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原子力発電はこれ程に危険であり、原子力行政と業界はこれ程に腐敗している〈第3回〉[フェアウィンズ]

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『メイド・イン・ジャパン?!』
原子力発電につきまとう危険、それは日本固有の問題ではありません

▼ 日本の首相は、原発が本質的には不要であることに国民が気づかないよう、大飯原発の再稼働を強行
▼ 監視体制が問題というより、原子力発電そのものの方が問題


▽ 劣化の連鎖が止まらない原子力発電所

ではもう一度サンオノフル原子力発電所に話題を戻しましょう。
アメリカの原子力規制委員会は、原子炉と蒸気タービンの間で炉心の熱を取り去るために、放射能を帯びた冷却水を循環させている金属製のパイプが、以前に原子力発電所の運営者側が発表した以上に、ひどく損傷していたことを、木曜日、明らかにしました。
サンオノフル原子力発電所の蒸気発電装置は1基について、内部にそれぞれ直径2センチほどのU字型のパイプを内蔵しています。
この合金製のパイプは、原子炉の安全確保の要となるものです。
たった一本破損したとしても、大気中に放射性物質が放出される危険性があります。
もし深刻な断裂などが起きれば、原子炉そのものから冷却水が漏れだす危険性があるのです。

こうした配管において、金属疲労による劣化は避けられません。
しかしサンオノフル原子力発電所では、設置当初器材が比較的新しいにもかかわらず、配管の摩耗(浸食)が見つかり、職員をあわてさせました。
結局発電機は6億7000万ドル(約536億円)の費用をかけて全機交換の措置が取られ、2010年4月に2号機が、2011年2月に3号機が発電を開始しました。

配管に35パーセント、つまり3分の1の摩耗(浸食)が見つかれば、配管はすべて交換しなければならないことになっています。
この発電所の4基の発電機は、それぞれ最高で778本の交換可能な配管を設備することにより、動くよう設計されています。
問題を起こした3号機では、420本のパイプを交換する必要がありました。

さらに記録を調べてみると、残る配管のうち、197本のパイプがすでに20%から34%の間で摩耗(浸食)していることが解ります。
言い換えれば、これだけの配管が断裂寸前の危険な状態にある、そういうことになります。
この発電機では、500本以上のパイプがすでに10%から19%の間で摩耗(浸食)が起きています。


「新しい資料は、2号機と3号機の両方で数千本のパイプが損傷していることを表しており、いったい本当に2基の原子炉の再稼働は妥当だったのか、と言う深刻な疑問がわき上がってきます。」
カリフォルニア大学サンタクルーズ校で原子力政策の講義を行い、原子力業界に批判的な立場に立つダニエル・ハーシュ氏がこのように指摘しました。
「これまで明らかにされた以上に、この問題は深刻です。」

もしこれ以上の問題が明らかになれば、アメリカ原子力規制員会は問題の過少評価を行っていることになります。
今週発表されたフェアウィンズのレポートは、他の施設でもサンオノフル原子力発電所同様の問題を抱えていることを明らかにしました。

サンオノフル原子力発電所の水蒸気発電用のパイプには、他の原子力発電所と比較して、3.7倍もの接合箇所があります。
今回の報告書では、水蒸気発電機用のパイプに対する『圧力試験』で、他の米国内の原子力発電所では多くても1回しか発生しなかった漏出が、サンオノフル原子力発電所では8回も発生したことが報告されています。
フェアウィンズはこの点に留意した上で、サンオノフル原子力発電所の2基の原子炉が不安定な状態にあると判断せざるを得ず、2基の原子炉がいかなる現実的な安全確保の約束も無く再稼働された、としています。


この水蒸気発電機の配管の急速な劣化という問題が、仮にサンオノフル原子力発電所特有の問題であったとしても、常時安定した冷却を行うため安定した電力の供給を必要とするという、このシステムの中に存在する固有の危険性が、環境の汚染を引き起こす危険のある数々の問題につながることは、全米の原子力発電所に共通の問題なのです。
原子炉建屋に亀裂が入った、冷却水が漏れだした、変電設備が火災を起こした、電力の供給が停止した。そしてそれに加え膨大な数のヒューマンエラーの数々が、アメリカ原子力規制員会の事故報告書には、この40年間、毎月のように書き加えられてきたのです。
簡単に言えば、すべてが問題なく進行しなければならないはずの原子力発電所で、信じられない程多くのトラブルが発生しているのです。

