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アメリカのガン多発地区の住民 日本の化学会社と対決

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ミシシッピ川流域大気汚染問題 / 周辺住民の運動が一気に激化・住民代表が来日
がん発症リスクが50倍・衝撃のデータ公開直前、米国巨大化学企業デュポンが日本企業デンカに売却

                

ギャビン・ブレア(東京)、オリバー・ラフランド(ニューヨーク)/ ガーディアン 2019年6月26日

                 

ルイジアナ州リザーブ(バトンルージュ南西)の住民の代表が、癌その他の一連の重篤な病気が多発している原因であると言われる化学工場を運営している日本企業の幹部や株主と対決するため、東京を訪れました。
米国環境保護庁(EPA)によると、ルイジアナ州リザーブはアメリカ国内で大気汚染による癌発症の危険性が最も高い場所です。

               

住民たちは今回の訪日でリザーブのポンチャートレイン・ワークス・ファシリティ(工場)を運営する化学企業大手デンカの法人株主と環境保護団体とのパブリック・ミーティング、そして非公開の場での会合が含まれています。
この工場は大気汚染問題の解決を求める周辺住民の運動を一気に激化させることになりました。

                  

ガーディアンが長年取り組んできた企画『ガン多発地区』シリーズは大気汚染の問題と戦うキャンペーンの検証を行ってきました。
ニューオリンズとバトンルージュ間は『ガン多発』地区が帯状につながっていることで知られる場所ですが、中でもルイジアナ州リザーブは状況が深刻です。

               

ポンチャートレイン工場は化学品大手デュポンによって1968年に開設され、2015年に日本企業のデンカに売却されました。
合成クロロプレンから合成ゴムのネオプレンを製造するアメリカ国内で唯一の製造施設です。
合成クロロプレンは発がん性が疑われる物質としてアメリカ政府がレストアップしています。

              

2015年に米国環境保護庁(EPA)はこの工場から排出される化学物質により大気が汚染され、住民は米国内のいかなる場所と比較しても高いガン発症リスクにさらされている判断しました。

                 

今回来日した住民の一人であるロバート・テイラー氏はこの工場が操業を開始した1968年に若い家族とともに家を新築しました。
彼はミシシッピ川に沿って林立する他の石油化学プラント工場同様、問題の工場が主に黒人と労働者階級のコミュニティであるバプテティスト聖ヨハネ教区の真ん中に位置していることを指摘しました。

                 

「私たちは未だに差別されています。そうしたことはアメリカ社会の変わらぬ一断面の一つににすぎません。」
テイラー氏は東京のパシフィックアジア・リソースセンターで開かれたパブリックイベントでこう語りました。

                  

先週、テイラー氏とその同僚で1年前にガンで死亡したウォルターを夫に持つリディア・ジェラードさんは、東京中心部で開催されたデンカの年次株主総会で直接この事実について証拠を挙げて抗議しようとしました。
しかし会場の外で『デンカの企業人との全面対決』を行ったために会場内に入ることを拒否され、 外での抗議活動を行うことなった、こう説明したのは今回の訪日を企画したアメリカの市民活動グループ、人権のための大学ネットワーク(UNHR)のルハン・ナグラさんです。
「私たちは英語と日本語で書かれた『デンカよ、黒人を中毒させることを中止せよ』との巨大なバナーを掲示し、同趣旨のチラシを配李ました。」
ナグラさんがこう語りました。

                   

地元住民は健康の悪化について工場から排出される汚染物質との関連性を長い間疑ってきましたが、何十年もの間、クロロプレン特有の健康リスクについては知識がなかったと、テイラー氏が6月24日に東京で開催された公開会議の場で語りました。

              

「私たちは聞いたこともない病気、ガン、呼吸器系の疾患、皮膚疾患、心臓の病気に蝕まれるようになりました。」
「私の娘は看護師ですが、彼女もまた病魔から逃れることはできませんでした。こうした人々の看護をするうち、自分自身も胃不全まひを発症してしまったのです。
こう語るテイラー氏自身も胃に不調を抱えています。

                 

「医師の判断ではこれらの疾患は工場による大気汚染が原因の、非常に珍しい免疫機能障害だということです。しかし公に記録されることはないでしょう。しかし私たちが住むコミュニティでは同じ症状を発症した女性が3人います。」

                

化学企業大手のデュポンは半世紀近くこのプラントを操業してきましたが、EPAの報告書の中でアメリカ国内のすべての工場周辺におけるがん発症リスクについて調査した結果、ポンチャートレイン・ワークス・ファシリティ周辺のがん発症リスクが全国平均の50倍に上るという報告が公表される直前、デンカに売却しました。

    

ルイジアナ州政府は環境行政の緩さで悪評を得ていますが、6月初旬この工場による大気汚染防止法違反容疑でデンカとデュポンの両社に対し訴訟を起こす意向であることを発表しました。

                   

人権のための大学ネットワーク(UNHR)は訪日前にデンカと連絡を取ろうとしましたが、同社は米国子会社の行為について責任はないと回答しました。
こうした主張にもかかわらず、デンカは株主総会の前日になってウェブサイト上で米国子会社の操業状況について弁護士、以下の声明文を公開しました。
「クロロプレンの発がんリスクレベルについては過大に見積もられている。」

               

「デンカは米国環境保護庁(EPA)の見解とクロロプレンには発ガン性があるという見解を持つ科学者全員に異議を唱えています。」
デンカが面会を拒否したにもかかわらず、ガンで夫を亡くしたジェラードさんは今回の訪日には一定の価値があると考えると語りました。
「私たちが問題から逃げ出すつもりもないし、泣き寝入りするつもりもないということをデンカには肝に銘じてもらいたいと思います。」

                    

                

一連の抗議は日本最大の報道機関である共同通信によって取り上げられ、その後、いくつかの地方紙によって取り上げられましたが、大手メディアは一切取り上げませんでした。
人権のための大学ネットワーク(UNHR)は、来月デンカの工場周辺の500世帯の健康健康状況について調査した報告書を公表する予定ですが、それによって状況が変わることを望んでいます。
報告書は工場に近づけば近づくほど健康問題が悪化し、ガンの発症率は統計的に正常とされる値をはるかに上回っています。

                

代表団は今週法人名を公表しないことを条件に東京都内の2社の法人株主と会談しました。
一方、UNHRはヨーロッパ、アメリカ国内の株主と連絡を取り、工場周辺に住む人々が危険な状況に置かれていることについて説明することを計画しています。

https://www.theguardian.com/us-news/2019/jun/26/cancer-town-denka-pontchartrain-works-reserve-louisiana

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日本国内なら企業が何をしても大概はアベ政治のような仕組みが地位保全に力を貸してくれるでしょうが、アメリカ国内でしかも州当局まで敵に回してしまって先行きどうなのでしょうか?

