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【 フクシマの大崩壊の現場で破滅を食い止めた硬骨の責任者、ガンで死去 】

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所要時間 約 7分

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事故の渦中、持ち場に留まり事故の拡大と闘った吉田所長
東京電力本社の制止を振り切り、独断で原子炉内に海水を注入、それ以上の事故の拡大を防いだ

デイヴィッド・マクニール / ザ・インデペンダント(英国) 7月9日

吉田所長
後になって振り返った時、事故の最中彼は死を覚悟したと語りました。
恐ろしい運命に見舞われた福島第一原発の所長として、かれは3基の原子炉がメルトダウンする現場に留まり、原子力時代のタイタニック号の船長のように、発電所とともに運命の淵へと落ち込もうとしたのかもしれません。

今日、吉田正夫所長がガンのため亡くなりました。
4半世紀で最悪の原子力発電所事故に関する、数多くの疑問に答えることなく逝ってしまいました。

吉田所長は福島第一原発を制御下に置くために闘い抜いた人間として、永遠にその名を歴史にきざまれることになるでしょう。

2011年3月11日、吉田所長と彼の部下である東京電力の技術者たちは福島第一原発の免震制御室で、津波がタービン建屋に押し寄せ、13基あるうちの12基の非常用発電装置を作動不能に陥らせる様子を、恐怖とともに見つめていました。
免震制御室の電源も失われ、全てが闇に飲みこまれてしまった時、ここに居るスタッフ全員が死ぬかもしれないという思いが吉田所長の脳裏をよぎりました。

驚いたことに、原子力発電所内の電源がすべて失われてしまう事態をそれまで誰も予測していなかったために、東京電力には次にどのような対応をすべきか知識を持っている人間が一人もいなかったのです。
続いて起こった一連の水素爆発によって発電所内の設備がめちゃくちゃに破壊されたため、吉田所長は急きょ現場にいた人間で、ともかくもこれ以上事故が拡大しないようにするため態勢の立て直しに懸命に取り組みました。

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日本の多くの人々が、吉田所長が東京電力の本社の制止を振り切り、独断で原子炉内に海水を注入してそれ以上の事故の拡大を防いだことにより、彼を英雄として賞賛しました。

原子炉の損傷を恐れた東京電力本社は、吉田所長に対し海水注入を止めるよう命令したのでした。

福島第一原発の危機は、3月14日の夜、最高潮に達しました。

6基ある原子炉のうち3台が制御不能に陥り、世界で最も人口の多い大都市の方角に向け、大量の放射性物質を含んだ噴煙を上げ続けていました。
正常な状態なら5メートル以上の深さの水に浸かっていなければならない4基の原子炉建屋内の1,300本の核燃料棒は、水が沸騰して蒸発してしまったために直接空気と触れ合ってしまっている状態になり、そのままでは連鎖反応を起こし、原子炉のメルトダウン以上の放射能汚染を引き起こす可能性がありました。

やがて状況が落ち着くと、青い防護服に身を包んだ吉田所長は、福島第一原発の現場にいた彼のスタッフを集合させました。
「家に帰りなさい。」
「ここで出来ることは、我々はもうすべてやり尽くした。」

最早制御することなど不可能に見えた現場を放置したまま、吉田所長たちは撤退するよう東京電力本社から指示を受けたのでしょうか?
あるいは吉田所長自身、一部の現場のスタッフに対し、撤退するよう命じたのでしょうか?

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17ヵ月後沈黙を破ったとき、吉田所長は撤退という事は一切考えたことは無かったと語りました。
当時菅前首相直人首相と首相官邸内はパニックに陥っていましたが、吉田所長と彼のスタッフたちはやるべきことをやり遂げる覚悟をしていたと語りました。
「現場にいた人間の口から、撤退という言葉が出たことはありません。」
彼はビデオ・メッセージの中でこのように語りました。

信心深い人間であり、仕事に身を捧げていた吉田さんは、メディアに対しては何も語ろうとはしませんでした。

事故と戦うために現場に残った人たちの話を充分には聴いてもらえない以上、ビデオでの収録にのみ同意せざるを得ない、吉田所長はそう語りました。
「私は自分たちのメッセージが充分に伝わるための手段を探さなければならない、そう感じたのです。」

そして吉田さんは体調が回復次第、福島の現場に戻りたいと語っていました。

ヘビースモーカーだった吉田所長はメルトダウンのおよそ半年後、食道ガンと診断され、2011年12月に所長の職を退きました。
そしてさらに昨年7月、脳内出血が吉田所長を襲いました。
東京電力は福島第一原発における放射線被ばくと、食道がん、脳内出血、いずれとの関連性も否定しました。
東京電力は事故発生から退任までの吉田所長の累積被ばく線量は70ミリシーベルトであり、原子力発電施設労働者の被ばく上限を超えてはいないとしています。

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しかし、6カ月間の激務が彼の身体を痛めてしまったことを想像することは、多くの人にとって難しいことではありません。

菅前首相が吉田さんの死去について、こうツイートしました。
「私は、彼のリーダーシップと決断力に対し、心から敬意を表します。そして願わくは吉田所長に当時の状況について、もう一度詳細にお話をする機会を持ちたかった。」

http://www.independent.co.uk/news/world/asia/japanese-hero-who-saved-fukushima-plant-from-total-meltdown-dies-of-cancer-8698357.html?origin=internalSearch
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吉田所長については、ご冥福をお祈りするしかありません。
しかし所長の死によって、いくつかの真実が永遠に明らかにされない、そうなってしまうことが気がかりです。
飽くまで真実をつまびらかにしていただきたい、今はそう願うのみです。

【 国連はフクシマ、チェルノブイリの健康被害を過小評価 】《後篇》

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所要時間 約 8分

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チェルノブイリの現地調査もせず、『報告書』を公表したWHO
WHOとIAEAの『密約』の存在が、事実を隠蔽する
「被ばくが原因でガンを発症しても、体はガンの発生原因を教えてはくれない」
IAEAの原子力推進政策が、世界に悲惨な地獄を作り出している

ジョージ・ガオ(国連本部)/ IPSニュース(イタリア) 6月26日

ジャジュゴダ
▽ ウラン採掘現場の放射線

IAEAは「ウラン資源の安全な、確実な開発」を推進しています。
ウラン資源の使い道は二つ、ひとつは原子力発電の核燃料、そしてもうひとつは核兵器製造です。
インド東部、ジャジュゴダ・ウラン鉱山周辺で暮らすホ族のアシシュ・ビルリーさんにとっては、「ウラン資源の安全な採掘」などとんでもない話です。
放射線が人体に与える影響については、その実態を世界に伝えるため撮影された写真に描かれている通りです( http://www.morizumi-pj.com/jadogoda/jadogoda.html )。

学生でありながらフォトジャーナリストとしても活躍するビルリーさんは、インド国営ウラニウム会社がウランを採取した後出る残滓でいっぱいになっている、投棄用ダムに隣接した場所で暮らしています。

「肺がん、皮膚がん、腫瘍、先天性奇形、ダウン症候群、精神発達障害、巨大頭蓋、無精子症、不妊性、胃壁破裂(症)、サラセミア症候群、そして先天性欠損症、そこにはありとあらゆる病気と障害が蔓延しているのです。」
彼はIPSニュースの取材に対し、こう答えました。

「私たちはまるで、放射線障害のモルモットです。」
インド政府のこの問題に対する無能無策を非難しながら、ビルリーさんがこう語りました。
「私たちは日常的に放射線被曝をさせられており、それが私たち自身にどのような健康被害をもたらしているか、毎日目の当たりにさせられているのです。」