そして、核廃棄物についてまわる危険についても、ここで触れる必要があるでしょう。
原子炉には必ず付きものの、使用済み核燃料プールはアメリカ中の、そして日本中の原子力発電所の敷地内に点々と存在していますが、使用済み核燃料がオーバーヒートして事故につながらないよう(チェルノブイリや福島第一原発の事故現場で見られたような、惨憺たる結果をもたらさないよう)、絶えず水を循環させ、絶え間なく冷やし続ける必要があります。
福島第一原発では現時点に置いて、4号機の使用済み核燃料プールが、深刻な状態の3基の原子炉同様、極めて危険な状態に置かれています。


▽ 福島の危機より、ジャイアントパンダの方が大切な日本のメディア

これまで述べてきたように、原子力発電所に関する新たな問題が次々と明らかになっているにもかかわらず、日本の野田首相は、サンオノフル原子力発電所同様に不安定で、様々な問題を抱える大飯原発の再稼働を強行しました。
日本の首相と原子力産業界が、日本が一度でも原子力発電無しで長く暑い夏を乗り切ってしまえば、人々の健康と国土の安全を賭けものにしてまで、原子力発電を行う必要性など無いことに、国民が気づかないように画策したようなものでした。

しかし、日本人全員がそれ程おめでたい訳では無かったようです。
数万人の人々が通りに現れ、この国がこれまでと変わりなく、危険性も何も無視して企業と政府が安易なもたれ合いを続けることに、激しく抗議しました。
(福島第一原発の事故をきちんと検証し、あるべき安全対策が取られないまま大飯原発が再稼働されてしまったことを思えば、当然の成り行きなのですが…)
また、教育レベルの違いに関しても、考える必要があるかもしれません。
日本では、一般市民が、特に女性たちが『盲目的服従』に陥ることなく、人間の尊厳をかけて抗議活動を続けています。
一方、国内に事故を起こした福島第一原発と同設計の原子炉が23基あり、その半径50マイル(約80㎞)圏内に1億8,400万人が暮らすアメリカでは、どうだったでしょう?
福島の事故を踏まえ、アメリカ国内の原子炉の安全対策の改良が必要であることを提案した原子力規制員会の委員長が、原子力業界の工作により辞任に追い込まれ、業界の息のかかった委員長が誕生したことに対し、一般市民からの抗議らしい抗議はありませんでした。

しかし日本では人々に比べ、そのメディアの意識の低さが明らかにされることになりました。
前述のBBCの大井まり子記者は、日本の大手メディアが政府事故調査委員会の報告書よりも、ジャイアントパンダの赤ちゃん誕生のニュースの方を、大々的に取り上げたことについて嘆きました。
こうした報道姿勢は、むしろアメリカの大衆向けメディアの方が得意だったはずだったのですが。
このパンダの赤ちゃんは、その後まもなく死んでしまいました。


しかし福島第一原発が放出した放射性物質による影響は、途切れることなく続いています。
そして福島第一原発の危機も、そのまま続いています。

原子力発電が続けられる限り、地球的規模での健康と生命に対する脅威は、終わることは無いのです。

http://fairewinds.com/ja/content/made-japan-fukushima-crisis-nuclear-not-cultural
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先ほど、会社の休憩室に置いてあったスポーツ紙の記事下、週刊誌の広告に何気なく目をやり、次の瞬間わが目を疑いました。
有名出版社が発行するその雑誌の今週号、列挙された見出しの中に『首相官邸に乗り込んだ11人の正体』とあり、抗議者を代表したのは、風俗関係の女性や左翼系の元活動家であると大書きしてあったのです。
あたかもそれが大問題だと言わんばかりの扱いでした。

大手週刊誌がこれほど『差別的』表現を堂々と行ったのを、私は初めて見たような気がします。
そして3.11以来ほぼ毎日、世界中のメディアをチェックしていますが、この手の『差別的』表現と言うものを見たことがありません。

詳しい事実関係は知りませんが、同じ風俗関係でも、ルックスが良くて稼ぎが良いとテレビに登場させてもてはやし、反権力闘争に身を投じればいわれも無く貶める。
まさに『拝金』報道の典型と言うべきではないでしょうか?
そしてこれもまた、日本の『マスコミ』の一つの典型なのでしょうか?