アメリカでの不良品製造販売が原因で結局は立ち行かなくなってしまったシートベルトの世界的企業タカタの倒産劇が脳裏をかすめます。

それにしても決定的に不利な問題が明るみに出る直前に、その工場を日本企業に買わせるアメリカ巨大企業の狡猾さには唖然とするばかりです。

そして日本企業の先見性の無さ、愚かさも際立ちます。

            

大量のF35の購入を迫られてただでさえ危機的状況の日本の国庫から巨額の税金をつぎ込む安倍政権、国も国なら企業も企業だというところでしょうか。

使い捨てられた人々 : 山谷《後編》

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彼ら日雇い労働者は東京再建の功労者であるはず、なのに日本は彼らを使い捨てた

多様性があるということは良いことであるということを証明したい

                

             

ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 2019年6月14日

              

旅行者の増加はこの場所の印象をソフトなものに変えましたが、この場所でも少しずつ地域の中産階級化(劣悪化している区域に中流階級あるいは裕福な階級の人口が流入していくのを伴った区域再開発・再建プロジェクトのことで、通常それまでの貧困層の住民が住む場所を失う - アルク https://eow.alc.co.jp/ より引用 )が進行しています。
地元の行政当局は長い間、大規模商業開発に抵抗してきましたが、多くの民間の土地所有者が防火上の問題もあることから老朽化した簡易宿泊所を取り壊していくことに口を出すことはできません。
所有者にすれば近代的なアパート経営の方が経済的に理にかなっています。

                

「土地所有者の判断はある意味当然のことです。」
と義平氏がこう語りました。
「近代的なアパート経営をすれば、もっと多くの収入を得られるようになると信じています。しかしその結果は景観が変わるというだけではありません。街の雰囲気も少しずつ別のものになってしまいます。この場所は東京でも独特の雰囲気があり、全てではなくともその空気は残していくべきだと考えています。」

             

他の場所では考えられない混在状況に、今や山谷の対立の構図はまるで「冷戦」のようだと義平氏が語りました。
騒音、酔っ払いの横行、辺り構わず横になって寝転がる、そして一番多いのがゴミの山を放置していることについて、近隣の住民から頻繁に苦情が寄せられています。

                

                  

「それは「私たち対彼ら」という対立の構図に変わってしまいました。」
山谷でバックパッカー向けに2軒、生活保護樹級者向けに1軒、合計3軒の宿泊施設を運営する義平さんが語りました。
昨年、彼女たちのグループは良心的な価格で提供される飲み物や食事を共にすることで、山谷の住民と訪問する人々の間に無用の誤解を生まないようにするため、さんやカフェをオープンしました。
「カフェの名前は山谷という名前を取り戻すためにつけたものです。」
義平さんがこう語りました。

             

「かつての労働者たちは自分自身を誇って良いはずです。なんといっても彼らは東京を再建した人々なのですから。しかし日本という国は彼らのことなど忘れ去ってしまいました。この辺りの人々が彼らを見下すなど早計に過ぎると言うべきです。」
「私たちはなんとかして多様性があるということは良いことであるということを証明したいと思っています。自分の気分を良くするために他人を見下すなどという行為をしても、何も良いことなどありません。」

          

毎週金曜日、義平さんたちはかつての労働者たちと一緒にカフェで食事や飲み物を提供する代わりにゴミを集めるよう呼びかけています。

              

「一緒に食事をしたり雑談したりすると、誰もが仲間意識を共有できるようになります。」
義平さんがこう語りました。
「と同時に、その歴史の中で新しい時代の到来に備えるための時間が山谷にとって重要なのです。」

            

かつて日雇い労働者だった人々の未来はますます不透明になりつあります。
使用禁止になった宿泊所を退去させられた彼らは、別の宿泊所を見つけるか国の補助金が得られる遠く離れた公営住宅に移り住まなければなりません。
そうした現実はこの30年間山谷を出たり入ったりした相沢さんのような住人にとって、場合によっては何日かは路上で一夜を明かさなければならない状況を意味します。

             

64歳になったこの男性は午後いっぱい捨てられたアルミ缶を収集し、自転車の後ろに取り付けた袋に詰め込んで回ります。
1キログラムあたり100円の現金と交換するためです。
「自分は一文無しなんだよ。だからこうやって空き缶を集めて回るんだよ。」
相沢さんは乏しい年金の中から簡易宿泊所の利用料金を支払ってしまうと、ほとんどお金は残らないとこぼしました。

                 

「これまで山谷の様子が変わるのをずいぶん見てきたよ。暴動もあったけど、近頃はこの辺りもずいぶん静かになったよ。それは多分我々が闘うには歳を取り過ぎてしまったからだよ。人生は厳しいものだけど、でもここにいる限り心だけは自由でいられるからね。」

              

tps://www.theguardian.com/cities/2019/jun/14/the-tokyo-neighbourhood-where-people-come-to-disappear

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近代社会も人間を使い捨てるという側面を持っていることを、この記事を読んだことにより気づかされました。

第二次世界大戦中の日本兵と沖縄県民、ソビエト連邦の強制収容所の政治犯と抑留日本兵、ベトナム戦争では北ベトナム軍がアメリカ軍に対し未熟少年兵をまず突撃させ相手を混乱に陥れた後、歴戦のベテラン兵士が現れてアメリカ兵を一人一人確実に仕留めていくという手法を用いていたと何かで読んだ記憶があります。

この時の少年兵は明らかに使い捨てです。

山谷の問題同様、やりきれないのが現安倍政権下では見捨てられていく国民がいることです。

福島第一原発事故の被災難民は国内の原子力発電所の再稼動とオリンピックの邪魔にされ、沖縄県民は日本の軍備増強の邪魔、さらには貧困層の子供たちも見捨てられています。

山谷の人々が使い捨てられて行ったのを座視していたのも私たちなら、福島の原発難民や貧困層の子供たちが見捨てられていくのを今まさに座視しているのも私たち日本人です。

安倍政権の政治の下で、私たち日本人は良心を発揮するという行為を忘れつつあります。

これは一番危険な亡国への道づくりではないでしょうか?

使い捨てられた人々 : 山谷《前編》

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何百年もの間、働ける場所、隠れ住む場所、そして仲間を求めてたくさんの人々が山谷にやって来ました。
しかしここにも急激な変化の波が押し寄せ、住民たちは順応していくのに四苦八苦しています

               

                 

ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 2019年6月14日

             

一見する限り山谷は都心から離れた東京都内の他の場所と変わるところはありません。
目に入るのは手入れの行き届いた家々、スーパーマーケット、ファストフード・ショップなどばかりです。
そして離れた場所には連なる屋根と網の目のように張り巡らせた電線の上に、見間違えようのない東京スカイツリーのシルエットが浮かんでいます。

                

しかしその超現代的なランドマークタワーに近接する空間は人の目を欺くものです。
楽な着心地のジャージの上下を着て、野球帽をかぶり、ビニール製のサンダルを履き、午後の早い時間からチューハイと呼ばれる発泡酒の缶を握りしめた高齢の人々の姿が目立ちます。
そして何十という数の部屋には家具も調度もない安宿が、都内で最低レベルの料金を宣伝しています。
都心から離れた東京都内に山谷のような場所は他にありませんが、今この場所は抗いようのない変化の波の中で、なんとか息をしようと必死になっています。

            

珠姫(たまひめ)公園の中で『かっちゃん』の愛称を持つ男性が待ち合わせした友人が来るのを待っていました。
近くではソーラーパネルを電源に持つ液晶テレビがあるテント小屋を挟んで、2人の男性がひっくり返された古いファイルキャビネットの上で将棋をさしていました。
その向こうには来ているものを全部脱いで虚空を見つめている一人の若い男がいます。

              

写真上: 山谷の商店と壁の落書き

             

今、地図で探しても『山谷』の名は見当たりません。
1966年、日本政府が山谷の2文字をすべての公式文書から削除するよう命じたからです。

               

「酒を飲んで、おしゃべりしながら日向ぼっこをするためにここに来たんだよ。なんたってお陽さまに当たるのはタダだからね。」
16年前にこの地にやってきた日雇い労働者のかっちゃんは、こう語りました。
「仕事にありつくのはなかなか大変だけど、ここには友達がいるからね。」

                

何百年もの間、働ける場所、隠れ住む場所、仲間を求めてたくさんの人々が山谷にやって来ましたが、かっちゃんはそうした人々の最後の一団に属するかもしれません。

                   

