福島第一原発事故の検証と収束が終わらないまま、再稼働にのみ力を注ぐ安倍政権
福島第一原発事故は『もう忘れても良い問題』なのか?

山口まり / AP通信 / ワシントンポスト 2019年6月7日
安倍政権が採択したエネルギー白書は、2011年に発生した福島第一原発のメルトダウン事故が完全に収束していないにもかかわらず、再生可能エネルギーだけではなく原子力発電の推進も盛り込まれています。
安倍首相が率いる日本政府は2011年に発生した福島第一原発のメルトダウン事故が完全に収束していないにもかかわらず、再生可能エネルギーに加え原子力発電を推進することにより、二酸化炭素排出量を削減する取り組みを行うように求めています。
6月7日金曜日に安倍内閣が採択したエネルギー政策文書は、電力会社がよりクリーンな原子力による発電量の不足を補うため火力発電所に大きく依存していることにより、日本は二酸化炭素の排出量削減という課題について緊急事態に直面していると述べました。
福島第一原発事故により国家的危機に直面した日本では原子力発電所の運営についてそれまでよりも厳しい安全基準が採用され、条件を満たさない原子力発電所は停止させられています。
そして福島の事故以降、原子力発電に反対する国民が多数を占めるようになりましたが、安倍政権はゆっくりとではありますが国内の原子力発電所の再稼働を続けています。

日本は2030年までに国内の電力供給における再生可能エネルギーのシェアを16%から22~24%に引き上げる一方、2017年時点で3パーセントにまで落ち込んだ原子力発電のシェアも20~22%に引き上げようとしています。
現在石炭と天然ガスによる火力発電のシェアは日本の電力供給の74%を占めています。
巨大地震と千年に一度と言われる津波によって福島第一原子力発電所の冷却システムが破壊され、3基の原子炉がメルトダウンした2011年の事故発生までは、原子力は日本の電力供給量の約3分の1を占めていました。
安倍政権は世論がどうあろうとも原子力発電を推進するという姿勢を強めていますが、原子力規制当局が福島第一原発事故によって厳格になった安全基準の下での審査手続きを慎重に進めているため、日本国内の原子炉の再稼働はゆっくりとしか進んでいません。
一方で各電力会社は新しい安全基準に適合させるために多額の追加出費を行うよりも、老朽化した原子炉については廃炉にするという選択を行いました。
その結果日本国内の稼働可能な54基の原子炉のうち、ほぼ半数について廃炉の方針が廃止措置に指定されており、事故以来運転を再開できたのは9基にとどまっています。
国内の原子炉の再稼働が思うように進まないことにより、使用済み燃料から抽出されたプルトニウムの再利用も滞り、その備蓄量の増加が問題になっています。
日本は核燃料サイクル計画が行き詰まった後、従来型の原子炉でプルトニウムをもやすという方法で47トンの備蓄を減らしたばかりです。
その量があれば核弾頭6,000発を生産することができます。
しかし備蓄量全体を見ると減少してはいません。
専門家たちは現在、日本政府による核不拡散の呼びかけには信頼が欠如していると批判し、備蓄量を減らすためのより徹底的な措置を求めています。

