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消費増税、暗雲を呼び込んだ安倍政権

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所要時間 約 14分

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成果が見えない大規模金融政策・消費税引き上げへの対抗措置・さらなる金利引き下げには金融不況の懸念も
増税後の様々な『景気対策』も、パターン化された消費行動をしなければメリットなし
弱含みの日本経済を支えてきたのは消費支出、なのに消費税を引き上げた安倍政権

                

              

エコノミスト 2019年9月26日

                

今年の初め、現在開催中のラグビーワールドカップの5試合を開催する九州の大分市で、主催者がバーとレストランのオーナー向けの説明会を開催しました。
説明会の会場では予想される事態の具体例として、片手に5杯のビールジョッキを手にしている南アフリカのラグビーファンの写真が含まれていました。
ラグビーファンのビールの消費量はハンパじゃありません、説明会の参加者は警告を受けていました。
実際に2007年にフランスで開催されたラグビー・ワールドカップでは、南アフリカ対フィジー戦が行われた際、マルセイユ市内のビールが足りなくなってしまいました。
さらに4年前にアイルランドがアデレードでプレーしたときも、同様の事態が起きました。
バーやレストランの所有者へのメッセージははっきりしていました。
「ビールをしっかり在庫しておいてください!」

                

日本の小売業者が9月に入り在庫を抱え込んでいるのは、ビールをがぶ飲みするラグビーファンのためだけではありません。
小売業者は、増税後に税務署から今まで以上の税金を徴収されるのを避けようと駆け込み需要に走ろうとする消費者にも対応しなければなりません。

               

10月1日(スコットランドがサモアと対戦した後、そしてフランスとアメリカが対戦する前)、日本は消費税を8%から10%に引き上げます。
消費税は生活用品、車、新しい家、雑誌、レストランでの食事、酒など、日本人が購入するほとんどすべての商品とサービスに課されます。
消費税引き上げ後は10%のレートにより、実質的に人々の可処分所得は減ってしまうことになります。
このため消費者は増税前に買い置きできるものは買ってしまおうと考えているのです。

                   

                 

人気のある税金などあるはずがありませんが、日本の消費税をめぐっては他国には見られない丁々発止の駆け引きが行われてきました。

              

1979年当時の内閣は初めて消費税の導入を承認しましたが、世論の猛反発に遭遇し、この考えを捨てざるをえませんでした。
1987年再び消費税導入の法案が上程されましたが、再び世論の反発により取り下げられました。
1989年、やっと3%の消費税が導入され、1997年に5%に引き上げられましたが、深刻な景気後退に貢献することになりました。
日本経済は、安倍晋三首相の新政権によって消費税率が8%に引き上げられた2014年にも失速しました。

                

安倍首相は政府の財政状態を改善するため、2015年に消費税を再度10%に引き上げることを公約していました。
しかし公的債務がGDPの150%を超えたこの時も増税は2017年まで延期され、今年10月まで延期されました。
ラグビー・ワールドカップ観戦のため海外から訪れた人々から称賛される時間厳守に対する日本の自慢の評判は、財政政策には当てはまらないようです。

               

こうして延期が繰り返された消費税の引き上げですが、日本経済が引き上げに耐えられる状態なのかどうかはわかりません。
アメリカと中国との貿易戦争に日本と韓国との争いも加わり、日本の輸出は9か月連続で減少しました。
中国への輸出は今年8月に前年同月比で12%減少し、韓国への輸出売上は9%減少しました。
製造業者が設備投資を減少させているのに合わせ、ホテル、小売、物流などのサービス業も事業の拡張計画が中止されているため、事業分野の投資活動は振るいません。

                  

こうした状況から日本経済が成長できるかどうかは消費支出にかかっています。
日本の第2四半期の経済成長は100%でしたが、それを支えたのは消費支出の伸びでした。
しかしこれ以上消費者のポケットからもっと多くの消費支出を引き出すのは難しくなっているようです。

                

                

                

2014年の消費税引き上げの際は、直前まで大規模な駆け込み需要が発生しました。
特に住宅建設と自動車、家具、家電製品などの大型耐久消費材は劇的な購入ブームの後、今度は大変な不況に見舞われました。
しかし今回はそれほどの動きは見られませんでした(グラフ参照)。
確かに住宅建設業者は新居を購入しようとしている人の住宅建設に忙しく取り組んでいます(販売契約が4月以前に交わされた物件には8パーセントの税率が適用されます)。
中央銀行である日本銀行によれば、エアコンの需要も押し上げました。
しかしそれ意外には目立った動きは見られません。

               

もちろん、消費者はぎりぎりの段階でいくつか(ビールを含む)高額ではない商品を購入しようと待ち構えているかもしれません。
大きな駆け込み需要が発生しなかったからといって、この後不況がやってこないとは限りません。

            

日本政府は今回の消費増税の影響が5年前よりもはるかに軽微なもので済むことを願っています。
今回の増税の幅は1パーセントだけ小さくなりました。
しかし5年前の(5%から8%の)増税の際は、その後すぐに2度目の(8%から10%の)増税が行われるという予想がありました。
2014年初めに駆け込み需要が発生したのは、両方を回避する、つまり10パーセントになる前に5パーセントのうちに必要になるものを買ってしまおうという動きだったのです。
この時消費者はその後何年もの間交換しなくて良いように自動車、家具、その他のありとあらゆる耐久性消費財を購入したのです。

