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星の金貨 東日本大震災や音楽、語学、ゴルフについて語るブログです。

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【 40年続いた幻想を、粉々に打ち砕いたフクシマ 】《第4回》[フェアウィンズ]

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所要時間 約 7分

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マグニチュード7.0以上の地震が発生した場合、3号機原子炉建屋は倒壊の恐れがある
福島第一原発の危機は、戦争と同じぐらいの国家的危機である

フェアウィンズ 7月18日

ガンダーセン : 第2はここ数年私が懸念し続けてきた問題です。
原子炉4号機の構造に関わる問題です。

現在4号機の使用済み核燃料プールには、最も多量の使用済み核燃料が存在します。
しかもまだ熱を持っているのです。

そのため、4号機使用済み核燃料プールの冷却機能が失われれば、大量の核燃料が火災を起こすことになり、莫大な国土を汚染してしまうことになります。

時間の進行とともに核燃料の温度は下がり続け、その分火災発生の危険性も減少していくことになります。
しかし4号機の核燃料はまだその段階には至っておらず、プールの水が失われてしまえば火災が発生する恐れは充分にあります。

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そして現在計画されている使用済み核燃料プールからの核燃料の取り出し作業、その前提条件となっているのは、プール内の核燃料が無傷のままであるという事です。
もし核燃料を変形させてしまうほどの地震が発生すれば、当然使用済み核燃料プールが損傷し、全てはご破算になってしまいます。
水が失われ燃料の冷却が出来なくなり、そうなれば燃料はたちまちに発火点となる温度まで上昇し、火災を発生させてしまう事でしょう。

そして第3の問題、それが原子炉3号機に関するものです。
3号機に残っている核燃料は4号機ほど多くはありません。
その点はましだと言えるでしょう。

問題は3号機の場合、事故による損傷がひどいという点です。
仮にマグニチュード7.0以上の地震が発生した場合、4号機の原子炉建屋はもっても3号機の方は倒壊の恐れがあるのです。
3号機の核燃プール内にある核燃料の量が4号機よりも少なくても、構造上深刻な問題を抱えており、福島第一原発が抱える最大の機器のひとつとして私にとってもずっと気がかりでした。
3号機が爆発した(正確には『爆轟』、あるいは『即発臨界』。詳しくはガンダーセン氏による解説をお読みくださいhttp://kobajun.biz/?p=5311 )際、巨大な衝撃波が生みだされ、原子炉と原子炉建屋が最大の損傷を受けました。

この問題は計り知れない程危険です。

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日本はこの問題について、戦争と同じ対応をしなければなりません。
いざ戦争が始まった場合、国は敵の状況を無視し、予算の制約によって一方的に作戦を変更したりするでしょうか?
福島第一原発の危機は戦争と同じぐらいの国家的危機である、私はそう認識しています。

東京電力は福島第一原発の事故収束・廃炉作業について限られた『予算』を計上し、その予算内ですべての処理について『最善を尽くそう』としています。

そして日本政府にとっては、もはや福島第一原発の事故収束・廃炉作業に使うべき充分な予算が無いという事実を認めることよりも、あらゆる責任を東京電力のみに負わせることの方がはるかに楽なことなのです。

世界の産業事故史上、最大となったこの福島第一原発の事故を解決するためには、必要なだけの資金を確保するための基金を設立する必要があります。

私はこの問題についてこれ以上日本政府や東京電力に期待することはできませんが、日本の皆さんには福島第一原発の事故によって、日本人が潜在的にどれ程巨額の借金を負わされてしまったのか、きちんと考えていただきたいと願っています。

日本人が福島第一原発の事故によって背負った借金は50兆円から75兆円の間だと、私は考えています。

松村 : 福島第一原発で現在起きしている環境問題、そして健康問題を解決するための最良の方法にはどんなものがあるでしょうか?

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ガンダーセン : 福島第一原発の事故の根幹部分を形成するものとして、私は2つの問題があると考えています。

ひとつは地下水が破壊された3つの原子炉建屋に流れ込んでいる問題です。

ここで思い出していただきたいことがあるのですが、東北地方の太平洋岸は東日本大震災によって約90センチの地盤沈下を起こしました。

あなた自身がビルディングになったつもりで、ちょっと考えてみてください。
もしビルディングであるあなたが建っている地面が、突然90センチも沈み込んでしまったら建物の基礎の部分が壊れてしまいますね。
そしてもっと大切なことがあります。
建築物が90センチ沈み込むことにより、基礎部分にかかる水圧が高くなってしまうのです。
これが福島第一原発の原子炉建屋の地下部分に殺到している地下水の量が、一日に400トンにも達している理由のひとつなのです。

〈 第5回につづく 〉

http://fairewinds.org/media/fairewinds-videos/forty-good-years-and-one-bad-day
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今回のガンダーセン氏の指摘もいよいよ佳境に入ってきました。
次の2点はきわめて重要な指摘だと思います。

マグニチュード7.0以上の地震が発生した場合、3号機原子炉建屋は倒壊の恐れがあり、その場合は日本全土が汚染される可能性がある

福島第一原発の危機は、戦争と同じぐらいの国家的危機であり、限られた予算なりの対応などもってのほかである

この2点は、数多く福島第一原発関連の記事を翻訳してて来た私も、改めて感じ入らざるを得ない指摘です。

現在の政府がこれ程の国家的危機を矮小化し、隠ぺいし、その上足もとにすでに火がついているのに、中国・北朝鮮との武力衝突の準備に多額の国家予算をつぎ込もうなどと言う態度には、ヒトラー並みの狂気を感じます。

【 40年続いた幻想を、粉々に打ち砕いたフクシマ 】《第3回》[フェアウィンズ]

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所要時間 約 7分

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福島第一原発の事故収束・廃炉作業には、もっと別のやり方がある
将来の社会においては、原子力発電に代わるべき別の発電手段がある
地震発生により、700基以上の汚染水タンクに倒壊の恐れ

フェアウィンズ 7月18日


ガンダーセン : このビデオの冒頭部分で、私たちは福島第一原発で今実際に起きている状況、その本当の状況を明らかにし、その解決のためのひとつの選択肢を提案しようとしています。

様々な新聞記事、あるいはネット上で公開されている専門家やジャーナリストのブログなどを見れば、福島第一原発には公開されている以上の数限りない問題が存在していることに気づかざるを得ません。
海に流出している放射性物質、ワイヤーをかじるネズミたち…
しかしこの2年有余、福島第一原発の問題に向かい合ってきたフェアウィンズとしては、さらに皆さんに伝えなければならない事実があるのです。

福島第一原発の事故収束・廃炉作業には、もっと別のやり方があるはずです。

将来の社会においては、原子力発電に代わるべき別の発電手段があるのです。

4号機建屋
そこでこのビデオの後半部分においては、福島第一原発の真実の状況に加え、世界がどの方向に向かって進むべきかをお話しています。
どうか皆さん、このメッセージが一人でも多くの方に伝わるように、寄付、翻訳、そしてツイートなど皆さんができることをしてください。
そうやってフェアウィンズの取り組みをサポートしていただきたいのです。
フェアウィンズは、最悪の結果があなたの側そばで現実のものにならないようにするために、あなたにも手を貸していただきたいのです。

松村 : アーニー、ありがとうございます。
さて、次に政治指導者の問題について考えたいと思います。
昨年私は2度日本を訪問し、福島第一原発の問題は国家的危機であると表明しました。
そして福島の問題は、単に技術的課題に留まるものでもないし、民間企業に任せきりにしてよい問題でもないと主張しました。
この問題の処理を誤ればその災厄は日本国内に留まるものではなく、福島第一原発の危機は世界的にも重大な原子力災害なのです。
解決すべき問題の筆頭に挙げるべきものなのです。

ところでアーニー、あなたは事故発生以来原子炉4号機の危険性について警告を繰り返されてきました。
使用済み核燃料プール内の膨大な量の汚染水、そして使用済み核燃料の問題です。
そして最近では、3号機についても重大な懸念を表明されていますね。
原子炉3号機のどの点が問題なのか、4号機の問題と比較しながら詳しく説明していただいてよろしいですか?