風俗関係の仕事と言うと、経済的に余裕があるとは考えにくいのですが、そうした環境にあっても原発と言う国家にとって重い課題に、すすんで関わろうとする。
その人はそれだけの思いを持って活動している、そうした姿には利権や金権に絡んでオノレのみを富ませようとする一部の御用『学者』などには無い、「人としての尊厳」を感じます。

2,200年前、人間の命をモノか家畜のそれのように扱う秦帝国を倒した漢の劉邦は、今で言えばチンピラ、コソ泥の類であり、その仲間は市場の屠殺人や門番、馬車の御者などと言う人々でした。
しかし彼らには人として当たり前の命に対する思いやりがあり、秦帝国の暴政を見て「匹夫(つまらない人間)と言えども」立ち向かっていったのです。
まあ、ちょっと単純に書き過ぎたかもしれませんが、人は志を持った時点で大丈夫(立派な人格を持った人)であるはず。
金や権力に媚びていわれなく人を貶めるなど、この手の攻撃はまさに品性劣悪、人間の風上にも置けない、のではないでしょうか。
こんなやり方で「人間をつぶす」ことを、決して見過ごしてはならないと思います。

原子力発電はこれ程に危険であり、原子力行政と業界はこれ程に腐敗している〈第2回〉[フェアウィンズ]

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『メイド・イン・ジャパン?!』
原子力発電につきまとう危険、それは日本固有の問題ではありません

▼ 腐敗と癒着がはびこる、それこそが原子力発電
▼ 原子力発電所内では、次々と配管が劣化する危険が続いている

▽ 太平洋を隔てた向かい側でも


アメリカのカリフォルニア州にある[サンオノフル原子力発電所]では、従業員が安全に関する懸念を外部に漏らしたりしたら、直ちに報復を受ける、という雰囲気を作り出している、として原子力規制委員会が警告を行いました。

同発電所で健康指導を行っていた保健師のエドワード・バッシーは2006年、いくつかの物質について放射線量の測定を行った際、検査した物質のイニシャルを書き換えたとして首になりましたが、解雇理由はねつ造されたものだとして、原子力発電所を運営しているエジソン社を連邦裁判所に告訴しました。
解雇の本当の理由は、彼の上司とNRCに対し、同発電所の健康管理体制に対し、不満を明らかにしたことにある、と主張しています。

SONGSの略称(こんな素敵な名前を使うことを、許していいのでしょうか?!)を持つサンオノフル原子力発電所では今年1月、放射性の水蒸気が漏れだす事故がありました。
調査した結果、2基の原子炉の両方の銅製の配管にひどい損傷が見つかり、そこから水蒸気が押し出されていたことが解り、以来稼働を停止しています。

しかし、押し出されたのは水蒸気だけではありませんでした。
SONGSに内部告発者(英語でwhistleblower、ホイッスルを吹く人)とは絶妙の組み合わせですが、バッシー氏の場合は、内部告発者を始末するための法の抜け穴を利用したシステムにより、たちまちその職を奪われることになったのです。

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サンオノフル原子力発電所は私企業、南カリフォルニア・エジソン社が主な所有者になっていますが、その土地はキャンプ・ペンドルトン海兵隊基地から借り受けています。
つまりこの原子力発電所は連邦政府の所有地の中にあり、内部告発者を保護する法律も含め、いかなるカリフォルニア州の法律も適用されない、と法廷は判決を下したのです。

実はこれまでも、サンオノフル原子力発電所における安全問題に関する内部告発や、セクシャルハラスメントやその他の問題についての州の裁判所に対する告発は、いずれも発電所の立地を理由に、すべて却下されてきたのです。
この問題についてロス・アンジェルス・タイムズは、これまでも同発電所ではその建設以来、職員が安全上の懸念を表明したり、労働条件について不満を述べたりした際、カリフォルニア州の住民なら当然与えられるべき法的な保護なしに、解雇が繰り返されてきたことを明らかにしました。
SONGSの歴史はまさに度重なる事故と、設備運営者による安全確保の手抜き、ウソと隠ぺいの歴史なのです。
サンオノフル原子力発電所職員が、問題を起こせば直ちに首になり、内部告発に関する法的保護も極めて薄弱であることを考えたとき、同発電所が米国内でも最悪の部類に入る原子力発電だという結論に、反対を唱える人はいるでしょうか?

行政側のいい加減な規制が如何に危険なものであるか、それを証明するためには、サンオノフル原子力発電所の事例だけでは不十分でしょうか?
それなら、今回の福島第一原発の事故についてその調査報告書が、その危険性をいやという程明らかにしてくれました。
安全確保に対するきちんとした姿勢を蝕んで行ったものは、日本の経済社会特有の慣習だけではなく、世界中で見られる規制機関と原子力産業界の間の、腐敗しきった忌むべき癒着に他ならないのです。

▽腐敗と癒着がはびこる、それこそが原子力発電


不正な癒着によるもたれ合いは、それが国家的なものであれ、国際的なものであれ、それ自体は工夫の産物であると言えないことはありません。
フィナンシャルタイムズが指摘したように、日本人とその独特の管理監督体制は、先端技術の結晶である新幹線を生み出し、1964年以来一度も致命的な事故を起こすことなく運営が続けられています。