▽ 核実験による放射線

冷戦の最中、ソビエト連邦は現在のカザフスタン共和国内のセミパラティンスク試験場で、456回に上る核実験を行いました。

セミパラティンスク
IAEAはこの問題について、以下のような見解を明らかにしています。
「実験が行われる際に用意された資料、そして実験後に行われた影響調査によれば、カザフスタン領内の実験施設周辺には、核実験によるものと思われる放射性物質による直接的な影響は、ほとんど確認することはできません。」

しかしIAEAの、この実態報告というよりは作り話とも言うべき報告は、セミパラティンスク周辺で暮らす人々の実感からはかけ離れたものです。

包括的核実験禁止条約機関の準備委員会(1996年に国連で採択されたCTBT(包括的核実験禁止条約)に基づき核実験の監視を行う国際機関・1997年にウィーンにCTBTO準備委員会が設置された)は以下の見解を明らかにしています。
「セミパラティンスク周辺で確認された、いくつかの遺伝子損傷に起因する疾病及び先天性欠損症、奇形、ガン、そして生殖機能障害は、繰り返された核実験に起因するものである。」

「セミパラティンスクに最も近い場所にあるカザフスタン東部の都市、セメイでは突然変異の博物館とさえ言うべき状況が生み出されている。」
同委員会はこのように警告しています。

核兵器・原子力発電と人間の健康の問題に43年間取り組み続けてきたカルディコット博士がこう語りました。
「放射線に被ばくすると、それがガンマ線であっても、アルファ線であっても、あるいはβ線であっても、人間の細胞を傷つけ、DNAの中の遺伝子情報を書き換えてしまいます。」

Chernobyl
「人体内でそれまで行われていた正常な細胞分裂が、ある日突然無秩序な状態になり、何兆もの変異した細胞を作り出すようになります。そうです、正常な細胞の変わりに、がん細胞が次々と生み出されるようになってしまうのです。」

「放射線を浴びている実感、そんなものを人間は感じることは出来ません。放射性物質に汚染されたものを食べても、味は全く変わりません。そして被ばくが原因でガンを発症しても、体はガンの発生原因を教えてはくれないのです。」

▽ ハドソン川河畔のフクシマ

インディアンポイント原子力発電所は、国連本部のあるニューヨークの北西60キロの場所にあり、現在操業延長の許可を得るため様々に運動しています。
しかし193カ国の外交官たちは、自分たちが暮らす場所のわずか60キロしか離れていない原子力発電所が及ぼす健康被害を懸念しています。

実はインディアンポイントの2基の原子炉は活断層の疑いのある場所の真上にあり、自身と津波によって大破壊を引き起こした福島第一原発になぞらえ、『ハドソン川の福島』と呼ばれることがあります。

しかし詳細に見れば、福島第一原発とインディアンポイント原子力発電所との間には、2、3異なった点があることに気づかされます。

「福島の事故では当時の風向きにより、放出された放射性物質のうち、その大部分が海に向かって吹き飛ばされるという幸運がありました。しかしそれでも尚、地上に残された放射性物質は付近一帯を壊滅されるのに充分だったのです。」
環境保護団体であるハドソン川クリアウォーターのディレクターである、マンナ・ジョー・グリーンがこう語りました。

Indian Point
しかしニューヨークの場合はその地理的条件により、風は北から南へ、東から西へ吹く場合がほとんどであり、インディアンポイント原子力発電所が事故を起こせば、放出される放射性物質はその風に乗って人口密集地に向かうことになります。

インディアンポイント原子力発電所の半径100キロ圏内には、約2,000万人の住民がいます。
そしてインディアンポイント原子力発電所と一番近い海岸線のとの間には、900万人が暮らしています。

「もしインディアンポイント原子力発電所が事故を起こせば、放出される放射性物質は海に出て行く前に、数百万人の人々を被ばくさせてしまうことになるでしょう。」

〈 完 〉

http://www.ipsnews.net/2013/06/u-n-downplays-health-effects-of-nuclear-radiation/
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福島第一原発の事故の後、海外の原発報道を翻訳し続けるうち、IAEAとWHOについては、その本質について深刻な疑問を持つようになりました。
本当に地球上の一般市民のための活動を行っているのだろうか、という疑問です。

今回の原稿を翻訳するため、Semipalatinsk(セミパラティンスク)やJadugoda(ジャジュゴダ)というキーワードでいろいろ調べました。
このページには、その際確認した写真を転載していますが、いずれも出来るだけショッキングすぎないものを選びました。
それでも、これらの写真を見た後にIAEAの以下のコメント、
「放射性物質による直接的な影響は、ほとんど確認することはできません」
を読むと、この『国連機関』には良心というものを感じることは出来ません。

【 国連はフクシマ、チェルノブイリの健康被害を過小評価 】《前篇》

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所要時間 約 7分

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チェルノブイリの現地調査もせず、『報告書』を公表したWHO
WHOとIAEAの『密約』の存在

ジョージ・ガオ(国連本部)/ IPSニュース(イタリア) 6月26日

チェルノブイリ04
国連は、原発事故により環境中に放出された放射線が被災地における住民の健康に及ぼす被害について、不正確な報告書を公表したとして、専門の科学者と市民団体から批判を浴びています。

科学者と医師によって構成された代表団が6月の第4週、国連の担当部局と面談し、議論を行いました。
国連側は今回の報告書の作成その他の作業において、国際原子力機関(IAEA)、世界保健機構(WHO)、放射線の影響に関する国連科学委員会(UN Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation - UNSCEAR)を含む各部局の協力を得ながら作業を進めてきました。

5月の時点でUNSCEARは、2011年に発生した福島第一原発の事故による放射線被ばくが引き起こす健康被害について、「差し迫った危険は無い」との見解を明らかにし、「長期にわたる健康上のリスク」も発生する確率は極めて低いとも述べていました。

「その見解は明らかにまちがっており、合理性を欠いています。」
長年核による健康被害の問題に取り組み、その危険性について啓蒙活動を行ってきたオーストラリア出身の医師である、ヘレン・カルディコット博士が批判しました。

「健康被害は実際に起きているのです。多くの人々に鼻血が止まらない、髪の毛が抜ける、嘔吐や下痢などの急性放射線障害様の症状が現実に起きているのです。」
カルディコット博士がIPSの取材に対し、このように答えました。

放射線測定
UNSCEARの報告は2月に公表されたWHOの報告に続くものですが、WHOは福島第一原発の事故後のガン発症率に目立った変化は無く、健康被害も低いものであると予測する一方、低線量の長期被ばくについては、長期間の調査が必要だとしていました。

WHOの報告は、具体的健康被害よりも住民への心理的状況による被害の方を警告していたのです。

UNSCEARやWHOの報告が妥当性を欠くものだとすれば、なぜ両機関がこのような報告を行ったのか、カルディコット博士に質問しました。
カルディコット博士はWHOが世界の場で原子力発電を推進する立場の国際原子力機関(IAEA)との間に、1959年に交わした協定( http://www.crms-jpn.org/doc/IAEA-WHO1959.pdf 市民放射能研究所 http://www.crms-jpn.org/art/112.html の公開による)の存在に言及しました。

「WHOはまるでIAEAの召使い同然の存在です。」
カルディコット博士がこう語りました。

彼女はガーディアン紙が主宰した討論の場で、ジョージ・モンビオット(英国の原子力発電推進派のコラムニスト)と議論を戦わせたことがあります。
モンビオットは地球温暖化対策上、原子力発電は石炭火力発電に対する最も有効な代替プランだと主張しました。

「1959年の協定は非常に読みにくく理解しにくい文章でつづられていますが、その内容は一般市民にとってはスキャンダルとも言うべき内容のものです。」

チェルノブイリ03
国連総会において、2006年~2016年を「回復と被災地の持続可能な発展の10年」と定義づけた際、国連は旧ソビエト連邦領内で1986年に発生したチェルノブイリ事故によって環境中に放出された放射性物質の被害を受けた地域の「開発アプローチ」として、補償を進めることに専念しました。