4号機プール視察
ガンダーセン : ご説明しましょう。
福島第一原発は現在不安定なままですが、ただし、大きな地震に見舞われない限りはまだ大丈夫です。
『大きな』地震とは、地震が頻発する国で大きなものと感じる程の地震、つまりはマグニチュード7.0以上の地震の事です。

現在、福島第一原発には3つの大きな問題があります。

最初のひとつ、それは発電所内の数百基のタンクに貯蔵されている放射能汚染水です。
東京電力は福島第一原発の敷地内において、どこにどれだけの放射性物質が存在しているか正確なところを明らかにしていませんが、汚染水のタンク内には膨大な量の放射性物質があることは疑いありません。

福島第一原発の発電所の外に居た人々が、大量の被ばくをさせられてしまったことは隠しようの無い事実です。
それからしても、発電所内に莫大な量の放射性物質がある事は間違いないのです。

ここに制御放射と呼ばれる現象があり、さらにはタンク内の放射性物質の放射性崩壊により、高い値のエックス線が福島第一原発の外部にも放出されています。
それはつまりどういう事でしょうか?
何百とある汚染水タンクは、きわめて高い値の放射性物質を含んでおり、しかもこのタンクは耐震構造を持つものはひとつもありません。
もし大地震が起きれば、その結果は目に見えています。

そう、大地震が発生すれば、700以上あるタンクから高濃度の汚染水がほとばしり出て、発電所の地面を走り、太平洋になだれ込むことになるのです。

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貯蔵されている汚染水の量は、これまで太平洋に流れ出した汚染水の量を上回っています。

そうです、1番目の問題とは、地震発生により貯蔵タンク内の汚染水が太平洋に流れ込む危険性があるという事なのです。

〈 第4回につづく 〉

http://fairewinds.org/media/fairewinds-videos/forty-good-years-and-one-bad-day
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第一回の掲載で、このシリーズを全4回に分けて掲載するとご紹介しましたが、実際に翻訳してみると考えていた以上に長いため、全5回の掲載に変更させていただきます。

翻訳していて自分で気が付いたのですが、私はガンダーセン氏のお話を翻訳している時が一番楽しいかもしれません。
ガンダーセン氏に、他とは比較にならない強さの『科学者としての良心』を感じるからかもしれません。

さらには、ガンダーセン氏の一言一言をふさわしい日本語に置き換えていくと、眼前に福島第一原発の事故の真実の姿がくっきりと、非常に解りやすく展開されて行きます。
東京電力や日本政府の発表だけでは、事故の全体像などつかみようがありません。

福島第一原発の真実を一人でも多くの方にご理解いただくために、フェアウィンズの記事をお一人でも多くの方にお読みいただきたいと願うばかりです。

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【 老いも若きも…ハノイの路上散髪店の伝統は続く 】

アメリカNBCニュース 7月20日
(掲載されている写真を、クリックして大きな画像をご覧ください)

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ベトナムの首都、ハノイの路上散髪店の歴史は18世紀にまでさかのぼることができます。
散髪料金はその店の知名度、お客さんがどの程度のお得意さんであるかによって決まりますが、平均して1回100円〜400円程度です。
軍人上がりが多く、家族のため日銭を稼いでがんばっています。

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【 40年続いた幻想を、粉々に打ち砕いたフクシマ 】《第2回》[フェアウィンズ]

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所要時間 約 7分

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日本の人々には、これから放射線とともに生きる日々が待っている

フェアウィンズ 7月18日


松村 : アーニー、まず、このような非常に有意義な場にお招きいただいたことを感謝します。

今回私は初めてバーモントを訪問しましたが、まずはあなたと奥様のマギーさんが、福島が予断ならない状況にある事を、くりかえし啓発されてこられたことについて、お礼を申し上げたいと思います。
私のブログをご覧になっている皆さんも、フェアウィンズの取り組みを非常に高く評価されています。

ガンダーセン : ありがとうございます。
今回あなたをお招きしてお話が聞けるという事は、非常に意義がある事です。もちろん、妻のマギーもこの日を心待ちにしていました。
世界が真実を知りたいと思っている以上、私たちも最善を尽くしていくつもりです。

松村 : ところで私は、東京電力に果たしてこの巨大事故の収束能力があるかどうか?という多くの質問を読者から受け取りました。
私には判断のしようがありません。
しかし、経営陣も東京電力独力では事故処理はできないと考えている、そのような内輪話を耳にしたことがあります。
しかし私たちは素人であり、正しい判断ができるわけでもありません。
その上福島第一原発の事故については、様々な立場の科学者がまるで違う発言を繰り返しています。
そこで私は国連が核物理学者、原子力工学の科学者、地質学者などからなる独立した調査チームを編成し、改めて検証を行うよう要請する書簡を、国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長あて送りました。
日本の鳩山元首相にも同様の意見を述べました。

ヘレン・カルディコット博士

ヘレン・カルディコット博士


現在信じ得るのはヘレン・カルディコット博士の発言、そしてアーニー、あなたの見解だけだと考えています。
そこであなたに最初の質問です。
私の提案内容は、福島の現状についてあらゆる側面から検証し、全ての問題を明らかにするため、独立した国際的調査団を設立すべきであるというものですが、あなたはどうお考えになりますか?

ガンダーセン:それは素晴らしいアイディアだと思います。

わたしはこう考えます。
真に独立専門家によって構成される調査チームを編成の上、福島に派遣し、これ以上日本の人々を放射線被ばくさせないための論理的に正しい対策を策定し、急ぎ実行する必要がある。
国連には独立した機関としてIAEA、すなわち国際原子力機関がありますが、その憲章の第2項にははっきりと「原子力政策を推進する」と書かれています。
私に言わせれば、これでは独立した機関とは言えません。

独立した調査チームは、これから
1. 放射線とともに生きていかなければならなくなった
2. そしてこの放射線を取り除く取り組みをしなければならなくなった
日本の人々に信任される必要があります。

この状況を考えれば、原子力発電を推進しようとしているIAEAのような機関に調査を任せることは、馬鹿げている以上に危険でさえあります。

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専門家による国際調査団が現地に入り、どうすれば事故収束・廃炉作業を前に進めることが出来るのかを日本の国民の皆さんに明らかにし、その上で東京電力以外の手によってその作業を行う、そのことが大切です。

もう一つ大切なことは、本格的な事故収束・廃炉作業が始まり、東京電力とは別の技術企業体がその作業を行う場合には、その企業はおそらくは国際的な連合企業になると思われますが、独立調査団は現地に留まり、作業の進展の監督をする必要があるという事です。
なぜなら一方では原子力発電所を建設しているような企業が、的確な事故収束・廃炉作業を行う事を日本の人々に信じさせることは難しいからです。
全ての行程を監督すること、それが専門家による独立した調査チームに課せられる使命なのです。

またこの調査チームは日本政府に対して、問題の解決に必要な費用を支出するよう圧力をかけられるようにすることも必要です。

現在日本政府はもうこれ以上、東京電力に国の予算を割きたくはないと考えていると思われます。そうである以上、東京電力は本来必要な金額を下回る予算で、あらゆる問題に対処していこうとしている、そう考えられます。
そこで必要になるのが、国際調査団が新たに契約した企業に対し正しい処理、必要な処理を行うよう指導し、その上で福島第一原発の事故収束・廃炉作業に必要な本当の金額を日本の人々に公開することです。
そうして初めて、現在福島第一原発が直面している2つの大きな課題をクリア出来ると考えています。

