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星の金貨 東日本大震災や音楽、語学、ゴルフについて語るブログです。

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【 人びとの健康・安全より、子供たちの未来より、金、カネを優先させた日本政府 】

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所要時間 約 10分

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人々の肺の中に、非常に微細な黒い塵のような物質、日本政府は、この物質の存在と影響を認めていない
始まった周辺の住民の方々の帰還、日本政府は事をあまりに急ぎ過ぎている
福島第一原発の事故では、『緊急時対応策』なるものが全くの役立たずであったことが証明された

アーニー・ガンダーセン / フェアウィンズ / アルジャジーラ 3月27日

今日は未だに収束を見ない福島第一原子力発電所の事故と、事故によって追いつめられ苦悩の続く避難民の方々の窮状について、フェアウィンズのチーフ・エンジニア・であるアーニー・ガンダーセン氏が、米国アルジャジーラとともに検証を行います。

アルジャジーラ:
それではガンダーセン氏とともにこの問題を考えていきましょう。
フェアウィンズ・エネルギー・エデュケイションのチーフ・エンジニアを務めておられるガンダーセン氏には、フロリダ州タンパからライブで参加していただきます。
フェアウィンズはエネルギー全般に関するコンサルティング組織です。
ガンダーセン氏はかつて原子力発電を行っている企業の上級副社長の経験もお持ちです。

アーニー、今日はご参加いただき、ありがとうございます。
福島第一原子力発電所の事故が発生してすでに3年が経過してしまいましたが、あらためて周辺の惨状に目をやった時、この場所はいったいどうなるのでしょう、そして被災者の人々の将来には何が待っているのでしょうか?
全てのものが元通りになるまでには、いったいどれ程の時間がかかるのでしょうか?

ガンダーセン : さて私の考えでは、福島第一原発から30キロ圏内の住民の方が元通りの形で戻ることは決してできません。
住民の方が携帯用の放射能の線量計を持ち歩いていることを確認できます。
しかし、この機器では放射線に関するすべての情報を正確に把握することはできません。
これまでの調査で人々の肺の中に、非常に微細な黒い塵のような物質が入り込んでしまっていることが確認されています。
しかし日本政府は、この物質の存在と影響を認めていません。
福島第一原発の周囲20キロ圏、30キロ圏のそれぞれの人々の身体の状況を確認することは非常に重要ですが、全容が明らかになるには数十年の歳月が必要になると思います。

アルジャジーラ抗議集会
アルジャジーラ
これまで避難を続けていた福島第一原子力発電所周辺の住民の方々の帰還が始まっていますが、日本政府は事をあまりに急ぎ過ぎているとお感じですか?

アーニー・ガンダーセン
そう判断せざるを得ません。
日本政府も東京電力もこれ以上の避難生活が続くことによる経費の増大にばかり目が行き、避難民の方々はかつての居住地について避難命令が解除され、それと同時に補償金がカットされれば、戻らざるを得ないという状況にあります。
補償金を受け続けるためには、放射線の残るかつての居住地に戻る以外の選択肢はありません。

安全な場所に留まり続けれは補償金が打ち切られ、補償金を受け取るためには危険な場所に戻らなければなりません。まさに行くも地獄帰るも地獄という言葉そのものの状況です。
故郷から遠く離れて暮らすことは辛いものですが、しかし放射線量の高い場所で生活することはさらに悪い状況に自らを追い込むことになります。

福島空撮・縦
アルジャジーラ
福島第一原発の事故について改めて考えてみて、世界中の原子力発電所は学ぶべきことを学んだと思われますか?

アーニー・ガンダーセン
福島第一原発の事故では教訓とすべきことが数多くありましたが、残念なことに教訓に基づく改革はそのほとんどが成し遂げられてはいません。
原子炉の冷却装置を止めてしまうほどの巨大な津波が、実際に発生しうることを私たちは身を持って体験しました。
しかしアメリカ国内にも、海岸沿いに原子力発電所が存在しています。しかしその発電所が津波対策を設備し終わるまでには10年という長い時間が必要です。

福島第一原発の事故では、原子力発電所が要していた『緊急時対応策』なるものが全くの役立たずであったことが証明されました。
ニューヨークからわずか20キロしか離れていないインディアンポイント原子力発電所はこれからも稼働を続けることになっており、私たちはこの発電所にも数多くの問題があることが解っていながら、その根本的解決は達成されてはいません。

廃炉12
アルジャジーラ
しかし原子力発電所の問題をすべて洗い出し、それらに対し根本的な解決策を講じるためには莫大な費用がかかります。
必要な改革の中でとりわけ長い時間を必要とする問題、そして莫大な費用を要する改革について、経営とどのようにバランスを取ってくべきだとお考えですか?

アーニー・ガンダーセン
金銭の問題にとらわれている限り、私たちは福島第一原発の教訓を学んだという事にはならないと思います。
いくら金と時間がかかろうとも、これらの対策を施さなければ、国土国民の大切な部分が軒並み台無しにされる事態は起こりうるのです。
それはチェルノブイリで現実になり、そして現在はフクシマで悲劇が続いています。
私たちの玄関先でフクシマやチェルノブイリの悲劇が起きないようにするためには、どんなに高額になろうとその対策を取らないわけににはいかないのです。

アルジャジーラ
それでは次に海洋汚染の問題についてお聞きします。福島第一原発から放出された放射性物質により、北半球の太平洋全域で魚貝類が汚染されているという報告がありますが、その脅威は現実のものなのでしょうか?だとしたら、どの程度の脅威が存在しているのでしょうか?

アーニー・ガンダーセン
そうですね、この太平洋岸に建てられた福島第一原発は、毎日太平洋に放射性物質を放出しています。毎日約400トンの汚染水が1,000日以上もの間、太平洋に流れ込み続けています。
流れ込んだ汚染水は莫大な水量の太平洋の中で薄められてきますが、最近なってアメリカ西海岸でも徐々に放射性物質が検出されるようになってきました。

汚染水タンク
私は現状に関して、太平洋岸の海で海水浴をしたり、海辺を散歩したりすることについては懸念する必要は無いと言ってきました。
しかし太平洋で獲れた魚介類については、州政府、あるいは連邦政府が放射性物質の量について広域にわたる調査を実施し、その結果を明確にしない限り、大きな懸念を抱き続けざるを得ません。

アルジャジーラ
今日はフェアウィンズ・エネルギー・エデュケイションのアーニー・ガンダーセン氏にご出演いただきました。大切な時間を割いていただき、ありがとうございました。

アーニー・ガンダーセン
こちらこそ発言の機会を与えていただき、ありがとうございました。

http://fairewinds.org/arnie-gundersen-al-jazeera-discussing-fukushima-anniversary/
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私事で恐縮ですが、12日土曜日仙台でトヨタ・マスタープレイヤーズ室内管弦楽団のコンサートがあり、ベートーヴェンやリヒャルト・シュトラウス、ヨハン・シュトラウスなどの音楽を堪能しました。
同楽団はウィーン・フィルのメンバーが各パートの首席奏者に座り、そこにウィーン交響楽団、ウィーン・フォルクスオーパーからのメンバーが加わって編成されています。
この日のコンサートマスターはウィーン・フィルのコンサートマスターのフォルクハルト・シュトイデ氏で、ソリストとして元ウィーン・フィルの首席クラリネット奏者のペーター・シュミードル氏が参加していました。

Wien
コンサートの開始前に3.11の犠牲者のために献奏が行われ、あのパブロ・カザルスの『鳥の歌』をメンバー全員で演奏しました。
今回の日本公演では仙台と岩手でのみ、この献奏が行われるようです。
もともとはスペインのカタルーニャ地方の民謡であった『鳥の歌』を、カザルスがスペイン内戦の犠牲者を悼んで編曲し、世界中で演奏したのは有名な話です。
演奏が始まって間もなく、演奏・音色の素晴らしさと3.11以降のこれまでの多くの思いが交錯し、私は涙が止まらなくなってしまいました。

やがて曲は、クロンマー、リヒャルト・シュトラウス、ベートーヴェンと移り、アンコールにヨハン・シュトラウスの『黄帝円舞曲』が演奏され、久しぶりに1分1秒が過ぎてゆくのが惜しいと感じる時間を過ごすことが出来ました。
特にヨハン・シュトラウスは自分の音楽体験の原点であり、ステージから2列目の席に家族とともに座っていた私は酔うような気持ちで演奏を堪能していました。

コンサートが終わった時、心の中で自分自身の3.11に初めて区切りがついたような気がしました。
しかし福島にとって、そして日本にとって、3.11は終わるどころか悪化している面さえあります。
この時代に生まれ合わせた人間として、できるだけの事をこれからしていかなければならない、あらためてその思いが強くなりました。

【 私たちが知らない4年目の福島第一原発、その真実の状況 】《後篇》

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どれ程効率的に電気を生み出そうと、原子力発電所は一夜にして人々の暮らしを破壊しつくした
原発建設の助成金、事故後の処理費用、いずれも納税者に負担の義務が回ってくる
政治がカネの力や原子力産業の政治力に大きく影響を受ける今、それを変えるのは私たち自身

アーニー・ガンダーセン / フェアウィンズ 3月12日

福島第一原発の事故において、私たちは何を学ばなければならないのでしょうか?

