に黒い煙が充満し、1万5,000人以上のリッチモンド市民が治療のため病院に運ばれました。

企業などが自分たちに有利な環境を作りだすため、こうした取り組みを行うのはもう珍しくもなんともありません。

オーストラリア・サッカー・リーグは世論を自分たちに有利に導くため、30人ほどのジャーナリストを雇い、自分たちに好意的な話を書かせています。

英国の多くの無料の地元新聞は、要注意人物ともいうべき地方議会議員によって資金提供されています。

 

こうした事実は社会のひとりひとりに、情報によって衝撃を受けた際、それが偽物か本物なのかを識別できる目を持つように求めています。

でもどうすれば、そんなことが可能になるのでしょうか?

 

メディアを含むあらゆる種類の既存の確立された組織に対する信頼は、今や歴史的な低さにあります。これは一時的なこと現象でもなければ驚くべきことでもありません。

なぜなら多くの組織が彼らへの信頼を裏切り、批判に対して謙虚に向かい合おうとはしなかったからです。

こうした態度に対しこれまでは一般の人々は憤りを感じつつも無力でした。

そして大きな組織の方は現実に何も起きてはいないと勘違いし、誰の話も聴こうとはしてきませんでした。

 

この状況こそ、現在公共の場で発生している危機の原因です。

中でも一般の人々がほとんどすべての既成の組織や権威に対する信頼を失っているという事実は、既存のメディアに最も深刻なダメージを与えます。

市民がもはや政治に関わることへの自信を喪失してしまった時、メディアはその疎外感を逆転させる上で重要な役割を果たすことができるはずです。

「もし既成の組織に対する不信感が市民生活と人々の関わり合い方を変えているのであれば、報道機関もそれに合わせて変わる必要があるのかもしれない。」

マサチューセッツ工科大学のエザン・ザッカーマン教授がこう語りました。

「私たちジャーナリストの役割を、市民が個人として、そして組織の一員としてどこにどういるべきかを探す手伝いをすること、最も効果的で強力な居場所を見つける手伝いをする事だと考え直すことになるかもしれません。」

 

それをちゃんと実現するためには、ジャーナリストは市井の人々の信頼を得るための努力をしなければならず、それは人々のために働くという意識を持つことに他なりません。

そしてジャーナリストは、こうあるべきだと考える社会の代弁者にならなければなりません。

メディアのメンバーたちが皆等しく社会の特権階級の立場を追われ降ろされる傾向はますます強まっており、事実この問題はここ数十年で実際に悪化している。

社会動性に関する2012年の英国政府の報告によれば、ほとんどの職業の上位は依然として「社会的エリートによって支配されている」とは言え、裕福とは言えない階層の人々に対する開放性という点で、ジャーナリズムは医学、政治、法律に比べると遅れている実態が明らかにされました。

「他の職業に比べ、これまでジャーナリストは排他性の強い性格を形作ってきた。」

こう結論づけています。

 

《5》に続く
https://www.theguardian.com/news/2017/nov/16/a-mission-for-journalism-in-a-time-of-crisis

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危機の時代のジャーナリズム《3》

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一般市民が創り出す価値にこそ多数にとっての利益があり、共有することができる善意がある

世界は自由で公正でなければならないという信念があってはじめて、人類に貢献できる報道が可能

これまで私たちが知っていた世界の枠組みは、すでに崩壊してしまっている

 

キャサリン・ヴィナー / ガーディアン 2017年12月8日

ガーディアンの歴史に残る深刻な間違いの1つは1948年に起きました。
今日の状況からは考えられないことですが、マンチェスター・ガーディアンは英国国民健康保健の設立にはっきりと反対の立場をとったのです。
ガーディアンは保健制度の確立を 『大きな進歩』として支持する一方で、国家が福祉を提供することには「才能のない人の割合を増加させる危険性がある」という懸念を表明しました。

3年後、ガーディアンはこうした立場をさらに進め、1951年の総選挙で保守党を支持しました。
一連の動きについて歴史家は、当時の編集者A.P.ワーズワースが福祉国家構想の背後にいた情熱的な労働党の政治家であるナイ・ベーバンを嫌っていたため、こうした決定が行われたと確信しています。