〈 第3回につづく 〉

http://fairewinds.org/media/fairewinds-videos/forty-good-years-and-one-bad-day
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フェアウィンズの原稿を翻訳するたび思うのは、もしガンダーセン氏が居なかったら、福島第一原発事故の解明はここまで進まなかっただろう、という事です。

氏の経歴の中で光るのはやはり、スリーマイル島の事故収束・廃炉作業に関わったという事でしょう。
だからこそ現在東京電力がやっている作業の問題点が、『わかり過ぎるほどわかる』のだと思います。

そしてカルディコット博士は、原子力、核災害が人体にどのような影響を及ぼすか、そのスペシャリストです。
チェルノブイリの被災地はもちろん、博士はイラク戦争の際アメリカが劣化ウラン弾を使用した地区にも飛び、現地の健康被害も調査されるなどし、今日の発言をおこなっておられます。

こうした方々の地道な努力により、今日私たちは原子力発電所事故の恐ろしさを実感できるのだと思います。

【 40年続いた幻想を、粉々に打ち砕いたフクシマ 】《第1回》[フェアウィンズ]

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所要時間 約 9分

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原子力発電の『可能性』、そのすべてをたった一日で粉砕したフクシマの現実
あなたの間近でフクシマの事故が現実にならないよう、あなた自身ができることに取り組んでください

フェアウィンズ 7月18日

フェアウィンズのアーニー・ガンダーセン氏が、国際的な外交官として知られ、国連開発計画の元特別顧問であり、人類の生存のための宗教指導者と議会指導者のための国際フォーラムを創設してその事務総長に就任し、1992年にリオデジャネイロで開催された議会地球サミット会議では事務局長を務めた松村昭雄氏と対談を行いました。

ガンダーセン氏と松村氏は今なお続いている福島第一原発の危機的状況を検証し、一日も早く東京電力を事故収束・廃炉作業から除外すべきであるとの一致した結論に達しました。

そしてガンダーセン氏が自らが原子力産業界で過ごした40年間を振り返り、たった一日の出来事がそれまでの考えを全く逆転させてしまった、「楽しき40年と恐るべき1日」についての経験について語りました。

ガンダーセン : こんにちは、フェアウィンズ・エネルギー・エデュケイションを主宰するアーニー・ガンダーセンです。今日に至り、私は自分自身が原子力産業界で得てきた経験を、少しばかり皆さんと共有したいと考えるようになりました。
42年前に私はレンセラー工科大学で学年でトップの成績を収め、原子力工学の学士号を得ました。
そして翌年には原子力工学の修士号を獲得しました。
私は原子炉を実際に操作する資格も持っていました。

スリーマイル事故
当時私は原子力発電が世界を救うことになると、本気で思っていました。
私は原子力技術の開発、そして原子力発電所の管理運営に心血を注ぎ、安全管理の特許を獲得するまでなったのです。
私は認められて上級副社長に就任し、原子力発電のすべてを知る立場に収まりました。

そして私は原子力発電の内部告発者になったのです。

私がそうしていた間に、まずスリーマイル島の事故が起き、続いてチェルノブイリで原子炉が爆発しました。
それでも私は原子力発電技術は安全だと信じていました。
いずれの事故も、原子力発電所を管理している側に問題があったと考えたのです。

ではなぜ私が内部告発を行うようになったのか、その時のことを振り返りましょう。
私は原子力発電の安全基準こそは白馬の騎士であると信じていました。
そして地平線の彼方からやってきて、当時悩み始めた私の心を救い出してくれるものと考えていたのです。
しかしそれは幻想に過ぎませんでした。
その事により、私はアメリカにおける原子力発電の管理・規制が不完全なものであることを理解したのです。
しかしまだ心の奥底では、原子力発電は安全な技術だと信じたい、そう考えていたと思います。

チェルノブイリ
さて、その後の私の人生は、NGO、つまり非政府組織などのために報告書や論文を提出することに費やされるようになりました。
それでもまだ心の底では、誰もが一生懸命前向きな取り組みを続ければ、原子力発電はいつか安全な技術として確立する日がやってくると信じていました。

そして福島第一原発の事故が発生しました。

福島では安全を確保するためのあらゆる技術が、競うようにして崩壊して行ったのです。

海水を使った冷却装置は機能しませんでした。

ディーゼル発電機は役に立たなくなりました。

外部電源も使えなくなってしまいました。

そして原子炉の故障。

原子炉格納容器の爆発。

環境中に放射性物質を拡散させないための防御装置も、役には立ちませんでした。

全ての『安全技術』が崩壊してしまったのです。

その事が原子力技術者としての私の後半生を決定してしまったと思います。

FR24 破壊された福島第一原発
今私は原子力発電は40年間夢を見続けた挙句、フクシマの一日によって現実に引き戻された、そう考えています。
原子力発電は私が人生の多くを捧げたものですが、あなたの間近でフクシマの事故が現実にならないよう、あなた自身ができることに取り組んでください。

フェアウィンズ・エネルギー・エデュケイションは、ここでご紹介するような映像による情報提供を2年以上に渡り続けてきました。
今日ではその取り組みに対し、世界中で一定以上の評価をいただくようになりました。

私たちは単にニュースとして、福島第一原発の事実を伝えるだけではありません。
そこでいったい何が起きているのか、その事実が指し示す真実とは何なのか、分析と解説を進めることにより、他のメディアからは得られない『真実』をお伝えしたいと考えています。

ところで7月はフェアウィンズを立ち上げた月であり、妻のマギーや私たちの周囲には一緒に働こうというスタッフが集うようになりました。
これからも私たちが有意義な活動を続けられるよう、ふたつほどお願いしたいことがあります。

ひとつ目は、ご意見をお寄せいただきたいのです。
ツイッターやフェイスブックにもフェアウィンズのアカウントがあります。
また英語のほか、フランス語、ドイツ語、そして日本語のサイトもあります。

もう一つは活動資金へのご協力をお願いしたいという事です。
私たちの活動は無償では継続することができません。

ガンダーセン氏
マギーと私はフェアウィンズの活動を無償で行っていますが、スタッフが居なければフェアウィンズの活動を継続することは不可能です。
そして若干の必要経費もあります。
私たちの活動にご賛同いただけるのであれば、ぜひ一度ご寄付についてもご検討いただけますよう、お願いしたいと思います。

それでは、松村昭雄氏と私との対談が、あなたのために役立つことを願っています。

〈 第2回につづく 〉

http://fairewinds.org/media/fairewinds-videos/forty-good-years-and-one-bad-day
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今日からフェアウィンズ、アーニー・ガンダーセン氏と松村昭雄氏との対談を4回に分け掲載いたします。
第一回はガンダーセン氏による序章とも言うべき内容で、対談そのものは明日日曜日の掲載をお休みさせていただいた後、29日月曜日の掲載からご紹介して行きます。

ガンダーセン氏は福島第一原発の事故について、これまで何度も重要な指摘をされてきました。
それがまず欧米のメディアに取り上げられて問題となり、それを見て日本政府や東京電力が対応を余儀なくされるという展開が見られます。
4号機の核燃料の問題を真っ先に指摘したのはガンダーセン氏であり( http://kobajun.biz/?p=2724 )、それを受けてまずアメリカの上院議員が来日して現地調査を行い、それに煽られるように当時の細野原発事故担当大臣が現地に入り、その後やっと東京電力が具体的対策を実施するという展開になった事は、私たちの記憶に新しいところです。

また、ガンダーセン氏とヘレン・カルディコット博士との対談は、私たちが知らない数多くのフクシマの現実を教えてくれました。( http://kobajun.biz/?p=5025 ~ http://kobajun.biz/?p=5436 )

さらには最も新しい『アメリカの除染の専門家が明らかにする、本当の汚染状況【 人の手によって作られ、人の手により悪化していく福島の危機 】〈第1回〉~〈第4回〉』( http://kobajun.biz/?p=11924 ~ http://kobajun.biz/?p=12039 )はお読みいただいたみなさんから大きな反響をいただきました。