どれ程効率的に電気を生み出そうと、原子力発電は一夜にして人間世界を破壊し尽くす危険性を持っていることを私たちは経験しました。
フェアウィンズは福島第一原子力発電所の事故について、検証を繰り返してきました。

(以下の記事等をご参照ください)
【 40年続いた幻想を、粉々に打ち砕いたフクシマ 】

【 40年続いた幻想を、粉々に打ち砕いたフクシマ 】《第1回》[フェアウィンズ]


『進行中の福島の危機』、本当は何が起きているのか

『進行中の福島の危機』、本当は何が起きているのか《第1回》[フェアウィンズ]


【 放射線科学の世界的権威が明らかにする・日本の黒い塵、その正体 】

【 放射線科学の世界的権威が明らかにする・日本の黒い塵、その正体 】《第1回》[フェアウィンズ]


アメリカの除染の専門家が明らかにする、本当の汚染状況
【 人の手によって作られ、人の手により悪化していく福島の危機 】

アメリカの除染の専門家が明らかにする、本当の汚染状況【 人の手によって作られ、人の手により悪化していく福島の危機 】〈第1回〉[フェアウィンズ]


【 発生から2年、さらに明らかになる福島第一原発事故の真相 】

【 発生から2年、さらに明らかになる福島第一原発事故の真相 】〈第1回〉[フェアウィンズ]


【 福島第一原発で今も続く事故、そして危険、その真実 】

【 福島第一原発で今も続く事故、そして危険、その真実 】《第1回》フェアウィンズ

NBC福島02
原子力発電は一般納税者が支払っている税金の中から多額の助成金を受け取ることが出来る、経営する側には莫大な利益をもたらす事業です。
一方、一般国民は原子力発電のために税金を徴収され、危険と隣り合わせの生活を強いられ、万が一原子力発電所で事故が起きれば、その事故処理のためさらに多額の税金を徴収されることになるのです。

しかし世界各国のエネルギー事情は絶望的なものではありません。

ドイツは2022年までに既存のすべての原子力発電所を停止させるという勇敢な決断を行い、今後一切の原子力発電所建設を行いません。
ドイツは優れたエンジニアリング技術と経済に対する先見性が国際社会において高く評価されています。

ドイツの国民と政治家は、福島第一原発のような原子力発電所による巨大災害を引き起こして、その高い文化と生活水準を破壊してしまう危険を冒すよりは、安全で安定した未来を守るために、多少効率が悪くとも再生可能エネルギーによる電力供給の途を選択したのだと考えられます。

Gorleben04
ドイツは原子力発電を止めても、国家として問題なく機能できる、その実例を示すことになります。
そして尚原子力発電に頼ろうとしているアメリカ合衆国、フランス、日本、ロシアと中国に対し、後に続くべき指針を示すことになるでしょう。

環境保全、健全な経済、そして市民の生命と安全を守る、そのために社会を変えていくためには、私たち一人一人がそのための取り組みに参加する必要があります。
この世界の未来がどうなるかは、私たち自身にかかっているのです。

マギーと私、そしてフェアウィンズのチームは、これからも原子力発電とその危険性に関する正確な情報を適宜提供できるよう、努力してまいります。
その情報をあなたの家族や友人、できるだけ多くの人に伝えてください。

現在世界中の政府の方針が、カネの力、そして原子力産業の政治力に大きく影響を受けています。
この状況を変えるためには、あなたのような人が考え、行動することが必要なのです。

16日抗議集会02
詩人のジューン・ジョーダンがこう書いています。

『私たちが登場を待ち望んでいた人間、それは私たち自身なのです』

〈 完 〉

http://fairewinds.org/nuclear-power-profits-risks/
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折から安倍政権が「エネルギー基本計画」を閣議決定しました( http://mainichi.jp/select/news/20140411k0000e010226000c.html?inb=fa )。
フェアウィンズのこの議事を読んだ後にその事実を思い合せれば、次に私たちがしなければならないことは自ずと明らかでしょう。
誰も聞いていない感想を口にしても仕方がありません。
どうすれば現実が変わるのか、もちろん暴力や非合法の行為ではなく、自分を見つめなおし、現実の一歩を前に進めるための方策を考えていきましょう。

【 私たちが知らない4年目の福島第一原発、その真実の状況 】《中篇》

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人間の手によって作りだされた、人類がこれまで直面した中で最悪の産業事故
付近一帯の汚染をすべて取り去る作業は、今世紀中には終わらない
いったん環境中に放射性物質が放出されてしまったら、それを制御することなど不可能

アーニー・ガンダーセン / フェアウィンズ 3月12日

こんにち私たちがこの世界規模の悲劇について考えるとき、福島第一原子力発電所の3基の原子炉のメルトダウン、そして様々な形で放射性物質が環境中に放出される事態を引き起こしたものは天災ではない、という事をはっきりと認識する必要があります。
保険会社は天変地異については人間の手ではどうにもならない事から、『神のみぞ知る』という言い方をします。

しかし福島第一原発の事故は人間の手によって作られたものであり、人類がこれまで直面した中で最悪の産業事故なのです。

福島第一原子力発電所はそもそも設計・計画段階から欠陥を抱えていました。
そして内在する数々の危険性について根拠もなくそれを否定し、併せて今回のような事故が発生した際にきちんと機能する安全システムも存在していませんでした。

様々な事実に対する正確な認識さえあれば、福島の悲劇は防ぐことが出来たはずなのです。
しかし、まず企業が各自に利益を手にできるようにすることが第一義となり、世界の政治的思惑、そして近代技術に関する思い上がった考え方が加わり、まずはカネと権力の確立が優先されることになりました。
その結果何百年もの間福島県内の平和な場所で暮らしていた、農業・漁業従事者や住民の生活と健康が危険にさらされることになってしまったのです。

それでは2014年3月11日まで時間を進め、事故後3年が過ぎた福島第一原発では相変わらず危険な状態が続いているという事実に焦点を合わせましょう。

岡原10
福島第一原子力発電所自体、そしてそれを取り囲む福島県のすべての市町村、そして福島県沖の太平洋は、これまで人間が想像したことも無い程ひどく汚染されており、それを根本的に解決する手段を人類は持ち合わせていません。

福島第一原発の事故はこれからも人々の生命に脅威を与え、東京電力の社員と現場作業員に対しては数えきれぬほど多くの困難な課題を与え続けることになります。
そしてかつての住民たちは住む家を失ってしまうか、それとも海も生態系も汚染されたしまった環境の中に戻っていくか、そのいずれかを選択することを強いられています。

この3年の間の唯一の前向きな出来事は、東京電力が4号機の原子炉建屋にある使用済み核燃料プールから少しずつではありますが、計画的に核燃料アセンブリの取り出し作業を開始したことです。
一方、敷地内の膨大な数のタンク内に保管されている高濃度の放射能汚染水については、漏出事故を繰り返すなど予断を許さない状況にあります。
そして原子炉1~3号機の溶け落ちた核燃料とその場所に流れ込む地下水は、高濃度の汚染水を作り続けており、地中にしみ出した分については、太平洋への流れ込みが懸念されています。

そして世界中の専門家が最も懸念している問題があります。
東京電力は悪化し続ける環境汚染について、どのような有効な対策も取れないままでいます。
さらに見過ごせないのは空前絶後とも言うべき産業事故を引き起こした張本人でありながら、自然災害の被害者であるがごとく振る舞っていることです。

廃炉09
福島はこれから一体どうなるのでしょうか?

