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靖国神社建立150年、禍根を残す戦争犯罪者の合祀

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所要時間 約 12分

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太平洋戦争がなぜどのように起きたかを知った今は、私は戦争犯罪者の合祀に反対する - 戦死者遺族

ここに祀られている人々の大半は、徴兵され、会ったこともない他人を殺すよう命じられ、そして自分自身が死んでしまった - 戦死者遺族

戦争犯罪者の合祀は戦死した他の多くの人々を追悼する思いを汚すもの - 戦死者遺族

           

                  

ケリー・オルセン/ アルジャジーラ 2019年10月18日

               

アジアの中で最も激しい政治的論争の渦中にある宗教施設の一つは、自然が作り出す静寂が印象的な島国にあります。

                

靖国神社は銀杏、糸杉、カエデの木に囲まれています。
東京の中心にある緑豊かなこの場所は、日本の原始宗教である神道における重要な、そして一方では国論を二分する精神的役割を果たしています。

                 

在位が1868年から死亡した1912年に及んだ明治天皇は、1869年に明治維新の内戦で亡くなった戦士の魂を祀るために靖国神社を創設しました。
さらにその後、日清戦争、日露戦争、第二次世界大戦と武力紛争によって死亡した人びとが祀られるようになり、その数は250万人に上ります。
しかし1978年、「A級戦争犯罪者」の名で知られる第二次世界大戦後の国際軍事法廷で有罪判決を受けた14人の日本の民間および軍の指導者が合祀されたその日から、国論を二分する論争の対象となったのです。

               

国家主義者にとって神聖な場所である靖国神社は、こうして特に中国、南北朝鮮、台湾からの批判を集中的に集める場所になりました。
そして日本国内にも靖国神社は日本の軍国主義的・植民地主義的な過去の行動を正当化していると批判する人々もいます。
一方、靖国神社の存在を支持する者は、日本には他の国と同じように戦争で死んだ人々を追悼する権利があるはずだと主張しています。

                 

しかし靖国神社で祈りを捧げている人々でさえ、有罪判決を受けた戦争犯罪者が一緒に祀られていることについて、戦って死んだ他の多くの人々を追悼する思いを汚すものだと主張しています。

                 

近くの不動産会社に勤務する片木豊さん(59歳)はほとんど毎日通勤途中に靖国神社に参拝し、祀られている霊に祈りを捧げています。
「当時の法律によって徴兵され、そして戦地に送り込まれ、本来日本に対する害意など持っていなかった全く見知らぬ人間と戦って殺すように命じられ、その挙句亡くなってしまった気の毒な人々が本当に大勢いるのです。」
片木さんの大叔父は太平洋戦争末期の沖縄戦で命を落としました。
「私たちは彼らに対し頭を下げるべきです。」

                 

             

靖国神社に対しては年に3回国際的なスポットライトが当たります。
8月15日前後、第二次世界大戦における日本の降伏記念日であり、国会議員、閣僚、首相が訪れます。
また4月と10月には季節の祭典や重要な儀式が行われます。

                

秋の4日間の祭礼は10月17日木曜日に始まり、時折雨が降る中、伝統の衣装に身を包んだ神官と神社関係者が厳かに捧げ物をする中、外国人観光客を含む観光客が写真撮影をしていました。

                    

この儀式は、今年5月に在位が始まった新しい徳仁天皇が正式に即位する予定の日の数日前に行われました。
さらには1910年から1945年の間に日本の植民地であった韓国との関係が、この数十年で最悪のレベルにあるタイミングで実施されました。

                  

靖国神社は今年で創建150周年を迎えます。
かつては静かな鎮魂施設の一つにすぎませんでしたが、1978年に行われたA級戦犯合祀によりたちまち政治的象徴性に満ちた場所に変わってしまいました。

              

明治天皇の孫であり第二次世界大戦当時在位していた裕仁天皇は、A級戦犯の合祀以降、靖国神社を訪れることはありませんでした。

                

歴代首相のほとんどは靖国神社と距離を置いていましたが、全員がそうであったわけではありません。
中曽根康弘元首相は1985年に日本の首相として初めて靖国神社に参拝しました。

              

2001年から2006年まで首相を務めた小泉純一郎氏は頻繁に靖国神社を訪れました。

                      

国家主義者である現在の安倍首相は日本が積極的な外交政策と軍備の拡大を進めていますが、7年近くの任期中一度靖国神社に参拝し、非難を浴びました。
10月18日木曜日、安倍内閣の衛藤晟一(えとうせいいち)一億総活躍・沖縄北方・少子化担当大臣がこの2年で初めて靖国神社を参拝した閣僚になりました。

                   