今回もぜひ、ひとりでも多くの皆さんにお読みいただけるよう、細心の翻訳を心掛けたいと思います。

【 汚染水の海洋流出、ついに東京電力が認める 】

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所要時間 約 9分

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様々なトラブルの兆候を繰り返し見落とし、問題に発展するたび隠ぺいを図り、公表を意図的に遅らせた東京電力
発表の遅れは、東京電力が福島第一原発で続いている危機に充分対処できていない現実を、改めて強く印象づけた

AP通信 / アメリカCBSニュース 7月22日

汚染水01
22日月曜日、東京電力は津波によって破壊され完全に機能を失っている福島第一原発から、汚染水が海洋中に両出している可能性が高いと発表しました。
これまでずっと専門家によって指摘されてきた問題について、東京電力が初めて公式に認めました。

さらに東京電力は、明らかに甲状腺ガンのリスクが増大する値以上の放射線被ばくをした福島第一原発の緊急作業員の数が、実際には当初発表した数の10倍であったことが判明し、この点においても批判を浴びました。

発表が遅れたことは、東京電力が福島第一原発で続いている危機に充分対処できていない現実を、改めて強く印象づけました。
東京電力は福島第一原発の事故現場で様々なトラブルの兆候を繰り返し見落としており、問題に発展するたび隠ぺいを怒ったり、公表を意図的に遅らせたりし、多方面から批判を浴び続けています。

東京電力のスポークスマンである小野雅之氏は、手例の記者会見において、破壊された原子炉建屋付近の汚染水が地下水に入り込み、それがそのまま海洋中に流出しているものとみられると語っています。

日本の原子力監視機関の職員や原子力発電の専門家は、事故発生当時から汚染水が太平洋に流れ込んでいる可能性について疑いを持っていました。

汚染水漏れ説明CBS
2週間前原子力規制委員会は東京電力に対し、汚染水漏出の疑いが非常に高く、この問題に関する調査を指示していました。
発電所内で採取した地下水と海水のサンプルからは、放射性物質の異常に高い数値を示していたにもかかわらず、東京電力は太平洋への漏出の可能性を飽くまで否定していました。

東京電力は今年5月、福島第一原発内の観測用の井戸から採取した地下水のサンプルから、高濃度の放射性セシウムを検出して以来、地下水の放射性物質量の監視を続けてきました。

漏出が疑われるエリアでは、潮位や降雨によって観測用井戸の地下水の水位が変化しているため、発電所の職員が漏出はあり得ると考えていたが、その情報が共有されていなかったと広報担当の小野氏が語りました。
「再び懸念される問題を引き起こしてしまったことは、非常に残念です。私たちは外部への漏出が決して起きないよう対策を講じてきましたが、結果的にうまくいかなかった可能性があります。」

小野氏は地下水の汚染源となっているのは、大部分が事故発生当初に放出された放射性物質によるものであると、東京電力側は考えていると語りました。
そして汚染が東北太平洋岸全体では無く、福島第一原発付近に留まっていると考えられ、太平洋の広域に漏れ出した放射性物質の量はきわめてわずかな量だと考えられるとも語りました。

漏水防止護岸工事
東京電力は現在、汚染水が海に浸出しないよう、海沿いの護岸部分に化学物質を注入し地下構造を固化する処理を進めている様子を22日に日本のメディアに公開しました。

「多くの問題に対し、後手に回ってしまいました。危険については先先と予見し、対策を取っておくべきだったのです。」
経産省の赤羽一嘉副大臣が東京電力の対応を検証した後、このように述べたと共同通信が伝えました。

海洋生物学者は、福島第一原発の近くで獲れた魚の放射性物質の量がきわめて高いことから、放射能汚染水が地下から海に継続して漏れ出している可能性について警告しました。

現在、福島県沿岸で獲れる魚介類の多くが、国内市場には出回っておらず、輸出もされていません。

小野氏はまた、検査を受けた福島第一原発の作業員の約10%、1,972人の作業員が甲状腺がん発症の危険率が高まる100ミリシーベルト以上の被ばくをしたことを明らかにしました。
東京電力は昨年、世界保健機構(WHO)に対し、522名の作業員の検査を行った結果、178名の被ばく線量が100ミリシーベルトを超えていたと報告していました。

東電抗議CBS
※2枚目の写真 : 2013年7月18日、福島第一原子力工場の3号機付近で上がっている水蒸気について、記者団に対し説明を行う、東京電力の小野氏。

http://www.cbsnews.com/8301-202_162-57594901/japan-utility-radioactive-water-likely-seeped-into-sea/
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本日は私の感想に変わり、この河北新報の社説をぜひご参照ください。
「原発汚染水の流出/東電任せはもはや危うい」
http://www.kahoku.co.jp/shasetsu/2013/07/20130724s01.htm

ちなみに福島第一原発の事故収束・廃炉作業について、事故直後から東京電力の対応を問題視してきたのが、ニューヨークタイムズでした。

以下は私が翻訳した記事の中から、目についたものを抜き出したものです。

【 271,000,000,000,000,000ベクレルの汚染規模 】〈 セシウム137・福島第一原発から太平洋に7月中旬迄 - フランスの放射線防護原子力安全研究所が見積もる 〉ニューヨーク・タイムズ → http://kobajun.biz/?p=1448

【 福島沖には驚くべき事実が隠されている – 海洋汚染の実態 】「事故前1.5ベクレル→事故後100,000ベクレル」ニューヨークタイムズ → http://kobajun.biz/?p=1268

【 福島沖には驚くべき事実が隠されている – 海洋汚染の実態 】「福島第一原発沖合の海洋汚染がなぜそれほどひどいのか、さらなる海洋調査が緊急に必要」ニューヨークタイムズ → http://kobajun.biz/?p=1276

ビニールで覆われただけの、11,000本以上の使用済み核燃料棒の脅威【 膨れ上がる福島第一原発・4号機使用済み核燃料の脅威 】「もし火災を起こせば、その被害は1~3号機メルトダウンの比ではない」ニューヨークタイムズ → http://kobajun.biz/?p=2680

【 福島第一原発の事故収束、業界利害を優先し、危険な状況に 】〈前篇〉「深刻な危機、莫大な量の放射能汚染水・追いつめられる東京電力、それは日本全体の危機」ニューヨークタイムズ → http://kobajun.biz/?p=11016

【 福島第一原発の事故収束、業界利害を優先し、危険な状況に 】〈後篇〉「東京電力は汚染水発生の根本対策の実施を拒否・経産省は汚染水の問題の存在自体を無視」ニューヨークタイムズ → http://kobajun.biz/?p=11033

【 またも汚染水漏れ、改めて問われる東京電力の事故収束能力 】「隠ぺい体質に加え、問われる事故処理能力・最新式の浄化装置が稼働しても、汚染水は無くならない」ニューヨークタイムズは → http://kobajun.biz/?p=11721

安倍政権の原発再稼働への強力な後押し、その裏に隠される事実【 福島第一原発、2年の間途切れることなく汚染水を海に漏出か】「放射性セシウム、トリチウム、ストロンチウムの量が急上昇」ニューヨークタイムズ → http://kobajun.biz/?p=12663

さらにはエコノミスト、ザ・ガーディアン、ザ・インデペンダントなどの英国の代表的メディア、そしてデア・シュピーゲル(ドイツ)などが繰り返し福島第一原発の作業員への『非人間的的扱い』を避難してきました。

なのに日本政府は、被災者・避難民の方々の救済ではなく、東京電力の救済にばかり本腰を入れてきたように感じられます。
そして福島第一原発の現状に対する危機感を持たない現政権。

日本の『社会正義』はどこへ行ってしまったのでしょうか?