国連の具体的な活動内容は、2005年のチェルノブイリ・フォーラムが行った科学的調査に基づくものです。
同フォーラムはベラルーシ、ロシア、ウクライナから参加したメンバーとIAEA、そして世界の中でも開発計画に影響力を持つ組織の中から世界銀行など7つの機関から派遣された専門家によって構成されていました。

チェルノブイリ・フォーラムはチェルノブイリ原子力発電所事故を『低線量事故』と表現しました。

それはこう述べています。
「汚染された地域に住んでいる大多数の人々は、実際のところ、放射線被曝による著しい健康被害を示す傾向には無い。多くの家族はこれまでと変わらない生活を維持することが可能である。」

チェルノブイリ06
カルディコット博士はWHOについて、こう語りました。
「彼らはチェルノブイリについてのいかなる調査も行いませんでした。彼らは『予断』を語ったに過ぎないのです。」
そして博士はニューヨーク科学アカデミーによる2009年の報告書を引用しました。
そこにはWHOの報告書とは異なる現実が報告されていました。

〈 後篇につづく 〉

http://www.ipsnews.net/2013/06/u-n-downplays-health-effects-of-nuclear-radiation/
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記事の最後に出てくる、ニューヨーク科学アカデミーの報告内容については、実はこのIPSの記事の後編には出てきません。
この報告書をもとに福島とチェルノブイリの現状について、カルディコット博士が告発した記事をニューヨークタイムズが掲載ましたが、【星の金貨】が1年前に翻訳・掲載しましたので([ 原子力発電の偽りだらけのプロパガンダ、そして大事故は「もうたくさん!]http://kobajun.biz/?p=1584 )、よろしければそちらをご参照ください。

【 2020年代、暴騰するウラン燃料コストが、世界中で原子力発電を崩壊させる!】《後篇》

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所要時間 約 6分

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このまま原子力発電を続ければ、世界は深刻な電力不足に陥る
原子力発電を中核に据えるエネルギー戦略は、今後10年以内に行き詰る

ナフィーズ・アフメド / ザ・ガーディアン(英国) 2013年7月2日

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▽緻密に計算された原子力発電の段階的廃止が必要

2025年にウラン燃料の供給崩壊が起きないようにするためには、世界は「緻密に計算された原子力発電の段階的廃止」を進める必要がある、この新たな研究結果が指摘しています。

報告書が示すもう一つの選択肢は、アメリカとロシアが軍事用として貯蔵するウラニウムを、2013年から直ちに市場に放出することです。
しかしアメリカもロシアも、『原子力発電の段階的廃止』を選択してはいません。

「結局、ウラン燃料の爆発的高騰により、世界の原子力発電は原料調達の不能と発電ストップという混乱の中で、それ以上の継続不能により次々止めざるを得なくなっていくでしょう。」

今回の研究を率いた、欧州原子力研究機構(CERN)の核物理学者で、スイス連邦工科大学のマイケル・ディットマー博士がこう語り、さらに以下のように解説しました。
「英国が今回採用した、原子力発電を中核に据え、国内の電力需要を賄っていくというエネルギー戦略は、今後10年以内に崩壊することになるでしょう。」

米国、中国とインドはいずれもこれからの数十年間、原子力発電による電力生産を増やしていくことになっていますが、英国同様、どの国もこんごウラン燃料の調達が難しくなるという問題を見落としています。

ディットマー博士は、アメリカ国内の原子力発電所の原料の50%を供給している、ロシアの軍用ウラン燃料の貯蔵分をアメリカ側に売り渡す契約が、今年の後半に終了する点を指摘しました。

「アメリカは今後2、3年以内に、老朽化した原子炉を順次廃炉にしていくか、それともアメリカ軍が貯蔵している軍用のウランを市場に放出するか、いずれかの決断を迫られることになります。

中国原発建設02
中国も似たような難しい状況に直面しています。

2008年には6基、2009年9基、2010年10基と3年間で25基の原子炉を建設した中国ですが、2011年~2013年に建設が介されたのは、2012年の4基だけだったのです。

中国の原子炉建設は実は福島第一原発の事故発生以前に、ブレーキがかかり始めていたのです。」

ディットマー博士は、このような状況が現実になる可能性について、すでに数年前に指摘をしていました。

彼は英国の原子力発電を中心に据えたエネルギー戦略について、さらに次のように指摘しました。
「これからの10年間、計画通りに原子力発電を行うために必要なウラン燃料の総量について、詳細な計算を行っているのかどうか、英国政府に尋ねてみる必要があります。答えは無いはずです。答えが無いという事は、今後10~20年間のウラン燃料の調達については、何も具体的な契約が存在しないということなのです。」

ディットマー博士は実際にこの質問を、英国エネルギー省と英国地球温暖化対策庁に対し行いました。

これに対し同省のスポークスマンは
「ことは商取引上の極秘事項に該当するものであり、回答することはできない。」
と断り、さらに次のように続けました。
「質問そのものが、回答することが難しい技術的問題を抱えている。」

EDF
ディットマー博士は最後次のように語りました。
「要するに、原子力発電を行うためのウラン燃料を獲得するための取り組みは、電力各社がそれぞれの責任で行いなさい、という事なのです。英国の原子力発電のほとんどはEDFが所有・運営しています。」

※ナフィーズ・アフメド博士は、英国の政策調査・開発研究所の役員です。
ツイッター・アカウントは@nafeezahmedです。

〈 完 〉

http://www.guardian.co.uk/environment/earth-insight/2013/jul/02/nuclear-energy-crunch-uranium-peak-blackouts?INTCMP=SRCH
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アメリカですら、軍用のウランを転用するか、原子力発電を廃止するか、いずれかの選択を迫られるのです。
軍用のウランなど持っているはずがない日本は、いったいどうすべきなのでしょうか?
誰が考えてもわかるはずです。

処理不能のまま、積み上がっていく高放射性核廃棄物の存在は、もはや原子力発電を止めなければならない時が来ていることを伝えています。
そして今、ウラン燃料が決定的に不足することにより、原子力発電が継続できなくなることが解りました。

原子力発電を利用した成長戦略、そんなものはまやかし以外の何ものでもないことが、ついに明らかにされたのです。

【 2020年代、暴騰するウラン燃料コストが、世界中で原子力発電を崩壊させる!】《前篇》

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所要時間 約 7分

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このまま原子力発電を続ければ、世界は深刻な電力不足に陥る
原子力発電のウラン燃料は2025年以降、生産量が急速に減少していく

ナフィーズ・アフメド / ザ・ガーディアン(英国) 2013年7月2日

原子力発電崩壊
ひっ迫している需給関係により、最早低価格のウランなどは存在せず、必然的に原子力発電の段階的廃止、あるいは原料調達不能による原子力発電所の停止と対規模停電、あるいはもっと悪いシナリオが現実のものになりつつあります。

英国・米国両政府は、原子力発電を大量の電療供給を実現するクリーン・エネルギーとして、これを将来の経済成長を実現させるための重要な手段の一つと位置づけています。
しかし原子力発電の燃料となるウランの生産に関する最新の研究は、2020年以降は需要がひっ迫し、ウランの価格が絶えず上昇を続ける状況が生まれ、もはや原子力発電の継続が困難になるだろうと警告しています。

この研究はこれまでのウランの埋蔵量、採掘実績、そして現在の採掘状況を分析し、得られたデータを基礎にしています。
結果は世界のウラン採掘量は2015年の58キロトンをピークに減り続け、2025年には54キロトンに減少、2030年になるとその採掘量は急激に減少し、最大でも41キロトンにまで減少することになります。