実は国会事故調査委員会の報告書そのものは、福島第一原発の事故で幾重にも繰り返された失敗の原因が、日本固有の文化にあるのではなく、原子炉の構造的欠陥と、原子力発電特有の致命的欠陥に直接起因するものであることを、何よりも明快に明らかにしているのです。

いったん、ここで昨年の夏、議論された問題に触れましょう。
軽水炉に関するパラドックス、「安定した電力を途切れることなく供給するため、軽水炉には安定した電力を途切れることなく供給する必要がある」
これは永久運動に関する不可解な説明などではなく、日本とアメリカで日常的に原子力発電を行っている軽水炉が、構造上、水素爆発を起こして原子炉に火災が発生し、原子炉内でメルトダウンが起き、格納容器を突き破るメルトスルーに到る、一連の連鎖的に致命的事態に陥らないようにするため、水を送り込み続けて、原子炉内の核燃料を充分に冷やしておく必要性について説明しているのです。

福島第一原発で発生した一連の大災害のほとんどが、このパラドックスに原因を求めることができるのです。
世界がその様子を目撃し、日本の報告書が繰り返し指摘した通り、東北太平洋沖地震は福島第一原発の原子炉格納容器の密閉性と冷却システムを破壊し、発電所内の電源供給システムを破壊しました。そして地震によって発生した津波が予備のディーゼル発電機をも稼働不能にさせ、全電源喪失という事態に陥ったのです。
どうしてもパラドックスのような仕組みにならざるを得ない、格納容器内の冷却水の循環は、まず地震によって循環が滞るという深刻な事態に陥り、次に襲った津波によって完全にその機能を失いました。


巨大地震が多発する日本の国土の問題、そして軽水炉が構造上多量の水を必要とするという問題。
この20年間。日本の科学者がこの2つの深刻な問題について、東京電力を始めとする原子力発電所の運営者や規制や監視を行うべき政府機関に対し、繰り返し数々の指摘を行ってきました。
しかし軽水炉と言うものが、このパラドックスのような構造を持っている以上、福島第一原発の事故発生は起こるべくして起きた、そういわざるを得ないのです。
〈つづく〉

http://fairewinds.com/ja/content/made-japan-fukushima-crisis-nuclear-not-cultural

原子力発電はこれ程に危険であり、原子力行政と業界はこれ程に腐敗している〈第1回〉[フェアウィンズ]

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『メイド・イン・ジャパン?!』
原子力発電につきまとう危険、それは日本固有の問題ではありません

▼ 監視行政と原子力産業界の癒着、それは日米共通の問題
▼ 内部告発。問題の解決より、内部告発した人間をあぶりだそうとした原子力安全・保安院

グレッグ・レヴァイン / フェアウィンズ 7月13日


先週公表された国会事故調査委員会による福島第一原発の事故調査報告書の大部分が、日本の文化的側面がこの事故の根本原因を形成した、との指摘に力点を置いていました。
委員長の黒川清博士は大部に渡る報告書の要約版の冒頭で、非常にわかりやすい表現を用い、以下のように告発しています。

このことを認めるについては非常な苦痛を伴うが、今回の事故は『メイド・イン・ジャパン』そのものである。
そしてそれを作り出した根本原因は、日本の文化にしみついている慣習にある。
すなわち条件反射的な服従精神。
権威に対し疑問を持たないようにすること。
一度作られた計画に拘泥しがちな性向。
組織優先の考え方。
そして、島国根性。

この自己批判精神に満ちた文章に、西側メディアが飛びついたことは今さら驚きに値することではありません。ましてこの300語からなる文章は、88ページの文書の冒頭に置かれているのですから。
文化的な固定観念と不十分な解釈は、非常に完成されたルポルタージュに往々にしてついて回ります。

さらに内容よりも衝撃的だったのは、この苦痛に満ちた自己分析が英語版にのみ掲載されていた、という事実でしょう。
そして議長個人の見解、という事で『メイド・イン・ジャパン』という結論が、この問題を日本に限ったものとした点に、私は問題を感じています。


日本語版において、そして英語版の要約版の本文において、日本の文化に対する批判は、原子力産業の規制を期待されていたはずの原子力安全・保安院などの監視機関と原子力産業界のなれ合いの関係に対する、数多くの厳しい批判に置き換わっています。
この『規制当局は電気事業者の「虜(とりこ)」となっていた』状況について報告書は詳述していますが、今回の事故調査委員会が発見した問題の核心部分であり、福島第一原発の事故がなぜ『人間の手によって作られた』ものなのかを理解する上で重要なことです。
しかしこのことは、日本の経済界に限った事では無いのです。