日本の国民は、自民党政権に『どこまで』を許すつもりなのか?

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自民党の単独過半数による独裁政権への回帰は、日本にとっては民主主義の後退

マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 7月21日

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7月21日日曜日に実施された参議院議員選挙において、日本の有権者は政権与党である自民党に地滑り的勝利を与えました。
長い間続いてきた機能しない日本の政治に対し、各政党が政策について競い合う形より自民党の一党支配による専断体制を選び、これから劇的な変化が起きる可能性が出てきました。

衆参両院で今後最長で3年に及ぶ安定多数を得た政権与党の自民党は、日本を経済停滞の中から回復させ、軍事力を強化すると言ってはばからない国家主義者である安倍晋三首相に、この10年間で初めて国家の形を変えてしまう機会を与えることになります。
と同時に5年間続いた短命内閣の繰り返しに、終止符を打つ機会も提供しました。

今回の与党の勝利の要因は、景気の停滞から達出しようとした政策の失敗の繰り返しの後、長く平和主義国家としてやってきた日本が中国との領土紛争に触発される形で、軍事力の強化という事を改めて考え始めた、そのタイミングをとらえてのものでした。

これと言って特徴の無かった前任者たちとは異なり、58歳の安倍首相はそうした世の中の流れを象徴する存在として自分を認めてほしい、そう考えているようです。
安倍首相はある程度の痛みは伴うものの、日本経済の根本的な構造転換を行う、その主張が認められて今回の勝利を手にしました。

安倍首相は現在の平和憲法の条文を書き換えることにより、自衛隊という範疇に留まること無く、日本に正規軍を設立させると誓っていますが、その周辺諸国の感情を無視したやり方は東アジアにおいて日本を孤立させてしまう恐れがあります。

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安倍首相は選挙の一週間前、首相として初めて中国との領土紛争の原因となっている尖閣諸島近くの熱帯の島を訪問、カメラの前で戦車やジェット戦闘機に乗り込み、人々を驚かせました。

「安倍首相は現実的な政治家としての側面と、強気の国家主義者としての側面を持っています。」
法政大学政治学部の白鳥宏教授は、さらにこう続けました。
「今回の選挙は、安倍首相に国家主義者としてより強くふるまう事を許す結果になりました。それこそが彼が望んでいたものです。」

しかし日本人が安倍首相にどこまでの振る舞いを許すつもりなのか、そこまでは明らかではありません。

AP通信は日本の共同通信社が公表した今回の投票率を引用、有権者の52パーセントしか投票しなかった今回は、第二次世界大戦以降最低の投票率を記録した選挙のひとつだと報じました。

日曜日の選挙結果は参議院で自民党と公明党の連立与党に安定多数の議席をもたらしましたが、憲法改正に必要な3分の2の議席数には届きませんでした。
第二次世界大戦後、アメリカ占領軍の監修の下で成立した憲法を変えることへの期待が直ちに実現する可能性は無くなりました。

開票は翌日の朝まで続き、121の改選議席数のうち、自民党は65議席を獲得しました。連立を組む公明党の11議席と合わせ与党は242議席が定員の参議院において、過半数を占めるために充分な議席を手に入れたことになります。

対立する野党の内、最大会派の民主党は獲得議席数17と屈辱的敗北の中に沈みました。
4年前の選挙で大勝し、自民党を政権の座から追い、日本の政治を刷新すると宣言して2大政党時代の幕開けを高らかに宣言しましたが、その約束と期待をことごとく裏切ったと未だに怒り続けている有権者から見放される結果に終わりました。

日曜日の投票を間近に控え、週刊のタブロイド紙1紙が自民党の単独過半数による独裁政権への回帰は、日本にとっては民主主義の後退になると批判しました。

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勝利が確定した後、安倍首相は記者団に対し、これで2007年以降日本の政治を機能不全に陥らせてきた国会のねじれを解消できるとして、国民に対し謝意を表しました。
一方で安倍首相は連立を組む公明党、他の国会議員、そして国民に対し、国民投票によって憲法改定を行うことを納得させるための、難しい取り組みを始めなければならない点を認めました。
「憲法に関する議論をもっと幅広く、深めていく必要があります。」
安倍首相はこう語りました。
「有権者の皆さんに安定した政権運営ができる時間を新たにいただいたので、議論を深めていく余裕が出来ました。」
安倍首相はさらに、憲法改正について議員の3分の2の賛成を必要とする現行の手続きに変わり、過半数の賛成で憲法改正を可能にする手続き変更についても作業を進めると語りました。

しかしそのためには憲法の改正が必要であり、現行の定めに基づいた賛成票が必要になります。
それでもアナリストなどは安倍首相が政権の座について7カ月、1947年に制定されて以来初めてとなる憲法改定が現実のものになる可能性が出てきたと語ります。
彼は、現在の3分の2の代わりに議会で絶対多数を必要とすることによって改正するのがより簡単な憲法を作る中間のステップも続行すると言いました。

選挙当日投票所の外で行われたインタビューにおいて、中国の台頭への懸念と日本の国際的地位を再び高めるため、安倍首相が進めようとしている政策に同調する意見が聞かれました。

「私は、安倍首相に同感です。」
東京都狭山市に住む通信技術者である51歳の男性がインタビューにこう答えました。
「中国が今のような姿勢を取り続ける限り、日本は軍事的な備えをする必要があると思います。」

しかし多くの有権者が戦争準備には反対の意思を持っていることから、議論が憲法改正そのものに向いた場合には、安倍政権の支持率が低下する可能性があると複数の観測筋が見ています。

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安倍政権に対する現在の支持は、アベノミクスとして知られるその景気刺激対策に対する支持である、アナリストの多くはそう見ています。
現在日本経済は回復過程に乗り、すでに500兆円の経済効果を生み出しました。

「安倍政権のすべての政策が支持を得ているという訳ではありません。」
政策研究大学院大学の政治学者である飯尾潤氏がこう語りました。
「ひとたび日本経済が悪化し始めれば、安倍政権への支持は消えてなくなってしまうでしょう。」


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どなたかがツイートしていらっしゃいましたが、今回の選挙で議席を確保できなかった野党も、比例代表で統一名簿を作れば一定の議席は確保できたのに、という意見がありました。
まったくその通りだと思います。
与党自民党は徹底した組織戦を行い、低投票率と相まって、思い通りの戦果を挙げました。

山本太郎さんの当選など、いくつか明るい材料もありましたが、民主主義を守るという立場の陣営は敗退してしまいました。
組織票による勝利を阻むためには、小さな『分力』をいくつ作っても効果はありません。
それを昨年末の衆院選で学んだはずなのに、わずかな『可能性』と一般国民から見れば区別できかねる『違い』にこだわり、自民党に大勝を許し、結果、脱原発も日本国憲法の未来を危ういものにしてしまいました。

最近の自民党を見ていると、その『宣伝戦』の巧みさには侮れないものがあります。
ナチスのゲッペルスをほうふつとさせるほどです。
それに対し、野党各党は無策に過ぎるのではないでしょうか?
その苦い思いを、再び味わうことになりました。

【 世界が疑問を持ち、懸念を持つ中、原子力発電所の再稼働へと向かう日本 】

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大規模な原子力発電を行う国家への回帰、それは果たして日本国民の意思なのか?