直ちに中国外務省のスポークスマンが衛藤氏を強く非難しました。
「大日本帝国が行った侵略行為の歴史的事実について、日本の一部の政治家が再び誤った行為を行った。」

               

写真 : 小泉純一郎元首相(左から2番目)はしばしば靖国神社に参拝し、中国、韓国、台湾などから非難を浴びました。

                 

▽ 政治の道具

                 

米国ケンタッキー大学で歴史学を専攻し靖国神社に関する著作もある竹中明子准教授は神社をとりまく状況について、その時々の権力者のナショナリストとしての程度に応じて和らいだり緊張したりする傾向があると述べています。
1985年に当時の中曽根首相の参拝により靖国神社をめぐっての緊張状態が生まれ、小泉元首相の参拝によって再燃し、安倍首相の参拝により三たびこの問題が表面化することになった、竹中准教授がこう指摘しました。

                

「日本の右派は靖国神社と国家との関連性を維持し、神社が廃れたりしないように様々な取り組みを行っていると考えられます。」
竹中准教授がこう語り、次のように続けました。
「一方で中国と韓国は日本の首相による靖国神社参拝に対する自国民の怒りを、自国のナショナリズムの形成と強化に利用しています。」

                  

「この問題は彼らにとってある意味非常に便利な政治ツールになりました。こうした事情から私は今のところこの問題に解決策があるとは思っていません。」

                

政治的プラグマティズム(現実主義)も一役買っています。

               

2013年12月の安倍首相の靖国神社参拝により、日本と中国との緊張が一気に高まりました。
中国は当時すでに尖閣諸島(釣魚島)問題をめぐって日本と争い、しばしば暴力的な反日抗議行動も発生する沸騰点達していました。
しかし、近年においては両国の関係は徐々に改善に向かっており、2020年には中国の習近平国家主席による日本公式訪問が予定されています。

              

安倍首相は2014年以降は靖国神社参拝を避けていますが、今年も行ったように真榊と呼ばれる儀式的な捧げ物を都度都度に贈っています。

            

そして天皇自身は出席しませんが、神社の春と秋の例大祭には皇室の使者も訪れます。

               

写真 : 2019年10月17日、靖国神社参拝の後VIP専用玄関で鷲尾英一郎衆議院議員を見送る神社関係者。

                

▽ 静寂の世界

           

神道は日本における多層的宗教的構造の一部分を形成しているにすぎません。

                

日本の宗教事情の複雑さを物語る光景が17日木曜日に靖国神社境内で見られました。
一人のカトリックの修道女が神社の境内をやってきて本殿の前を通り抜ける際、祀られている戦没者の霊に敬意を示すためにお辞儀をしました。

                  

79歳のこの女性の父親は戦争中に中国で兵士として死亡し、靖国神社に祀られています。
彼女は時に応じて弟と待ち合わせをし、祈りを捧げています。
「私たちの父はこの場所で休んでいます。」
彼女はこう語りましたが、亡くなったのは自分が4歳か5歳の時だったため、父に関する記憶はほとんどないと語りました。

               

彼女は最近、靖国神社について何かが間違っていると一層強く感じるようになりました。
「太平洋戦争がなぜ、どのように起きたかを知るようになった今、私は戦争犯罪者である人々の合祀に反対します。」
彼女はこう語りました。
しかしこうした考えを明らかにするとどのような仕打ちを受けるかわからない、そうした懸念から彼女は自分の名を明かすことを頑なに拒みました。

                

軍関係の団体が多く関わっていることを勘案すると、靖国神社は第二次世界大戦中の日本の行動について反省しようとしない人間たちの拠り所になってしまいました。
神社の敷地内にある博物館では、国家主義的な視点を通して戦前戦中の事実を詳しく解説しています。

                 

政治的論争の的になることが多いことから、恐らくはいわば怖い物見たさで靖国神社を訪れる中国人観光客もいます。

             

さすがに自分の考えを喜んで公開する人はほとんどいませんでしたが、アニメ映画や漫画本のファンで日本でインターンシップをしている台湾出身の21歳の大学生、ジミー・スーさんが正直に感想を語ってくれました。

                     

彼は母国台湾が日本の植民地だった当時の歴史、そして一部の台湾人が日本に対し憎しみを抱いていることから、ぜひ靖国神社というものを見てみたかったと語りました。

                  

靖国神社という空間を支配する静寂に魅了された彼はこう語りました。
「こうして私はこの場所に立っている、ただそれだけですね。」
「特別なことは何もありません。」

            

写真:10月17日の秋の例大祭の期間中、靖国神社境内を歩く神官。

                

https://www.aljazeera.com/news/2019/10/yasukuni-caught-controversy-japan-struggles-history-191018003603691.html

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