フランスとイギリスには日本国内での処理能力を超えた際に処理を委託した約37トン使用済み核燃料が貯蔵されています。
日本国内での再処理の中心になるのは六ケ所村にある再処理プラントですが、プルトニウムと使用済核燃料は貯蔵はされているものの実際の再処理は行われていません。
10トンのプルトニウムについては国際原子力機関(IAEA)の監視下にあり、核拡散の危険性はないとされています。
日本の政策研究グループである笹川平和財団は今週、プルトニウムの備蓄量を多くとも2~3トンにまで大幅に減らし、日本政府が保有目的が飽くまで平和目的であることを国際社会に向け証明するために、IAEAの管理下で保有すべきだと日本政府に対する勧告を行いました。
同財団の委員会による勧告は昨年日本政府がガイドラインとして示した47トンの上限を大きく下回っています。
日本政府は最終的にはプルトニウムの保有量を削減すると誓約したものの、どういうペースで削減するのかは明示しませんでした。
https://www.washingtonpost.com/Japan plans carbon emission cuts, more nuclear energy
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私たち日本人はこれほどあからさまに民意の無視を続ける政権というものを持ったのは初めてなのではないでしょうか?
福島第一原発事故に関連する事項についてはマスコミに圧力をかけて極力取り上げないようにさせる。すると常にその事実に問題意識を持ち続けている人以外の視界からはこの問題の存在が消されていく。
原子力発電の問題について、安倍政権には『民意と誠実に向き合う』という姿勢はまるでありません。
しかし問題はそれをする側だけではなく、それを許してしまう側・私たち国民の側にもあるはずです。
福島第一原子力発電所事故は『もう忘れても良い問題』なのでしょうか?
電気も水道も止まったままの日々、仙台港から吹き上がる黒煙が止むことなく空に立ち上っていく中、南の方から放射能の雲がじわじわと迫ってきたあの恐怖を、私は決して忘れないでしょう。
そして福島第一原発周辺ではもっと差し迫った放射能汚染と恐怖が広がっていき、その真相はいまだに明らかにされていないのだということを。
人口の高齢化・縮小化がもたらす別の危険・気がつかない日本人
日本人を選挙から遠ざけたのは、議員という立場を悪用した数限りない不正行為やセクハラなどのスキャンダル

エコノミスト 2019年5月30日
「バンザイ!」、末松のり子さんが選挙戦の勝利を祝い、万歳を三回繰り返しました。
中部地方の三重県鈴鹿市長として、3期連続の当選を果たしました。
彼女の勝利を祝いお決まりの縁起物の大きなエビ、鯛を前に写真撮影のためのポーズをとった彼女でしたが、これまでの勝利とは何かが違っていることに気がついていました。
「実は今回は私にとって初めての無投票当選だったのです。」
末松さんがこう告白しました。
「何か変な感じです。」
確かに奇妙ですが、無投票当選はさほど珍しい事ではありません。
4月に行われた直近の統一地方選挙では近の全国的な地方選挙では、前回2015年の選挙をわずかですが上回り、全体の30%の首長が無投票当選を果たしました。
日本全国の市町村長のうち、無投票当選によってその地位についているのは45パーセントという桁外れの多数にのぼっているのです。
全国の市町村議会議員も、それぞれの地区で相当な数の議員が議席を獲得し、農村部では候補者数よりも議席数の方が多いという自治体もありました。
1990年代初頭から、特に都市部以外の地域で無投票当選が目立つようになりました。
理由は人口が減少、そして候補者数の減少です。
日本国内の市町村の約95%が2045年までに人口減少自治体になるとみられています。
実際、すでに地方自治体の80%が人口の減少局面に入っています。

1950年代の地方選挙では、実に有権者の5分の4以上が投票に行っていました。
今年4月の統一地方選ではその投票率が50%を下回りました。
日本人を選挙から遠ざけたのは繰り返された議員という立場を悪用した不正行為やセクハラなどのスキャンダルです。
さらに、
「日本の人々はこれらの地元の議員が、誰のために何をしているのかわからないのです。」
と京都大学のケン・ヴィクター・レオナルド・ヒジノ氏がこう語りました。
若い年代の女性議員や政治家 - 初めにご紹介した40代の末松鈴鹿市長のような - は増えることは増えましたが、その数はわずかであり、地方の政治はまだ高齢の男性によって支配されています。
「こうした地方自治体では、候補者は選挙用のポスターを掲示することすら重労働というほど高齢の議員が大半を占めています。」
政府系研究機関の総合研究開発機構の宇野茂樹氏がこう語りました。
事実、地方の市町村議員の4分の3が60歳以上であり、中には静岡県の自治体では91歳の最年長市議会議員が議長を務めています。
地方議員は経済的な見返りは期待できず、若い人々はそうした職を担おうとはしません。
法律によって地方議員の兼業は禁じられていますがその平均月収約30万円前後であり、これでは育ち盛りの子供がいるような家庭はやっていけません。
「基本的に退職した人の仕事なのです。」
宇野氏はあきらめきったような表情でこう語りました。

