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政治の良心が死んでいく国・日本

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所要時間 約 8分

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人口の高齢化・縮小化がもたらす別の危険・気がつかない日本人
日本人を選挙から遠ざけたのは、議員という立場を悪用した数限りない不正行為やセクハラなどのスキャンダル

             

                   

エコノミスト 2019年5月30日

             

「バンザイ!」、末松のり子さんが選挙戦の勝利を祝い、万歳を三回繰り返しました。
中部地方の三重県鈴鹿市長として、3期連続の当選を果たしました。
彼女の勝利を祝いお決まりの縁起物の大きなエビ、鯛を前に写真撮影のためのポーズをとった彼女でしたが、これまでの勝利とは何かが違っていることに気がついていました。
「実は今回は私にとって初めての無投票当選だったのです。」
末松さんがこう告白しました。
「何か変な感じです。」

                

確かに奇妙ですが、無投票当選はさほど珍しい事ではありません。
4月に行われた直近の統一地方選挙では近の全国的な地方選挙では、前回2015年の選挙をわずかですが上回り、全体の30%の首長が無投票当選を果たしました。
日本全国の市町村長のうち、無投票当選によってその地位についているのは45パーセントという桁外れの多数にのぼっているのです。
全国の市町村議会議員も、それぞれの地区で相当な数の議員が議席を獲得し、農村部では候補者数よりも議席数の方が多いという自治体もありました。

                  

1990年代初頭から、特に都市部以外の地域で無投票当選が目立つようになりました。
理由は人口が減少、そして候補者数の減少です。
日本国内の市町村の約95%が2045年までに人口減少自治体になるとみられています。
実際、すでに地方自治体の80%が人口の減少局面に入っています。

                

1950年代の地方選挙では、実に有権者の5分の4以上が投票に行っていました。
今年4月の統一地方選ではその投票率が50%を下回りました。
日本人を選挙から遠ざけたのは繰り返された議員という立場を悪用した不正行為やセクハラなどのスキャンダルです。
さらに、
「日本の人々はこれらの地元の議員が、誰のために何をしているのかわからないのです。」
と京都大学のケン・ヴィクター・レオナルド・ヒジノ氏がこう語りました。

              

若い年代の女性議員や政治家 - 初めにご紹介した40代の末松鈴鹿市長のような - は増えることは増えましたが、その数はわずかであり、地方の政治はまだ高齢の男性によって支配されています。
「こうした地方自治体では、候補者は選挙用のポスターを掲示することすら重労働というほど高齢の議員が大半を占めています。」
政府系研究機関の総合研究開発機構の宇野茂樹氏がこう語りました。
事実、地方の市町村議員の4分の3が60歳以上であり、中には静岡県の自治体では91歳の最年長市議会議員が議長を務めています。

               

地方議員は経済的な見返りは期待できず、若い人々はそうした職を担おうとはしません。
法律によって地方議員の兼業は禁じられていますがその平均月収約30万円前後であり、これでは育ち盛りの子供がいるような家庭はやっていけません。
「基本的に退職した人の仕事なのです。」
宇野氏はあきらめきったような表情でこう語りました。

              

地方議員が第2の職業を持つことを認めよう、午前9時から午後6時の時間帯を避けて議会を開催しようという話もあります。

               

一部の市町村では議員報酬の引き上げも行われ、50歳以下の議員の給与は月額18万円から30万円に倍近く増えました。
四国の2つの自治体は直接民主主義の制度に基づく住民の選挙による議会の廃止を検討しています。

            

どの自治体にしても自分たち自身でこの問題を解決することなどできそうにありません。
「私たちは地方自治に積極的に関わらなければならないという言葉を普及させなければなりません。」
こう語るのはかつては徳島県で町長を務めた経験があり、現在は早稲田大学マニフェスト研究所を率いる中村健氏です。
地方の政治家たちは子育てから交通安全まで、ありとあらゆることに意見を持っています。
中村氏は将来何になりたいかと尋ねた時、もっと多くの子供達が「政治家になりたい」と答えるようになることを願っています。

                

そうなれば日本の政治は独自の進化を遂げることになるかもしれません。
少なくともこうした子供達が成長すれば、積極的に投票所に足を運ぶようになるかもしれません。

https://www.economist.com/asia/2019/05/30/local-elections-in-japan-are-running-out-of-candidates-and-voters

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なぜ今これほどまでに日本の政治は劣化しているのか?

「安倍政権が最大の元凶!」と思ってしまいますが、近代民主主義国家では許されない、あるいは権力者が決してやってはならない行為を安倍政権に許している、日本社会の中にある仕組みというものにも私たちは目を向けるべきでしょう。

                       

そういえば、かつてSEALSに関するガーディアンの記事を翻訳した際、活動に参加していた若者の一人に

「私たちは政治に関心を持たないように、権力者の言葉に疑問を持たないように、そう教育されてきた。」

という発言があったことを思い出しました。
(【 路上で立ちあがった若者たち、SEALDs -『日本の自由で民主的な社会を守る!』】ガーディアン - 全文翻訳は[星の金貨プロジェクト]http://kobajun.chips.jp/?p=24904 )

無関心や疑問を持たないということは権力者にとってまことに都合の良い状況を作り出します。

その状況を物理的に作り出すものの一つが人口減少だということに初めて気づかせてくれたのがこの記事でした。

人口減少や過疎化によって地方議会から発言や提案というものが無くなっていくということが、民主主義の衰退の一つの原因になるということについては、私たち日本人の認識が欠けている部分の一つだったのではないでしょうか。

             

私自身、会社員時代常に新しいことを構想し、事業化し、軌道に乗せていくということを担当させられたため、新しい事業については最初から大多数の理解を得て前に進めていくことなど、ほとんど不可能だということを身に沁みて思い知らされました。

だからと言って議論が不要だとは思ったことはなく、議論に参加する人間が多ければ多いほど、シンドイけれども事業の完成度は高くなっていくということも学習しました。

「議論は必要ない」という人間に限って、よこしまな動機をかくしていることが多いということも、その時学習したことの一つです。

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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