そうです、アメリカ合衆国でもこの問題にずっと取り組んできた人ならすぐ理解できるでしょうが、こうした原子力産業に対するいい加減な規制の在り方は、一般市民の安全と健康に対する脅威の核心とも言うべきものです。
しかし原子力産業界において、否、エネルギー産業界すべてに共通するものであるかもしれませんが、こうした産業界と行政側の癒着は大なり小なり、日本だけに限った問題では無いのです。

▽ 守ってはもらえない不幸な市民、守られる産業界


この国会事故調査委員会の報告書には、規制当局によってきちんと監視されるはずだった原子力産業界が、互いに癒着することにより作り出した、忌むべき関係が作り出した事実が含まれています。
閉ざされた日本の原子力産業界にあって、報告書を表面的に読んでしまうと、問題の本質は日本の文化に起因することになってしまいます。
実は違います。
今やそれが当たり前のように思われている『天下り』に、つまりは規制官庁に対する企業の立場を強めるため、企業側が中央官庁を退職した元官僚を高い給料を支払って積極的に雇い入れる仕組みに、癒着の根本的原因があるのです。

BBC東京支局の大井まりこ記者は『ワールドサービス』ニュースの中で、福島第一原発の事故の報道の中、癒着の実態について以下のような表現をしました。
「規制当局に対する内部告発が行われると、規制当局は東京電力に電話して、まずこう警告するのです。
『原子炉に何か問題が発生しているようだぞ。』と言う代わり、『気をつけろ、内部告発した奴がいるぞ!』と…。

福島第一原発の事故が発生してしまった現在においても、日本の原子力産業界の中では社会的、道義的責任などまるで無視し、「どのような裏切りも許さない!」とばかりに互いを監視する体制が続いていると見て、まず間違いはないでしょう。
〈つづく〉

http://fairewinds.com/ja/content/made-japan-fukushima-crisis-nuclear-not-cultural
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この記事はツイッター・ネーム[K_ouyorimo Yoko 反TPP 徴兵反 原発輸出反対]さんに教えていただき、8月半ばに翻訳をご依頼いただいたものを翻訳したもので、長文のため今日から3回に分けて掲載します。
ご連絡いただいた際、すぐには気がつかず、着手が遅くなってしまったことを改めてお詫びいたします。

例年にも増して暑いこの夏、せっかく大勢の方々が首相官邸前などで抗議の声を挙げておられるにも関わらず、日本国内の報道と政治の動きを見ていると、福島第一原発の本当の怖さや、原子力発電の本質と言うものを見失いがちになってしまいます。
そのような中、こうした記事が折々に現れて、発行部数世界一を標榜する原発推進Y新聞、核兵器保有すら主張しかねないS新聞などが目論む、『脱原発世論抑圧催眠』から覚醒させてくれることに、私たちは改めて感謝しなければなりません。
特にフェアウィンズの活動については、いつも頭が下がる思いでいます。
設立者のアーニー・ガンダーセン氏に、改めて敬意を表し、誤訳・ミスタイプの無いことを祈るばかりです。

【原子力発電所の廃止を、視野に入れ始めた日本】[ウォールストリート・ジャーナル]

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岩田まり、望月たかし / ウォール・ストリート・ジャーナル 8月21日


一般国民の強い反対意見と数か月後に予想される総選挙を前に、日本政府はこれから20年間、長期的エネルギー政策としては原子力発電への依存割合を減らす決定を行うことになりそうだと、エネルギー問題に詳しい政府高官が語りました。

2011年3月に発生した福島第一原発の事故を受け、日本の野田首相は議会において今後のエネルギー政策を策定する際の選択肢として、3つのシナリオを用意しました。
1. 2030年までに日本国内のすべての原子力発電を停める
2. 原子力発電への依存割合を15%程度に減らす
3. 現在とほぼ同じ、20%から25%の水準を維持する
さらにいずれが選択されても、再生可能エネルギーへの依存割合を現在の10%から最低でも20%へ上昇させる、としています。

日本政府は上記の選択肢の中からいずれを選ぶのか、年末に予想される総選挙以前、9月中に発表すると見られています。

その選択についてこれまでは、政府は折衷案を選択すると思われてきましたが、政府高官は現在の流れでは、議会が将来の原発への依存割合をゼロとする案を採択する可能性が高い、と語りました。
「原発ゼロが私たちの願いであり、最終目標です。」
政府官僚の一人がこう語りました。
「私たちは今、その目標に向け進みつつあります。この動きに強力に反対する勢力は、今のところ見当たらないと思います。」