地方議員が第2の職業を持つことを認めよう、午前9時から午後6時の時間帯を避けて議会を開催しようという話もあります。
一部の市町村では議員報酬の引き上げも行われ、50歳以下の議員の給与は月額18万円から30万円に倍近く増えました。
四国の2つの自治体は直接民主主義の制度に基づく住民の選挙による議会の廃止を検討しています。
どの自治体にしても自分たち自身でこの問題を解決することなどできそうにありません。
「私たちは地方自治に積極的に関わらなければならないという言葉を普及させなければなりません。」
こう語るのはかつては徳島県で町長を務めた経験があり、現在は早稲田大学マニフェスト研究所を率いる中村健氏です。
地方の政治家たちは子育てから交通安全まで、ありとあらゆることに意見を持っています。
中村氏は将来何になりたいかと尋ねた時、もっと多くの子供達が「政治家になりたい」と答えるようになることを願っています。
そうなれば日本の政治は独自の進化を遂げることになるかもしれません。
少なくともこうした子供達が成長すれば、積極的に投票所に足を運ぶようになるかもしれません。
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なぜ今これほどまでに日本の政治は劣化しているのか?
「安倍政権が最大の元凶!」と思ってしまいますが、近代民主主義国家では許されない、あるいは権力者が決してやってはならない行為を安倍政権に許している、日本社会の中にある仕組みというものにも私たちは目を向けるべきでしょう。
そういえば、かつてSEALSに関するガーディアンの記事を翻訳した際、活動に参加していた若者の一人に
「私たちは政治に関心を持たないように、権力者の言葉に疑問を持たないように、そう教育されてきた。」
という発言があったことを思い出しました。
(【 路上で立ちあがった若者たち、SEALDs -『日本の自由で民主的な社会を守る!』】ガーディアン - 全文翻訳は[星の金貨プロジェクト]http://kobajun.chips.jp/?p=24904 )
無関心や疑問を持たないということは権力者にとってまことに都合の良い状況を作り出します。
その状況を物理的に作り出すものの一つが人口減少だということに初めて気づかせてくれたのがこの記事でした。
人口減少や過疎化によって地方議会から発言や提案というものが無くなっていくということが、民主主義の衰退の一つの原因になるということについては、私たち日本人の認識が欠けている部分の一つだったのではないでしょうか。
私自身、会社員時代常に新しいことを構想し、事業化し、軌道に乗せていくということを担当させられたため、新しい事業については最初から大多数の理解を得て前に進めていくことなど、ほとんど不可能だということを身に沁みて思い知らされました。
だからと言って議論が不要だとは思ったことはなく、議論に参加する人間が多ければ多いほど、シンドイけれども事業の完成度は高くなっていくということも学習しました。
「議論は必要ない」という人間に限って、よこしまな動機をかくしていることが多いということも、その時学習したことの一つです。
東京開催の日露両国の外務・防衛大臣の会合、互いの軍事力増強に対する非難の応酬の場に
安倍首相とプーチン大統領の北方4島交渉のスピードアップの合意、現実にはいかなる進展も無し
子供達や青年への教育予算を削り、弱者のための福祉予算を削り、高齢者の年金支給額を削り、それでも私たち日本人はF35を始めとする大量の米国製兵器が必要なのか

東京で開催された日露両国の外務大臣・防衛大臣の会合は、互いの軍事力増強に対する非難の応酬の場となりました。
焦点となった問題は両国が自国の領土だと主張する日本の北方にある島々、そして新しく導入されるアメリカのミサイル防衛システムです。
ドイチェ・ヴェレ 2019年5月30日
5月30日木曜日に東京で開催された日露両国の外相および防衛大臣による協議は、この地域における一方的な軍事的増強は容認できないとする非難の応酬の場と化しました。
ロシア側は、日本が米国製のイージスアショア・ミサイル防衛システムの導入計画は「潜在的な脅威」をもたらすと主張、一方日本側はその帰属を巡って両国間で紛争中のクリル諸島(千島列島)におけるロシアの軍事的プレゼンスの増強は「容認できない」と主張しています。
日本の河野外相はロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相に対し、次のように語りました。
「わが国の法的立場は北方4島におけるミサイル訓練、戦闘機の配備及び軍事的プレゼンスの強化を認められないというものである。」
これに対しラヴロフ外相は自国の行動は正当なものであると、次のように語りました。
「ロシア軍は自国の領土で活動しているのであり、国際法の下これらを行う当然の権利がある。」