ドイチェ・べレ(ドイツ国際放送) 7月8日

汚染水02
原子力発電所を保有する日本の電力会社4社は、多数の原子炉の再開を行うべく政府に正式の申請を行いました。
日本国内のほとんどの原子炉は福島第一原発の事故発生を受け、現在停止しています。

この一連の動きは、2011年3月に発生した福島第一原発の複数の原子炉のメルトダウン以来、日本国内で再び大規模に原子力発電を行うための、第一歩と見られています。
福島第一原発の事故発生以降、日本では50基ある原子炉の内2基だけが稼働を続けていますが、日本は事故以前、総電力の3分の1を原子力発電によって賄っていました。

日本の原子力規制委員会によると、北海道電力、関西電力、四国電力、九州電力の4社が、計10基の原子炉の再稼働に向け、申請を行いました。
しかし原子力規制委員会の職員は、これらの原子炉が国が新たに定めた安全基準に適合しているかどうか審査を行うためには、6カ月程度の時間が必要になるだろうと語りました。

▽『保障される』訳では無い

しかし、たとえこれらの原子力発電所が原子力規制委員会の承認を得られたとしても、ただちに再稼働が保障されるわけではありません。
新たに導入された安全基準の下では、国政レベル、地方レベルを問わず、政治に関わる人間は再稼働の許可を得た原子力発電所の再稼働に異議を唱えることが出来ます。

柏崎刈羽原発
福島第一原発を運営している東京電力は、新潟県にある柏崎刈羽原発の再稼働を申請する方針を明らかにしていましたが、県当局の同意を得られず、今回の申請を見合わせざるを得ませんでした。
東京電力のスポークスマンはAFP通信の取材に対し、以下のように答えました。
「わが社は柏崎刈羽原発の再稼働の申請を行う方針ですが、地元の理解を得られない限りは実行には移さないという内規があります。」

日本政府は発電のための燃料コストを削減するため、できるだけ多くの原子力発電所を再稼働させたいと考えていると伝えられています。
同時にそれは安倍晋三首相が率いる政権の、経済政策の一部を構成しています。

安倍政権の重鎮である閣僚の一人は、原子力規制委員会と関係する政治家に対し、問題となっている原子力発電所の安全性を納得させられるか否かは、電力会社次第だと語りました。
「新たに定められた安全基準の下で、原子力規制委員会による厳格で適正な審査が行われることが大切です。」
安倍政権の加藤勝信内閣官房副長官が、8日の記者会見の席上このように語りました。
「再稼働の前提条件して立地する自治体の同意が必要であり、各電力会社は丁寧な説明を心掛ける様望みます。」

福島第一原発の事故により導入が決定した新たな安全基準の下では、原子力発電所は地震と津波の対策に加え、テロリストによる攻撃から発電所を守るための対策も求められます。

Fukushima residents
福島第一原発の事故によって故郷を追われ、避難生活を強いられている人々の数は160,000人に及んでいます。
これらの人々の中の多くは、これから何十年もの間、故郷に戻る見通しすら立っていないのです。

http://www.dw.de/japanese-nuclear-operators-seek-to-restart-power-plants/a-16935660

海洋汚染の拡大を、完全に防ぎきることは不可能…

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【 連続して海洋汚染が続いている疑い・福島第一原発 】

AP通信 / ワシントンポスト 7月11日

汚染水03
日本の原子力規制委員会は11日水曜日、破壊され正常な機能を失っている福島第一原発から漏れ出した放射能汚染水が、太平洋に流れ込んでいる可能性があると明らかにしました。
この問題はこれまで多くの専門家が指摘していましたが、東京電力は否定し続けていました。

原子力規制委員会は東京電力に対し、汚染水漏れが「強く疑われる」として、場所の特定、漏水状態の確認、そして食物連鎖を含め環境に与える危険の検証を至急行うよう求めました。
そしてどうすればこの問題を解決に向かわせることが出来るのか、専門家による委員会を立ち上げる予定であることを明らかにしました。

原子力規制委員会の調査結果は、これまで専門家などが主張してきた福島第一原発の汚染水が直接太平洋に漏れ出しているとの問題について、東京電力が常に後手に回り続けていることを改めて浮き彫りにしました。
それでも東京電力側は汚染水漏れが本当に起きているのかどうか、現段階では明らかではないとの態度を取り続けています。

東京電力のスポークスマンである今泉則之氏は、福島第一原発敷地内の井戸水から検出されている放射性セシウムの量が増え続けているからと言って、ただちにそれが海洋中に漏れ出しているとの断定はできないと語っています。

汚染水2012-03
東京電力は現在別の水質検査を行っている最中であり、始めに採取した水の放射性セシウムの値が上昇している原因について、汚染されたチリなどの混入の可能性があると語っています。
しかし東京電力側は安全対策のため、原子力規制委員会の要請を受け入れると語りました。

福島第一原発は2011年3月に発生した巨大地震と津波により施設が破壊され、3基の原子力発電所と炉がメルトダウンを起こし、それ以来溶け落ちた燃料を冷却し続けるため大量の水を注ぎ込んでいます。
その現場に貯蔵されている大量の汚染水は度々漏水トラブルを起こし、事故収束・廃炉作業の取り組みを妨げてきました。

複数の海洋生物学者は、福島第一原発周辺で獲れた魚の放射性物質の量が異常に高いことなどから、放射能汚染水が途切れることなく漏れ出している危険性について、度々警告を行ってきました。

5月以降、福島第一原発の敷地の沿岸沿いの地下水の汚染状況を確認するために設けられた井戸で採取された水からは、高濃度の放射性セシウムが検出されていました。
そして発電所の沖合の海水からは、高い濃度の水溶性要素ストロンチウムが検出されていました。
この事実について東京電力側は、全て2011年3月の事故の影響が残っているのだと主張していました。
そして環境に対し、『重大な影響は無い』と主張してきたのです。
同社は放射性セシウムは土壌に吸着されやすく、地下水が放射性物質を海に流し込んでいるという状況については否定し続けてきました。

汚染水地図
これに対し原子力規制委員会は井戸から採取された地下水と沿岸の海水の汚染状況から見て、汚染された地下水が海に流れ込んでいる疑いがあるとの見解を示しました。

原子力規制委員会の田中俊一委員長は、事故発生当時に最大の汚染が起きたとしても、海洋汚染は事故発生以来継続して続いていた疑いがあると語りました。

「最も重要なことは、外部への漏出をできるだけ小さなものにし、人間社会への影響を減らすことです。」

福島沿岸で採取される大部分の魚貝類は、国内市場においても、輸出品としても消費されないようになっています。

そして福島周辺で獲れたものは食べても大丈夫かどうか、定期的に放射線量の検査を受けています。
広大な海の中では、放射性物質は拡散され、海水そのものが有害である可能性は低下します。

福島周辺で獲れる魚介類の安全性については、日本国内で懸念が続いています。
日本は世界有数の魚貝類の消費国なのです。

東京電力は海水汚染を防止するための対策はとったものの、完全に汚染が広がるのを防ぐことは不可能であると語っています。

汚染水01
産業技術総合研究所の地下水の専門家である丸井敦尚(あつなお)氏は、原子炉建屋で新たな汚染水漏れが起きている可能性について言及しました。
丸井氏は汚染状況を確認するため、海水のサンプリングと地下水の汚染状況の検証作業をもっと大規模に行う必要性を指摘しました。
「何層もの漏水対策を行う必要があります。」
NHKテレビの取材に対し、丸井氏はこう答えました。

福島第一原発では破壊された原子炉と溶け落ちた核燃料を冷却するため、臨時に作った機器でその作業を行っており、増え続ける汚染水をどうやって安全に貯蔵するか、常に苦しい作業を強いられてきました。
「想定外の事態の発生に対しては、我々はその都度応急的に対応することしかできません。それはすなわち、福島第一原発では未だに不安定な状況が続いているという事を意味します。」
原子力規制委員会の田中委員長がこう語りました。

「与えられた状況の中で、我々は最善を尽くす。今はそれ以上のことは言えません。」

http://www.washingtonpost.com/world/asia_pacific/japanese-regulator-says-radioactive-water-from-damaged-plant-likely-is-leaking-into-pacific/2013/07/10/8e0c5a50-e9c4-11e2-818e-aa29e855f3ab_story.html
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折しも今回の選挙では民主党の大崩壊を伝えていますが、今日の結果を決定づけたものは野田政権による
福島第一原発の冷温停止『状態』宣言 / 大飯原発の再稼働 / 小沢氏の実質的な『追放処分』
などであったと思います。
国民が政権交代に込めた願いは、日本の政治から一般人からは見えない部分を極力減らしてくれ、ということであったと思います。
21世紀の日本の政治の脱自民独裁、政治を国民の手の中に持ってきて欲しいという願いではなかったでしょうか?