何か難しい問題の真っ只中にあるときに、たとえ個人的なポリシーとビジネス上での利害の対立を回避できたとしても、政治的に適切な解釈と判断をする事は簡単な事ではありません。

ニュース組織はときには事態を悪化させる方向に向かわせることがあるかもしれません - それらを正しい方向に向かわせるためには、正義を貫こうとする価値観と原則が必要であり、それによって事態は前に進むことになります。

 

ガーディアンの根幹を成すこうした中心的価値の多くは、1921年に創刊100周年を迎えた際に急進的な自由主義者であった編集長スコットによって定着させられたものです。
スコットはこう記しました。
「コメントは自由だが、事実は侵すべからざるものである。」
そしてガーディアンの価値観を次のように整理しました。
すなわち、正直、潔癖(誠実)、勇気、公平性、読者への責任感、そして地域社会への責任感です。

ジョン・エドワード・テイラーの創刊の際の宣言同様、C.P.スコットのエッセイは力強く希望に満ちています。

スコットはこうも書いています。
「新聞は物質的な存在であると同時に倫理観を持っている。」

テイラーとスコットによって成文化されたガーディアンの倫理的な信念は、人類が長い時間をかけて人間世界を理解し、そしてそれをより良いものにしてきたという確信に基づくものです。

ガーディアンは一般市民が創り出す価値を信じています。
そこには多数にとっての利益があり、共有することができる善意があります。
私たちすべてが平等な価値を持っています。
そして世界は自由で公正でなければなりません。

 

こうした啓示にあふれた考え方はガーディアンの根幹をなすものであり、マンチェスター・ガーディアンから1959年にガーディアンに題号が変わっても保たれてきました。
ガーディアンのステークホルダーはスコット・トラストだけです。
ガーディアンが産み出した富は、すべてジャーナリズムのために費やされなければなりません。
そしてオブザーバー紙ももちろん、独自の名誉ある歴史と展望を持っています。同じ企業グループの一翼として私たちは兄弟のようなものですが、双生児と言うほど似ているわけではありません。

大きな歴史的な事件に遭遇した都度、世界は自由で公正でなければならないという信念に支えられた報道こそがガーディアンの歴史を作ってきました。

独自の立場に立ったスペイン内戦の報道、世界を驚かせたエドワード・スノーデンの内部告発、スエズ危機の際の反植民地支配宣言、ルパート・マードックのメディア支配に対する抵抗、警察や政治家による電話盗聴スキャンダルにも立ち向かいました。さらにはジョナサン・エイトケンを結果的に刑務所に送りこむことになった報道、そしてパナマ文書の公開など、反権力の立場を一貫して貫いてきました。

 

これらの価値観、ポリシー、アイディアは確立されたものとなり、揺らぐことなく続いてきました。

しかし価値観やポリシーなど、それ自体は新しい時代の道徳体系が激変するという状況にどう対処すべきかを教えてくれるわけではありません。

これまで私たちが知っていた世界の枠組みはすでに崩壊してしまっており、ジャーナリストとして一市民として、これまでの価値観やポリシーやアイディアをどうやって維持して行けば良いのか、改めて問い直さなければなりません。

そしてこれまでの価値観やポリシーやアイディアが、将来に渡っても私たちの報道姿勢や報道目的を人々に伝えることが出来るのかという事も。

権力の無法な介入を招いたピータールーの公開会議が開催されてから約200年が経過しました。

しかし1989年に世界規模のウェブの仕組みが発明されて以降の30年間は、ジョン・エドワード・テイラーやC.P.スコットが想像も出来ない方法で世界の価値観を一変させてしまいました。

この技術革新は刺激的で劇的なものでした。

600年前にグーテンベルクが印刷技術を発明してマスコミュニケーションが確立され、支配階級と経済的な強者によって情報源は支配されてきましたが、ウェブ時代の到来はや多くの人々にとって新鮮な空気の息吹のように感じられたはずです。

 

World Wide Webシステムを考案したティム・バーナーズ・リーは、

「これはすべての人々のためのものです。」

と語りました。

始まりはスリリングなハイパー接続世界 - いつでも瞬時に誰とでもつながることが出来る時代の到来は、誰でも指先一本で世界中に散らばっている情報にアクセスして、何でも解決してくれるように感じました。