▽ ロシア人を苛立たせる日米の軍事的同盟強化
一方、ラヴロフ外相は、日本が配備を計画しているイージス・ミサイル防衛システム、および日本とアメリカとの軍事協力の強化に反発しました。
これに対し日本の岩屋毅防衛大臣はこのシステムが「純粋に防衛を目的としたものであり、ロシアはもちろん他国を脅かす目的のために計画されているものではない。」と語りました。
▽ 第二次世界大戦以来の敵対関係の正式な終結を阻む北方4島の問題
ロシア側の呼称クリル諸島は日本側は北方領土と呼ばれる紛争の渦中にある島々は、第二次世界大戦の終了の前後にソビエト連邦によって大日本帝国から押収されました。
これらの島々はオホーツク海と太平洋の中間地点、北海道とは目と鼻の先にあり、この島々をめぐる争いは両国が太平洋戦争を正式に終結させることを妨げてきました。
安倍首相は石油、ガス、その他の天然資源の存在と開発を期待し、島々を取り戻すべきだと熱心に主張してきました。

昨年11月、安倍首相とプーチン・ロシア大統領は1956年のソビエト提案に基づき、4島のうち2島を日本に返還する交渉をスピードアップすることに合意しました。
しかしその後どのような進展も確認されていません。
5月30日木曜日に開催された会議は、6月下旬に大阪で開催されるG20サミットで安倍首相とプーチン大統領が正式に会談する前に、北方4島に関する両国の合意についてその詳細な中身を検討するため、両国からの2人づつ閣僚が参加する「2プラス2」形式で開催されました。

写真《2》上
ウラジオストク近くのプリモルスキーでの軍事訓練に参加したロシアの戦車兵。
以前に行われたヴォストーク2014の軍事訓練は2018年の約半分の規模で行われ、参加した兵士は155,000人でした。
ロシア東部では西部と比べ大規模な軍事訓練かせ行われますが、その理由は軍事訓練の規模を制限するOSCEのウィーン議定書の規制を受けないからです。

写真《3》
ロシアは最近、地上兵力の援護を目的とするロシア製SU-25戦闘攻撃機が量産体制に入ったと公表しました。

写真《4》
演習の様子を見守るロシアのウラジミール・プーチン大統領。
対アメリカ、対EU関係の緊張が高まる中、演習を見ながら軍事力を「一層強化」するために「最新世代の武器と技術装備」を供給することを約束した。

写真《5》中国、モンゴル兵士も参加
プーチン大統領はヴォストーク2018(East-2018)軍事訓練に先駆けて中国の習近平国家主席と会談し、ロシアと中国の親密な関係を強調しました。
訓練には中国軍兵士3,500人に加え、モンゴル軍兵士も参加しました。
中極軍兵士の参加は2003年以降約30回続いていますが、戦略的レベルでの参加は今回が初めてです。

写真《6》着陸訓練
1週間にわたる訓練の主な目的は、部隊の長距離移動、歩兵部隊と海軍部隊の協働訓練、指揮命令系統の確立、ヘリコプターを使った地上軍兵士の上陸訓練でした。
NATOはこうした訓練について、「大規模紛争」のリハーサルだとして強く非難しました。