科学雑誌、『総合環境科学( http://www.journals.elsevier.com/science-of-the-total-environment/ )』に掲載された、この研究の査読(さどく : 科学論文を出版する前に、その内容を同専門分野に関して権威ある研究者によって評価・訂正する制度)は次のようにコメントしています。

「このウラン生産量では、2020年代、そして2030年代において、既存の原子力発電所と現在建設中・計画中の原子力発電所すべてに、燃料を行き渡らせることが出来なくなります。
この事態を避けるためには原子力発電を段階的に廃止していく必要があり、そのペースも年に1%以下では、2025年に世界の原子力発電所において燃料が手に入らないという事態を避けることが出来なくなります。」

インディアン・ポイント原子力発電所
「このような状況から、我々は世界中で原子力発電を段階的に廃止していくことこそが、正しい選択である、そう提言せざるを得ません。」

▽ 危険で愚かな選択

しかしイギリス政府はつい先週、今後2年間で深刻な電力不足に陥る危険性があるという警告に対し、最悪の選択をしてしまいました。
すなわち原子力発電事業に対し、日本円で1兆5,000億円の財政援助を発表したのです。

エネルギー担当大臣エド・デイヴィは国民に対し、以下のように約束しました。
「これ以上、電気の値段が上昇することは無いでしょう。我々は考え抜いたプランを実施に移したのであり、これから先電気に困るようなことは起きないでしょう。」
今回の補助金の決定は、原子力発電を中核に据えるという英国のエネルギー戦略を一層強化することになります。

英国政府が進める他に例を見ない原子力発電に大きく依存するエネルギー政策が現実のものになれば、
原子力発電は2050年までに75GWの発電能力を実現し、英国の電力の86%を提供することになります。

新たな研究結果によれば、ウランの生産は過去5年間夜明けの到来とも言うべき段階に達し、合計で250キロトンの生産が実現しました。
しかし増産に次ぐ増産は、これまでのように高品質のウランだけを原料に使うという贅沢を許さず、多少粗悪な鉱石からも原料を抽出するという状況を生み出しています。
このため平均して、ウランの抽出能力はかつての50~70%に低下してしまっているのです。

ウラン採掘
カナダとオーストラリアにあるウラン鉱山を、一か所ごとに正確に検証し、その採掘可能量と年間採掘量を定量化して検証した結果、今後新たに開発予定の鉱山も、現在採掘がおこなわれている鉱山の生産量の低下を補うまでには至らないとの結論が得られました。

「ウラン生産量の減少は2015年から始まり、2025年まで毎年0.5キロトンずつ減少して行きます。
そして2025年以降は生産量が急速に減少していくのです。

これに対して需要の方は中国、インド、東ヨーロッパなどを中心に原子炉の新設が進むため、毎年1%ずつ増加すると仮定すると、5年の内には世界各国で原子力発電のための燃料調達が難しくなり、それに呼応する形でウラン燃料の価格暴騰が始まることになります。

〈 後篇につづく 〉

※ナフィーズ・アフメド博士は、英国の政策調査・開発研究所の役員です。
ツイッター・アカウントは@nafeezahmedです。
http://www.guardian.co.uk/environment/earth-insight/2013/jul/02/nuclear-energy-crunch-uranium-peak-blackouts?INTCMP=SRCH
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この【星の金貨】ではこれまで原子力発電の出口の問題、核廃棄物の問題を取り扱った記事を繰り返しご紹介してきました。
福島第一原発の事故後、核廃棄物の問題を真っ先に指摘したのがニューヨークタイムズでしたが、その後同じ米国のAOLエナジー、イタリアのIPSニュース、ドイツのデア・シュピーゲルなども次々と核廃棄物の問題を取り上げ、『最終的処分方法』など存在しないこと、人間の手にそんな技術が無いことについて警鐘を鳴らし、原子力発電を続けることの無理、危険を訴えてきました。

また、エドガー・スノーデン氏の内部告発を独占的に掲載し、世界にその名を知らしめた英国のザ・ガーディアン紙は、核廃棄物の問題に加え、原子力発電そのものの危険性を訴える記事を何年にもわたり掲載し続けてきました。

そのガーディアン紙が今回、原子力発電はその入り口である核燃料の問題から、崩壊の可能性がある事を私たちに教えています。
国際的に原子力発電は、もはや追い詰められつつあることを感じないわけにはいきません。
そしてその「崩壊」が始まる時期が、意外なほど早く来ることに驚かされます。

なのに首相自ら、福島第一原発の事故を引き起こした『優秀な技術力に支えられた日本の原子力発電』を世界中に売って回る、その姿は世界の人々の目にはどう映っているのでしょうか?

日本の首相のあまりに無神経な振る舞い、世界を怒らせる【 731部隊の陰惨な記憶を呼び覚ます日本の首相 】

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日本人が知らない『外交的孤立』: なぜ今、世界の外交舞台で、対日感情が今、悪化しているのか?

マックス・フィッシャー / ワシントンポスト 5月18日

WP Abe01
第二次世界大戦中、『731部隊』としてその名を知られる大日本帝国陸軍の一部隊は、中国の一部である当時の満州において、数年間に渡り大規模な生体化学実験、すなわち人体実験を行いました。
日本軍の研究者は、一般人を含む中国人の囚人に対し、化学物質や細菌を注射する、不具者にしてしまう、臓器を摘出するなど、血も凍るような化学実験を繰り返し行いました。
その結果3,000人が死亡し、300,000人以上が病気感染、あるいは障害を負ってしまうという言語に絶する残虐行為を行いました。
731部隊はアジア地区における、日本軍の非人道的行為、戦争犯罪を象徴する存在となりました。

そうした犯罪行為は、戦争の過程で、あるいは大日本帝国政府自身によって、過去繰り返されました。

しかし見過ごせないのは、日本自身が最近になって、そうした歴史的事実を書き換えようとしていることです。

ドイツは第二次世界大戦中のナチスの戦争犯罪について徹底的な調査を行い、犯罪内容をすべて明らかにした上で、国家として謝罪しました。
これに対し、安倍晋三首相を含む一部の日本の右派の政治家たちは、常に言葉を濁しなが第二次世界大戦中の日本は、そこまでの戦争犯罪は行っていないという認識を国内に浸透させてきたのです。

安倍首相は欧米各国の記者たちとのインタビューにおいても、日本が近隣のアジア諸国を侵略・占領した事実について、『侵略』ではないという奇怪な認識を示しました。

Yasu01
常に論争の絶えない靖国神社を今年参拝した、自民党の要職にある議員3名は安倍首相からの供物を持参していました。
靖国神社には、第二次世界大戦における戦争犯罪者も合祀されています。
安倍首相は以前、第二次世界大戦中に日本軍がアジア各地の女性に「従軍慰安婦」として、実質的に売春行為を強制され、性的奴隷として扱われていたという歴史認識に対し、異議を唱えたことがあります。
現在でもその考えを支持する政治家が、日本国内には複数存在します。

そして最も新しい『挑発』ととられた出来事が、5月12日の日曜日に起きました。
安倍首相は自衛隊の松島航空基地を訪問した際、マスコミ向けのポーズをとるためT-4訓練用ジェット機の操縦席に座り、カメラに向かって親指を立て、微笑んで見せました。
まさに微笑んでいるその顔の下に、訓練機の機体に描かれた『731』の文字が大きく描かれることになったのです。

その行為が配慮を欠くものであったかどうかは置いておいて、この『731』という数字が、日本の関係者が言うように、完全に偶然であったという可能性はあります。
しかし偶然であったにせよ、作為的であったにせよ、第二次世界大戦中、日本軍の戦時虐待の犠牲者となった人々の怒りをさら深刻なものにし、日本に対する次のような認識を一層強いものにしてしまいました。