福島第一原発の事故の後、日本国内にある稼働可能な50基の原子炉が定期点検のため、すべて停止しました。しかし7月になって、夏場の電力需要の高まりを予想し、西日本にある2基の原子炉が再稼働されました。
この措置は原子力発電に反対する人々を怒らせることとなり、毎週行われる首相官邸前の抗議行動に参加する人々は増え続け、参加者は75,000人にまで膨らみました。

電力産業を職掌している経済産業大臣の枝野幸男氏は、この8月、石油・天然ガスなどの化石燃料への依存が増加することによって生じる、経済的負担の応分の分担に関して国民の間で合意が得られるならば、大臣自身は原子力発電への依存割合を削減していきたい、と語りました。
枝野大臣の発言は、原子力発電への依存率をゼロにするシナリオについて、実際に可能かどうか精査するように、という野田首相の指示に沿うものです。
こうした一連の動きは、現政権が今月消費税率を今後3年間で現在の倍にする法案を成立させたことにより、野田政権と政権与党の民主党に対し、より一層敵対的となった世論を鎮静化させる目的がありました。

現政権の支持率は、大手メディアによる世論調査によれば、30%を下回っています。
と同時に、世論は原子力発電への回帰に関する懸念を、いっそう深めていることも明らかになりました。
朝日新聞社による世論調査では、国民の43%が原発ゼロの選択肢を望んでいるのに対し、15%に削減する案への支持は31%でした。
現状維持の20%~25%の案への支持は、11%に過ぎませんでした。

政府の姿勢が軟化したひとつの兆候として、野田首相が22日水曜日、脱原発の抗議行動を行っている人々の代表と会談したことが挙げられます。
これまで首相は、こうした人々と会うことを忌避し続けて来ました。


これに対し、産業界の代表は相変わらず原子力発電の廃止に強く反対しています。これ以上国内の生産コストが上昇すれば、ただでさえ経営が苦しい企業は生産設備を海外に移さざるを得ない、というのがその言い分です。

日本最大の経済界による議会工作団体、経団連環境本部の長谷川雅巳主幹は、政府は「声なき多数派」を無視していると批判しました。
長谷川氏はさらに日本が置かれている環境は、2011年に福島第一原発の事故を受け原子力発電所の廃止を決めたドイツとは違う、と語りました。
「ドイツの送電網は他のヨーロッパ諸国とつながっているからこそ、原子力発電所の廃止が可能になったのです。必要になれば、電力をフランスから輸入することが可能なのです。」
「電力の安定供給のためには、多様な発電手段を持ち続けることの方が賢明です。」

日本国内で東京電力に次ぐ規模を持ち、原子力発電への依存率が最も高い関西電力は、この件に関してのコメントを辞退しました。
同社の八木社長はこの7月、日本に原子力発電は必要だと信じているし、将来も原子力発電を続けることになるだろう、と語っていました。

http://online.wsj.com/article/SB10000872396390443855804577603051383403854.html

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今朝の朝刊の第一面記事下の広告、S新聞社の東京都知事の新刊の広告が出ていました。
その中に『脱原発センチメントの愚』と言うタイトルがありました。
都知事が常々『日本が核兵器製造能力を持ち続けるため、原子力発電を止めるな』と主張していることは、広く知られているところです。こういう主張をする人を日本の首都の知事に選出することの是非はとりあえず措いておき、『脱原発は感情論である』という彼らの主張が、いかに的外れであるか、3.11以降に限っても、世界中から発信されてきました。
それに避難を強いられた福島の人々の姿を見て、人間として思いやる感情のどこに問題があるのか…

1. 原子力発電所内には生物にとって致命的となる物質が、様々な段階で、様々な場所にある(福島第一原発4号機核燃料プールにある使用済み核燃料が火災などを起こしたら、現代の『科学』ではどれ程の災害になるか予測できない、など)。
2. 高レベル放射性廃棄物の究極の分解処分方法が開発されていないにもかかわらず、次々とこの廃棄物が生み出され、アメリカや日本では持って行き場が無くなってきている。特に日本はきわめて原始的な埋蔵処分場所の確保もできずにいる。
3. 中性子、あるいは核分裂については、その半分も解明されていないのに、解っていることだけをつなぎ合わせて原子力発電を始めてしまった。
4. イギリス、フランス、ドイツのように地震というものがまず発生しない、という場所であっても危険なのに、世界の巨大地震の20%が集中する国土に、次々と原子力発電所を建設した日本を、世界中が(悪い意味で)驚異の目で見ている。
5. 日本は商業用原子炉の本格的廃炉作業の経験が無く、「40年かかる」と言っている福島第一原発の廃炉作業も、うまく進行するという保証はどこにもない

など、箇条書きにしていったら、きりがありません。
ここに列挙した『事実』を見ただけでも、原子力発電はやめるべきだ、とするのが『科学的』かつ『冷静な』判断だと思うのですが、それを感情的と揶揄するアタマの仕組みは、どう表現すればいいのでしょうか?