写真《7》Zapad(ザパッド)2017
ロシアとベラルーシは昨年Zapad(ザパッド)2017軍事訓練という名の1週間の合同訓練を実施、かつての東欧諸国の国境沿いに部隊を展開しました。
NATOは懸念を表明していました。
Zapad(ザパッド)2017は約12,700人の兵士が参加して行われましたが、これはウィーン議定書による制限の最大13,000人をわずかに下回るものでした。
https://www.dw.com/en/japan-and-russia-accuse-one-another-of-dangerous-military-buildup/a-48980407
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安倍政権の下で国家間の競争の中で最も愚劣な競争、軍拡競争が本格化しようとしています。
軍拡競争ほど国力を消耗するものはありません。
それに加え、対ロシア、対中国、対北朝鮮という地理的環境を考えた場合、アメリカの同盟国として万が一にでも戦争を始めてしまったら、戦略上日本と韓国は捨て石として消滅まではいかなくとも、国民の半数が殺されるほどの戦争被害に遭う危険性すらあると、私は考えています。
それを裏付けるのが以下の5月末の訪日の際のトランプの発言です。
「日本にとって危険でも、アメリカに影響が及ばない限り、北朝鮮の兵器実験は気にしていない」( https://kobajun.biz/?p=36113 )
オバマ大統領やケネディ駐日大使には私たち日本人を同胞として見る目があったかもしれませんが、トランプにそんなものがあるとは考えられません。
アメリカが日本の軍事力を強大にしたいのは、以下のような戦略が基本にあると考えることが可能です。
対ロシア、対中国、対北朝鮮という戦争が勃発した場合、強力な軍事力によって敵の主力を日本に釘付けにする。
対ロシア、対中国については、アメリカ軍主力をインド、あるいはアフガニスタン経由で進行させる(この場合邪魔なのがイランであり、なぜここにきてアメリカが対イラン姿勢を強めているかを考えるべきでしょう)。
さらに対中国については、沖縄、グアム、フィリピン、ベトナムも利用するかもしれません。
対北朝鮮については沖縄、グアムの米軍基地を拠点に反撃することが可能です。
いずれにせよアメリカが日本の軍事力の増大を求めるのは、日本国民の安全を考えているわけではなく、対ロシア、対中国、対北朝鮮戦において『玉砕』するほどの消耗戦を演じて欲しいからなのではないでしょうか?
日本の損害が大きければ大きいほど敵のダメージも大きくなり、その分アメリカの損害が減る可能性が高いからです。
もしそうだとしたら、私たち日本人は多いに怒らなければなりませんが、こうしたアメリカの『戦略』を変えさせるほどの力を持つ日本人などはいません。
変えなければならないのは、その使い走りをしている日本の政治家たちによる日本の支配体制です。
彼らを政権の座につかせているのは、私たち日本人自身です。
私たちに投票の権利がある選挙によって権力を得て、彼らは日本を軍拡競争に引きずり込もうとしているのです。
子供達や青年への教育予算を削り、弱者のための福祉予算を削り、高齢者の年金支給額を削り、福島第一原発事故の被災者への支援を打ち切り、それでも私たち日本人はF35を始めとする大量の米国製兵器が必要なのかどうか、今、本気になって考えるべきです
「日本とっては危険でも、アメリカに影響が及ばない北朝鮮の兵器実験は気にしていない」
貿易問題に関する安倍首相の対アメリカ『戦略』は、『トランプの視界から日本を見えなくしてしまう』こと

アルジャジーラ 2019年5月27日
ドナルド・トランプ大統領と安倍首相は直接会談が行われる度、一緒にゴルフのラウンドをすることは恒例行事になったようです。
5月26日日曜日も4日間の訪日の間、米国大統領は東京のマリーン・ワン・ヘリコプターに飛び乗って南に向かい、朝もやが立ち込める茂原カントリークラブで安倍首相とともにラウンドを始めました
AP通信によればトランプにとって安倍首相は世界各国のリーダーの中で最も親しい友人であり、トランプが大統領に就任して以降、ゴルフを一緒にプレーしたのは今度で5回目になります。
トランプは「今まさに安倍首相とゴルフを始めようとしているところだ。日本側はこのゲームが大好きなようだ。」とツイート、一方の安倍首相の方は満面の笑みを浮かべた自分自身とトランプの自撮り写真をツイッターに投稿しました。

▽ 貿易不均衡問題
安倍首相の日米間の貿易摩擦問題についての戦術は、北朝鮮が日米両国に継続的な脅威を与えていることを利用し、トランプの視界から日本を隠してしまおうというものです。
トランプは2年前、交渉が続いていたTPP(環太平洋パートナーシップ協定)から一方的にアメリカを離脱させ、日本とアメリカの二国間貿易協定の締結を迫りましたが、専門家は今回のトランプ訪日中にはこの問題の具体的進展はないと見ています。
トランプは今年7月に日本で参議院疑点選挙が行われることを前提に、次のように書きました。
「日本との貿易交渉において大きな進展が見られた、特に農業分野と牛肉輸出については著しい成果が得られるだろう。7月の参議院議員選挙の後、アメリカ側に大きな利益がもたらされるだろう。」
アルジャジーラ特派員のウェイン・ヘイは東京からの次のように伝えてきました。
「貿易問題についての議論が行われることは間違いないと思われます。しかし今回のトランプ訪日中には、いかなる重要な発表も行われることはないでしょう。」