橋下
すなわち、日本の多くの政治指導者たちが、日本帝国の第二次世界大戦中の戦時虐待などの行為について反省などしておらず、さらに悪いことには誇りにさえ思っている、

中国政府、韓国政府、両国の当局者は安倍首相の振る舞いに対し怒りをあらわにし、韓国最大の日刊紙は安倍首相のこの時の写真を第一面のトップに掲載しました。

アジアをはじめとする世界各国の外交部門の日本担当部局は、『731』という機体が選ばれた理由について、不幸な間違いであったのか、それとも日本帝国軍隊の被害者を意図的に貶めようとするものであったのか、分析を進めています。

確たる証拠が無い以上、単なる間違いであったと判断することが、最も無難な回答になるでしょう。

しかしいずれが正しいにせよ、最近日本では国家主義者である政治家が自分の胸を叩きながら、大声で吠え散らしていることは事実です。
彼らはこう主張しています。
第二次世界大戦以前、そして戦争中の大日本帝国は、言われるほど悪いことはしていない。
そして、戦後アメリカによって『押し付けられた』平和憲法は、もはや時代にはあわなくなっている、と。

WP502
私はこの問題について、極東アジア地域の研究者であり、各国の主張に対し公正中立の立場をとって来たダートマス大学のジェニファー・リンド教授に、日本軍731部隊の問題についてどう解釈すべきか質問をしました。

以下はその質問に対する、教授が電子メールで寄せた回答です。尚質問の際、橋本氏の発言との関連性についても、コメントを依頼しました。

「今回の出来事は、日本政府と日本の国民が、自分たちの国が過去周辺各国において行った戦争犯罪や戦時虐待などの問題について、正しい認識を持っていないという事を周辺諸国、そして世界中に教える結果となりました。

今回首相が『731』と表示された機体に乗って得意げに微笑んで見せたことは、たとえそれが作為的ではない単なる過失であったとしても、現在の日本の政府が第二次世界大戦の戦前・戦争中におこなった残虐の行為の被害者と被害国に対し、当然持つべき配慮、そして思いやりが欠落していることを証拠立てています。

日本はこの出来事により、外交的に最悪の評価を得ることになりました。

すでに日本の外交的評価は、橋下徹氏の従軍慰安婦に関する発言によって、地に堕ちた状態にありました。
彼はストレスがたまっている人間なら、強姦に及んでも仕方がない、そのことに理解を示すべきだという趣旨の発言を行ったのです。

私と同じような見解を持つことが出来る、良心をもった日本の人々が一人でも多くいることを願うのみです。」

今回の一連の問題は、日本には安倍首相や橋下徹氏の考え方や振る舞いに反対する日本人が数多くいるという事を、証明するためには、逆に良い機会かもしれません。

橋下徹
私自身はこの発言に対し、嫌悪感以上のものを覚えました。
日本は人口の多い、いろいろな意味で強い国家です。
その日本には、周辺諸国の感情を傷つけ、逆なでしてはばからない一部の国家主義的政治家、国家主義者の言動に反対する人々が、政治家を含め数多くいるのです。

しかし一方で、認識の問題も重要です。
安倍首相や橋下徹氏のような国家主義者は今、海外における日本に対する認識を歪め、外交的にも日本をどんどん不利な立場に追い込んでいるのです。

http://www.washingtonpost.com/blogs/worldviews/wp/2013/05/18/japanese-leader-revives-dark-memories-of-imperial-era-biological-experiments-in-china/
  + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – +

これもまた日本のマスコミが伝えない、そのために日本人が知らない事実が伝えられています。
日本のナショナリズム政治家の言動に対しては、世界の世論は反発している、厳しい目を向けている、という事実です。

この問題については、すでに英国のエコノミストの記事( http://kobajun.biz/?p=11668 )、ワシントンポストの記事( http://kobajun.biz/?p=12187 )などをご紹介していますが、
「日本の外交的評価は、橋下徹氏の従軍慰安婦に関する発言によって、地に堕ちた状態」
「安倍首相や橋下徹氏のような国家主義者は今、海外において日本に対する認識を歪め、外交的にも日本をどんどん不利な立場に追い込んでいる」
とまで踏み込んだ表現をした記事は初めてです。

国際貢献などと騒ぐ前に、ドイツのように姿勢を正し、誰が見ても公平に過去を清算することが大切なのだと思います。
人間として問題のある行為をしていながら、「俺はそんなことやってないよ」と平気で口にする人間を信頼することなどできるでしょうか?

外交的孤立は感情の上だけの事では無く、一国の経済に影響を及ぼすことも考えられます。
尖閣諸島の問題を石原・野田ラインの日本側が『引き起こした』ために、中国における日本のビジネスが大打撃を被ったことは記憶に新しいところですが、生活必需品の多くを中国産に依存している日本国内の物価が、『売り渋り』などの行為によって上昇するリスクも出てきます。
また公式に声明などを発していないにしても、今回の問題で不快感を持ったのは中国・韓国だけでは無いはずであり、そのことは国際関係に微妙な影を落とすことになるでしょう。

国内報道に欺かれてはなりません。
2人に代表される一部政治家のために日本の国際評価は下がっている、それは現実なのです。

子どもたちの甲状腺の問題が多発するフクシマ【 心配で、戻れるような状況ではない 】《後篇》

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95,000人の40%の子供たちの甲状腺に、超音波検査によって異常を認めた
「日本における甲状腺がんの発症は、2015年から本格化する」

デイヴィッド・マクニール / ザ・インデペンダント(英国) 6月2日

101603
「日本も旧ソ連も、政府機関はその国の人々がどれだけの被ばくをしたのか、その数値を明らかにはしていません。当然ながら、被ばく線量が高かったということが疑われます。そして特に女性と子供たちが、被ばくによる健康被害を受けやすいという事が解っています。」

「したがって、福島第一原発の事故で被曝してしまった人々の、本当の被ばく線量への疑問、そして健康被害への懸念は一生続かざるを得ません。」

ウィング博士のこの見解は、チェルノブイリについての著作がある、ロシアの病理学者のアレクセイ・ヤブロコフ博士も支持します。
ヤブロコフ博士の著作はチェルノブイリの事故が人々、そして環境に壊滅的打撃を与えたことについて述べており、今日において尚最も賛否両論の多い見解を示しています。
ヤブロコフ博士はその邦訳の出版のため、5月下旬に日本に滞在していました。

ヤブロコフ博士はチェルノブイリの事故による健康被害は、著しく過小評価されていると訴えています。
彼は東京における講演会でも、率直明快な見解を明らかにしました。

「私は日本における甲状腺がんの発症は、2015年から本格化するものと考えています。」

チェルノブイリの事故調査に関しては、当時のソ連政府が当初統計結果を改変し、事故を小さく見せようと工作したといういくつもの批判があります。

101406
福島県当局は、事故発生当時18歳以下だった360,000人について、一生の間健康調査を続けると約束しました。
2月、福島県は38,000人の健康調査を行った結果、甲状腺がんの発症を確認できたのは3例にとどまり、福島医科大学の甲状腺外科の鈴木真一教授は統計的には有意でない結果であったと述べました。
「福島第一原発の事故とガン発症の関連性を証拠立てることは難しいと考える。

この見解に対し、福島の親たちは不信感をあらわにしました。
2人の子のシングル・マザーである西高加奈子さんは、たくさんの親たちが政府や県の調査を信頼していないと語りました。

彼女は福島第一原発から約60キロほど離れた福島市で生まれ、成長しましたが、医師が彼女の娘のふうちゃんの体内から放射性セシウムを検出したのを受け、2011年5月、生まれ故郷を立ち去りました。