福島第一原発の敷地の下には汚染水により徐々に地下湖が形成されつつあり、そこから太平洋に汚染がしみだしていく現象は今後100年間は続くと考えられます。

事故収束・廃炉作業には数十年の歳月がかかりますが、付近一帯の汚染をすべて取り去るにはそれ以上の年月が必要であり、おそらくは今世紀中には終わらないでしょう。

ところで、福島第一原発の事故はなぜ世界規模の巨大災害に発展したのでしょうか?

事故がここまで最悪の状態に陥った原因は、日本政府が国民や滞在者では無く東京電力という組織の救済を優先した事、そしてその企業利益を守ろうとしたこと。
そして人々の将来の安全や生活、作物栽培の安全、食の安全よりも、原子力産業界がすでに着手していた計画の達成を保護することを選んだことにあります。

フェアウィンズが3年間訴え続けてきたこと、日本政府は真剣にその実行に着手する必要があります。

1. 事故収束・廃炉作業現場から東京電力を締め出すこと。そして今回の事故により日本がどれ程の財政的被害を被り、放射能汚染がどれ程ひどいものであるかを、国民に対し包み隠さず明らかにすることが必要です。

請戸04
2. 日本の国民は福島第一原発の事故収束・廃炉作業の費用を、数世代に渡り支払い続けなければならない事を正直に認めなければなりません。

3. そして、地震が多発する島国である日本の脆弱な地質学的構造を考慮すれば、安倍政権は欠陥の多いリスク・アセスメントと事故が発生した際の機能に疑問がある安全基準に基づいて日本国内の50基の原子炉の再稼働を認めるべきではありません。
いったん環境中に放射性物質が放出されてしまったら、それを制御することなど不可能なのです。

〈 後篇につづく 〉

http://fairewinds.org/nuclear-power-profits-risks/

【 私たちが知らない4年目の福島第一原発、その真実の状況 】《前篇》

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福島第一原発の本当の状況について、きわめて貧弱な情報しか提供されていない
福島第一原発の設計、それは第二次世界大戦後のアメリカの産業技術を支配していた傲慢さの現れ
メルトダウン・メルトスルーから使用済み核燃料プールの火災へ!国の破滅が眼前に迫っていた3.11

アーニー・ガンダーセン / フェアウィンズ 3月12日

3基の原子炉が同時にメルトダウンするという、人類が初めて経験した巨大事故が福島第一原子力発電所において発生してから3年という月日が経ちましたが、この間福島第一原発は今いったいどういう状況にあるのか、きわめて貧弱な情報しか提供されてきませんでした。
カネ、権力、そして科学技術に関する傲慢さは、日本国内はもちろん北半球で暮らしている人々の生活や生命、健康よりも常に優位に立ち、この間福島第一原発からは途切れることなく放射性物質が放出され、環境中のいたるところに入り込んでしまいました。

福島第一原発の事故は産業事故の歴史において、最悪の例を作りだしました。

福島第一原発の原子炉を廃炉にし、発電所そのものを解体し去るには数十年の歳月を要します。
そしてこの地一帯の汚染の解消は21世紀だけでは終わらず、どんなに早くても22世紀までずれ込むことになるでしょう。
今回はアーニー・ガンダーセンが、事故から3年が過ぎた福島第一原子力発電所の真実の状況について、分析を行います。

☆☆☆  ☆☆☆  ☆☆☆  ☆☆☆  ☆☆☆

フェアウィンズのアーニー・ガンダーセンです。
人為的な要因が重なり、福島第一原発の3基の原子炉をメルトダウンさせる事故が起きてから3年の月日が過ぎましたが、この間提供された情報というものは本当にわずかなものでした。

なぜこのような悲劇が起きてしまったのでしょうか?
関係する世界各国の政府は、この事故の計り知れない影響の大きさについて口を閉ざし続けています。
そし多くの大手メディアが真実の隠ぺいに加担している現在、数多くの疑問と質問が電話、電子メール、そして手紙によってフェアウィンズに寄せられ続けています。

4号機建屋
主要な事故収束作業はもう終わったのでしょうか?

日本の人々、特に子供たちの安全は確保されているのでしょうか?

避難を強いられていた人々は、自宅に戻ることが出来たのでしょうか?

海は汚染されなかったのですか?

残念なことに、答えはすべて『ノー』です。

そしてもう一つの疑問、今後福島県全域、そして日本はどういうことになるのか?
その大きな問題が残されているのです。

それではまず、3基のメルトダウンの引き金が引かれてしまった時点に立ち返ってみましょう。
福島第一原発の建設が始ろうとしていた1966年当時、設計を行っていたアメリカのゼネラル・エレクトリック(GE)社は後の福島第一原発を運命づける、ある重要なデザイン上の決定を行いました。

GE Mark 1
日本の地震のおよび津波の専門家からの抗議にも関わらず、GE社は福島第一原発の建設予定地であった崖の上の台地を、海抜約8メートルの高さにまで削り取ることを決定したのです。
当時GE社は、日本で津波が引き起こした数々の災害の歴史について把握しており、この点についての知識を持つ科学者はGE社の決定に異議を唱えました。
しかしGE社はこの意見を退け、崖を削り取り、代わりに高さ5メートルの防潮堤を建設することにしたのです。
日本の2千年に及ぶ歴史には、太平洋岸に押し寄せる津波が40メートル前後の高さに達する可能性がある事が記されていましたが、GE社はその可能性を排除してしまったのです。

なぜ、GE社はそのような決定をしたのでしょうか?
私はその場にいたわけではありませんが、おそらくは福島第一原発の建設、そして完成後の運営費用を削減することが目的であったと考えています。

その決定は、第二次世界大戦後のアメリカの産業技術を支配していた傲慢さの現れでした。
アメリカは第二次世界大戦において、シンプルなデザインの兵器や車両を大量生産する物量作戦によって勝利を得ました。
アメリカの産業界の技術者たちは、この考え方があらゆる問題の答えになると信じていたのです。
彼らは日本人に対して、原子力の平和利用という考え方の普及に乗り出し、広島、長崎の悲惨な体験と原子力発電を切り離すべく大々的にキャンペーンを始めました。

113006
福島第一原子力発電所の事故は2011年に安全管理の問題が突然に引き起こしたものなどではないのです。
1号機のメルトダウンが証明して見せたように、世界中の原子力監督・規制機関は、ゼネラル・エレクトリックのマーク1型沸騰水型原子炉が、操作が複雑で、安全上も問題がある事を把握していました。

それでは高さが15メートルの津波が福島第一原発を襲った2011年3月11日に移動しましょう。

日本の科学者が1960年代にその到来を恐れた巨大津波は、高さが5メートルの防潮堤を楽々と乗り越え、東北の太平洋岸に建設された福島第一原発に殺到しました。
原子炉の冷却ポンプが破壊され、非常用の電源装置も全く稼働できなくなました。
冷却水が無くなった原子炉を待つものは、破滅でしかありませんでした。

稼働中の原子炉1号機、2号機、3号機が次々と爆発し、北半球全域に向けて放射性物質を噴き上げました。

溶けた核燃料が圧力容器、原子炉格納容器の底を突き破るメルトスルーが起き、原子炉がある地上・地中一帯が取り返しがつかない程汚染されてしまいました。

稼働中の他の3基とは異なり原子炉の炉心が外に取りだされていた状態の4号機原子炉建屋でも爆発が発生、ここでは使用済み核燃料プール内の水が大量に蒸発し、大量の核燃料火災発生の直前にまで至りました。

1号機爆発
4基の原子炉の爆発によって環境中に放出された放射性セシウム、ストロンチウム、放射性ヨウ素、そしてホットパーティクルは東日本・北日本全域に拡散しましたが、折から吹いていた北西風によって海上に運ばれ、その結果これらの放射性物質が北半球の全域で観測されることになりました。