土曜夜に東京に到着した後、『日米両国が恩恵を受ける』とトランプが主張している新しい二国間貿易協定の交渉の成立に向け、両国が『懸命に取り組んでいる』と実業界のリーダー達に語っていました。
「今回の交渉によって貿易の不均衡が解消され、アメリカ産品の輸出を阻んでいる障壁を取り除き、日米両国の関係において公正さと真の互恵関係を確立することを望んでいます。そして、私たちはその目標に着実に近づいている。」
トランプ大統領はこう語りました。
トランプ政権は安全保障上の問題を理由に日本製自動車、自動車部品の輸入に新たな関税を課すと日本に他の分野での譲歩を迫っています。
トランプはもし日本と欧州連合が譲歩しない場合には、新たな関税を課すことにためらうつもりはないと繰り返し語っています。
2019年4月の日本の貿易黒字は18%近く急増、66億ドルに達しました。
▽ 北朝鮮のミサイル問題

ゴルフ場でアメリカ人記者が大声で、直前に北朝鮮が行ったミサイル発射実験が国連安全保障理事会の決議に違反しているかどうかと質問しましたが、トランプはこの質問を無視しました。
先にトランプは北朝鮮が行った短距離ミサイルの実験について、その脅威については懸念していないという姿勢を明らかにしていました。
トランプは高距離ミサイルは北朝鮮に近接する日本にとっては深刻な脅威もしれないが、自分が懸念すべき問題ではないとツイートしていたのです。
「北朝鮮はちょっとした兵器実験を行って私の下にいる一部の人間たちとその他の人々の心象を害したかもしれないが、私にとっては別に問題ではない。」
自分の国家安全保障顧問であるジョン・ボルトンにメッセージを送った際、トランプは国連安全保障理事会の決議に違反している北朝鮮のミサイル発射についてこのように書いていました。
その一方でトランプは北朝鮮の指導者キム・ジョンウンが「私に対する約束は守る」ということに「自信を持っている」と述べていました。
この問題についてアルジャジーラのヘイ特派員は次のように伝えてきました。
「今回の訪日でトランプ大統領と安倍首相は、特に5月初旬に北朝鮮が実施した2度のミサイル発射実験を念頭に置きながら、今後の対応について議論するはずです。」
米国大統領は4日間の訪日に彼の妻、ファーストレディのメラニア・トランプを伴い、5月26日に日本に到着しました。
そして5月1日に新天皇に即位した徳仁天皇と会い、世界の国家元首として最初の会見相手になります。
最終日には横須賀に駐留中のアメリカ海軍の艦艇に乗り込んで演説を行った後、28日火曜日にワシントンに戻る予定です。
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ここまで書かれれば、トランプ大統領が日本のことなど、まして日本の一般市民が平和に幸福に暮らすことなど一顧だにしていないことは明らかです。
にも関わらず国技館に現れたトランプを見て大喜びし、携帯電話で争うように写真を撮りまくる我が同胞の姿を見るにつけ、無力感に苛まれます。
日本人は政治音痴などという生易しい状態にあるのではなく、もっともっと深刻な状況にあることを、残念ながら認めざるを得ません。
おもてなしの文化は確かに世界に誇るべきものかもしれませんが、もてなすべきではない相手にまで媚を売るのは、文化などとは別次元の話のはずです。
安倍首相の取り組みは日本が本当に必要としている戦略を台無しにする
トランプ訪日の目的が印象操作にあることははっきりしている
なぜそこまでしてトランプの機嫌をとらなければならないのか?

ケイティ・ロジャース、モトコ・リッチ / ニューヨークタイムズ 2019年5月24日
安倍首相周辺では何をすればトランプを動かすことができるか、時間をかけて研究してきました。
そしいあまり気乗りしない様子の友人 - トランプに対し、日本の新しい天皇と初めて会見する外国の首脳になることは、スーパーボウルの100倍の宣伝効果があると説得し、訪日を働きかけたのです。
「国賓として招待を受ければ、私は日本に行くことになる。」
今年4月にトランプは記者団に訪日を決意したことについてこう語っていました。
もちろん、安倍首相の取り組みは日本が本当に必要としている戦略を台無しにするものです。
トランプ政権が朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)と核軍縮をめぐって交渉を続ける中、日本はトランプに対し米国が最大の同盟国であり続けることを再確認するよう求めています。
ホワイトハウス関係者はトランプが28日火曜日に横須賀海軍基地に駐留しているアメリカ軍を訪問した際、侵略を抑止することの重要性について訴える演説をすることになっていると語りました。

