ホーム » エッセイ » トランプ訪日、対米従属姿勢に大喜びする日本人《後編》
安倍首相の取り組みは日本が本当に必要としている戦略を台無しにする
トランプ訪日の目的が印象操作にあることははっきりしている
なぜそこまでしてトランプの機嫌をとらなければならないのか?
ケイティ・ロジャース、モトコ・リッチ / ニューヨークタイムズ 2019年5月24日
安倍首相周辺では何をすればトランプを動かすことができるか、時間をかけて研究してきました。
そしいあまり気乗りしない様子の友人 - トランプに対し、日本の新しい天皇と初めて会見する外国の首脳になることは、スーパーボウルの100倍の宣伝効果があると説得し、訪日を働きかけたのです。
「国賓として招待を受ければ、私は日本に行くことになる。」
今年4月にトランプは記者団に訪日を決意したことについてこう語っていました。
もちろん、安倍首相の取り組みは日本が本当に必要としている戦略を台無しにするものです。
トランプ政権が朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)と核軍縮をめぐって交渉を続ける中、日本はトランプに対し米国が最大の同盟国であり続けることを再確認するよう求めています。
ホワイトハウス関係者はトランプが28日火曜日に横須賀海軍基地に駐留しているアメリカ軍を訪問した際、侵略を抑止することの重要性について訴える演説をすることになっていると語りました。
安倍首相率いる自民党の参議院議員の猪口邦子氏はつぎのように語りました。
「私たちは世界の国々では誰もこんな小さな島国のことは気にかけていないだろうという、島国として特有の前提条件を心に抱いています。だから気にかけてくれる人がいると嬉しくなるのです。」
トランプが来月大阪で開催されるG20に出席し、8月にはフランスで開催される主要7カ国首脳会談にトランプ、安倍首相の双方が参加し、さらに9月にはニューヨークで国連総会が開催されることを考えれば、トランプ大統領と安倍首相が直接会談する機会はいくらでもあります。
それだけに今回のトランプ訪日の目的が一般大衆に対する印象操作にあることははっきりしています。
皇室や王家、儀式を利用して、さらにはトランプを賞賛することにより、さらには自分たちの権威を高めようとしているのは日本だけではありません。
サウジアラビアへの初めての訪問では、白いローブを身にまとったトランプ大統領は踊り手に囲まれ、飾り立てたキラキラと輝く球体を背景にサウジアラビアのサルマン国王とぴったりと身を寄せ合っていました。
そして昨年夏には、トランプはウィンザー城で英国女王エリザベス2世とお茶を飲みました。
2017年にトランプ大統領が初めて日本を訪れたとき、安倍首相は贅沢な日本文化とアメリカ文化の快適さを組み合わせた接待を行いました。
トランプと安倍首相がアメリカ産のアンガスビーフから作られたチーズバーガーにかぶりつく様子を写した写真は、日本でちょっとしたチーズバーガー・ブームを巻き起こしました。
今回の訪日でも、ゴルフのラウンドとハンバーガーが2人の議題に取り入れられることでしょう。
トランプ大統領を国賓として招待することで - これまで日本では年に2回までしか開催されなかった稀有な事例 - 安倍首相は国内における自分自身の立場を高めようとしています。
国賓としての接待の場でトランプ大統領は、元外交官であり米国との貿易交渉を担当したこともある雅子皇后の泊りに座ることになります。
雅子皇后は皇太子妃時代に国賓として招かれたアメリカのビル・クリントン大統領、ロシアのボリス・エリツィン大統領と隣席して以来のことになります。
安倍首相に取ってトランプとの結びつきを強めることは当初から狙っていたことでした。
2016年の大統領選挙の後、訪米した安倍首相は狡猾な理由を設けてオバマ大統領がいるホワイトハウスを素通りし、ま新たに大統領に就任することが決まったトランプとそのスタッフに会うためっすぐトランプタワーに向かいました。
安倍首相は道すがらトランプが所有する施設のうち少なくとも5か所を訪問し、トランプとの面接時間を十分に確保していました。
一方のトランプも安倍首相の『献身的愛情』には着目してきました。
「安倍首相が最も美しい手紙の写しを私に送ってくれた。」
2月下旬にホワイトハウスで開かれた記者会見で、安倍首相がノーベル平和賞候補にトランプ大統領を推薦したと語りました。安倍首相はその事実を否定しませんでした。
遅かれ早かれ安倍首相はトランプとの関係強化に多額の投資を行ってきた成果について披露することになるでしょう。
この夏、安倍首相は重要な国政選挙に直面していますが、日本の政治に詳しい人々は安倍政権がトランプの大統領就任以来、そこにばかり政治的資源を浪費し続けてきたことに懸念を募らせています。
東京大学大学院総合文化研究科で日米関係の研究を続ける矢口祐人(やぐちゆうじん)教授が次のように語りました。
「安倍政権の下での外務省は、相撲も世界の元首の中で一番最初に新天皇と会見することも、とにかくトランプを可能な限り喜ばせる機会として利用することが大事だと考えています。」
「しかし一人の日本国民として私は、なぜそこまでしてアメリカ政府の機嫌をとらなければならないのか、まるで理解できません。」
ケイティ・ロジャース(ワシントン)、モトコ・リッチ(東京)
《完》
https://www.nytimes.com/2019/05/24/us/politics/trump-japan-abe-flattery
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