〈 つづく 〉

http://fairewinds.org/nuclear-power-profits-risks/
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これまでご紹介してきた海外の報道によって、福島第一原発の状況が私たちの想像をはるかに超えるひどい状況にある事が伝わってきました。
ただ海外報道の場合、想定している読者は飽くまでアメリカ国民、英国国民であるため、実情が事細かに記されている訳ではありません。
それを伝えているのが東京新聞や河北新報などの『地方紙』の頑張りです。
今日も下記の記事を読んで、これまで英国のガーディアン紙やアメリカNBCニュース(ロイター通信)などが集中的に伝えてきた福島第一原発の作業員の問題が、私たち自身の身に迫る危険な問題だという事を痛感しました。
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201404/20140410_63010.html
原発推進を標榜するY新聞やS新聞、そしてニューヨークタイムズが伝えたように( http://kobajun.biz/?p=16429 )安倍政権に浸食されてしまったNHKなどには期待しようのない地方紙の切実な報道に、私たちは目を向ける必要があると思います。

【 福島第一原発によって暮らしを築きあげ、福島第一原発に家庭を奪われた人々 】

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友人たちも近所の人々も、そして子供たちも、もう戻っては来ない

ロイター通信 / アメリカNBCニュース 4月1日

都路町帰還01
福島第一原子力発電所の事故発生からちょうど3年が経過した4月1日火曜日、これまで避難生活を強いられていた福島県内のごく一部の住民が、除染作業の完了とともに自宅への帰還を許されることになりました。

今回、福島第一原発の内陸側にある田村市都路町の住民たちが故郷に戻ることは、2011年に発生した巨大原子力発電所事故の復旧作業の中の、こぐ小さな一歩を進めることでしかありませんが、帰還を果たす357人のかつての都路町の住民にとっては、その人生におけるきわめて大きな出来事になります。
しかし帰還者の姿には、緑に囲まれた懐かしい村落に戻りたいという心からの願いと今後通常の生活を取り戻せるかどうかの不安、その相克に悩む様子が浮き彫りになっています。

都路町帰還02
「私たちの友人たちも、ご近所の方々も、その多くはもう戻ってこないでしょう。」
夫の俊夫さん(72歳)がテレビアンテナを屋根に取り付ける作業を行っている傍らで、69歳の小山君子さんが50年間農家を営んできた、大きな家屋に戻ってきた感想についてこう語りました。
「ここにはもう仕事がありません。本当に困った事です。若い人たちは放射線を恐れて戻ることをためらっています。」
「私たちの娘も放射線を恐れて、孫たちをここには連れてきません。」

都路町帰還03
何台ものテレビ局の取材車両が待ち構える中、町に入って来た車両は数台を数えるのみでした。
私たちも数名の初老の女性が道のそばに座っているのを見かけましたが、子供たちや家族連れの姿は見当たりませんでした。

学校は今週後半に再開する予定です。
地元の幼稚園には新たに7名が入園、年長組には4人の子供たちが通園することになっています。
この日に備え、東京電力職員のボランティアが園庭の除雪や地ならしをしてきました。

2月一カ月間の空間線量は、毎時0.11マイクロシーベルト~0.48マイクロシーベルトの間でした。
この値は3月31日に東京都内の放射線量毎時0.034マイクロシーベルトよりは高い値ですが、アメリカコロラド州のデンバーの毎時約0.2マイクロシーベルトの空間放射線量とほぼ同じレベルです。

都路町帰還04
東京・ニューヨーク間の民間航空機に登場した場合、乗客は毎時約10マイクロシーベルトの被ばくをすることになります。
世界保健機構(WHO)は、一般的に累積被ばく線量が100ミリシーベルト(100,000マイクロシーベルト)を超えると、ガン発生の確率が高まる可能性があると報告しています。

福島第一原発の事故が発生する以前、都路町の人々に働く場所を提供し、安定した収入をもたらしていたのはほかならぬ東京電力であり、福島第一原発でした。
その事実は、今回の帰還の背景を複雑なものにしています。

「福島第一原発は私たちが外で働ける唯一の場所でしたし、私たちは仕事がある事に感謝していました。」
小山君子がこう振り返りました。
「私たちは3人の娘たちを食べさせるために、一生懸命に働きました。私たちは働いて働いて、この場所で自分たちの人生を作り上げてきたのです。」

都路町帰還05
小山さんたちもその建設のために懸命に働いた福島第一原子力発電所は、やがて巨大事故を引き起こし、小山さん一家全員を自宅にいられなくしてしまいました。

今福島は県を挙げて復旧と復興に取り組んでいますが、多くの場所が放射能に汚染されたがれきが散乱し、誰も住めない土地になってしまっているのです。

http://www.nbcnews.com/storyline/fukushima-anniversary/fukushima-families-return-homes-hot-zone-n68621
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短い記事であり、強い非難を込めたメッセージなどはありませんが、人間にとって原子力発電とは何なのか、その一端をえぐり出しています。
自分たちの生活を豊かにしてくれていたはずの原発、その原発が自宅も故郷も奪ってしまった。
皮肉というにはあまりに過酷な結末です。

放射線による『健康被害の実際』について、福島第一原発の作業員の方のような驚くべき報告が下記にあります。
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201404/20140409_63009.html
記事中ではこの症状を放射線によるものとは断定していませんが、私個人はどう見ても放射線被害によるものとしか考えられません。
このシリーズの今後に注目したいと思います。

明日10日(木)は掲載をお休みさせていただきます。
新しい記事のご紹介は11日(金)に掲載いたしますので、よろしくお願いいたします。

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【 3月27日~4月3日の世界 】

アメリカNBCニュース 4月4日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

week05
4月2日、アレッポ市内の病院で泥と血にまみれたまま、治療を待つ女の子。シリアの市民活動家によれば、バシャール・アサドの政府軍が投下した爆弾により負傷しました。(写真上)

【 開始された自宅への帰還、拭いきれない懸念と望郷の思い、そして福島第一原発で続くトラブル 】

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人類始まって以来の事故・3基の原子炉のメルトダウン、その影響の巨大さ

エアン・マッカーディ / アメリカCNNニュース 4月1日

保育所屋内遊戯施設
世界最悪の原子力発電所事故のひとつであり、3基の原子炉がメルトダウンするという前代未聞の事故が起きたのは、日本の東北地方にある福島第一原子力発電所でした。
その周辺で暮らしていた数百名の住民の帰還が、事故後3年が過ぎて初めて許されることになりました。

3月11日に襲った巨大地震と巨大津波が重要な設備である原子炉冷却システムを破壊し、福島第一原発の3基の原子炉でメルトダウンする事故の発生により、福島県田村市都路町に堕されていた避難命令が、3月31日深夜、日付が4月1日に変わると同時に解除されました。
都路町の除染作業の完了を受け、これまで避難場所で生活することを余儀なくされていた住民たちが、再び自宅で暮らすことを許されることになりました。

東北太平洋沖地震の揺れと、その後に発生した津波は1986年のチェルノブイリの事故以降最悪となる原子力発電所事故を引き起こしました。
3基の原子炉がメルトダウンするという人類始まって以来の事故に拡大、その結果周辺住民140,000人が未だに批難を強いられたままとなっています。
138,000人の避難民が仮設住宅暮らしを強いられ、いくつもの市、町、村が高い放射線量のためゴーストタウンとなったまま放置されています。

NBC22
「私たちは都路町以外の住民の方々の帰還もかなうよう、最大限の努力を続けています。私たちは住民の方々の支援と除染作業を一層強く推進すべく、努力を続けています。」
CNNの取材に対し、東電スポークスマンがこのように語りました。

▽ あらゆる制限が解除される

月曜日に行われた避難指定解除は、福島第一原発に近い場所としては最初の例になりました。
都路町は福島第一原発から20キロの場所にあり、最初に設定された避難区域の端の部分にあたります。
避難指定の解除に先立ち、避難区域の常民の一部は事前の届け出を条件に、夜間の宿泊を許されていました。
除染が完了したと判断された場所は、今後一切の制限が解除されることになります。

都路町の全116世帯のうち、355人の居住者は以後恒久的に自宅での生活が許可されることになりました。

しかし田村市は居住制限が続く11市町村のうちの一つに過ぎず、都路町はさらにその中の一部分に過ぎません。

▽ 放射線に対する懸念

しかし事故以降、福島第一原発を運営する東京電力がこれまで報告を続けてきた放射線量を見る限り、環境中における放射線量、そしてその値が今後どう推移するかという点については懸念が続きます。

汚染05
先月、都路町の住民たちは説明会場で地区の放射線量が今日中しても安全なレベルにまで下がったと告げられました。
しかし除染が完了したとされる町内の複数の地区について住民の口からは、現在の放射線量については不安が残るという本音も漏れました。