江戸時代(西暦1603-1868年)、江戸市中の他の場所に定住することができなかった渡りの労働者などが、山谷にある安宿である木賃宿で暮らしていました。
戦後は太平洋戦争中のアメリカ軍の空襲によって住む場所を奪われてしまった人々が、間に合わせの小屋掛けをして暮らす場所になりました。

                    

その状況を哀れんだ占領アメリカ軍が軍用テントを寄付したりしたこともありましたが、その後徐々に木造の木賃宿が建てられていきました。
1953年までに約6,000人が100軒ほどの木賃宿に住んでいましたが、その10年後のピーク時にはその人口は15,000人に、宿泊施設も220か所にまで増えていました。

              

                  

しかし現在、山谷の地名を地図上で見つけることはできません。
1966年、日本政府は山谷の名前を公的記録から削除するよう命じたのです。
そて山谷は清川と堤の2つの地区に分割されました。
貧困、アルコール依存症、暴力、日雇い労働者のたまり場という印象をカモフラージュしようとしたのです。


日雇い労働者こそは戦後数十年間、東京タワー、1964年の東京オリンピックの関連施設、首都高速道路、そして今日の大都市東京の基盤を築くことになったその他のインフラ整備のための肉体労働を提供した人々でした。

                 

しかし日雇い労働者も彼らが暮らす場所も想像を超えた変化の波が押し寄せる中、変わらざるを得ない状況に追い込まれています。

               

山谷もまた他の日本の多くの地域社会同様、年代別人口の偏りの影響を感じさせる場所になりました。
ここに住んでいる推定1,500人の元労働者のほとんどは60~70代で、中には80~90代という人もいます。
黄昏時ともいうべき次第に入った現在、かつては肉体労働で疲れきった労働者によって埋まっていた簡易宿泊施設は、わずかな年金や給付金でかろうじて生きのびている男性たちのための事実上の高齢者収容施設に変わりました。

             

「最近では暴力沙汰はまずまれだが、種々雑多な人々の住処と化した山谷では住民は新しい緊張の種に直面させられている。」
こう語るのは山谷の新しいまちづくりや就労支援などに取り組むYUI(結)Associates(http://sanya-yui.net/)の代表理事である義平真心(よしひらまごころ)さんです。

                  

                   

高齢化した労働者の人口は減少を続けていますが、地元で工場や他の中小のビジネスを営む定住家族との共存が難しい状況にあります。
その一方で山谷にある約140の簡易宿泊施設のうちの約20か所には、その手軽さから利用する若者も多く、外国人のバックパッカーの利用も増えています。
彼らを引き付けるのは清潔で快適な室内と一泊たった2,000円という低料金です。

https://www.theguardian.com/cities/2019/jun/14/the-tokyo-neighbourhood-where-people-come-to-disappear

《後編》に続く

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人間が生きるということには多様性があるべきだと思いますが、その選択が自ら望んだものではなく仕方なくそこに落ち込んでしまったという人々も多数います。

落ち込んだ理由が「使い捨てられてしまったから」というのでは、それでは心が荒んで当たり前だと思うのです。

自己責任などという言葉は現実をいたずらに単純化するだけのもので、明快なようで実は極めて曖昧で無責任な言葉だと思います。

物事をきちんと考えられない・探求できない粗雑な頭脳を持った人間たちが好んで使いそうな言葉です。

一方でセーフティネットという考え方がりますが、今の日本はその点も非常に危ないのではないでしょうか?

理由はもちろん現在の政権です。およそ人を思いやるという姿勢が微塵も感じられない首相と副首相をその座に置いたままにして、日本人のセーフティネットなど機能しようがないだろう!と思うのです。

男女平等について日本は『衝撃的』なほどの後進国《後編》

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安倍政権の『ウィメノミクス』、派手な広告宣伝をする前にまずは地道な基本的取り組みを始めなさい!

国内にはびこる偏見、政権発足当初よりもなお一層後退した安倍政権の『女性が活躍する社会』

山森菜々子 / ガーディアン 2019年6月13日

            

「安倍政権のウィメノミクス(Womenomics)なんて、でたらめもいいところです。彼らがまずやらなければならないのは、女性の社会的地位を引き上げること、その取り組みを始めることです。」
「でもそのことを公の場で議論することは、この日本ではとても難しいことなのです。女性たちは口々に不満を言っていますが、ほとんどの場合男性が支配している公の場では口にすることすら許されない雰囲気があります。決定権を握る女性はほとんどいないため、みんなこう考えてしまうのです。『自分の能力が足りないということだけが、地位が向上しない理由なのか?それとも他に原因があるのか?」

                 

こうした弊害や偏見は国政の場でも幅を利かせています。
桜田佳孝元オリンピック担当大臣は先ごろ、すべての日本の女性に対し「最低でも3人の子供」を生むように求め、ソーシャルメディアを使って日本の出生率の減少は子供を産もうとしない女性に責任があると非難しました。

               

そして安倍政権がこれ見よがしに打ち出した政策にもかかわらず、現実には日本の下院に当たる衆議院議員の中、女性議員はたった10人しかいません。
さらに20名からなる安倍内閣の閣僚中女性閣僚はたった一人であり、安倍首相の再任当初と比較すると現実は明らかに後退しています。

               

2017年のOECDのレポートによれば日本では女性の就業率は70%と過去最高になっていますが、男性との賃金格差は25.7%と依然として極めて高い状態のままです。

                

東京の国際基督教大学の文化人類学者でジェンダー問題を研究する加藤惠津子教授が、女性に優しい職場環境を作り出すためには日本社会の根本的な変化が必要であると語りました。
「私たち日本人は価値観を変える必要があります。短時間で多くの仕事をこなせる人が才能のある労働者と言えるのであれば、長時間働いたり、まして出勤さえすれば良いというのでは質の良い労働とは言えません。」
「さらにいつどこで仕事をするかを選ぶことができることが上手な働き方だと考えることができるようになれば、体制の変革を効率的に進めることが可能になります。」
「インターネットの進歩により、多くの産業界でこうした体制の変革が可能になるはずです。」

                  

こうした変革は現実になりつつあります。
寿司職人のような伝統的に男性の職業とされたきた分野に女性が進出することは困難とされてきました。
伝統を重んじるな専門家の中には魚を新鮮に保つには女生の手は暖かすぎると言う人がいます。
さらには長時間労働が女性進出の妨げになっているという指摘をする人もいます。

                

都市部で7店舗の寿司店を経営する阿部寿司の阿部ひろし氏は、性別を気にすることなく積極的に女性の職人を募集しているという珍しい寿司店経営者です。

「業界の成長が続いているので、女性男性両方の職人にとって大きなチャンスがあります。男性職人が気づかないような細かいところに気を配ることができるので、女性の職人は高く評価されています。」

            

日本国内には女性の役割は家庭内のことに限られるという抜きがたい偏見があります。
伝統的に家計のやりくりと育児が女性の役割であるとされ、夫が一家を支える収入を稼ぎ出し、妻はそれを貯蓄と月々の夫の小遣いを含めた消費に割り振ることに専念すべきだとする考え方です。
おうちのリサーチ研究所によれば10世帯のうち7世帯がこうした考え方に則って運営されています。

             

こうした旧態依然としたやり方が続く現実がある一方、国際基督教大学の加藤教授は過去30年間男女格差は一貫して縮小してきていると語りました。
日本の男性優位の産業構造が何年にも及ぶ経済的停滞によって信用を失い、そのためにその傾向は加速していると語りました。

               

https://www.theguardian.com/cities/2019/jun/13/there-are-almost-no-women-in-power-tokyos-female-workers-demand-change
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私が卒業した高校は男子校でしたが、何十年も経ってから同窓会名簿を使って署名を求める文書が郵送されてきました。