「私は娘の被ばく線量が、核爆弾の実験に立てあわされた人々と同程度だと言われました。」
彼女が当時の事を話してくれました。
「調査を担当した学者さんたちは、私たちに家に帰っても大丈夫だと言いました。でも彼らは自分自身のこどもを、福島の同じ場所に連れて行くでしょうか?」

101601
多くの親たちが鈴木教授の調査班が、95,000人の40%にあたる子供たちの甲状腺に、超音波検査によって異常を認めた点を指摘しました。
うち35%の子供たちは甲状腺に小結節または嚢胞が出来ていたのです。

この子供たちは福島第一原発周辺の、最も汚染のひどい場所で暮らしていました。

嚢胞と小結節はガンとは違う、そうした見解を明らかにした福島県に対し、確かにガンではないが、将来回避できない深刻な健康問題を引き起こす原因になり得る、藤本さんがそう指摘しました。

「私は福島県当局の見解は全く信用できない、そう思っています。」
「福島県は福島第一原発による事故の影響をできるだけ小さく見せるため、人々が元通りの場所で済み暮らすことを望んでいるのです。見え透いています。」

フクシマの親たちは福島県や日本政府によって雇われた科学者たちが、調査を始める前からどのような結論を出すか、予め決まっていたとして非難しました。
鈴木教授の調査班は昨年7月、『人々の不安を鎮静化させるために』調査を行うと表明していました。

女の子02
議論の結果、結論は真っ二つに分かれました。

ひとつは藤本さんたちの見解。
福島県や日本政府は、福島第一原発の事故の真実について過小評価を行い、事実の隠ぺいすら行っている。
一方で福島県や日本政府は、親たちの心配は過剰反応であるとする見解を明らかにする機会が増えています。
県や国の見解とはあまりに異なる発言をすると、風評を煽っていると非難される危険性も出てきました。

しかし国や県の科学者がどのような見解を示そうとも、藤本さんは福島に戻るつもりはないと、強い口調で語りました。

「現時点で明らかにはなっていない情報が、数多くあると思っています。私の子供たちにとっては、全てが明らかになった後になってから対策をとっても、その時はもう遅すぎるのです。」

〈 完 〉

http://www.independent.co.uk/news/world/asia/frightened-to-return-a-fukushima-fathers-story-8640818.html?origin=internalSearch
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宮城県の北西部、福島第一原発の事故後、牧草が放射能に汚染されていることが問題となった辺りで農業をしている知人が、このところ続いている『異変』に頭を悩ませています。

先月収穫した梅の実の放射能検査をしてもらったところ、1キログラム当たり77ベクレルの放射性物質が検出された、というのです。
現在の基準では1キログラム当たり100ベクレル以上が『食用には適さない』とされているので、安全基準上は「問題なし」ということになります。

問題は別にあります。
同じ木に生った梅の実の昨年の放射性物質の量は、15ベクレルだったという事です。
事故発生3年目の梅の実が、なぜ2年目の梅の実の5倍の放射性物質を含んでいるのか?
どうしてなのか?

もちろん、一農家でしかない彼が結論を出せる問題ではありません。
彼の自宅の庭には今年の春、まるでパイナップルの実のようなタンポポが生えました。
こんなものは生まれて初めて見た、と今年46歳になった彼が話していました。

「何も終わっていない、どころか汚染が一層ひどくなっている。ひょっとしたら、一番ひどい場面は、まだ始まってもいないのか知れない…」
怒りを込めて、彼が語りました。

子どもたちの甲状腺の問題が多発するフクシマ【 心配で、戻れるような状況ではない 】《前篇》

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「本当の被ばく線量への疑問、そして健康被害への懸念は一生続く」

デイヴィッド・マクニール / ザ・インデペンダント(英国) 6月2日

101606
他の多くの父親同様、藤本さんもまた幼い子供の健康が心配で避難をしました。

将来の影響を考え、子供が口にする食べ物、呼吸する大気の状態などに親は当然のこととして気を使います。
しかし、藤本さんはもう一つの問題を考えざるを得ない状況にあります。

福島第一原発が放出する放射性物質です。

福島第一原発で原子炉がメルトダウンをし始めた2011年3月11日、その3日後に藤本さんは幼い2人、当時3歳と4歳の娘を守るために、数百キロ離れた場所に避難しました。
しかし昨年12月、年長の娘が、多くの場合唾液腺にできるガンに発展する可能性の高い咽頭嚢胞(いんとうのうほう)と診断されました。
「私は医師に、きわめて稀な病気ですと告げられました。」

藤本さんの家族は福島第一原発から100キロメートル離れた千葉県、放射性物質が降り注いだ地域とは逆方向に居ましたが、娘さんの病気の発生原因は、福島第一原発が放出した放射性物質を吸い込んでしまったことだと考えています。
「私は娘の病気の原因を作ったのは、福島第一原発の事故だと確信しています。」

国連は5月末、福島においてガン発生率の顕著な上昇などは見られないが、今後も状況を注視することを推奨するとのコメントを発表しました。
国連の放射線の影響について検証する科学委員会による報告書は、迅速な避難が行われた結果、ほとんどの人の内部被ばく量が少ない値で済んだと述べています。

FR24 破壊された福島第一原発
福島第一原発を運営している東京電力は放出された放射性物質の量について、最終的に900,000ベクレルと試算し、その量はチェルノブイリの事故の際の5分の1に留まっていると発表しました。
そして放射性物質の放出は、始めの3週間に集中したとも述べています。

この放射線が人間の健康に与える確実な影響については、論争の絶え間がありません。
しかしチェルノブイリの事故調査によって、一点だけははっきりと解明されました。

子どもの甲状腺がんの発症率の増加です。

国連の主導の下に2003年から2005年にかけ行われた『チェルノブイリ・フォーラム』の調査によれば、事故の影響を最も強く受けた地域で、5,000例に近い18歳以下の甲状腺がんの発症を確認しました。
汚染された牛乳を飲んだ事が主な原因だと思われています。
多くの科学者が被ばくからガンの発症までの間に、4年~5年間の潜伏期間があるものとみています。

チェルノブイリでは事故発生から半世紀の間、ガン発症率の激増、先天性欠損症、そして奇形などについて取りざたされましたが、国連は甲状腺がん以外には、
「顕著なガンの発生率の上昇などは確認されていない。」
との見解を示しました。

しかしこの見解については、その正当性が疑われています。

「広範囲にわたる、詳細な記録が残されています。」
ノースカロライナ大学の伝染病理学者のスティーヴ・ウィング博士がこう語りました。

101601
一方でウィング博士はチェルノブイリの原発事故が原因の、ガン発生率の完全なデータが存在しないことも認めました。
「モニタリング調査の不備のため、当時風下に居た人々のガン発生率に関する資料が無く、データは完全ではありません。その上、これまでのところ、放射線被ばくとガン発生率の関連性については、原爆被爆者を調査してまとめられたものに頼らざるを得ないというのが現状なのです。」

しかし博士は藤本さんのように、日本の親たちが心配するのは当たり前だと語りました。

「日本も旧ソ連も、政府機関はその国の人々がどれだけの被ばくをしたのか、その数値を明らかにはしていません。当然ながら、被ばく線量が高かったということが疑われます。そして特に女性と子供たちが、被ばくによる健康被害を受けやすいという事が解っています。」

「したがって、福島第一原発の事故で被曝してしまった人々の、本当の被ばく線量への疑問、そして健康被害への懸念は一生続かざるを得ないのです。」

〈 後篇につづく 〉

http://www.independent.co.uk/news/world/asia/frightened-to-return-a-fukushima-fathers-story-8640818.html?origin=internalSearch
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2011年3月11日以降の私たち日本人の時間というものは、ここに登場する子供たちを守る、まずその事こそが一番大切なことでは無かったのか?
今、痛切にそのことを感じています。

しかし今、この問題は幾重にも向こうに追いやられ、経済や株価こそが日本の生命線だと声高に叫ぶ声が聞こえてきます。
子どもたちを大切にしない国の『成長』とは、いったいどんなものなのでしょうか?