参加することはきわめて簡単で、誰もが助け合うことが出来る、理想社会の広場のようなものでした。

多くの報道機関はインターネットを古い権威を脅かす存在とみなしました。

しかし1995年から2015年までガーディアンを率いたアラン・ブリッジャーのような先見的な編集者はこうした技術革新がジャーナリズムの新たな可能性を開くものと判断してデジタル技術に積極的に投資し、この分野の技術者やプロダクト・マネージャーなどを新たに雇い入れました。

これは新しい世界のジャーナリストたちは、読者から積極的な提言と議論を受け入れる開かれた場所で仕事をすべきだとの認識に基づくものでした。

こうしてガーディアンはイギリスの報道機関として初めて一般読者から編集者を採用し、それまでのトップダウン方式の伝統的新聞解説モデルを逆転させたオピニオン・サイトを立ち上げました。

 

こうしてアラン・ブリッジャーはガーディアンをデジタル革新の最前線に置き、これまでとは全く違う読者や市民との間に新しい時代の関係を築きました。

4年前、私が『読者たちの台頭』というエッセイの中で述べたように、開かれたWeb環境は真に新しいジャーナリズムの可能性を創り出しました。

そしてWebによる技術革新を否定したジャーナリストたちは、自分自身の利益のみならず質の高いジャーナリズムがもたらすはずの恩恵のその両方を損なってしまうことになったのです。

 

《4》に続く
https://www.theguardian.com/news/2017/nov/16/a-mission-for-journalism-in-a-time-of-crisis

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今回の翻訳は、この【星の金貨】にとっても存在意義を問い直す良い機会になりました。

真実を淡々と伝えられて初めて、社会は正しい方向に向かうことができます。

しかし今の日本ではその多くが、一般国民の『多数派』の意思を向かわせる方向があらかじめ決めてある『操作性重視』の報道のように見えます。

それを『報道』と呼んで良いものなのかどうか…

 

しかも日本の報道のシステムには、この記事で語られているような信念を持ったフリーランスのジャーナリストたちを排除する仕組みまで作られています。

この記事の本分中にある

『ガーディアンは一般市民が創り出す価値を信じています。
そこには多数にとっての利益があり、共有することができる善意があります。』

という概念とは、まさに正反対の報道システムが幅を利かせているのが日本です。

たとえばNHKのような『公共放送』は、政治が本当に市民の利益を最優先に進められているかチェックしなければならないはずなのに、現状は国策の宣伝と浸透を最優先しているように見えます。

 

それによって日本は何を現実のものにしようとしているのでしょうか?

権力者の思い通りの現実になるように最大規模の報道機関が露払いするようでは、太平洋戦争以前の日本となんら変わりません。

どころか、世界における民主主義の発展と対照的な『退化』すすめる原動力になってしまっていると言わなければなりません。

 

イメージを変える!プレイボール in 福島《後篇》

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大手建設会社はオリンピック関連事業に集中、福島第一原発事故の被災地の復興のための公共事業には大幅な遅れが発生

スポーツがスポーツ以上の役割を果たすことが出来るよう取り組む、福島の地元チームの選手たち

福島の問題の根本的解決のため、日本政府事実を積み上げた正確な情報を公開する必要がある

 

セス・バークマン/ ニューヨークタイムズ 2017年12月29日

2013年9月、2020年のオリンピック開催地が東京に決定した時、安倍晋三首相は福島の「状況はコントロール下に置かれている」と語りました。

しかしその4年後、大手建設会社の多くが東京オリンピックに関連する事業に集中することになった結果、東日本大震災・福島第一原発事故の被災地の復興のための公共事業に大幅な遅れが発生することになったと、セイフキャストで活動しているアズビー・ブラウン氏が語りました。

 

しかし福島県の内堀知事は、県内の被災地の再建事業は著しい進展を見せていると主張しています。

内堀知事はその一例として県内の観光施設が次々とリニューアル・オープンしていること、そしてスポーツ関連事業の活性化により市民が自信を取り戻す動きが広がっていると指摘しました。