「(私が卒業した県立高校について)男女共学化の動きがあるが、けしからんことである。」

そして共学化は東北でトップの進学校としての伝統(かつては間違いなくそうでしたが、その当時はすでに県内で2、3番目に順位が下がっていました)を損ねることにつながる云々の文章が続いていました。

ここだけの話ですが、私の最初の感想は

「正気か?!」

というものでした。

「男女共学が良いか悪いかは、今通っている子供達が決めれば良い問題。卒業して20年も30年も経つ現実に関係のなくなった人間が口出しすべき問題じゃないだろう。」

そう妻に言ったことを記憶しています。

              

差別をしたがる人間の最大の動機は劣等感だと思っています。

伝統云々と騒ぎたがるのもそれに近いものだとも思っています。

人間でも文化でも、真に優れているものなら自然に認められるようになります。

その時、周囲にいる人間に求められることはその邪魔をしないこと。

故意に貶めようとするなど、最低の人間のすることです。

男女平等について日本は『衝撃的』なほどの後進国《前編》

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「日本にはふさわしい地位と権力を持つ女性などほとんどいない」変化を要求する日本の働く女性たち
男女間格差を改善するつもりなどない安倍政権の『ウィメノミクス』、怒りを募らせる女性たち

               

                

山森菜々子 / ガーディアン 2019年6月13日

              

「花のデモ隊」が6月11日に東京に集まり、性的暴行の被害者に対し事実上法的保護が存在しないことに抗議しました

          

石川由美さんが職場でハイヒールの着用を余儀なくされることに反対する嘆願書を提出したことが世界中に広まった後、日本国内では石川さんを応援し「現代における纏足」について非難する共感の意見表明から驚きをともなう失望の表明まで、さまざまな反応がありました。
2019年の段階で、民主主義国家である日本において、それでもなお女性の権利の問題はハイヒールに縛られなければならないのでしょうか?

           

しかし『#KuToo』(日本語の『靴』と『苦痛』をかけあわせた造語)ハッシュタグに世界的なスポットライトが集ったものの、これまでは日本で実際に起きていることについては、もう一つはっきりさせられなかったかもしれません。
「実に些細なことに過ぎないのです。」
出版会社の役員を務めるある女性がこう語りましたが、彼女もまた匿名にすることを希望しました。
しかし最終的に東京の路上における女性たちの抗議はただ単に楽な履物を求めることに留まらず、女性にとって本質的な変化を求める動きへと大きくなり続けています。

                

「ハイヒール問題にこれだけ海外メディアの注目が集まったことに驚いています。」
こう語るのは性暴力の被害者団体『SPRING』のメンバーです。
「もっと深刻で根深いものです、日本の性犯罪の問題は。」

                

6月11日の夜には「性犯罪にNo!を突きつけよう」「日本の司法には人権についての再教育が必要だ!」などと書かれたプラカードをかかげた数百人の女性そして男性が集結しました。
この「ザ・フラワー・デモンストレーション』と名付けられた月例の平和的抗議運動は、女性に対する性暴力の裁判で最近立て続けに無罪判決が下されたことがきっかけで始まりました。

                

参加者の中で最も著名な女性の一人が参議院議員で元社民党党首の福島瑞穂氏です。
「問題にされるべきなのは加害者であって、被害者をやり玉に挙げるのをやめさせなければなりません。」
抗議集会の会場で福島氏がこう語りました。

                

こと男女間の不平等という問題については根の深い保守的偏向が強い日本社会にとって、こうした運動が盛り上がっていることは大きな進歩的ステップです。
世界経済フォーラムによれば、日本は男女間の平等に関する国家としての順位が110位という衝撃的とも言える低い位置にとどまり続けています。
つい最近行われた明仁天皇の退位の儀式では女性は会場の中に入ることすら許されず、まして皇位を継承する権利など持っていません。

               

昨年、日本国内の9つの医療系大学が女性志望者を最初から合格者から除外する不正行為を行っていたことを認めました。
相撲の世界では、脳卒中で倒れた人に救急措置を施そうと急ぎ土俵の上に上った女性医療従事者が、土俵には男性しか上がれないと退去を命じられ、激しい抗議が巻き起こりました。

                

しかし日本の女性が往々にして従順で弱々しいと判で押したように評価されてきたとしても、新時代の令和においてはそうではないかもしれません。
『花のデモンストレーション』その中で最も傑出した例であり、この運動は世界的常識からすれば異常ともいうべき冷酷な裁判所の判決によって始まりました。

                 

訴訟では、19歳の娘を繰り返し強姦したとして起訴された父親が被告人でした。
裁判所は被告の父親が同意を得ずに性行為を強要したことを認めていながら、女性が抵抗したという証拠は無いとして父親に無罪の判決を下しました。
この判決に対し全国9都市で一斉に抗議行動が行われ、4万人以上の女性が正しい裁きを求める嘆願書に署名しました。
そして多くの性犯罪被害者の女性たちが、自らの経験について重い口を開くようになりました。

                  

『SPRING』の代表者の山本じゅんさんもその一人です。
「私たちは被害者に対して温かいく町できっぱりと次のように言葉をかけられる社会を創造したいと考えています。『私たちはあなたを信じています。あなたが悪いのではありません。』と被害者をしっかりと支えてくれる社会を。」
山本さんがこう語りました。
「そのためには、まず被害者の立場を大切にする考え方が日本に根付かなければなりません。」

                   

山本さんは日本政府が実に100年ぶりに2017年に書き直した性的暴行法の改正をリードしたロビイストです。
強姦の定義にアナルセックスとオーラルセックスの強制を含め、強姦罪の最低限の懲役期間を3年から5年に引き上げ、被害者の告発がなくても起訴が可能にしました。
しかし山本さんは、被害者への支援を充実させることを含め、やるべきことはまだたくさんあると語りました。

       

もうひとつ、制度的な性差別との戦いがあります。
6月初旬、36人の女性が東京医科大学を相手取って1億4,300万円の損害賠償を求めて東京地方裁判所に訴訟を起こしました。
同大学は入試の際、合格した男性受験者よりも高い点数を取った女性たちを不合格とする不正操作を組織的に行っていた9つの大学のうちの1校です。

                

この事実が露見した後「何割かの女性医師は出産を機に職場を去るため、将来的な医師不足を防ぐためには医師は男性である方が望ましい」という論理を展開し、大学側の対応を弁護しようとした人々もいました。
しかしこのスキャンダルは政府による調査に発展し、今回訴訟に踏み切った原告の女性たちは将来こうした性差別が起きないようにする足がかりにしたいと語っています。

               

しかし『#KuToo』に対し、安倍政権の根元厚生労働大臣は議会の場で、職場でハイヒールを履くことを要求することは完全に受け入れられるべきことだと語りました。

                  

これに対し安倍政権が掲げる「ウィメノミクス」政策はただ単に多くの女性を労働力として利用しようというだけのものだとして、多くの女性たちから一層の怒りを買うことになりました。

               

《後編》に続く
https://www.theguardian.com/cities/2019/jun/13/there-are-almost-no-women-in-power-tokyos-female-workers-demand-change
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二酸化炭素排出削減?原子力発電の推進姿勢を強める安倍政権

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福島第一原発事故の検証と収束が終わらないまま、再稼働にのみ力を注ぐ安倍政権

福島第一原発事故は『もう忘れても良い問題』なのか?