私事で恐縮ですが4月に母親を亡くし、何種類もの株式を持たされる羽目になり少々閉口しています。
私にとってはあてにしていた訳でもなく、使う予定も無い株の値段の上がり下がりにはさほどの興味もありません。

しかし、福島の子供たちのこれからはものすごく気がかりであり、鋭い痛みを感じています。
私の感覚は、歪んでいるのでしょうか?

【 福島の終わらない危機、そして東京電力の年次株主総会 】

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「常に放射線の恐怖がつきまとい、未来が全く見通せない、私たちの苦しみを考えてみてください。」
東京電力を救済し、東電と一緒になって原発再稼働の途を探る日本政府

AP通信 / ワシントンポスト 6月26日

東電株主総会
26日水曜日に開催された年次株主総会で、株主たちは放射能汚染水の漏出の問題や原子力発電の段階的廃止を求めて役員たちを質問攻めにし、東京電力に対する怒りをあらわにしました。
彼らが提案した15件の動議、東京電力は再生可能エネルギーへの転換を進めること、2011年3月に発生した福島第一原発の事故の被災者に対し役員は報酬の中から寄付を行うこと、などは年次株主総会の席上、否決されました。

日本はいま、福島第一原発で津波によって冷却装置が動作不能に陥ったため、3基の原子炉がメルトダウンを起こし、環境中に放出した放射性物質を取り除く作業、すなわち除染作業と、周辺の市町村を再建するという極めて困難な作業を行うという、難しい状況にあります。

「常に放射線の恐怖がつきまとい、未来が全く見通せない、私たちの苦しみを考えてみてください。」

事故後避難区域に指定された福島県浪江町からやってきた株主の立花りゅう子さんがこう訴えました。
「物質的な豊かさは、人間を幸福にはしてくれません。」

福島第一原発では放射性物質に加え汚染水も漏れ出し、敷地内にはいまだに汚染された大量のがれきが散乱し、その上度々停電トラブルを起こすなど、きわめて不安定な状態にあります。
日本政府は福島第一原発の事故収束・廃炉作業完了までを、約40年と見積もっています。
東京電力の株価は事故後の暴落からはいくらか値を戻してはいますが、急落したままであり、配当金も支払われません。

東電株主総会2
グリーンピース・ジャパンの活動家たちは、株主総会の会場入り口付近にカジノの賭けテーブルの模型を置き、カジノ従業員の服装をして現れました。

「原子力発電は、ものすごく危険なキャンブルなのです。」

グリーンピース・ジャパンの広報担当、関本ゆきさんがこう語りました。

東京電力は日本政府によって救済のため、国営化されました。
日本政府はその筆頭株主として、東京電力の政策を支持し、新しい安全基準の下で停止中の原子炉をどうすれば再稼働させられるか、その方途を探っています。

集まった株主の間からは東京電力やその経営陣を非難するヤジが飛び交いましたが、東京電力と連携する株主も数多く集まっていました。
至る所で警備員が目を光らせ、ひとりの原子力発電反対派の株主は手にしたマイクのスイッチを切るように言われ、立ち上がらないよう注意されました。

東京電力・広瀬
東京電力側は何度も頭を下げ、事故後の『数々のトラブルと懸念』について謝罪を繰り返しました。
一方で放射能汚染水の漏出の問題については、メルトダウンしている原子炉を冷却するためには水をかけ続けるしかなく、汚染水漏れをいつになったら完全に封じることができるか、そして水が漏れ出している場所を正確に特定することが技術的に難しいことを認めました。

さらに福島第一原発の事故収束・廃炉作業と周辺地域の除染を続けるため、これから長期間公的資金に頼らざるを得ないとも認めました。
東京電力の広瀬直美社長は株主に対し、こう謝罪しました。
「我々は機構改革を行い、活力のある民間企業としての再生を図ります。」

しかし株主の一部からは不満の声が上がりました。
藤井さんと自ら名乗った株主の一人は、こう発言しました。
「雛壇の上に居並ぶ役員の皆さん、あなた方全員は、本来なら職業安定所で職探しをするか、公園であても無くぶらぶらしていなければならないはずです。」

100株を持つ浅田まり子さんが、AP通信の取材に次のように答えました。
彼女は福島第一原発周辺で農場を経営し、自ら作物の栽培を行っていましたが、事故の発生により避難生活を強いられています。
「東京電力は原子力発電を止めるべきです。」

「もう一度福島第一原発のような事故を引き起こしたら、日本人はもう生き残ることはできないのですから。」

http://www.washingtonpost.com/business/japan-utility-behind-nuclear-crisis-faces-angry-shareholders-at-annual-meeting/2013/06/26/9c33de68-de30-11e2-bc84-8049224b33e1_story.html
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国家というものは本来、そこで暮らす人々が自分たちを守るために考え出した組織体のはずでした。
ところが組織というものはいったん出来上がると、本来の目的を忘れ、まずは自分たちの組織そのものを守ることを目的としたがるようです。

アメリカなどは、政府機関などについて時代が変わって機能性や役割に疑問が生じるとドラスティックに改変するようですが、日本はそうは行きません。

福島第一原発の事故の原因を作ったのは何も原子力安全・保安院と東京電力だけではないはずですが、他の関連政府機関などは事故について痛烈に反省することも無く、まずは自分たちの組織を保全するために蠢動しています。

そして刈羽崎柏原発再稼働への東京電力・広瀬社長の『決意表明』などを聞いていると、同社も事故について痛烈に反省し、どうすれば自分たちが社会と共生できるのか悩み抜こう、などと言う考えはさらさらないことが解ります。
あれだけの事故を起こしたのだから、たとえ会社が半分の規模になっても社会ときちんと共生できる企業を目指す。

理想論ですが、理想を持たない社会がどうなるか、私たちは68年ぶりに目の当たりにしているのではないでしょうか?

巨大事故解決の見通しも無い中、原子力発電所再稼働へとひた走る日本

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【 日本の新たな原子力発電規制基準 】
福島第一原発で事故収束・廃炉作業の見通しが立たない状況下、安倍政権は再稼働路線を推進

            

4号機建屋

ニューヨークタイムズ 2013年6月18日

              

2年前に東北地方太平洋岸を襲った巨大津波が原因となり、チェルノブイリ以来最悪の原子力発電所が起きてから初めて、全面的見直しによる原子力発電所の新しい規制基準が6月19日、決定しました。
折しも前途多難な事故収束・廃炉作業が続く福島第一原発では、新たなトラブル発生の兆しが見られる中での発表でした。

               

2011年に発生した巨大地震と津波は福島第一原発の施設を壊滅させ、一般国民の間に原子力発電に対する強い懸念を抱かせることになりました。
こうした状況を受け、日本国内にある稼働が可能な50基の原子炉のうち、現在は2基だけが稼働中です。
しかし安倍晋三首相は、これら停止中の原子炉の再稼働を推進する強い姿勢を明らかにしてきました。
新たな安全基準が決定したことにより、2014年の前半にも日本国内の原子炉が再稼働する可能性が現実のものとなりました。

             

新たな安全基準は日本の原子力規制委員会によって公表されました。
同委員会は前身の原子力監視機関である原子力安全・保安院が電力業界と癒着し、安全基準の適用について実にいい加減な対応を繰り返すという不祥事を受け、昨年新たに組織されました。