一方で知事は放射性物質によって汚染された地域の再建と人口の減少は見過ごせない事実であり、これらの対照的な側面を「福島の光と影」と表現しました。

内堀知事は

「現時点で福島の地でオリンピック競技を開催することに否定的な点は見当たりません。」

と述べ、

「組織委員会と日本政府と協力しながら、福島でイベントを開催します。」

と付け加えました。

内堀知事は、福島の状況に関する「風評被害」が県内の影の部分を大きくしているとも語りました。

広範囲に及んだ福島第一原発の事故の影響により、未だに多く市町村が人が住めない状態のままです。

福島第一原発の事故収束・廃炉作業そのものも完了まで40年以上がかかるとされ、その費用も20兆円以上が見込まれています。

 

それでもオリンピックの競技開催に希望を見出そうとしている住民たちがいます。
「福島でのオリンピック競技開催が実現しなければ、これからも長い間福島のイメージは変わらないままになってしまいます。」

福島大学の学生である渡辺あやさんがこう語りました。

彼女は2017年夏にヒューストンに短期留学し、大リーグの地元チーム・アストロズがワールドシリーズで優勝したことにより、ハリケーンで大きな被害に見舞われた同市の人びとが勇気づけられる様子を見てきました。

「福島の見方を変えるためのまたとない大きなチャンスです。」

ホープスもファイアー・ボンズも比較的新しいチームですが、選手たちは福島の立ち直りにスポーツがどれほど役立つかをつぶさに目撃してきました。

アメリカ・ニュージャージー州にあるモンマス大学で大学バスケットボールの選手だったデオン・ジョーンズ氏はファイヤーボンズの選手として1年目を迎えました。

彼の母親は当初、福島に住むことを心配していましたが、彼自身は選手生活をエンジョイしており、二本松市出身の選手たちから環境中の放射線量や気をつけなければならない点に関する具体的情報を得ています。

 

選手たちは週に数回、地元の学校で子供たちの指導も行っています。

チームのスポークスマンは、ホームゲームではファイアー・ボンズのファン、約2,000人が試合観戦にやって来ると語りました。
「少しだけど、バスケットボール以上のことが出来ていると思います。」

ジョーンズ氏がこう語りました。

「みんな福島のひとりひとりのためにプレーしています。」

さらに日本人の国民的娯楽とも言うべき野球があります。

2020年のオリンピックの開催地が東京に決定した後、日本は国内で長い歴史を持ち青少年の競技人口が多い野球を、公式競技として再びオリンピック種目に加えるよう強力に運動しました。

2011年の東日本大震災・福島第一原発事故以降、福島県の野球人口は落ち込んでしまいました。

福島高校野球連盟の小針淳監督は、過去6年間の高校生の野球人口の動向の調査を続けてきました。
「これは間違いなく福島第一原子力発電所の事故の影響によるものです。」

小針氏がこう語りました。
栗山美和子さんの息子の良太君は福島県内の商業高校の野球部に所属していましたが、津波の被害に遭い避難しました。

良太君の通っていた小学校は完全に廃校になりました。

当時栗山さんは良太君が野球の練習をするために、片道90分をかけて送り迎えをしていました。

 

最近の日曜日の午前中、栗山さんは福島市の信夫が丘球場で高校のチームメイトと一緒に良太君も加わった練習試合を観戦していしまた。

彼女はネット裏で観戦していた他の6人の母親に加り、軽食を分けあいながらスコアを黒板書き記し、ヒットを打ったり走塁する度、声を合わせて応援したり笑ったりしていました。

栗山さんは息子の学校が閉鎖される以前、一緒にプレーしているチームメイトの事を1年生の時から見知っていました。

その記憶と目の前の子どもたちの様子が重なり合い、栗山さんは大家族の中で時を過ごしている時のように、気持ちが解放されるのを感じていました。

近くにある吾妻野球場では、2年半後にオリンピックが開催される同じ球場で福島市からやってきたリトルリーガーが試合をしていました。

松川運動公園の野球場では子供たちの試合が行われていましたが、日本のプロのゲームでよく使われるプラスチックのメガホンを使った音響効果で会場が盛り上がっていました。

 

こうした雰囲気を楽しむ住民たちの日常的な様子が見られる同じ場所に、2011年の災害の傷あとは残っていました。

フェンスで区切られた吾妻公園の一角には、福島県内の除染作業によって排出された低レベル放射性廃棄物が詰められた数百個の巨大な黒いごみ袋が保管されていました。

目の上の高さにまで積み重ねられ、処分場への移送などまだ適切な処置は行われないままになっています。

市は日本の環境省と協力してオリンピック前にはすべて処分できるよう取り組みを行っていますが、現在は処分場ではなく野球場まるまる一個分のグラウンドに仮置きされたままになっています。