                  

             

山口まり / AP通信 / ワシントンポスト 2019年6月7日

              

安倍政権が採択したエネルギー白書は、2011年に発生した福島第一原発のメルトダウン事故が完全に収束していないにもかかわらず、再生可能エネルギーだけではなく原子力発電の推進も盛り込まれています。

                 

安倍首相が率いる日本政府は2011年に発生した福島第一原発のメルトダウン事故が完全に収束していないにもかかわらず、再生可能エネルギーに加え原子力発電を推進することにより、二酸化炭素排出量を削減する取り組みを行うように求めています。

                

6月7日金曜日に安倍内閣が採択したエネルギー政策文書は、電力会社がよりクリーンな原子力による発電量の不足を補うため火力発電所に大きく依存していることにより、日本は二酸化炭素の排出量削減という課題について緊急事態に直面していると述べました。

                      

福島第一原発事故により国家的危機に直面した日本では原子力発電所の運営についてそれまでよりも厳しい安全基準が採用され、条件を満たさない原子力発電所は停止させられています。
そして福島の事故以降、原子力発電に反対する国民が多数を占めるようになりましたが、安倍政権はゆっくりとではありますが国内の原子力発電所の再稼働を続けています。

                

日本は2030年までに国内の電力供給における再生可能エネルギーのシェアを16%から22~24%に引き上げる一方、2017年時点で3パーセントにまで落ち込んだ原子力発電のシェアも20~22%に引き上げようとしています。
現在石炭と天然ガスによる火力発電のシェアは日本の電力供給の74%を占めています。
巨大地震と千年に一度と言われる津波によって福島第一原子力発電所の冷却システムが破壊され、3基の原子炉がメルトダウンした2011年の事故発生までは、原子力は日本の電力供給量の約3分の1を占めていました。

               

安倍政権は世論がどうあろうとも原子力発電を推進するという姿勢を強めていますが、原子力規制当局が福島第一原発事故によって厳格になった安全基準の下での審査手続きを慎重に進めているため、日本国内の原子炉の再稼働はゆっくりとしか進んでいません。

                 

一方で各電力会社は新しい安全基準に適合させるために多額の追加出費を行うよりも、老朽化した原子炉については廃炉にするという選択を行いました。
その結果日本国内の稼働可能な54基の原子炉のうち、ほぼ半数について廃炉の方針が廃止措置に指定されており、事故以来運転を再開できたのは9基にとどまっています。

               

国内の原子炉の再稼働が思うように進まないことにより、使用済み燃料から抽出されたプルトニウムの再利用も滞り、その備蓄量の増加が問題になっています。
日本は核燃料サイクル計画が行き詰まった後、従来型の原子炉でプルトニウムをもやすという方法で47トンの備蓄を減らしたばかりです。
その量があれば核弾頭6,000発を生産することができます。
しかし備蓄量全体を見ると減少してはいません。
専門家たちは現在、日本政府による核不拡散の呼びかけには信頼が欠如していると批判し、備蓄量を減らすためのより徹底的な措置を求めています。

               

フランスとイギリスには日本国内での処理能力を超えた際に処理を委託した約37トン使用済み核燃料が貯蔵されています。
日本国内での再処理の中心になるのは六ケ所村にある再処理プラントですが、プルトニウムと使用済核燃料は貯蔵はされているものの実際の再処理は行われていません。
10トンのプルトニウムについては国際原子力機関(IAEA)の監視下にあり、核拡散の危険性はないとされています。

             

日本の政策研究グループである笹川平和財団は今週、プルトニウムの備蓄量を多くとも2~3トンにまで大幅に減らし、日本政府が保有目的が飽くまで平和目的であることを国際社会に向け証明するために、IAEAの管理下で保有すべきだと日本政府に対する勧告を行いました。
同財団の委員会による勧告は昨年日本政府がガイドラインとして示した47トンの上限を大きく下回っています。
日本政府は最終的にはプルトニウムの保有量を削減すると誓約したものの、どういうペースで削減するのかは明示しませんでした。

                   

https://www.washingtonpost.com/Japan plans carbon emission cuts, more nuclear energy

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私たち日本人はこれほどあからさまに民意の無視を続ける政権というものを持ったのは初めてなのではないでしょうか?

福島第一原発事故に関連する事項についてはマスコミに圧力をかけて極力取り上げないようにさせる。すると常にその事実に問題意識を持ち続けている人以外の視界からはこの問題の存在が消されていく。

            

原子力発電の問題について、安倍政権には『民意と誠実に向き合う』という姿勢はまるでありません。

しかし問題はそれをする側だけではなく、それを許してしまう側・私たち国民の側にもあるはずです。

福島第一原子力発電所事故は『もう忘れても良い問題』なのでしょうか?

電気も水道も止まったままの日々、仙台港から吹き上がる黒煙が止むことなく空に立ち上っていく中、南の方から放射能の雲がじわじわと迫ってきたあの恐怖を、私は決して忘れないでしょう。

そして福島第一原発周辺ではもっと差し迫った放射能汚染と恐怖が広がっていき、その真相はいまだに明らかにされていないのだということを。

政治の良心が死んでいく国・日本

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人口の高齢化・縮小化がもたらす別の危険・気がつかない日本人
日本人を選挙から遠ざけたのは、議員という立場を悪用した数限りない不正行為やセクハラなどのスキャンダル

             

                   

エコノミスト 2019年5月30日

             

「バンザイ!」、末松のり子さんが選挙戦の勝利を祝い、万歳を三回繰り返しました。
中部地方の三重県鈴鹿市長として、3期連続の当選を果たしました。
彼女の勝利を祝いお決まりの縁起物の大きなエビ、鯛を前に写真撮影のためのポーズをとった彼女でしたが、これまでの勝利とは何かが違っていることに気がついていました。
「実は今回は私にとって初めての無投票当選だったのです。」
末松さんがこう告白しました。
「何か変な感じです。」

                

確かに奇妙ですが、無投票当選はさほど珍しい事ではありません。
4月に行われた直近の統一地方選挙では近の全国的な地方選挙では、前回2015年の選挙をわずかですが上回り、全体の30%の首長が無投票当選を果たしました。
日本全国の市町村長のうち、無投票当選によってその地位についているのは45パーセントという桁外れの多数にのぼっているのです。
全国の市町村議会議員も、それぞれの地区で相当な数の議員が議席を獲得し、農村部では候補者数よりも議席数の方が多いという自治体もありました。

                  

1990年代初頭から、特に都市部以外の地域で無投票当選が目立つようになりました。
理由は人口が減少、そして候補者数の減少です。
日本国内の市町村の約95%が2045年までに人口減少自治体になるとみられています。
実際、すでに地方自治体の80%が人口の減少局面に入っています。

                

1950年代の地方選挙では、実に有権者の5分の4以上が投票に行っていました。
今年4月の統一地方選ではその投票率が50%を下回りました。
日本人を選挙から遠ざけたのは繰り返された議員という立場を悪用した不正行為やセクハラなどのスキャンダルです。
さらに、
「日本の人々はこれらの地元の議員が、誰のために何をしているのかわからないのです。」
と京都大学のケン・ヴィクター・レオナルド・ヒジノ氏がこう語りました。

              

若い年代の女性議員や政治家 - 初めにご紹介した40代の末松鈴鹿市長のような - は増えることは増えましたが、その数はわずかであり、地方の政治はまだ高齢の男性によって支配されています。
「こうした地方自治体では、候補者は選挙用のポスターを掲示することすら重労働というほど高齢の議員が大半を占めています。」
政府系研究機関の総合研究開発機構の宇野茂樹氏がこう語りました。
事実、地方の市町村議員の4分の3が60歳以上であり、中には静岡県の自治体では91歳の最年長市議会議員が議長を務めています。

               