ところが福島第一原発の事故以降、民主党政府はその願いをいちいち裏切っていきました。
平智之議員の離党、あの瞬間、民主党からたくさんの人々が離れていったのではないでしょうか?

どの政党ということはありませんが、日本の政治はもっと丁寧に一般国民の声を聞くべきだと思います。
その点で日本はアメリカにも、ヨーロッパの先進各国にも及ばない。
むしろ中国の一党独裁の方に近いような気がします。

中国式新幹線が事故を起こしたとき、中国当局は事故車両を埋めて隠すという驚くべき対応をとりましたが、あの姿を日本は笑えるのか?と思ったことを覚えています。
日本は福島第一原発の真の現状を、国民に正しく伝えているのでしょうか?

なぜ日本の選択は『再稼働』なのか?!「原子力発電、再開への動きが本格化」

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【 原発再稼働へと動く日本 】
処理不能の核廃棄物を積み増し、世界が疑問視するプルトニウム備蓄を増やし、安全上のリスク、環境上のリスクを増大させる

山口まり / AP通信 / アメリカABCニュース 7月8日

FOX News
7月8日月曜日、電力会社4社が停止中の10基の原子炉の再稼働のための審査を申請し、福島第一原発の事故発生から2年半、日本では原子力発電再開へ向けた動きが本格化することになりました。

2011年3月に津波が福島第一原発の施設を壊滅させて以来、かつては全電力の3分の1を原子力発電によって賄っていた日本では、稼働可能な50基の原子炉のうち、2基だけが稼働していました。

それぞれの地方で電力の独占販売を行っている北海道、関西、四国、九州電力の4社は、新たに策定された安全基準の下で、5か所の原子力発電所の10基の原子炉を再稼働させるべく、8日月曜日原子力規制委員会に審査を申し込みました。
さらに2基の原子炉の再稼働申請が、月内にも行われる見通しとなっています。

厳格化された安全基準に適合した原子炉だけが再稼働を許可されることになりますが、早ければ来年前半にも最初の原子炉が再稼働する見込みとなっています。
同じスタッフが一度に審査できる原子炉は2、3基が限度であるとの理由から、原子力規制委員会による審査は一基当たり約半年の期間が必要になると見られています。
差にに地元の市町村と各県の了解を取り付けるには、さらに数週間の時間が必要になると見られています。

原子力規制委員会はどの原子炉の審査を最初に行うのか、公表することは拒否しました。

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しかし新たな安全基準については、抜け穴があるとの批判が寄せられています。いくつかの安全設備については、その実施に猶予期間が設けられています。

従来型の発電所によって電力供給を続けるため、各電力会社は高騰し続ける天然ガスや原油の輸入に頼らざるを得ず、経営が圧迫される状況が生まれたため、各社とも原子力発電再開のため激烈な政治工作を続けてきました。

原子力発電所を保有する日本国内のほとんどの電力会社が、高騰する火力発電の燃料費の高騰により、前会計年度において巨額の赤字を計上しました。
このうち北海道電力は、保有する3基の原子炉が停止したため、燃料費について一日当たり6億円(600万ドル)の追加費用が必要になったと語りました。
各電力会社とも、電気料金の値上げなどの対応を要請しました。

安倍晋三首相は昨年12月の就任以来、原子力発電所の再稼働を積極的に推進してきました。
そして前民主党政権が打ち出した、段階的な原子力発電の廃止計画を白紙に戻してしまいました。
そして21日に投票日を迎える参議院議員選挙では、与党自民党は原子力発電所の再稼働をはっきりと公約にしています。

新たな安全基準は過酷事故においても放射能漏れを起こさないよう、緊急指令センターの設置、そしてテロリストに対する対策の実施を、電力会社に対し初めて求めました。
そして原子力発電所の運営会社は津波や地震と津波だけではなく、竜巻や航空機事故に対する備えも要求されることになりました。

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以前は原子力発電所の安全対策は電力会社に任されたままであり、各社とも必要な安全採択を実施することよりも、自社の利益を優先する傾向が明らかでした。
東京電力は福島第一原発において、実際に襲った津波の半分の高さの防波堤しか設備しておらず、津波の危険性を過小評価していました。
このため複数の原子炉の炉心がメルトダウンを起こし、大規模な放射能漏れを引き起こし、批判の矢面に立たされました。

現在でも約160,000人もの被災者が、自宅に戻れずにいます。

西日本の広域に電力を供給する福井県内の4基の原子炉の再稼働を申請した関西電力の役員、森中郁夫氏は同社が福島第一原発の事故を教訓に、緊急時の対策と追加的安全措置を実施したと語りました。

森中氏は報道陣が詰めかける中、原子力規制委員会の職員に分厚い申請書類を手渡した後、報道陣に向かってこう語りました。
「準備万端です。」

原子力に反対している多数の市民活動家などが、原子力規制委員会が入る建物の外で、横断幕を掲げ、反原発のスローガンを叫びながら抗議集会を開催しました。

新たな安全基準には、各電力会社が『加圧水型』として知られる原子炉を再稼働する際、その手続きが容易なものになるよう、5年間の猶予期間を設けるなどの便宜的措置がとられているとの批判があります。
加圧水型原子炉は福島第一原発で事故を起こした沸騰水型原子炉に比べ、原子炉格納容器が大きく、事故を起こしにくいとされています。
これにより、国内の48基の原子炉の約半分の加圧水型の原子炉は、最高5年間、新たな安全基準の適用を受けずに稼働させることが出来るという事を意味します。

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今回再稼働を申請した10基の原子炉はすべて加圧水型ですが、月曜日に公開された再稼働申請書類の要約を見る限り、いずれの原子炉もフィルター付きベント装置、そして完全な緊急時司令室は完備されていません。

新たな安全基準は、近隣の市町村において必要とされる非常事態の対応と非難手順についての立法化が遅れても、原子炉の再稼働を可能にします。

そして原子炉の再稼働は処理不能に陥っている核廃棄物をより一層積み増し、世界から疑問視されているプルトニウムの備蓄量を増やし、その他の安全上のリスク、環境上のリスクを増大させることになります、

舩橋晴俊氏率いる法政大学社会学部舩橋研究室( http://funabashi-ken.ws.hosei.ac.jp/kenpatsu.html )が、このように指摘しました。

原子力発電の継続は最終的には、財政破たんに至らざるを得ないという批判があります。

新たな安全基準に適合させるための対策費用に加え、核廃棄物の処理費用、古くなった原子力発電所の廃炉費用が必要になるのです。

第一段階の安全基準をクリアするためだけでも、各社併せて1兆円をはるかに超える費用が必要になると見積もられています。

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こうした批判に対し、電力会社はそれが必要な『投資』であると抗弁しました。

「費用は掛かっても、安定した電力供給を実現するため、我々は原子力発電所を稼働させる必要があるのです。」
九州地区で6基の原子炉を運営する九州電力の吉迫副社長がこう語りました。

http://abcnews.go.com/International/wireStory/japan-moves-closer-restarting-nuclear-reactors-19602344#.UedWXKxSZVt
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なぜ再稼働なのか?
既得権益を根絶やしにされないために他ならないでしょう。

電力会社や日本原燃や日本原子力発電などの企業に加え、原子力安全基盤機構や日本原子力研究開発機構、原子力安全委員会など、原子力発電を止めてしまえばその存在を脅かされる『国家機関』が無数にある事が、福島第一原発の事故によって多くの国民の目に明らかになりました。

