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繰り返される情報操作 : 福島第一原発の汚染水投棄

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所要時間 約 14分

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汚染水の海洋投棄は、東京電力にとって最も簡単で安上がりな放射性核廃棄物の処分方法
東京電力と日本政府は世界に向け再び真実を曲げて伝えようとしている

                    

アーニー・ガンダーセン/フェアウィンズ 2021年4月19日

                    

                       

2021年春に掲載を始めたフェアウィンズ原子力発電所シリーズの第8回では、福島第一原発から100万トン以上の放射能汚染水が海洋投棄されることが決まったという最新の報告について、そこに隠されている欺瞞について検証し、真実を明らかにしたいと考えています。

                         
ニューヨークタイムズ紙の報道では、海洋投棄の決定は先週、日本政府によって承認されました。
日本政府は、放射能汚染水の海洋投棄は無害であると主張し、東京電力は毒性が高い放汚染水を太平洋に投棄する以外に選択肢はないと述べました。

                       

おかげで私たちはまた福島第一原発の問題と向き合わなければなりません。
福島第一原発の崩壊が始まって数週間、東京電力と日本政府はメルトダウンは起きていないと主張し、さらには問題はすべて順調に解決に向かっていると主張していた時と同様、世界に向け再び真実を曲げて伝えようとしています。

                    

現在、日本政府と東京電力は再び足並みをそろえ、彼らが計画している太平洋への汚染水の放出は結果的に異常な量の放射能を世界の海に拡散してしまうという事実を隠蔽しています。
東京電力と日本政府がいかなる主張を展開しようとも、100万トン以上の放射能汚染水を太平洋に投棄することは、海とそこで暮らす水生生物にとって、そして汚染が最終的に到達する他の国々にとって、死の宣告にも等しいものです。

                   

こうした行為は、命豊かな地球という惑星の上で互いに密接に関わり合いながら存在するすべての生命の尊さを、あからさまに無視するものです。
そしてさらに、こうしたやり方は誰をどのように傷つけることになるかわからない行為を許すことになるだけでなく、世界中の国々が国際環境を破壊することに法的根拠を与える扉を開くことにもなるのです。

                      

日本の産業界がこうした行為を行うのはこれが初めてではありません。

                 

日本政府と東京電力は世界に向け100万トン以上の『処理済み』放射能汚染水を海洋投棄することを正当化するため、トリチウムをゆるキャラのように表現するキャラクターを制作しましたが、1993年にも『頼れる仲間、プルト君』というキャラクターを使ったキャンペーンを展開しました。

                 

1993年、東京電力と日本政府はプルトニウムを身近な友人か何かのように表現しましたが、今回も太平洋をトリチウムやその他の放射性物質を流し込んでも無害だと世界に信じこませようとしています。

                      

           

1993年、日本政府は『頼れる仲間、プルト君』という可愛らしい子供のようなキャラクターをフィーチャーした、考えうる限りのプルトニウムのすべての利点を強調したプルトニウム・ストーリーを制作しました。
彼らはギリシャ神話ではプルートは冥界(死後の世界)の神であることを知らないのでしょうか?

                     

日本の原子力産業を代表してプルトニウムの印象を曖昧にするために1990年代半ばに登場したのがプルト君でした。
プルトニウムの化学記号が付いた緑色のヘルメットをかぶり天使ケルビムのような顔をしたプルト君は、少年がプルトニウムの入った水を飲み干すシーンがあるアニメを使った『啓蒙用』映画に登場した後、どのような影響があったのかわからないまま姿を消しました。

                   

そうです、これは企業の利益追求の姿勢が世界にどのような脅威を与えるのか、その典型的な事例と言えます。
大企業や政府は常に、広告代理店などの広報(PR)企業に高額な報酬を支払い、自分たちに利益を生み出すスキームをあたかも社会全体に貢献するかのような形で広報活動を行います。

                     

                            
これらのプロの情報操作を得意とする人間たち(スピンドクター)は、問題についてむしろ早い段階で提示することが議論の方向を自分たちに有利にできるという議論の構築方法と公開の場での議論をコントロールする術を学びました。

                   

最初に発言することは、PRの世界では真実を語ることより有利な立場を獲得します。
先に自分たちに有利に議論の場を構築し、そして戦いに勝利するのです。

                       

これまで企業や政府が重大な環境事故を引き起こした際、実際には危険な状況をどのように作り変えてしまったのか、いくつかの具体例を簡単に見てみましょう。

                

1979年:スリーマイル島原子力発電所のPR担当者であるビル・グロスは、メルトダウンが発生したその日の朝(1979年3月28日午前10:20)、放射能監視チームが原子力発電所の敷地内でも周辺でも何も異常は確認できなかったとする声明を読みあげました。

                      

2010年:「この災害による環境への影響は非常に軽微なものであったと考えています。」ブリティッシュ・ペトロリアムの責任者であるトニー・ヘイワードは、メキシコ湾へのディープウォーター・ホライズンの原油漏れ事故を引き起こした際にこう述べていました。

                     