安倍首相率いる自民党の参議院議員の猪口邦子氏はつぎのように語りました。
「私たちは世界の国々では誰もこんな小さな島国のことは気にかけていないだろうという、島国として特有の前提条件を心に抱いています。だから気にかけてくれる人がいると嬉しくなるのです。」
トランプが来月大阪で開催されるG20に出席し、8月にはフランスで開催される主要7カ国首脳会談にトランプ、安倍首相の双方が参加し、さらに9月にはニューヨークで国連総会が開催されることを考えれば、トランプ大統領と安倍首相が直接会談する機会はいくらでもあります。
それだけに今回のトランプ訪日の目的が一般大衆に対する印象操作にあることははっきりしています。
皇室や王家、儀式を利用して、さらにはトランプを賞賛することにより、さらには自分たちの権威を高めようとしているのは日本だけではありません。
サウジアラビアへの初めての訪問では、白いローブを身にまとったトランプ大統領は踊り手に囲まれ、飾り立てたキラキラと輝く球体を背景にサウジアラビアのサルマン国王とぴったりと身を寄せ合っていました。
そして昨年夏には、トランプはウィンザー城で英国女王エリザベス2世とお茶を飲みました。
2017年にトランプ大統領が初めて日本を訪れたとき、安倍首相は贅沢な日本文化とアメリカ文化の快適さを組み合わせた接待を行いました。
トランプと安倍首相がアメリカ産のアンガスビーフから作られたチーズバーガーにかぶりつく様子を写した写真は、日本でちょっとしたチーズバーガー・ブームを巻き起こしました。
今回の訪日でも、ゴルフのラウンドとハンバーガーが2人の議題に取り入れられることでしょう。
トランプ大統領を国賓として招待することで - これまで日本では年に2回までしか開催されなかった稀有な事例 - 安倍首相は国内における自分自身の立場を高めようとしています。
国賓としての接待の場でトランプ大統領は、元外交官であり米国との貿易交渉を担当したこともある雅子皇后の泊りに座ることになります。
雅子皇后は皇太子妃時代に国賓として招かれたアメリカのビル・クリントン大統領、ロシアのボリス・エリツィン大統領と隣席して以来のことになります。
安倍首相に取ってトランプとの結びつきを強めることは当初から狙っていたことでした。
2016年の大統領選挙の後、訪米した安倍首相は狡猾な理由を設けてオバマ大統領がいるホワイトハウスを素通りし、ま新たに大統領に就任することが決まったトランプとそのスタッフに会うためっすぐトランプタワーに向かいました。
安倍首相は道すがらトランプが所有する施設のうち少なくとも5か所を訪問し、トランプとの面接時間を十分に確保していました。
一方のトランプも安倍首相の『献身的愛情』には着目してきました。
「安倍首相が最も美しい手紙の写しを私に送ってくれた。」
2月下旬にホワイトハウスで開かれた記者会見で、安倍首相がノーベル平和賞候補にトランプ大統領を推薦したと語りました。安倍首相はその事実を否定しませんでした。
遅かれ早かれ安倍首相はトランプとの関係強化に多額の投資を行ってきた成果について披露することになるでしょう。
この夏、安倍首相は重要な国政選挙に直面していますが、日本の政治に詳しい人々は安倍政権がトランプの大統領就任以来、そこにばかり政治的資源を浪費し続けてきたことに懸念を募らせています。
東京大学大学院総合文化研究科で日米関係の研究を続ける矢口祐人(やぐちゆうじん)教授が次のように語りました。
「安倍政権の下での外務省は、相撲も世界の元首の中で一番最初に新天皇と会見することも、とにかくトランプを可能な限り喜ばせる機会として利用することが大事だと考えています。」
「しかし一人の日本国民として私は、なぜそこまでしてアメリカ政府の機嫌をとらなければならないのか、まるで理解できません。」
ケイティ・ロジャース(ワシントン)、モトコ・リッチ(東京)
《完》
https://www.nytimes.com/2019/05/24/us/politics/trump-japan-abe-flattery
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