住民の一人は取材に訪れたNHKに対し、
「はい、私は少し心配しています。でも今はそれよりは安心する気持ちの方が大きくなりました。それに何と言っても私の自宅はここにしかないのですから…」

現在の日本の基準では、1年間の累積放射線量が20ミリシーベルト以下であれば、居住しても安全だとされています。
しかし除染を担当する政府当局者は、可能なら年間線量が1ミリシーベルト以下に留まるようにしたいものだと語りました。

この間、福島第一原発の現場では事故収束・廃炉作業が続けられてきましたが、汚染水やその他の汚染物質の漏出問題が相次いで明らかになり、決して順調とは言えません。

汚染水タンク01
東京電力の発表によれば、今年の初めにも約100メートルトンの高濃度汚染水が、汚染水を貯蔵しているタンクが立ち並ぶ一帯を取り囲んでいる堰を乗り越えて溢れだし、辺り一帯を汚染する事故が発生しました。
この事故において、東京電力は汚染水の太平洋への流れ込みについては否定しました。

http://edition.cnn.com/2014/04/01/world/asia/fukushima-miyakoji-return/index.html?hpt=ias_c2
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【 岡原功祐がとらえた福島の印象 】〈2〉

ニューヨーカー 4月1日
(掲載されている写真をクリックして大きな画像をご覧ください)

岡原6
3月28日金曜日、福島第一原発の敷地内で身元不明の労働者が生き埋めになって死亡しました。
2011年3月に事故を起こして以来、絶える事無く続く事故収束・廃炉作業で初めての死者が出た事になります。

東京の33歳のカメラマン、岡原功祐氏は福島第一原発の事故発生後数週間の内に現地を訪れましたが、その場所は1986年に巨大事故を起こしたチェルノブイリに次いで高い放射能に汚染されていました。
岡原氏はこの3年間ほぼ毎月福島を訪れ、事故後の福島第一原発事故後の記録を撮り続けてきました。
「私がこの間繰り返し会い続けた何人かの農民と漁師がいます。」
岡原氏はこう記しています。
「この3年間、彼らの生活はこの場所の自然や景観同様、ほとんど何も変わっていません。
福島に戻って彼らと会う機会が増えれば増える程、福島の人々の生活がこの3年間ほとんど何も変わっていない事を記録する事が、とても大切だと感じるようになりました。」

掲載されている写真は、岡原氏が今年3月福島を訪問した際、iPhoneを遣って撮影したものです。

仮設の保育所の屋内遊戯施設(写真上)

いわき市内の仮設住宅で独り暮らしを強いられる90歳の男性(写真下・以下同じ)
岡原7
富岡町の放棄された水田
岡原8
富岡町の寺院の参道沿いの倒壊した石燈籠
岡原09
原発事故後、政府によって閉ざされたままの富岡町の入口。
岡原10

【 日本の六ヶ所村再処理工場、脅かされる日本の原子力関連施設 】〈4〉

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原子力発電に対する国民の抵抗の拡大を恐れ、問題の所在を隠し続けた日本
福島第一原発の事故収束現場に入り込んだ暴力団、六ケ所は無縁でいられるか

 

ダグラス・バーチ、ジェフリー・スミス、ジェイク・アデルスタイン、センター・フォア・パブリック・インテグリティ(公正中立の社会正義) / アメリカNBCニュース 2014年3月11日

六ヶ所村
▽ 日本国内の原子力(核)関連施設に対する脅威、それは本当に存在しないのか?

六ヶ所村再処理工場を実際に運営することになる日本原燃の吉田薫報道部長は、福島第一原子力発電所の事故の後、メディアの取材に対し挑発的な発言を繰り返した東京電力の広報部長その人です。
吉田部長はたとえわずかではあっても六ヶ所村再処理工場の職員がプルトニウムを持ち出すなどと言う事はあり得ないと断言しました。
「私は断言します、ここの職員がプルトニウムを外部に持ち出すなど絶対にありえないと。」

そして吉田部長はテロリストが六ヶ所村再処理工場をターゲットにするという考え方そのものにも疑問を呈し、そこにあるプルトニウムとウラン廃棄物からの核爆弾製造は不可能だと主張しました。

「六ヶ所村再処理施設にあるプルトニウムはウラン廃棄物の中に混ぜ込まれた状態にあり、現在のセキュリティ・レベルを考えれば、ここには実質的にプルトニウム自体は存在しないのです。」
吉田部長はこう語りました。
「ここにはプルトニウムなどありません。」

しかし独立した専門家は、2つの核物質を混ぜあわせても、プルトニウム酸化物が爆弾燃料として使われる可能性をいささかも減らすことはないと語りました。
アメリカ原子力規制委員会の委員長を務めたポール・ディックマン氏は、核爆弾製造に使われる場合が多い純度の高い金属プルトニウムとウラン・プルトニウム酸化化合物との違いは、そこに(分離抽出作業ができる)科学者がいるかいないかだけの違いだと語りました。
「ウラン・プルトニウム酸化化合物からプルトニウムだけを抽出することは、さほど困難な作業ではないのです。」

Gorleben貯蔵所
福島第一原子力発電所の事故の後、日本国内の原子力関連施設について、より厳格な安全基準の適用と審査を目的として設立された原子力発電所の杉本伸正原子力防災課核物質防護室長は、六ヶ所村再処理施設の危険性について、日本原燃の吉田広報部長程は楽観的ではない見方をしています。

日本国内の原子力(核)関連施設に対するテロ攻撃の潜在的危険性について、杉本室長は次のように語りました。
「いつでも起こりうるものと考えています。」

杉本室長は原子力規制委員会が一年前にまとめた報告書の中で、体に入れ墨施したヤクザとして世界的にも有名になった暴力団が、日本の原子力産業につながりを持っているという事実に懸念を抱いていると語りました。
彼らは政府が資金を拠出して行っている福島第一原発周辺の除染作業を担当する数百の下請け企業の中に入り込み、労働者を現地に送り込んでいます。

杉本氏によれば、当局が懸念しているのは、核物質を取り扱う場所にこうした労働者が入り込めば、テロリストと共謀して核物質を盗み出すことが可能になり、さらにはテロ攻撃の手引きを務めることも可能性として出てきます。

一方で杉本氏は、六ヶ所村再処理工場の警備員を武装させる可能性については、ほとんどないと語りました。
「それはアメリカのように、力には力で対抗するという文化に基づく考え方です。日本の原子力(核)関連施設を守るのは警備員ではあっても、警官でも自衛隊員でも無い一般市民である以上、武器を携行する事無く施設を守るように求められるのです。」

原発の警備員
六ヶ所村再処理工場同様武器を持たない警備員しかいない施設が、武装グループに襲撃されたらどうなるのでしょうか?
この質問に対し、杉本氏は
「生命の危険が生じた場合には、警備員は警察に通報するよう訓練を受けています。」

2011年、福島第一原発の事故が発生した際首相を務めていた菅直人氏が、『センター・フォア・パブリック・インテグリティ(公正中立の社会正義)』のインタビューに答え、今や日本の核燃料サイクル計画については止めるべきいくつもの理由が明らかになっており、菅氏自身も中止を求めているが、現在の日本政府と産業界は、飽くまで当初の計画の推進にこだわり続けており、その事に大きな懸念を持っていると語りました。

菅氏は民主党の国会議員であり、日本が原子力発電を止めるよう求めている数名の首相経験者の中のひとりです。
しかし日本の原子力発電の廃止は実現には程遠いのが現状です。

首相当時、菅氏は福島第一原発の事故が発生する以前、アメリカに出張し原子力(核)関連施設に対する脅威について米側と検討を行った、当時の原子力安全・保安院の官僚たちに報告を求めました。
原子力安全・保安院は日本国内で強力な権能を持つ経済産業省にあって、原子力産業界を守るための牙城であったことが、福島第一原発の事故後明らかになりました。

「彼らは日本では、原子力(核)関連施設に対するテロの可能性は無い、単純にそう信じ込んでいました。」
菅氏は原子力安全・保安院の官僚たちが、結局何ら得るところ無く出張から戻って来たと付け加えました。
「確かにアメリカはテロの脅威にさらされているかもしれませんが、日本にはその恐れはほとんどありません。」
これによって菅氏は、原子力安全・保安院が日本の原子力(核)関連施設をテロの脅威から守る必要性を全く考えていないことを知ったのです。