地方議員は経済的な見返りは期待できず、若い人々はそうした職を担おうとはしません。
法律によって地方議員の兼業は禁じられていますがその平均月収約30万円前後であり、これでは育ち盛りの子供がいるような家庭はやっていけません。
「基本的に退職した人の仕事なのです。」
宇野氏はあきらめきったような表情でこう語りました。

              

地方議員が第2の職業を持つことを認めよう、午前9時から午後6時の時間帯を避けて議会を開催しようという話もあります。

               

一部の市町村では議員報酬の引き上げも行われ、50歳以下の議員の給与は月額18万円から30万円に倍近く増えました。
四国の2つの自治体は直接民主主義の制度に基づく住民の選挙による議会の廃止を検討しています。

            

どの自治体にしても自分たち自身でこの問題を解決することなどできそうにありません。
「私たちは地方自治に積極的に関わらなければならないという言葉を普及させなければなりません。」
こう語るのはかつては徳島県で町長を務めた経験があり、現在は早稲田大学マニフェスト研究所を率いる中村健氏です。
地方の政治家たちは子育てから交通安全まで、ありとあらゆることに意見を持っています。
中村氏は将来何になりたいかと尋ねた時、もっと多くの子供達が「政治家になりたい」と答えるようになることを願っています。

                

そうなれば日本の政治は独自の進化を遂げることになるかもしれません。
少なくともこうした子供達が成長すれば、積極的に投票所に足を運ぶようになるかもしれません。

https://www.economist.com/asia/2019/05/30/local-elections-in-japan-are-running-out-of-candidates-and-voters

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なぜ今これほどまでに日本の政治は劣化しているのか?

「安倍政権が最大の元凶!」と思ってしまいますが、近代民主主義国家では許されない、あるいは権力者が決してやってはならない行為を安倍政権に許している、日本社会の中にある仕組みというものにも私たちは目を向けるべきでしょう。

                       

そういえば、かつてSEALSに関するガーディアンの記事を翻訳した際、活動に参加していた若者の一人に

「私たちは政治に関心を持たないように、権力者の言葉に疑問を持たないように、そう教育されてきた。」

という発言があったことを思い出しました。
(【 路上で立ちあがった若者たち、SEALDs -『日本の自由で民主的な社会を守る!』】ガーディアン - 全文翻訳は[星の金貨プロジェクト]http://kobajun.chips.jp/?p=24904 )

無関心や疑問を持たないということは権力者にとってまことに都合の良い状況を作り出します。

その状況を物理的に作り出すものの一つが人口減少だということに初めて気づかせてくれたのがこの記事でした。

人口減少や過疎化によって地方議会から発言や提案というものが無くなっていくということが、民主主義の衰退の一つの原因になるということについては、私たち日本人の認識が欠けている部分の一つだったのではないでしょうか。

             

私自身、会社員時代常に新しいことを構想し、事業化し、軌道に乗せていくということを担当させられたため、新しい事業については最初から大多数の理解を得て前に進めていくことなど、ほとんど不可能だということを身に沁みて思い知らされました。

だからと言って議論が不要だとは思ったことはなく、議論に参加する人間が多ければ多いほど、シンドイけれども事業の完成度は高くなっていくということも学習しました。

「議論は必要ない」という人間に限って、よこしまな動機をかくしていることが多いということも、その時学習したことの一つです。

日本とロシア・互いの軍事力拡充を非難

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東京開催の日露両国の外務・防衛大臣の会合、互いの軍事力増強に対する非難の応酬の場に
安倍首相とプーチン大統領の北方4島交渉のスピードアップの合意、現実にはいかなる進展も無し
子供達や青年への教育予算を削り、弱者のための福祉予算を削り、高齢者の年金支給額を削り、それでも私たち日本人はF35を始めとする大量の米国製兵器が必要なのか

               

                 

東京で開催された日露両国の外務大臣・防衛大臣の会合は、互いの軍事力増強に対する非難の応酬の場となりました。
焦点となった問題は両国が自国の領土だと主張する日本の北方にある島々、そして新しく導入されるアメリカのミサイル防衛システムです。

              

                    

ドイチェ・ヴェレ 2019年5月30日

                    

5月30日木曜日に東京で開催された日露両国の外相および防衛大臣による協議は、この地域における一方的な軍事的増強は容認できないとする非難の応酬の場と化しました。

              

ロシア側は、日本が米国製のイージスアショア・ミサイル防衛システムの導入計画は「潜在的な脅威」をもたらすと主張、一方日本側はその帰属を巡って両国間で紛争中のクリル諸島(千島列島)におけるロシアの軍事的プレゼンスの増強は「容認できない」と主張しています。

                

日本の河野外相はロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相に対し、次のように語りました。
「わが国の法的立場は北方4島におけるミサイル訓練、戦闘機の配備及び軍事的プレゼンスの強化を認められないというものである。」
これに対しラヴロフ外相は自国の行動は正当なものであると、次のように語りました。
「ロシア軍は自国の領土で活動しているのであり、国際法の下これらを行う当然の権利がある。」

写真《1》ロシアのヴォストーク2018(East-2018)軍事訓練は、1981年ソビエト連邦時代にこうした訓練が開始されて以降、史上最大規模の演習となりました。
ロシア国防省によると約30万人の兵員、1,000機の航空機、ヘリコプター、無人偵察機、そして36,000両の戦闘車両、さらには80隻の軍艦が参加しました。

                   

▽ ロシア人を苛立たせる日米の軍事的同盟強化

             

一方、ラヴロフ外相は、日本が配備を計画しているイージス・ミサイル防衛システム、および日本とアメリカとの軍事協力の強化に反発しました。
これに対し日本の岩屋毅防衛大臣はこのシステムが「純粋に防衛を目的としたものであり、ロシアはもちろん他国を脅かす目的のために計画されているものではない。」と語りました。

                

▽ 第二次世界大戦以来の敵対関係の正式な終結を阻む北方4島の問題

               

ロシア側の呼称クリル諸島は日本側は北方領土と呼ばれる紛争の渦中にある島々は、第二次世界大戦の終了の前後にソビエト連邦によって大日本帝国から押収されました。
これらの島々はオホーツク海と太平洋の中間地点、北海道とは目と鼻の先にあり、この島々をめぐる争いは両国が太平洋戦争を正式に終結させることを妨げてきました。

                

安倍首相は石油、ガス、その他の天然資源の存在と開発を期待し、島々を取り戻すべきだと熱心に主張してきました。

                

昨年11月、安倍首相とプーチン・ロシア大統領は1956年のソビエト提案に基づき、4島のうち2島を日本に返還する交渉をスピードアップすることに合意しました。
しかしその後どのような進展も確認されていません。

            

5月30日木曜日に開催された会議は、6月下旬に大阪で開催されるG20サミットで安倍首相とプーチン大統領が正式に会談する前に、北方4島に関する両国の合意についてその詳細な中身を検討するため、両国からの2人づつ閣僚が参加する「2プラス2」形式で開催されました。

                

写真《2》上
ウラジオストク近くのプリモルスキーでの軍事訓練に参加したロシアの戦車兵。
以前に行われたヴォストーク2014の軍事訓練は2018年の約半分の規模で行われ、参加した兵士は155,000人でした。
ロシア東部では西部と比べ大規模な軍事訓練かせ行われますが、その理由は軍事訓練の規模を制限するOSCEのウィーン議定書の規制を受けないからです。

               

写真《3》
ロシアは最近、地上兵力の援護を目的とするロシア製SU-25戦闘攻撃機が量産体制に入ったと公表しました。

                 

写真《4》
演習の様子を見守るロシアのウラジミール・プーチン大統領。
対アメリカ、対EU関係の緊張が高まる中、演習を見ながら軍事力を「一層強化」するために「最新世代の武器と技術装備」を供給することを約束した。