第一、核兵器を誰を相手にいつ、どうやって使うつもりなのでしょうか。
抑止力?!
中国?北朝鮮?
中国のように広大な国土のどこに核兵器発射設備を隠しているのか、そんな相手に『抑止力』を働かせるには、日本はいったい何発の核爆弾を持たなければならないのでしょうか?
冷戦時代に大量に作ってしまった核兵器の保管に、アメリカが苦しみ始めたことは前回ご紹介したばかりです。
原子力発電所の廃炉、そして福島第一原発の核廃棄物の処分に苦しむ日本に、この上核兵器の保管という難問をかかえこむつもりでしょうか?!

かつて「原子力発電に群がる、狂人たちの時代を終わらせるために」という記事をご紹介したことがあります。
日本は原子力発電を続けて核装備しろ、と言う人々には、パラノイア(内因性の精神病の一型。偏執的になり妄想がみられるが、その論理は一貫しており、行動・思考などの秩序が保たれているもの。妄想の内容には、血統・発明・宗教・嫉妬(しっと)・恋愛・心気などが含まれ、持続・発展する。偏執病。妄想症。 - Yahoo辞書)という言葉がぴったりです。
そう、『原発推進パラノイアは、この国の未来を奪う』。

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[以下の写真はいずれも、クリックすれば大きな画像をご覧いただけます。]

巣穴にエサの魚を運び込むオスのカワセミ


ザ・ガーディアン(英国)8月24日

訳者 : 野鳥の写真を撮影した経験をお持ちの方なら、この写真がアマチュアなら一生に一度ものにすることができるかできないか、と言うほどの傑作写真であることをご理解いただけると思います。
私も3.11の以前は野鳥撮影に夢中になっていた時期があり、カメラとレンズを買い揃え、人の来ない山や谷を歩いてあてども無くその姿を追ったりしていました。
カワセミそのものは、都市の近郊にもいて、さほど珍しい鳥というわけではありませんが、その姿の美しさは格別のものがあります。
まして飛んでいる写真ともなれば、巣穴を見つけ、その前で姿を隠して何時間も、場合によっては何日もシャッターチャンスが訪れるのを待たなければなりません。

岩壁を昇る羊の群れと牧童たち。スイス、ヴァレ州。


シバ神の神殿の前で、ぼんやりと鳩を見やる男性。ネパール。


民間療法に使用するヒルを探す女性。ネパール。

核兵器貯蔵施設を血に染めた、82歳の修道女 & 中国・三峡ダム完成と思わぬつまずき[米国ABC]

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「核兵器は適切に保管されているのか?!」

ジェニファー・アビー / アメリカABCニュース 8月2日

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アメリカ検事総局テネシー州東部事務所にABC放送が取材したところによれば、2人の男性と82歳の修道女が政府の関係者のみが立ち入りを許可されている、ウラン濃縮設備を持つ核兵器貯蔵施設に侵入し、人間の血液であたりを血に染めました。3人は複数の罪により刑事告発される可能性があります。

ネバダ州在住の平和活動家である82歳の修道女、ミーガン・ライス、ワシントンD.C.のマイケル・ヴァリ63歳、そしてミネソタ州ダルースのグレッグ・ボールティ・オーベッド57歳は、8月4日土曜日の午前4時30分ごろ、テネシー州オークリッジにあるY-12国家安全総合ビル内への不法侵入の嫌疑を受けています。

アメリカ連邦政府のビル・キリアーン検事は、より多くの罪状により刑事告発を受けるだろうと語りましたが、いちいちの罪状の中身については触れませんでした。
「この被告の一部には、アメリカ国内の他の核施設への侵入に関する前歴があります。」
と、キリアーン検事が語りました。
「今回の件は国家の安全に直接かかわる問題であり、近年では際立った事件となりました。」

今回逮捕されたのは『大地を穿つ改革者の会』のメンバーで、濃縮済みウランを貯蔵する『Y-12』ウラン燃料高濃度濃縮施設に侵入するため、4か所でフェンスに穴を開けて侵入しました。
施設のスポークスマン、スティーヴン・ワイアットによれば、彼らはスプレー缶を使って建物に聖書の一節をペイントした上で、人間の血を塗りたくりました。