 

福島市内各所の野球場では、子供たちが一塁めがけて走ったり右翼席めがけて高く上がったフライを追いかけて走るその先に、その日の放射線量を表示するサインボードが見る人を脅かすように経っています。

野球をしている子供たちの生活はスコアボードに掲示された点数以上に、ここに表示された放射線量に深刻な影響を受けてきました。

福島ではスポーツが人びとの心を癒すことに役立っていますが、将来に対するすべての疑念が払拭されたわけではありません。
「日本政府は科学的な証拠を揃えた上で、事実を積み上げた正確な情報を私たちに知らせる必要があります。」

11歳になる息子の圭吾君も参加している試合を観戦していた角館道明氏がこう語りました。

「日本政府はもう問題は無いと語っていますが、誰も納得はしていません。」

 

〈 完 〉

https://www.nytimes.com/2017/12/29/sports/fukushima-nuclear-disaster-tokyo-olympics

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被災した市町村や地域は破壊されたまま、説明責任は果たされず、放射線による環境汚染は今後数十年間という単位で続く

第一原発周辺の自宅への帰還を決定した人々も、実際にはどこかに魔物が潜んでいる家に住み暮らしているかのような不安と疑問を抱えながら生活している

 

セス・バークマン/ ニューヨークタイムズ 2017年12月29日

11月初め明るい色彩の数々のバナーと広告に埋め尽くされたJR福島駅で、地元サッカークラブの福島ユナイテッドの誕生とリーグ戦の地元開催を祝う式典が開催されました。

そしてこの地域にはすでに新しいプロ野球チームやバスケットボール・チームの根拠地も設置されています。

それぞれのチームには『ホープス(希望)』や『ファイヤーボンズ(燃える絆)』のような心を奮い立たせるような名前が付けられていますが、特に後者についてはチームの地元への思いを表現しているとバスケット・チームのポイント・ガード・ポジションの21歳の猪狩渉氏が語りました。
福島はもともとスポーツへの関心が高い地域ですが、2017年3月に国際オリンピック委員会(IOC)が2020年東京オリンピック大会で福島での野球とソフトボールの開催を承認したことで最大のブームがやってきました。

 

しかし福島という言葉が悲劇を定義するものであるという現実は残り続けています。

2011年に発生した東日本大震災で発生した巨大地震と津波は、東北太平洋岸を中心に約16,000人の犠牲者を作りだし、福島第一原子力発電所では原子炉のメルトダウンや放射能の漏出が発生しました。

福島第一原発事故が作り出した荒廃は、コネチカット州の規模に近い福島県のあらゆる場所に広がりました。

約2百万人の福島県民のうち、発電所周辺で暮らしていた16万人以上が避難を余儀なくされ、難民化してしまいました。


福島第一原発の事故はまた、福島の名前を深刻に傷つけました。

 

福島県内観光の客足は途絶えました。

 

日本の残りの都道府県は福島県産の農産物やその他の生産物を避けるようになりました。
事故から約7年後、福島県と同じ福島の文字を冠する県庁所在地を中心に、スポーツを通してその認識を変えようとする取り組みが始まっています。
「私地たちが暮らす場所はまるでチェルノブイリのように見られています。」

スポーツショップ「スポーツランド」を運営している福島県生まれの斎藤信幸氏がこう語りました。

「それを変えさせるのは大変なことです。」

 

福島氏の名前を復活させたいと考えているのは、岩村明憲氏です。
岩村氏は2008年ワールド・シリーズのタンパベイ・レイズの第2塁手としてスタートしました。

岩村氏はまた日本プロ野球リーグでは13年間プレーし、日本とのワールド・ベースボール・クラシック選手権はで2度の優勝経験を持っています。

現在38歳の岩村氏は、プロ野球リーグ下位のベースボール・チャレンジ・リーグで苦戦しています。

アメリカで最高レベルの野球を経験してきた岩村氏は現在、時々しか試合の無いセミプロチームの福島ホーブスの監督に就任しています。
「私は自分自身を宣教師と呼んでいます。」