                   

写真《5》中国、モンゴル兵士も参加
プーチン大統領はヴォストーク2018(East-2018)軍事訓練に先駆けて中国の習近平国家主席と会談し、ロシアと中国の親密な関係を強調しました。
訓練には中国軍兵士3,500人に加え、モンゴル軍兵士も参加しました。
中極軍兵士の参加は2003年以降約30回続いていますが、戦略的レベルでの参加は今回が初めてです。

             

写真《6》着陸訓練
1週間にわたる訓練の主な目的は、部隊の長距離移動、歩兵部隊と海軍部隊の協働訓練、指揮命令系統の確立、ヘリコプターを使った地上軍兵士の上陸訓練でした。
NATOはこうした訓練について、「大規模紛争」のリハーサルだとして強く非難しました。

             

写真《7》Zapad(ザパッド)2017
ロシアとベラルーシは昨年Zapad(ザパッド)2017軍事訓練という名の1週間の合同訓練を実施、かつての東欧諸国の国境沿いに部隊を展開しました。
NATOは懸念を表明していました。
Zapad(ザパッド)2017は約12,700人の兵士が参加して行われましたが、これはウィーン議定書による制限の最大13,000人をわずかに下回るものでした。

                 

https://www.dw.com/en/japan-and-russia-accuse-one-another-of-dangerous-military-buildup/a-48980407
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安倍政権の下で国家間の競争の中で最も愚劣な競争、軍拡競争が本格化しようとしています。
軍拡競争ほど国力を消耗するものはありません。

            

それに加え、対ロシア、対中国、対北朝鮮という地理的環境を考えた場合、アメリカの同盟国として万が一にでも戦争を始めてしまったら、戦略上日本と韓国は捨て石として消滅まではいかなくとも、国民の半数が殺されるほどの戦争被害に遭う危険性すらあると、私は考えています。

             

それを裏付けるのが以下の5月末の訪日の際のトランプの発言です。
「日本にとって危険でも、アメリカに影響が及ばない限り、北朝鮮の兵器実験は気にしていない」( https://kobajun.biz/?p=36113 )
オバマ大統領やケネディ駐日大使には私たち日本人を同胞として見る目があったかもしれませんが、トランプにそんなものがあるとは考えられません。

             

アメリカが日本の軍事力を強大にしたいのは、以下のような戦略が基本にあると考えることが可能です。
対ロシア、対中国、対北朝鮮という戦争が勃発した場合、強力な軍事力によって敵の主力を日本に釘付けにする。
対ロシア、対中国については、アメリカ軍主力をインド、あるいはアフガニスタン経由で進行させる(この場合邪魔なのがイランであり、なぜここにきてアメリカが対イラン姿勢を強めているかを考えるべきでしょう)。
さらに対中国については、沖縄、グアム、フィリピン、ベトナムも利用するかもしれません。
対北朝鮮については沖縄、グアムの米軍基地を拠点に反撃することが可能です。

          

いずれにせよアメリカが日本の軍事力の増大を求めるのは、日本国民の安全を考えているわけではなく、対ロシア、対中国、対北朝鮮戦において『玉砕』するほどの消耗戦を演じて欲しいからなのではないでしょうか?
日本の損害が大きければ大きいほど敵のダメージも大きくなり、その分アメリカの損害が減る可能性が高いからです。

           

もしそうだとしたら、私たち日本人は多いに怒らなければなりませんが、こうしたアメリカの『戦略』を変えさせるほどの力を持つ日本人などはいません。
変えなければならないのは、その使い走りをしている日本の政治家たちによる日本の支配体制です。
彼らを政権の座につかせているのは、私たち日本人自身です。
私たちに投票の権利がある選挙によって権力を得て、彼らは日本を軍拡競争に引きずり込もうとしているのです。

            

子供達や青年への教育予算を削り、弱者のための福祉予算を削り、高齢者の年金支給額を削り、福島第一原発事故の被災者への支援を打ち切り、それでも私たち日本人はF35を始めとする大量の米国製兵器が必要なのかどうか、今、本気になって考えるべきです

日米貿易摩擦再燃の懸念、トランプ大統領と安倍首相のゴルフ場での密約

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「日本とっては危険でも、アメリカに影響が及ばない北朝鮮の兵器実験は気にしていない」
貿易問題に関する安倍首相の対アメリカ『戦略』は、『トランプの視界から日本を見えなくしてしまう』こと

                     

              

アルジャジーラ 2019年5月27日

                   

ドナルド・トランプ大統領と安倍首相は直接会談が行われる度、一緒にゴルフのラウンドをすることは恒例行事になったようです。

                   

5月26日日曜日も4日間の訪日の間、米国大統領は東京のマリーン・ワン・ヘリコプターに飛び乗って南に向かい、朝もやが立ち込める茂原カントリークラブで安倍首相とともにラウンドを始めました

          

AP通信によればトランプにとって安倍首相は世界各国のリーダーの中で最も親しい友人であり、トランプが大統領に就任して以降、ゴルフを一緒にプレーしたのは今度で5回目になります。

                  

トランプは「今まさに安倍首相とゴルフを始めようとしているところだ。日本側はこのゲームが大好きなようだ。」とツイート、一方の安倍首相の方は満面の笑みを浮かべた自分自身とトランプの自撮り写真をツイッターに投稿しました。

                  

                

▽ 貿易不均衡問題

                    

安倍首相の日米間の貿易摩擦問題についての戦術は、北朝鮮が日米両国に継続的な脅威を与えていることを利用し、トランプの視界から日本を隠してしまおうというものです。

                 

トランプは2年前、交渉が続いていたTPP(環太平洋パートナーシップ協定)から一方的にアメリカを離脱させ、日本とアメリカの二国間貿易協定の締結を迫りましたが、専門家は今回のトランプ訪日中にはこの問題の具体的進展はないと見ています。

              

トランプは今年7月に日本で参議院疑点選挙が行われることを前提に、次のように書きました。
「日本との貿易交渉において大きな進展が見られた、特に農業分野と牛肉輸出については著しい成果が得られるだろう。7月の参議院議員選挙の後、アメリカ側に大きな利益がもたらされるだろう。」

                

アルジャジーラ特派員のウェイン・ヘイは東京からの次のように伝えてきました。
「貿易問題についての議論が行われることは間違いないと思われます。しかし今回のトランプ訪日中には、いかなる重要な発表も行われることはないでしょう。」

                 

          

土曜夜に東京に到着した後、『日米両国が恩恵を受ける』とトランプが主張している新しい二国間貿易協定の交渉の成立に向け、両国が『懸命に取り組んでいる』と実業界のリーダー達に語っていました。
「今回の交渉によって貿易の不均衡が解消され、アメリカ産品の輸出を阻んでいる障壁を取り除き、日米両国の関係において公正さと真の互恵関係を確立することを望んでいます。そして、私たちはその目標に着実に近づいている。」
トランプ大統領はこう語りました。

                     

トランプ政権は安全保障上の問題を理由に日本製自動車、自動車部品の輸入に新たな関税を課すと日本に他の分野での譲歩を迫っています。
トランプはもし日本と欧州連合が譲歩しない場合には、新たな関税を課すことにためらうつもりはないと繰り返し語っています。

             

2019年4月の日本の貿易黒字は18%近く急増、66億ドルに達しました。

                

▽ 北朝鮮のミサイル問題

             

ゴルフ場でアメリカ人記者が大声で、直前に北朝鮮が行ったミサイル発射実験が国連安全保障理事会の決議に違反しているかどうかと質問しましたが、トランプはこの質問を無視しました。

             