菅氏はこうした態度は日本政府、日本の原子力産業界に広く共有されていると語りました。
その結果、9.11テロ攻撃を受けたアメリカが、日本側にも警戒を求めるアドバイスを行った際、それを「ほとんど完全に無視」する結果につながったと語りました。

「それで結局、結局日本の原子力(核)関連施設のテロ対策はどうなっているのだ?あなた方はそのように尋ねたいことでしょう。その答えはこうです、テロに対する対策はとっていません。」

 

〈 完 〉

http://www.nbcnews.com/storyline/fukushima-anniversary/japans-well-placed-nuclear-power-advocates-swat-away-opponents-n50396
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【 岡原功祐がとらえた福島の印象 】〈1〉

 

ニューヨーカー 4月1日

岡原1
3月28日金曜日、福島第一原発の敷地内で身元不明の労働者が生き埋めになって死亡しました。
2011年3月に事故を起こして以来、絶える事無く続く事故収束・廃炉作業で初めての死者が出た事になります。

東京の33歳のカメラマン、岡原功祐氏は福島第一原発の事故発生後数週間の内に現地を訪れましたが、その場所は1986年に巨大事故を起こしたチェルノブイリに次いで高い放射能に汚染されていました。
岡原氏はこの3年間ほぼ毎月福島を訪れ、事故後の福島第一原発事故後の記録を撮り続けてきました。
「私がこの間繰り返し会い続けた何人かの農民と漁師がいます。」
岡原氏はこう記しています。
「この3年間、彼らの生活はこの場所の自然や景観同様、ほとんど何も変わっていません。
福島に戻って彼らと会う機会が増えれば増える程、福島の人々の生活がこの3年間ほとんど何も変わっていない事を記録する事が、とても大切だと感じるようになりました。」

掲載されている写真は、岡原氏が今年3月福島を訪問した際、iPhoneを遣って撮影したものです。

いわき市の見張り台(写真上)

2011年浪江町から避難し、現在は本宮市で農業を営む男性。(写真下・以下同じ)
岡原2
福島第一原発のある双葉町から避難した女性。
岡原3
仮設住宅
岡原4
仮設住宅内の保育所の脇に設置されたモニタリングポスト
岡原5

【 日本の六ヶ所村再処理工場、脅かされる日本の原子力関連施設 】〈3〉

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結局日本の原子力行政は、電力会社・原子力関連企業のなすがままを追認しているに過ぎない
幹部の大量逮捕後も、日本の原子力関連施設の『調査・研究』を続けていたオウム真理教
数年間、東京がアルカイダの攻撃目標のひとつになっていたことを知らなかった日本当局
六ヶ所におけるプルトニウム製造を間近に控え、原子力(核)関連施設の防衛体制の見直しは急務

 

ダグラス・バーチ、ジェフリー・スミス、ジェイク・アデルスタイン、センター・フォア・パブリック・インテグリティ(公正中立の社会正義) / アメリカNBCニュース 2014年3月11日

六ヶ所村
現在の日本の原子力発電所の警備体制も10年前のものと大差はないと、オバマ政権の担当者が匿名を条件に(外交上のやり取りは微妙な問題であるため)インタビューに応えました。
彼は福島で発生した壊滅的な事態は、何の装備も持たない民間警備会社程では無かったものの、日本の警察と軽装備の海上保安庁は、二義的な役割しか果たすことが出来なかったと語りました。

結局日本の原子力行政というものは、電力会社や原子力関連企業のなすがままを追認しているに過ぎない、彼はそう指摘しました。

日本では最近、六ヶ所村再処理工場を含む原子力関連施設で、テロ攻撃を想定した訓練を実施し、一部のアメリカ人がその様子を見学しましたが、アメリカ側がその訓練が
「事前に準備された、マニュアル通りの展開だった」と語り、あれではどんな侵入者も撃退できないと語りました。
「原子力関連施設であまりに本格的な訓練を行なえば、一般国民の不安と懸念をかきたてることになることを、何より恐れているのです。」

ジョン・トーマス・シーファー氏は2005~2009年駐日大使を務めました。
彼は原子力関連施設の警備について日本がなぜ武器を携帯しないことにこだわるのか、その歴史を振り返ることで説明できるかもしれないと語りました。

第二次世界大戦中、大日本帝国政府は国民の監視を目的に、世界的に悪名高い憲兵隊を含む大規模な国内諜報網を作り上げ、その行動や思想について事細かに調べ上げました。
「日本人には、戦争中の警察国家に後戻りしたくないという強烈な思いがあるのです。」
シーファー元駐日大使がこう語りました。
「戦争中、日本人は国家とはどうあるべきかという事などを口にしただけで、死刑や死に至るまで拷問されるなどの悲惨な目を強いられる、そんな時代を経験させられたのです。」

もんじゅ02
2000年代に東京で勤務したもう一人の元アメリカ国務省の官僚は、
「彼らの考え方の根底にあるのは、国家の秩序が問題なく保たれているという見方です。かられは島国に住み、敵対勢力などと呼ぶべきものも国内には存在しません。」
「原発その他の原子力関連施設についても、我々アメリカ人とは全く別の観点でとらえているのです。」

▽ 平和主義的文化

しかし、日本もテロと無縁であったわけではありません。
1970年代、日本赤軍を名乗るグループは何度か大型旅客機のハイジャックを行い、1972年には3人の実行犯がイスラエル、テル・アビブのロッド空港で攻撃を無差別発砲事件を引き起こし、26人を殺害しました。
別の好戦的なグループは、1984年、実質的に日本を支配する自由民主党の東京本部に向け手製の火炎放射器を発射しました。
その1年後には東京の羽田空港に対し迫撃砲を発射しました。
1997年に先進7カ国蔵相会議が東京で開催された時には、皇居と米大使館に対して自家製のミサイルを発射しました。

しかし史上最も危険であったのは、核兵器の所有すら目指した、終末論を唱える宗教団体、オウム真理の脅威の長期にわたる存在でした。
教団の導師麻原彰晃を信奉する信者たちは、旧ソビエト連邦の核兵器を購入し、武器開発に携わった科学者を金で仲間に引き入れるべくロシアに旅立ちました。
この件の調査報告書は、オウム真理教が核弾頭購入のために、当時の金額で15億円を用意していたことを明らかにしています。
1993年にはオーストラリアで羊牧場を購入し、そこで25人の信者は核爆弾を製造するためウランを採掘しようとしました。

Japan Plutonium
これらの計画はすべて失敗に終わると、麻原は生物・化学兵器の製造に方針を変更しました。
1995年最終的に麻原は13人を殺害、6,000人以上を傷つけた東京の地下鉄内でのサリン神経ガス攻撃を命じました。
麻原は現在、刑務所内で処刑を待つ身です。

幹部の大量逮捕後も、残ったオウム真理教の幹部が日本の原子力産業の調査・研究を続けていたことが解っています。

2000年に警視庁が明らかにしたところでは、オウム真理教はハッカーと手を結び、各原子力発電所の核燃料搬入のスケジュールを手に入れ、高速増殖炉もんじゅの冷却システムの研究を行い、原子力関連事業に携わった75人の研究者の人事ファイルを作っていました。

前の海軍省長官で現在は4名で構成されるオバマ大統領の情報顧問委員会のひとりであるリチャード・ダンツィヒ氏が2011年に作成した1通の報告書に次の記述があります。
「オウム真理教の資源に関する警察の追求は、著しく不十分なものであった。」
この狂信者の集団は、日本のプライバシーと信教の自由を保護する法律により詳細な捜査を免れ、警察当局は逮捕された幹部以外は、オウムの信者について単に無害な変人の集団に過ぎないと結論したのです。

2003年5月にアメリカ当局に逮捕されたテロリストのハーリド・シーク・モハメドは、成田空港で大型旅客機をハイジャックし過密都市東京の中心部にあるアメリカ大使館に自爆テロを行う計画のため、実行犯の獲得に動いたことがある事を自白しました。
シーファー元駐日大使は、機密情報の取扱い規則により、この情報はハーリドの自白調書が公開される2007年3月まで、東京がアルカイダの攻撃目標のひとつであることを日本側には伝えていなかったと語りました。
「初めてその事実を知った時、日本人は大いに動揺することになったのです。」