                  

増税分は今回、いくつかの措置によって軽減されることになっています。
政府は今回の増税分の一部を育児と年金に充てます。
自動車の排気ガス規制について基準ごとに異なる税率を統一します。

                       

                

また政府の支援により数千の小規模小売業者がカードまたは携帯電話などを使ってキャッシュレスで購入する顧客に、製品価格の最大5%に相当するリベートまたは「還元ポイント」を提供します。

                

さらに政府はいくつかの例外を作り、免除措置により消費増税による家計負担の軽減を強調しています。
10パーセントの税率は、食品(レストランで食事をする場合除く)、飲料(アルコールを除く)、および新聞(日刊新聞の定期購読に限る)には適用されません。

                 

つまり人々が経済不振を伝える定期購読の新聞を読みながら、緑茶を飲みテイクアウトの食事をとるというパターン化された行動が有利になるのです。

                     

日本経済へのどのようなダメージが生じても、原則として日銀は対抗措置を発動する可能性があります。
引き上げを目前にしたスピーチで、黒田晴彦日銀総裁は、今回の増税の影響は以前と比較して「限定的なもの」になるとの観測を明らかにしました。
しかし黒田総裁は現実がまだ明らかになっていないせいか、今回の増税についてかなり楽観的に捉えている様子でした。
「この後さらに消費税が引き上げられることを想定しても…日本経済はトレンドとして潜在成長率を超えて成長し続けるだろう。」
黒田総裁は2014年にこう語っていました。

             

そして彼が目にした現実は、その後の6か月間、日本経済の成長は潜在成長率を約1.5ポイント下回るというものでした。
は黒田氏が再び不愉快な驚きに遭遇した場合は、日本銀行は短期金利をさらにゼロ以下に引き下げるか(ベンチマーク金利はこの4年間約マイナス0.1%でした)、あるいは国債購入の枠を拡大する可能性があります。

                

しかしこれ以上の金利引き下げは、銀行業が成り立たなくなってしまうことを懸念する金融関係者と虎の子の貯蓄の先行きを心配する一般家庭の両方から人気がありません。
効果がない場合すら考えられます。

               

日銀の理事会のメンバーで金融緩和推進派の片岡剛史氏が指摘したように、日本銀行は政策に適切に緩急をつけることなくインフレの見通しを繰り返し引き下げてきました。
こうした事態に、現在の金融緩和政策は合理的ではないと考える理事会の緊縮派にこれまで緩和政策を支持してきた理事も加わって、これ以上の金融緩和を行っても効果はないと考える敗北主義が広がりつつあることを示唆しています。

                 

その敗北論は理解しやすいものです。
インフレは当初、2015年には2%に上昇する予定でした。
しかしその見通しは実に6回改定されました。
現在日銀は、インフレが「徐々に」2%に増加しつつあると述べるに留まっています。

                  

日本が自慢する時間厳守に関する評判は、金融政策に関しては当てはまりません。
日本銀行の理事にできることは、とりあえず酒を飲むぐらいのことしかありません。

                 

https://www.economist.com/asia/2019/09/26/a-tax-hike-threatens-the-health-of-japans-economy

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どこにこのタイミングで国民一般に増税をする国があるか?!

経済学の講義を一通り聴いたことがあれば、当然抱かざるをえない感想です。

専門的な分析と解説については経済専門サイトに譲り、ここではサブタイトルの『新元号と日本型不況』というちょっと違う視点から見てみます。

                    

日本は令和という新元号の発布について、メディアが全く無意味にお祭り気分を盛り上げました。

日本では10世紀から11世紀にかけて政治の荒廃し天変地異が続く間、やたらと元号を変えた時代がありました。

元号に使われた文字が良くないために大災害や飢饉などが発生したのだという発想が基礎になっていますが、令和を煽った日本のメディアの頭脳構造も1000年前とさほど変わってはいないのかもしれません。

17世紀後半に一世一元制となった日本では、もうやたらと改元することはできなくなりましたが、もしその制限がなければ現在の政権なら元号を繰り返し変えるようなことも平気でやるかもしれません。

その都度、多額の国家予算が広告業界に流れ込むわけですから。

                  

私の言う『日本型不況』というのは、お金をかけるべき部門に投資せず、過剰な軍備や不要なインフラなど政治家の利権が存在する周辺にばかり国家予算を投入する政治が作り出す不況です。

具体的には教育予算や研究開発予算などを削り、オリンピックや無内容なイベントに税金が浪費されていく政治です。

その場限りのお祭りばかり派手にやって、本当の意味での発展を支えていく国にとって最も大切なはずの人材が、育って行く機会すら与えられないままどんどん見捨てられていきます。

                     

こんな政治を10年も続ければ、日本が先進国から衰退国へと脱落するのは当然ではないでしょうか?

現在の政権の最大の罪が、消費増税という弱者を一層追い詰める政策によって明らかになりました。

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