先にトランプは北朝鮮が行った短距離ミサイルの実験について、その脅威については懸念していないという姿勢を明らかにしていました。
トランプは高距離ミサイルは北朝鮮に近接する日本にとっては深刻な脅威もしれないが、自分が懸念すべき問題ではないとツイートしていたのです。
「北朝鮮はちょっとした兵器実験を行って私の下にいる一部の人間たちとその他の人々の心象を害したかもしれないが、私にとっては別に問題ではない。」
自分の国家安全保障顧問であるジョン・ボルトンにメッセージを送った際、トランプは国連安全保障理事会の決議に違反している北朝鮮のミサイル発射についてこのように書いていました。

                 

その一方でトランプは北朝鮮の指導者キム・ジョンウンが「私に対する約束は守る」ということに「自信を持っている」と述べていました。

            

この問題についてアルジャジーラのヘイ特派員は次のように伝えてきました。
「今回の訪日でトランプ大統領と安倍首相は、特に5月初旬に北朝鮮が実施した2度のミサイル発射実験を念頭に置きながら、今後の対応について議論するはずです。」

                

米国大統領は4日間の訪日に彼の妻、ファーストレディのメラニア・トランプを伴い、5月26日に日本に到着しました。
そして5月1日に新天皇に即位した徳仁天皇と会い、世界の国家元首として最初の会見相手になります。

                  

最終日には横須賀に駐留中のアメリカ海軍の艦艇に乗り込んで演説を行った後、28日火曜日にワシントンに戻る予定です。

https://www.aljazeera.com/news/2019/05/donald-trump-shinzo-abe-tee-japan-trade-tensions-190526054505804.html

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ここまで書かれれば、トランプ大統領が日本のことなど、まして日本の一般市民が平和に幸福に暮らすことなど一顧だにしていないことは明らかです。

にも関わらず国技館に現れたトランプを見て大喜びし、携帯電話で争うように写真を撮りまくる我が同胞の姿を見るにつけ、無力感に苛まれます。

日本人は政治音痴などという生易しい状態にあるのではなく、もっともっと深刻な状況にあることを、残念ながら認めざるを得ません。

                

おもてなしの文化は確かに世界に誇るべきものかもしれませんが、もてなすべきではない相手にまで媚を売るのは、文化などとは別次元の話のはずです。

トランプ訪日、対米従属姿勢に大喜びする日本人《後編》

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所要時間 約 7分

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安倍首相の取り組みは日本が本当に必要としている戦略を台無しにする
トランプ訪日の目的が印象操作にあることははっきりしている
なぜそこまでしてトランプの機嫌をとらなければならないのか?

                  

ケイティ・ロジャース、モトコ・リッチ / ニューヨークタイムズ 2019年5月24日

              

安倍首相周辺では何をすればトランプを動かすことができるか、時間をかけて研究してきました。
そしいあまり気乗りしない様子の友人 - トランプに対し、日本の新しい天皇と初めて会見する外国の首脳になることは、スーパーボウルの100倍の宣伝効果があると説得し、訪日を働きかけたのです。

           

「国賓として招待を受ければ、私は日本に行くことになる。」
今年4月にトランプは記者団に訪日を決意したことについてこう語っていました。

           

もちろん、安倍首相の取り組みは日本が本当に必要としている戦略を台無しにするものです。

              

トランプ政権が朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)と核軍縮をめぐって交渉を続ける中、日本はトランプに対し米国が最大の同盟国であり続けることを再確認するよう求めています。
ホワイトハウス関係者はトランプが28日火曜日に横須賀海軍基地に駐留しているアメリカ軍を訪問した際、侵略を抑止することの重要性について訴える演説をすることになっていると語りました。

              

             

安倍首相率いる自民党の参議院議員の猪口邦子氏はつぎのように語りました。
「私たちは世界の国々では誰もこんな小さな島国のことは気にかけていないだろうという、島国として特有の前提条件を心に抱いています。だから気にかけてくれる人がいると嬉しくなるのです。」

          

トランプが来月大阪で開催されるG20に出席し、8月にはフランスで開催される主要7カ国首脳会談にトランプ、安倍首相の双方が参加し、さらに9月にはニューヨークで国連総会が開催されることを考えれば、トランプ大統領と安倍首相が直接会談する機会はいくらでもあります。

              

それだけに今回のトランプ訪日の目的が一般大衆に対する印象操作にあることははっきりしています。

             

皇室や王家、儀式を利用して、さらにはトランプを賞賛することにより、さらには自分たちの権威を高めようとしているのは日本だけではありません。
サウジアラビアへの初めての訪問では、白いローブを身にまとったトランプ大統領は踊り手に囲まれ、飾り立てたキラキラと輝く球体を背景にサウジアラビアのサルマン国王とぴったりと身を寄せ合っていました。
そして昨年夏には、トランプはウィンザー城で英国女王エリザベス2世とお茶を飲みました。

           

2017年にトランプ大統領が初めて日本を訪れたとき、安倍首相は贅沢な日本文化とアメリカ文化の快適さを組み合わせた接待を行いました。

              

トランプと安倍首相がアメリカ産のアンガスビーフから作られたチーズバーガーにかぶりつく様子を写した写真は、日本でちょっとしたチーズバーガー・ブームを巻き起こしました。
今回の訪日でも、ゴルフのラウンドとハンバーガーが2人の議題に取り入れられることでしょう。

             

トランプ大統領を国賓として招待することで - これまで日本では年に2回までしか開催されなかった稀有な事例 - 安倍首相は国内における自分自身の立場を高めようとしています。

                

国賓としての接待の場でトランプ大統領は、元外交官であり米国との貿易交渉を担当したこともある雅子皇后の泊りに座ることになります。
雅子皇后は皇太子妃時代に国賓として招かれたアメリカのビル・クリントン大統領、ロシアのボリス・エリツィン大統領と隣席して以来のことになります。

                  

安倍首相に取ってトランプとの結びつきを強めることは当初から狙っていたことでした。
2016年の大統領選挙の後、訪米した安倍首相は狡猾な理由を設けてオバマ大統領がいるホワイトハウスを素通りし、ま新たに大統領に就任することが決まったトランプとそのスタッフに会うためっすぐトランプタワーに向かいました。
安倍首相は道すがらトランプが所有する施設のうち少なくとも5か所を訪問し、トランプとの面接時間を十分に確保していました。

             

一方のトランプも安倍首相の『献身的愛情』には着目してきました。
「安倍首相が最も美しい手紙の写しを私に送ってくれた。」
2月下旬にホワイトハウスで開かれた記者会見で、安倍首相がノーベル平和賞候補にトランプ大統領を推薦したと語りました。安倍首相はその事実を否定しませんでした。

              

遅かれ早かれ安倍首相はトランプとの関係強化に多額の投資を行ってきた成果について披露することになるでしょう。
この夏、安倍首相は重要な国政選挙に直面していますが、日本の政治に詳しい人々は安倍政権がトランプの大統領就任以来、そこにばかり政治的資源を浪費し続けてきたことに懸念を募らせています。

                

東京大学大学院総合文化研究科で日米関係の研究を続ける矢口祐人(やぐちゆうじん)教授が次のように語りました。
「安倍政権の下での外務省は、相撲も世界の元首の中で一番最初に新天皇と会見することも、とにかくトランプを可能な限り喜ばせる機会として利用することが大事だと考えています。」
「しかし一人の日本国民として私は、なぜそこまでしてアメリカ政府の機嫌をとらなければならないのか、まるで理解できません。」

                

ケイティ・ロジャース(ワシントン)、モトコ・リッチ(東京)

《完》
https://www.nytimes.com/2019/05/24/us/politics/trump-japan-abe-flattery
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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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