廃炉01
アメリカ側の度重なる余生にもかかわらず、日本は長い間、原子力発電所に迫る脅威に関する機密情報を共有するために必要な国内での手続きを進めることに抵抗を示していました。
これはウィキリークスが暴露した別の外交文書により、原子力発電に対する一般国民の抵抗が大きくなることを日本側が恐れていたためだったことが明らかになりました。

日本の外務相の核拡散防止担当の小溝康義氏は、2008年に訪日した米国エネルギー省の代表団に対し、日本側が懸念している点について次のように語ったことが本国への電報で伝えられました。
「たとえば、原子力関連施設に対する脅威が国内に存在すると公表した場合、一部の人々の存在そのものが問題なのだと、とられかねないのです。」

日本では昨年12月、安倍首相が強く主張して特定秘密保護法が議会で可決されました。
しかしアメリカ側の懸念が払しょくされることにはなりませんでした。

この10年間アメリカ政府は日本政府に対し、決して脅すような調子では無く『極めてフレンドリーに』日本国内の原子力関連施設の警備を強化するように助言を続けてきたと、オバマ政権の当局者幹部が語りました。
「日本の原子力(核)関連施設には、米国のそれにあるような武器防衛システムがあるでしょうか?確信をもって言えますが、日本にはありません。そこにいるのは全員が一般人であり、準軍事的行動をするのではなく、求められているのは法の執行者としての任務です。」
「これまでのところ、日本のこうしたやり方が誤りであることを証明する事件等は起きてはいません。」

「しかし、私たちはあえて尋ねる必要があります。『本当にこのままの状態で、危険を回避できるのか?』と…」

特定秘密 2
六ヶ所村再処理工場におけるプルトニウムの製造を間近に控え、日本の原子力(核)関連施設の防衛体制の見直しは急務となっているはずなのです。

 

〈第4回に続く〉

http://www.nbcnews.com/storyline/fukushima-anniversary/japan-producing-huge-lightly-guarded-stockpile-plutonium-n49376
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『姑息』『卑怯』などと言う言葉は日常ではまず使うことが少ない言葉ですが、日本の原子力行政を取り上げた海外の記事を読むと、毎回これらの言葉が思い浮かびます。
国家の枢要を担わなければならない行政の中身が、『姑息』『卑怯』である事こそが私たち日本人のつらいところです。

しかし一方でそれは、行政を官僚任せ、政治家任せにしてきた私たちの責任でもあります。
私もその一人ですが、福島第一原発の事故以降、より良い社会・より良い国家を築くためには市民自身が行動しなければならないことを、多くの日本人が学びました。

その積み重ねが無ければ、国家は官僚や政治家の『狩場』のままで終わってしまうでしょう。
ひとり一人の人間の大切な生活を積み上げたものが国家であることを、全員が思うべきです。

ここの所個人的に多用が続き、明日6日(日)は掲載をお休みさせていただきます。
この稿の第4回は7日月曜日に掲載いたしますので、よろしくお願いいたします。

【 日本の六ヶ所村再処理工場、脅かされる日本の原子力関連施設 】〈2〉

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物理的な防御対策の強化、警備員の訓練強化、新たな緊急時対応プラン作成、日本だけが拒否
国民がゲンパツの本当の危険に気づかぬよう、安全対策は密かに、目立たぬように進めなければならない…

 

ダグラス・バーチ、ジェフリー・スミス、ジェイク・アデルスタイン、センター・フォア・パブリック・インテグリティ(公正中立の社会正義) / アメリカNBCニュース 2014年3月11日

六ヶ所村
▽圧力を強めるアメリカ、抵抗する日本

2006年、日本の北陸地方にある美浜原発で行われた緊急時対応の訓練を実際に目撃したアメリカ大使館の科学問題担当者は、この訓練では日本の警察が何ら適切な行おうとしなかった旨、米国国務省に極秘電報を送りました。
「6名の警察官が、軽装備の車両に乗って参加しただけであり、うち数名は車両の中で熟睡していた。」

この皮肉に満ちた観察報告の電文の内容は、2011年にウィキリークスによって暴露されたものです。
これは長年アメリカ政府が、日本の原子力発電所や原子力関連施設の警備を強化するよう繰り返し申し入れてきたにもかかわらず、一向に応じようとしない日本側に対するいらだちが混じっています。

アメリカ側が強く働きかけた背景には、9.11テロの実行犯たちは当初、アメリカ国内の原子力発電所に旅客機を突っ込ませる計画を持っていたことが、2002年に明らかになった事もありました。
これを受け米国原子力規制委員会は、米国内の各原子力発電所に対し、物理的な防御対策の強化、人間の立ち入りに対する監視の強化、警備員の訓練強化、そして新たな緊急時の対応プランを組み上げるよう命じました。

アメリカ原子力発電研究所によると、この結果米国内の原子力発電所の警備員は60%増加し、9,000人からなる防御態勢が採られることになったのです。
アメリカ政府は各国の原子力発電所についても同様の対策を取るよう、フランス、英国、ロシア、日本、中国などの各国に申し入れを行いました

しかし少なくとも、日本だけは抵抗したのです。
ブッシュ政権下でエネルギー省の上級官僚を務め、原子力規制委員会の委員長を務めたポール・ディックマン氏は、アメリカ政府が世界最大の規模を持つ新潟県の刈羽崎柏原子力発電所の警備体制の強化を、なぜ迅速に行おうとはとしないのか、東京電力に申し入れを行った際、同社の返答の内容に驚かざるを得ませんでした。
ディックマン氏によれば、東京電力の回答は次のようなものでした。

「私たちも現在、刈羽崎柏原子力発電所の警備体制の強化に取り組んでいるところです。しかしその作業をあまりに急げば、これまで安全な操業を行っていなかったために、これ程急いで警備体制を変更しているのだと、一般の人々からの誤解を招いてしまいます。そうした誤解を招かないよう、意識的にゆっくり作業しているのです。」

2001~2005年東京のアメリカ大使館の科学技術担当の上級書記官を務めたケビン・メア氏とアメリカ国土安全保障局顧問のフランセス・タウンゼンド氏は2005年、原子力安全・保安院の高官と東京で会談し、次のように申し入れました。
「日本の原子力発電所の警備体制はきわめて薄弱であり、テロリストの格好の攻撃目標になってしまいます。緊急に安全体制を強化してください。」

メア氏は対応した原子力安全・保安院の官僚の名前はもう忘れてしまいましたが、その返答内容だけは忘れることができません。
「日本では銃の所持は違法なので、テロリストからの脅威は存在しません。」

この答えを聞いたタウンゼンド氏はメア氏を振り返り、こう尋ねたと言います。
「彼は冗談を言っているのか?」
しかし原子力安全・保安院の官僚は彼の意見は、日本政府内で広く共有されているものだと真顔で返答しました。

「これこそが、私たちが直面させられていた現実でした。」
メア氏がこう語りました

タウンゼンド氏はインタビューに応じ、こうしたやり取りがあったことを確認した上で、こう語りました。
「日本人は原子力発電所に対する脅威について、常に日本人だけを念頭に置いて自分たちが隔離された状況にいると考えていたようです。ですからアメリカ側が世界標準で話をしても、一向にぴんとは来なかったようです。」

六ヶ所指令室
この種のものでは日本では初めてとなった美浜原発の訓練には、地元住民、原発の職員、自衛隊員、そして数名の警察官を含め、延べ2,000人が参加することになりました。
しかし、彼らは「実際に緊急事態が発生した場合には、役に立ちそうにない」マニュアルに忠実に従っていたに過ぎないと、アメリカ大使館の科学技術担当書記官が語りました。
この訓練では、事故の展開の中に『予想外の事態が発生する』可能性は除外され、実際のどのような攻撃がありうるかの検証もされていませんでした。

訓練は、北朝鮮が破壊工作員を送り込み、美浜原発に対し迫撃砲による攻撃を行ったとの想定のもとに行われました。
実際に、北朝鮮の工作員は日本海側の海岸から度々日本に侵入を繰り返していると言われています。