岩村氏がこう語りました。

「今は多くの人々が否定的な意味で福島という名前を受けていますが、それを肯定的な意味に変えなければなりません。」

東日本大震災の地震と津波が襲ったとき、岩村氏は楽天ゴールデンイーグルスに選手として加入する準備をしていました。

岩村氏は南日本の愛媛県出身ですが、選手を引退した後福島の再建を支援する「運命」を担うことになったのだと感じたと語りました。

岩村氏のこうした決心を励ました人の中に、レイズ時代に岩村氏のコーチを務めたことがあるシカゴ・カブス・マネージャーのジョー・マドン(Joe Maddon)氏がいました。
2020年に地元球団福島ホープスの根拠地である福島吾妻球場でオリンピックの試合が開催されれば、地域のイメージを良いものに転換する舞台に岩村氏が立つ機会を手にするかもしれません。

そして福島が第一原子力発電所の事故を乗り越えたことを世界に向けアピールする絶好の機会だととらえています。

 

「来日した世界の観客がそれぞれ帰国すれば、実際に目にした印象をそれぞれの国の地元の人々に伝えることができます。そうなればさらに多くの人々が福島にも観光に訪れるようになるでしょう。」

岩村氏がこう語りました。

福島吾妻球場は首都圏と言っても良い場所にあり、新幹線で東京から約90分の場所にあります。

福島第一原発からは西方約90キロの位置です。

福島市は福島第一原発の隣接及び沿岸部の市町村ほどは深刻な事故の影響を受けていません。

これらの市町村の汚染状況は深刻であり、その事実がオリンピック開催のために無視される可能性があることを批判する意見もあります。

2017年3月東京オリンピックの野球試合が福島市で開催されることが発表されると、原子力発電に反対する運動している人びとがこうした動きを非難しました。

こうした人々はいまだに避難生活を強いられている120,000にも上る原発事故の被災者、原発難民とも呼ばれる人々が今だに、そして場合によっては永遠に故郷に戻れない状況に追い込まれているにも関わらず、数々の難問を残したまま福島があたかも以前と変わらない正常な状態に戻ったと上辺だけを取り繕うものだと批判を強めています。

 

「日本政府は、福島の偽りの側面を表に出すことを望んでいるのです。」

東京の市民原子力情報センター事務局長の松久保肇氏がこう語りました。

東京にある市民原子力情報センターの事務所で、松久保氏はスポーツ新聞のボックススコアのように、福島県内の各市町村の放射線量を毎日伝えている福島民報の紙面を広げて見せました。

 

一般の市民が放射線量を含めた環境データを、行政などとは別に独立して測定するのを支援する組織であるセイフキャストで活動しているアズビー・ブラウン氏は、オリンピック期間中に福島市内のスタジアム近くに1週間程度滞在する観光客などは、おそらく日常的に存在する程度より高い放射線にさらされることはないだろうと語りました。

しかし福島県全体の状況に関する政府の見解については同意しませんでした。

ブラウン氏は電子メールで次のように述べています。

「福島第一原発の事故によって被災した市町村や地域は破壊されたままです。

説明責任は現実には果たされず、放射線による環境汚染は今後数十年間という単位で続くことになるでしょう。

細心の警戒と徹底的な監視の継続が今後も必要になるはずです。」

「放射線測定結果を受け入れ、それに基づいて被災地にある自宅への帰還を決定した人々も、実際にはどこかに魔物が潜んでいる家に住み暮らしているかのような不安と疑問を抱えながら生活しているのです。」

 

〈 後篇に続く 〉

https://www.nytimes.com/2017/12/29/sports/fukushima-nuclear-disaster-tokyo-olympics

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ニューヨークタイムズの記事を水曜、金曜の2回に分け掲載いたします。

ガーディアンの『危機の時代のジャーナリズム』間の続きは次週掲載いたします。

実は福島第一原発の事故に関する最近の記事を翻訳していると、故郷を一日も早く再建したいという被災地の方々の思いと、未だに危険が残る場所に人々が戻ることの将来の危険、核廃棄物処理の問題などが交錯し、複雑な思いに駆られることが多くなりました。

しかしやはり、すべての真実を明らかにした上で、問題の本質的な解決に取り組むしかない、それが正しい結論だと思います。

祭りばやしをにぎやかに演出して、深刻な問題の存在を曖昧にすること、それを『解決』とは言いません。

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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