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これから各原子力発電所は津波対策を強化することを求められ、原子炉の直下の活断層の有無について調査を行わなければなりません。
そして敷地内に免震重要棟を建設、その中に緊急司令室を設け、さらには原子炉内部から有害な放射性物質の放出を防ぐため、フィルタ付きベント装置も設備しなければなりません。

以前も安全基準はありましたが、法的拘束力は無く、各原子力発電所が自主的に設定していたもので、内容は電力会社に任されていました。今回は法律として拘束力を持つことになります。

そして今回初めて福島第一原発の事故のような過酷事故の可能性について言及しています。
福島第一原発の事故で3基の原子炉がメルトダウンし、100,000人以上の住民が避難を余儀なくされました。

原子力規制委員会は停止中の原子炉の再稼働について、各方面からの圧力に直面しています。
一方で困難な状況が続いている福島第一原発の事故収束・廃炉作業は、安倍首相が唱えてやまない商業用原子炉の再稼働方針に暗い影を投げかけています。

19日には東京電力が、福島第一原発の敷地内からくみ上げた地下水から高濃度の放射性ストロンチウムを検出したと公表しました。

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東京電力は原子炉2号基近くの地下水から、国が定める安全基準の30倍の濃度のストロンチウム90を検出したと公表しました。
原子炉2号基は2011年3月に津波によって冷却装置が稼働不能に陥り、メルトダウンした3基の原子炉のうちの1基です。
東京電力は事故発生以来貯まり続ける汚染水の保管に苦闘を強いられ続けていますが、敷地内の地下水が高濃度に汚染されているという点は否定しました。

しかし最新の通常の点検によって発覚したこの事実は、タービン建屋の基礎部分では放射性物質を含んだ水があふれている状態にあり、その汚染水が漏れて出し、海にまで達しているという懸念を改めて引き起こしました。

ストロンチウム90は人体に取り込まれると骨に蓄積され、体内で放射性物質を放出し、ガンを引き起こす原因を作ります。

原子力規制委員会は原子炉の再開を目指す電力会社からの申請を、7月8日から受け付けると公表しました。
7社の電力会社が、国内の13基の原子炉の再稼働をめざし、申請を行う事を表明しました。

原子力規制委員会の田中俊一委員長は19日、新たな安全基準により、日本は新たな段階に入ったと宣言しました。
新たな安全基準は、日本をして原子力発電における世界最高水準の安全対策が実施される国にするだろうと語りました。

原子力規制委員会の関係者は、原子炉の再稼働を許可するための審査には数か月を要するだろうと語りました。
地方のメディアは6カ月程度の審査期間が必要になるだろうと予測しています。

活断層
これとは別に原子力規制委員会は、日本国内の6か所の原子力発電所の下にある、活断層の存在に関する調査を指揮してきました。
その調査の結果を受け、原子力規制委員会は敦賀原発2号機の直下に存在しているのは活断層であると結論しました。
活断層が直下に存在することが確認されれば、その原子炉は廃炉にせざるを得ません。

新しい安全基準の実施が、福島第一原発の事故以降続いている国民の原子力発電に対する懸念を鎮静化させることに、効果を発揮するかどうかはまだ明らかではありません。

朝日新聞社が福島県を除く1,781人を対象に、6月の8日と9日の両日に渡り行った世論調査によれば、再稼働を認めると回答したのが28%であったのに対し、58%が再稼働は認められないと回答しました。

19日に開催された原子力規制委員会の会議は一般公開されましたが、傍聴席から上がった『市民の意見を聴け!』『すべての再稼働反対!』などの叫び声により、数回の中断を余儀なくされました。

それでも尚、電力業界、原子力発電を支持する日本の産業界、そして安倍首相率いる自民党は一基でも多く原子炉を再稼働させようと動いています。
3.11の大災害以前、日本は必要とする電力の3分の1を原子力発電によって賄っていました。
原子力発電を支持する関係者などは、電力不足と発電用燃料費の高騰が日本経済に損害を与えていると主張しています。

汚染水2012-03
福島第一原発の目下の問題は、1分間につき約300リットルという量の地下水が、破壊された原子炉建屋の基礎部分に流れ込むことによって生じています。
流れ込んだ地下水は、汚染水の格納用タンクに貯蔵される以前に、この場所で高濃度に汚染されてしまうのです。

今回新たに地下水の中からストロンチウムが検出された原因については、汚染水貯蔵タンクからの汚染水の漏出、あるいは原子炉建屋からの汚染水漏れが疑われます。
この事態に東京電力は、付近の堤防の補強工事を行い、汚染された地下水が海に到着しないよう別の対策も講じると19日に公表しました。

「福島第一原発の事故のことが、未だに多くの国民の念頭から去らない段階にありながら、日本政府が慎重に値踏みをしながら、原子力発電の再稼働を行なおうとしていることに留意する必要があります。」
九州大学の核安全エンジニアリングを専門とする工藤一彦教授がこう指摘しました。
「一般国民は、政府のそうしたやり方をする以上、原子力発電の安全性については懐疑的なままでいるしかありません。」

昨年政権の座についた安倍首相は、原子力発電の支持者です。
原子力発電所を次々に再稼働させることは、日本のエネルギー政策の逆転を意味します。

政権の座を追われた前政権は、2040年までに原子力発電を段階的に廃止していくことを公約していました。

http://www.nytimes.com/2013/06/20/world/asia/japan-nuclear-safety-guidelines
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この記事を翻訳するためいろいろと調べているうちに、ニューズウィークに掲載された池田信夫氏の『原子力規制委員会の暴走』という記事( http://www.newsweekjapan.jp/column/ikeda/2013/02/post-627.php )を読みました。
池田氏はその記事の結論部分で、『エネルギー問題は社会全体のインフラであり、第一義的には経済問題である』と堂々と書いています。

この辺りがこれまで私がさんざん翻訳してきた、アメリカ、英国、ドイツなどの一流メディアが『信じられない!』とする、日本人の原発問題認識ではないでしょうか?

国の政策である以上、第一義に勝る大前提として『国民の生命、健康、そして日常生活を脅かさない』という事があるはずです。
どのような事業であっても、国民を脅かすことは許されない。
だからこそ今、欧米では『原子力発電の安全対策には万全を期さなければならない、しかしそのためには法外なコストがかかる』 → 『廃止し、もっと安全で低コストの発電手段に切り替えるべき時に来ている』という世論がメインストリーム、本流になりつつあるのです。

池田氏のような考え方こそが、福島第一原発の事故原因を作ったはずです。
経済効率こそが何ものにも優先される、現政権と同じ考え方であり、それでは被災者は救われないし、日本のエネルギー生産には、他の先進国には無い危険が常について回ることになります。

さらにはは『第一義的には経済問題』であると語っていますが、この類の論評が皆そうであるように、原子力発電を行うことによって生み続けられる核廃棄物の処理コスト、そして今、国民一人一人の上に重くのしかかろうとしている福島第一原発の事故収束・廃炉費用などにはには全く触れていません。
核廃棄物の処理などは、どんなに金を積んでも引き受け手がいない状況であることを逆手に取り、費用を『ゼロ』とみなしています。
このコストこそは天文学的数字になるはずのものであり、原子力発電が『経済的収支においても、最早成り立たない』ことを証明しているのです。
六ケ所村の再処理施設を持ち出すかもしれませんが、1993年から約2兆1,900億円の費用をかけて着工以来、未だ完成していません。

原子力発電を続ける限り、積算不能の核廃棄物処理コストはどんどん積み上がっていくのです。

私たちの選択は違う、その声を挙げましょう。
なぜ社会正義の実現を求める声は、潰されなければならないのでしょうか?
悩みましょう、そして行動しましょう。

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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