これら組織の自己保存の本能とも言うべき防衛意識が、国民の安全や健康よりも優先される、その結果が再稼働であって、純粋に経済的動機によるものだなどとはとても考えられません。
なぜなら原子力発電に対する世界の常識は、『危険な上に、莫大な運営・維持管理コストがかかる』というものに変わってきているからです。

日曜日、参議院議員選挙の結果は、この稿を読んでいただいている皆さんにとっては不本意なものになるかもしれません。
しかしそれでも、面倒であっても、私たち国民の望むところは違うのだという意思表示はしておくべきだと思うのです。

安倍政権の原発再稼働への強力な後押し、その裏に隠される事実

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【 福島第一原発、2年の間途切れることなく汚染水を海洋に漏出か 】
放射性セシウム、トリチウム、そしてストロンチウムの量が急上昇

田淵弘子 / ニューヨークタイムズ 7月10日

汚染水07
日本の原子力規制委員会の委員長が10日水曜日、福島第一原発は地震と津波によって巨大事故を起こして以来、今日に至るまでの間、汚染水を海洋中に漏らし続けていた疑いが手でてきたと語りました。

原子力規制委員会の田中俊一委員長はいつになくはっきりした口調で、原子力規制委員会も東京電力も、漏出箇所がどこであるか特定できずにおり、従って漏出を止めることは不可能であると語りました。

東京電力は福島第一原発の敷地内で採取した地下水の放射性セシウム、トリチウム、そしてストロンチウムの値が急上昇していることを明らかにし、汚染水の漏出を一刻も早く止めなければならない事態にあることも明らかにしました。
このうち特に放射性セシウムとストロンチウムは、人間の発がん性を高める性質があることで知られています。

田中委員長の指摘は全部で6基ある原子炉のうち、3基の炉心でメルトダウンが発生した福島第一原発の事故収束作業が、未だに不安定な状況にあることを図らずも明らかにしました。

目下の緊急課題はメルトダウンした原子炉を覆う原子炉建屋の基礎部分に流れ込んでくる地下水が、次々と汚染されていく状態を解消することです。

発電所の職員たちは増え続ける、膨大な量の汚染水を貯蔵タンク内に収納する作業に追われていますが、肝心の発生原因の方は手つかずのままです。

110803
つい最近まで東京電力は、これらの汚染水が海洋中に流れ込んでいる可能性については、一切否定し続けてきました。
しかし様々な機関による調査結果は、福島第一原発周辺の海洋汚染が容易ならざる状況にあることを証明しており、東京電力の見解とは正反対の事実の存在を示唆していました。

しかし最近になると東京電力の態度は微妙に変化し、汚染水の海洋への流出があったのかなかったのか、はっきりしたことは言えないと語っています。

これに対し田中委員長は、明白な証拠がそろっていると指摘しました。

「海水中の放射性物質の量が高いままであることは事実であり、汚染は一向に無くなりません。それは誰も否定しようの無い事実です。」
田中委員長は原子力規制委員会の幹部との会議後、記者会見でこう語りました。
「一刻も早く、何らかの手を打つ必要があります。」
「しかしながら福島第一原発の現状を考えると、今日、明日に有効な手だてを講じることが出来るとは考えられません。」
田中委員長はさらに次のように続けました。
「たくさんの人々にとって不本意な状況が続くことになるでしょう。しかし、それこそが福島第一原発のような事故の後、私たちが直面しなければならない現実なのです。」

福島第一原発の漏水管理が脆弱なことを認めることにより、一部の専門家が指摘し続けてきたように、事故発生直後に海洋中への大規模な汚染水漏出を起こして以来、福島第一原発は途切れることなく海洋への汚染水漏出を続けてきたという疑いについて、田中委員長は否定できないとの見解を持つに至りました。

海の汚染
東京海洋大学・海洋科学部・ 海洋環境学科の神田穣太准教授が今年始めに発表した研究は、東京電力自身による福島第一原発周辺の海の放射物質の量の測定結果を検証したものです。
検証の結果、福島第一原発からは汚染水の漏出が途切れることなく続いていた可能性が高いと結論づけました。

「もし汚染水が漏れ出していないなら、福島第一原発周辺海域の放射性セシウムの検出値はもっとずっと低いものでなければなりません。」
神田教授は先月、このように語りました。
「潮流によって、事故の初期に流出した放射性物質は現在までにほとんど希釈されてしまっているはずであり、検出されるべき値も、今回測定された物よりずっと低い物でなければなりません。」
「この測定値が意味するものは、配管、排水溝、あるいは他の場所から、東京電力が把握していない汚染水の流出が続いている可能性がある、という事です。」
「至急漏水原因を特定する必要があり、ただちにその『穴』をふさがなければなりません。」

5月以降の説明のつかない地下水の放射性セシウムの検出値の急上昇が続いていますが、検出されたのはセシウムだけではなく、同時にストロンチウム、トリチウムも検出されており、事態は緊急を要します。

東京電力は10日、汚染水が海洋中に流れこんでいるという証拠は無いと表明しました。
同社は過去、福島第一原発がもはや海洋環境に重大な影響を与えてはいないと表明していました。

汚染水流出
「現在のところ、何一つ確かなことは言えません。」
東京電力のスポークスマンである今泉則之氏は10日の記者会見でこう述べるにとどまりました。
「しかし私たちは手をこまねいている訳ではありません。現在、なぜこれほど高い値が検出されたのか、急いで原因の解明を行っています。」

汚染水の漏出を止めることが目下の緊急課題という事であれば、当然一つの疑問がわき上がります。

なぜ日本政府は、福島第一原発の事故発生以降停止している各地の原子力発電所について、その再稼働を強力に後押しするのか?という事です。

以下のような批判があります。
他の原子力発電所の安全性を保障し、その再稼働を進める動きの背景には、福島第一原発の事故収束・廃炉作業の現実から人々の目を逸らさせようという動機がある。

一般国民の不安をなだめるため、政府は今月施行された厳格な新基準に合格した原子炉のみを再稼働させると表明しています。

全国の4つの電力会社が合計10基の原子炉の再稼働を申請しました。申請に基づき、現在ちょうど80名の原子力規制委員会のスタッフが内容の検証作業を進めています。
東京電力は日本海に面した新潟県の刈羽崎柏原発の、2基の原子炉の再稼働を申請すると表明しています。

こうした動きは、ただでさえ乏しくなっている東京電力の経営資源を、困難が続く福島第一原発の事故収束・廃炉作業を着実に進めることから、遠ざける結果につながるかもしれません。

汚染水浄化装置
東京電力は汚染された地下水が海洋中に流れ込まないよう、いくつかの処置を取りました。その中には、福島第一原発の敷地の地下に沿岸部に沿って、防水壁を建設することも含まれています。
しかし田中委員長はこうした対策の実効性について、疑問を呈しました。

「どのような対策が最も効果があるのか、今は解らない状態です。」
田中委員長がこう語りました。
「もちろん、この汚染水が漏れ出す量をできるだけ減らしたいと誰もが考えています。そして環境破壊を一刻も早く食い止めたいとすべての関係者が願っています。何か良い方法があれば、ぜひご提案いただきたい、そう考えています。」


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選挙前のテレビなどの報道を見ていて、原発の問題が「原発などのエネルギー問題」とされているのを見て、「巧妙なものだな」と思いました。
私にとって福島第一原発の事故、そして原発の問題は日本の民主主義の根幹にかかわる問題です。

福島第一原発の事故をきっかけに脱原発を実現したドイツについて、イギリスの代表紙のひとつ[ガーディアン]は、「ドイツは社会正義を実現した」と伝えました( http://kobajun.biz/?p=2454 )。
では国内に160,000人もの原発難民を抱えていながら、原発再稼働を「推進」する今の日本は、民主社会の人々の目にどう映っているのでしょうか?

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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