2011年:日本の巨大地震と津波で制御不能に陥っていた福島第一原発の原子炉について、当時の野田佳彦首相は2011年12月16日、「冷温停止」しているとの発表を行いました。
「発電所の事故そのものは収束に至ったと判断される」、野田氏は世界中に放映された演説の中でこう語りました。
「原子炉は安定しており、私たち国民全員にとって大きな懸念事項の1つを解決するはずです。」

                   

2014年:日本の安倍晋三首相は、2020年の東京オリンピック開催権利を獲得した演説の中で、崩壊した福島第一原子力発電所が「制御下にある(アンダーコントロール)」ことを保証しました。

                          

こうした報道対応を行ったことについて、悪意はなく必要なことであった、現時点でも彼らはそう主張しています。
しかしその主張はそもそも前提から3つの点において誤っています。

                     

第一、東京電力が放射能汚染水からトリチウムを除くすべての放射性物質を除去することができる、という主張は間違っています。
すでに1,000,000トン以上の放射能汚染水がろ過されていることに留意すべきですが、使われたフィルターはすべての放射性物質を捕捉することはできません。
米国マサチューセッツ州ファルマスにあるウッズホール海洋研究所も同じ懸念を表明しています …

                     

トリチウムに加えて、ルテニウム、コバルト、ストロンチウム、プルトニウムなど、放射性崩壊の時間がもっと長いより危険な放射性物質が、ALPSプロセスを捕捉されないまま通過することがあります。
この事実を東京電力は2018年にになってやっと認めました。

                  
東京電力は現在、こうしたトリチウム以外の放射性物質がタンク内の放射能汚染水の71%に含まれていると述べています。
「これらの放射性物質は、海洋中においてトリチウムとは異なる形で拡散し、容易に海洋生物や海底堆積物の中に入り込むことになります。」
ウッズホール海洋研究所の海洋科学者であるケン・ビュッセラー博士はこう述べています。

                  

                        

日本政府当局者は、福島第一原発内にある放射能汚染水はこれらの放射性物質に関する規制基準を満たすまで、「浄化」作業が行われると述べています。
しかしビュッセラー博士は、現在ある基準は正常に稼動している原子力発電所を対象に設定されたものであり、事故を起こした原子力発電所から意図的に放射能汚染水を排出することは想定していないと指摘しています。
「日本が放射能汚染水の海洋放出を行えば、世界中で原子力発電所の通常運用とは異なる場合の放射性廃棄物の海洋投棄への扉が開かれるのではないでしょうか?」
ビュッセラー博士はこう懸念しています。

                      

第二の誤りはトリチウムは無害であるということです。
トリチウムが無害であるとする主張は、トリチウムが胎盤の障壁を越えて子宮内の赤ちゃんに損傷を与える可能性があるという事実、そしてトリチウムが人や生物の体内でどれほどの内部損傷を与えるかという真実を隠すため、原子力産業が意図的に作り出した神話に他なりません。

                          

フェアウィンズの長年のフォロワーは、この問題をちょうど5年前、有名な科学者イアン・フェアリーとの『トリチウム被曝』(Tritium Exposé - 2016年4月18日)というタイトルの下で行われたインタビューで、詳しく取り上げたことを覚えておられるでしょう。
トリチウムの危険性を特定した科学者は、フェアウィンズとフェアリー博士だけではありません。(フェアウィンズのオリジナルページの下部に記載された詳細をご覧ください。)

                  

そして第三の誤りは、福島第一原発の敷地内の土地を使い果たし、貯水タンクを増設する場所がないと臆面もなく嘘をついていることです。 

写真を見れば福島第一原子力発電所周辺には、同原発の崩壊によって汚染された土地が広がっていることが一目でわかります。

                        

                                             
写真は、東京電力がすでに建設したタンク群に隣接する場所に、より多くの貯蔵タンクを建設するための十分な土地があることを明らかにしています。
東京電力と日本政府は、致命的な福島の放射能汚染水を無害なものにするためもうこれ以上金をかけたくないのです。
その代わり責任を転嫁して自分たちの負担を軽くするため、太平洋を汚染させても仕方がないと考えているのです。

                       

幸いにも日本国民、科学者、そしてこの問題に関心を持つ世界中の人々が、太平洋が日本政府と東京電力のゴミ捨て場として都合よく利用されることに深刻な懸念を表明しました。
「汚染水を海に放出したいという政府の願望が全てに優先されているように感じます。」
と、福島の漁師の渡辺勝夫氏(82歳)が共同通信にこう語りました。
「私たちが直面している問題の深刻さと、キャラクターの軽いノリとの間のギャップは非常に大きいです。」

                         

地元民で作家である小松理虔氏は、技のようにツイートしました。
「かわいいキャラクターを作りさえすれば、国民に理解してもらえるともし日本政府が考えているのだとしたら、随分とリスクコミュニケーションをバカにしています。」

                    

汚染水の放出が始まる前に、この不正な環境破壊を公の圧力と法的措置によってくい止めるチャンスはまだ残っています。

                   

ちなみに100万トンがどのくらいの量なのか全体像を粗悪できるようにしてみましょう。
簡単な数学ですが、100万トンは20億ポンドです。
この写真のトラックは5,000ガロン、つまり約40,000ポンドの水を運びます。
20,000,000,000 / 40,000 = 50,000
つまりこのトラックで50,000台分の放射能汚染水が太平洋に捨てられることになるのです。

                         

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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