アメリカ核安全機構のスポークスマン、ジョシュ・マッコナハは彼らは貯蔵されている核物質には一切触れていない、近づくことさえできなかった、と話しています。
『大地を穿つ改革者の会』は6日月曜日、ウェブサイト上で声明を発表し、核兵器が多くの人間の血を流させることを思い起こさせるために、人間の血を使ったと述べています。
「私たちの持つ人間性が、核・原子力による人間社会の支配、そして核戦争を拒否しています。その思いが、私たちを『Y-12』核貯蔵施設に連れて来たのです。」
「愛による平和の実現にかける信念、非暴力による抵抗運動の必要性の確信により、今回の行動を起こしました。『Y-12』施設が行っている行為は、過去も現在も、正すことが必要な誤りです。『Y-12』施設の能力を拡充するための、すべての試みはやめさせなければなりません。経済的にも、社会構造的にもその関わりを絶たなければ、この社会は常に戦争を必要とする、核・原子力が支配する帝国となってしまいます。」

ブラント郡にある刑務所への収監前、現在彼らが拘束されている場所で、ミーガン・ライス、マイケル・ヴァリ、グレッグ・ボールティ・オーベッドの3人、Y-12核施設の警備員にパンを与えました。

3人は月曜日、ノックスヴィルの地区連邦裁判所で連邦施設不法侵入容疑で告発されました。有罪判決が下されれば、3人の活動家は100,000ドル以下の罰金、1年以下の懲役を課せられる可能性があります。

今回の侵入を受け、Y-12施設の警備・管理を請け負っているB&W社は、セキュリティ体制の全面的な見直し作業に入っており、来週末まで続く見通しです。
この間、あらゆる核関連業務は中断されることになります。
そして警備員全員が再教育訓練を受け、警備マニュアルの内容も一新されることになりました。
「我々は施設の保安体制を向上させるため検討を行い、得られた結論を基に、警備体制を万全のものに仕上げていきます。」
Y-12施設のスポークスマン、スティーヴン・ワイアットが、ABCの取材に対しこう答えました。


アメリカエネルギー省の調査本部は、3人の具体的侵入方法について、検証を行っています。
「前代未聞の出来事です。」
ワイアットはこう語りました。
ワイアットによれば、今回侵入を受けた施設は2010年に建設されています。
この施設の規模はフットボール競技場以上の長さがあり、警備体制は万全のはずでした。
警備員の数は500名以上に上ります。

テネシー州ノックスヴィルにあるABC放送の系列局、WATEによれば、ヴァリは彼らが2010年にY-12複合施設で、連邦政府の管理区域を明確に区別するため表示している青い線を故意に横切ったかどで、昨年不法侵入の有罪判決を受けた10人の活動家のうちの1人でした。
「4日土曜日、拘束されている3人に面会して話をしました。反核活動をしている人々は皆、3人の行動に勇気づけられた、と話したら、自分たちがやりたいと思ったことをしたまでだ、という答えが返ってきました。釈放されたら、また同じような活動を続けると言っていました。」
エレン・バーフィールド(活動家の友人)が、WATEの取材にこう答えました。

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【巨大開発の行き着くところ 中国・三峡ダム】

アメリカNBCニュース 8月22日

三峡ダム近くの堤防を歩いて登る漁師
8月9日、中国湖北省宜晶市。


中国三峡ダムはその建設に17年間を要し、130万人の住民に移住を余儀なくしました。先月4兆7,000億円以上をかけた工事が完了しましたが、付近で巨大な地滑りが発生し、さらに数万人の住民の移住が必要になる事態となりました。
この世界最大規模の水力発電プロジェクトは、付近一帯の社会改革、環境整備を掲げて推進されました。
二度の移住を強いられた人々からの抗議は大きくはありませんでしたが、他の開発と比較してはるかに巨大なプロジェクトは、今年予定されている中国の指導部の交代に、影響を与えずにはおかないでしょう。

三峡ダム近くで発生した巨大地すべりにより、自宅の壁に入った亀裂を確認する住民。湖北省巴東市。


巴東市付近の揚子江を航行する船舶


三峡ダムの工事のため、強制移住させられた住民が暮らすはずだった新築のアパート群。巨大地すべりにより倒壊。湖北省巴東市。


移住した住民が暮らすアパートの建設現場に向かう作業員。湖北省巴東市。


三峡ダムから100マイルほど上流の揚子江の川辺で手を洗う住民。重慶市。


三峡ダム近くの揚子江で漁網を持つ漁師。湖北省宜晶市。

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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