しかし日本の訓練には、アメリカ国内の原子力発電所の緊急事態訓練に含まれる、武装した部隊による敵勢力の掃討は含まれていませんでした。

2年後、米国のジョセフ・ドノヴァン臨時代理大使が日本の科学技術庁で2名の次官に対し彼自身が日本の核関連施設に関する幅広い懸念を表明した際、同氏自身がアメリカ政府に送った極秘電報には、
「日本の警備会社のガードマンが銃を携行することは、法律で禁止されている。」
と日本側が返答したことが報告されています。

ドノヴァン臨時代理大使は1960年代にアメリカとイギリスから日本に持ち込まれた兵器級のプルトニウムの核関連施設に武装した護衛が存在しない点に不安を表明すると、日本側は
「核関連施設が立地する自治体などに判断を任せているが、現在のところ武装した警官を配置する必要性を認める脅威は存在しない。」
と返答した旨、ウィキリークスが公開したアメリカ政府宛ての電文に掲載されていました。

原子力発電崩壊
科学技術庁の次官級官僚たちは
「核関連施設で働く職員たちの身元を詳細に調査することは、日本の国内法に触れるだけでなく、日本社会にある身分・差別に関する微妙な問題に触れることにもなり、そうした行為は避けなければならない。」
と語り、次のように付け加えました。
「しかし、ある程度の身元調査は行われているはずです。」

 

〈第3回に続く〉

http://www.nbcnews.com/storyline/fukushima-anniversary/japan-producing-huge-lightly-guarded-stockpile-plutonium-n49376

 

【 日本の六ヶ所村再処理工場、脅かされる日本の原子力関連施設 】〈1〉

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なぜ日本は脆弱な警備体制の下、プルトニウム備蓄を積み増しているのか?
日本の原発に求められる「もうひとつの安全」懸念を強める西側先進各国、そしてアメリカ政府

 

ダグラス・バーチ、ジェフリー・スミス、ジェイク・アデルスタイン、センター・フォア・パブリック・インテグリティ(公正中立の社会正義) / アメリカNBCニュース 2014年3月11日

六ヶ所村
青いストライプの外壁と大きい鋼鉄製の冷却塔が林立する海沿いにあるこの大規模コンビナートは、一見するところ消費者向けの家電製品の工場施設のようです。
しかし実際は、東京の北700キロメートルに位置するこの場所は、世界最新最大規模の、そして西側世界で最も問題となっている核燃料、そして核爆弾の材料を『生産し得る』施設なのです。
この施設の所有者である日本企業は3ヵ月前、予定を大幅に上回る数十年間の建設期間を経て、日本国内の新型原子炉に燃料を供給する計画を現実にするための生産活動を今年10月に開始する予定であると公表しました。
10月のどの時点かでこの施設が稼働を始めれば、何千ガロンもの白い粉末状のウランとプルトニウムの混合核廃棄物の詰まった鋼鉄製のキャニスターを生産する事になります。

 

アメリカ政府は日本国内の原子力関連施設の警備を強化するよう求めましたが、武器を持たない警備員しかいない状況に変化はありませんでした。
日本はこの施設で、理論的には膨大な数の核兵器を生産できる量のプルトニウムを取り扱う事になります。

フランスとイギリスに預けてある35トンのプルトニウムに加え、すでに日本は9.3メートルトン(9,300キログラムに相当)のプルトニウムを六ヶ所村と国内9ヵ所の原子力発電所に保管しています。
現実には日本は世界で第5位の量、世界全体の9%のプルトニウムをシビリアンコントロールの下に保有する国家なのです。
この数字には330キログラムの、純度が高いプルトニウムが含まれていますが、これは核兵器製造に最も適しています。
このプルトニウムについては日本はアメリカへの返還に同意しました。

 

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六ヶ所村の再処理施設が計画通りに稼働すれば、日本のプルトニウム備蓄量は5年間で現在の2.5倍の量にまで増える可能性があります。
これは六ヶ所村再処理工場で作られるプルトニウム核燃料を使用する目的で作られた原子炉が完成してから20年で初めて、この燃料が使われる事になるからです。

さらに六ヶ所村再処理工場で作られた核燃料を、日本国内の標準的な原子炉で使用できるかどうかは、原子力規制委員会の監査や国内の政治状況というハードルを乗り越え、日本政府が原子力発電所の再稼働の推進を進められるかどうかにかかっています。

この施設がフル操業すると、年間に8メートルトンのプルトニウムを生産する事が可能になります。
この量はTNT火薬20,000トン相当の爆発力を持つ核兵器、2,600発を製造する事を可能にします。
6.5ポンド、グレープフルーツ1個程の量のプルトニウムがあれば、強力な破壊力を持つ核爆弾を作る事は可能なのです。
専門家によれは一番の問題は、魔法瓶1本分のプルトニウムが犯罪者やテロリストの手に渡れば、壊滅的な破壊が行われる危険性があるという事です。

六ヶ所村再処理工場はプルトニウム燃料で稼働する増殖炉を中心に据えた、世界初のエネルギー・システムを構築する計画の基盤となる施設です。
そして、増殖炉が消費するより多くのプルトニウムを生産します。
安倍首相はせんゲンツ、日本のエネルギー基本計画を明らかにし、国家として核燃利用サイクル事業の継続を宣言し、近隣のアジア諸国の懸念をかき立て、オバマ政権内の担当者も含めた核兵器の拡散を懸念する西側各国の専門家を憂慮させる事になりました。

日本のこの計画について公的にはアメリカ政府は、ほとんど何も指摘などをすることはしてきませんでした。
このため日本側はこれまで、相当量のプルトニウムの備蓄を積み増し続けることになりました。

しかしバラク・オバマ大統領は政権に就いた直後から、六ヶ所村に備蓄されているプルトニウムがテロリストの攻撃目標になる可能性がある事を、日本側に対し警告を続け、ワシントンにおいても政界・外交界を問わず熱心にロビー活動をおこなってきました。
特に日本側について、危険な核物質の管理を厳重にするよう求め続けてきました。

111324具体的には、六ヶ所村の警備体制について、白い手袋をした無腰のガードマンと少人数の駐在警察官による体制に代わって、強力な防御態勢を築くよう強く説得を続けてきました。
これまでのところ、その説得工作は成功していません。
さらにはこの場所で働いている2,400人の労働者について日本側はあえてそのプライバシーに触れないようにしていますが、アメリカ側はその背景の徹底したチェックを行うようにも求めています。

日米の外交関係に精通している両国の専門家や政府関係者に話を聞くと、この問題はアメリカ政府側が一方的に主張しているものです。

アメリカ側が繰り返し指摘したことにより、日本側は六ヶ所村と他の核関連施設、原子力発電関連施設の警備体制は強化されつつあります。
しかしアメリカ政府関係者はその改善のスピードがあまりに遅く、かつ少しずつしか改善しないと不満を露わにしています。

この日米間のやり取りは、両国の警備保安体制に対する考え方の違いを際立たせることになりました。

日本はアメリカと比べると、原子力関連施設、核関連施設が引き起こす事故や災害について、想定も準備も最小限のものに留まっていることが明らかになりました。
日本政府の原子力関連機関も電力会社も、こと安全や警備の問題となるとその対応は常に後手に回っていました。
そして日本の政治指導者たちは原子力関連施設の安全対策と警備体制の構築については、アメリカやその他の西側先進社会の平均水準にまで高めることに、ほとんど関心を示さずに来たのです。

日本の関係者の中にはアメリカ側の担当者に対し、日本のような平和な社会には、核物質を奪って事件を起こそうとするような人間はいないはずだと語りました。
しかし各国のこの問題の専門家とアメリカ側の当局者は、こうした甘い観測を言下に否定しました。

他の日本の当局者はどれ程危険な原子力関連施設においても、日本では銃を持った人間などきわめて稀であるため武装警備などは不要であり、個人のプライバシーが熱心に守られる社会では関係者の身元を徹底的に調査することは受け入れがたい行為だと語りました。

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「そのシステムは、日本社会で暮らす人間が予想外の行動に出ることなどない、という考え方に基づいています。」
オバマ政権でこの問題を担当する上級職の政府関係者がこう語りました。
「結果としては、眼前にある問題しか認識しないという態度に終始することになり、原子力関連施設が潜在的に持っている危険性を無視していることになります。」

 

〈 第2回につづく 〉

http://www.nbcnews.com/storyline/fukushima-anniversary/japan-producing-huge-lightly-guarded-stockpile-plutonium-n49376

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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