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不況に転落した日本経済に、なお一層の悪化が襲ってくる

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コロナウイルス感染拡大に収束感、しかし経済活動再開の前にたちふさがる数々の難題

最新のデータは現在の四半期の経済成長が深刻な危機に陥っている可能性を示唆

今後、何次にもわたる国民救済策・企業活動支援策が長期に渡り必要になる

                   

写真 : 不気味に感じるほど人の姿が見えない東京の繁華街

                 

ベン・ドーリー/ NYT 2020年5月17日

                   

日本は2015年以降初めて不況に陥りました。
すでに弱体化していた経済が、新型コロナウイルス感染拡大の国内外のビジネスへの影響によって停滞を余儀なくされたためです。
日本政府は、米国・中国に次ぐ世界第3位の規模を持つ経済が、2020年の最初の3か月(四半期)で年率3.4%減少した、と発表しました。
これにより日本経済は新型コロナウイルス時代に、四半期2期連続のマイナス成長によって定義される不況に入りました。

                

               

正式に不況に入ったことがこれまで確認された国の中で、日本は最大規模の経済を有しています。
この他の主要経済国では、新型コロナウイルスの封じ込めのためのロックダウンを行ったことによりドイツとフランスも不況に転落しました。
12月から1月にかけ世界で最初に新型コロナウイルス感染拡大の被害に見舞われた中国のその後を見ても、回復への道のりは長く険しいものであることが容易に見て取れます。

                    

それ以上に日本経済の回復は容易ではないでしょう。
4月から6月までの四半期に予想される実績は、新型コロナ感染拡大を封じ込める取り組みによって日本経済が打ちのめされた状態に陥ったことを示すものです。

                  

「日本経済は極めて弱体化した状態で、コロナウイルス・ショックに突入してしまいました。」
バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの日本チーフエコノミストである泉デヴァリエ氏がこう語りました。
「4月 - 6月の第二四半期には、見たこともないような醜いことが起きるでしょう。第一四半期から第三四半期まで、極めて大きなマイナス成長に陥るでしょう。」
デヴァリエ氏はさらにこう続けました。
「本当に落胆させられるような状況になるでしょう。」

            

                  

新型コロナウイルスの感染が拡大する以前から、日本企業の業績はぐらついていました。
10月に安倍政権が消費税を8%から10%に引き上げた直後から、個人消費が落ち込みました。
消費増税について安倍政権は、先進国中で最も多額な国の債務の返済に役立ち、さらには人口の高齢化に伴う社会福祉サービスの財源になると語っていました。

                   

しかしその数日後、超大型の台風が日本列島を直撃して甚大な被害を与え、日本国内の経済活動にさらなる打撃を加えました。
その以前から日本の輸出数は、2019年から続く世界的な需要の鈍化と米中貿易戦争の影響により着実に減少していました。

                    

                   

新型コロナウイルスの感染拡大は日本の輸出を打ち砕き、オリンピックの延期を余儀なくし、その後他の国々の拡大防止策と足並みを揃えるため日本も国内で各種の制限を取り入れました。

                  

東京にあるシンクタンクみずほ総合研究所の上級エコノミストの有田健太郎氏が次のように語りました。
「緊急事態宣言により人々の外出に待ったがかかり、消費が大幅に減少することになりました。」
「世界的規模の金融危機による影響、あるいはそれ以上の影響を回避することは不可能でしょう。」

                

学校は閉鎖され、海外からの人の流れ込みをほとんどストップし、4月中旬に安倍首相は緊急事態を宣言し、その結果多くの人々が家に留り、企業活動も停止することになりました。

                               

                

実際の感染防止については、努力が実を結んだように見えます。
感染者数は減少局面に入る以前に一時的に上昇しましたが、医療崩壊が実際に発生した例はありませんでした。
発生に起因する死者の総数は5月17日の時点では750人未満で、他の主要先進国よりもはるかに少ない数字に留まっています。

                     

しかしこれらの対策の副作用の相乗効果により、経済に対する打撃は大きくなりました。
学校が閉鎖されたために両親は仕事をせずに家にとどまらざるを得なくなり、学校給食用に食材を販売していた農家や酪農家は大打撃を被りました。

                        

入国ビザを取り消したことにより観光業は壊滅的打撃を受け、各産業で必要不可欠となっていた外国人労働者が日本に来ることができなくなりました。
緊急事態宣言は多くの大企業を生産量削減や活動休止に追い込み、その結果多くの中小企業、特にサービス部門に打撃を与えました。

                    

                  

1か月以上の間、本来賑やかなはずの東京のビジネス街はほとんど閉鎖されたままでした。
NHKによると、世界で最も乗降客数の多い新宿駅の利用客数は70%減少しました。
いつもなら大勢の人出で賑わう都内の観光地も、不気味なほど静かでした。
天気の良い日には互いに肩をぶつけ合うほど多くの人出がある流行の先端を走る原宿商店街の通りにはほとんど人の姿はなく、閉店したり、大幅に時間を短縮したブティックをめぐり歩く人ははわずかでした。

                      

最新のデータは、この四半期の経済成長に対する打撃に深刻な危険がある可能性を示唆しています。

                 

日本政府の観光当局によると、日本への訪問者は3月には前年比93%減と190,000人をわずかに超えただけでした。
4月の消費者信頼感指数(消費者態度指数)は、2008年の世界金融危機や2011年の福島第一原発事故の影響による落ち込みよりもさらに低い数値にまで急落しました。

                  

                      

輸出はこの月の最初の20日間だけで5分の1以上減少しました。
経済ウォッチャーの月次調査はこの歴史的というべき最低の状態について、次のように結論付けています。
「すでに極めて厳しい状態にあった日本経済は、新型コロナウイルスの悪影響によりなお一層悪化する。」

                

安倍首相は15日金曜日、日本の8つの県を除くすべての都府県で当初の予想よりも早く緊急事態を解除すると発表しました。
これは、経済活動を後押しするための動きです。
政府は翌週、大規模経済圏である東京・大阪を含む残りの地域について次の方針を決定する予定です。

                    

慶應義塾大学経済学部教授で日本銀行の元理事であった白井小百合氏によると、経済活動が元の状態に戻るまでにはまだ長い時間がかかるとみられます。

               

中でも経済的には小規模ながら日本の経済成長の重要な牽引役であった観光産業は、回復するのに何年もかかるかもしれないと白井氏が語りました。
オリンピック開催を見越してローンを組んでいたホテルやレストランなどの企業は、すでに債務不履行に陥っている可能性もあります。

                     

                 

「新型コロナ発生以前に経済成長のけん引役を担っていた産業に依存することは、今後数年間は不可能になるでしょう。」
白井氏がこう語りました。
「私は今後何年間も、民間部門の経済活動は非常に弱いと考えています。それは政府が経済活動を支え続ける必要があることを意味します。」

                   

政府はすでに120兆円規模の景気刺激策を承認しており、これは1年前には思いもつかなかったほど巨額な予算です。
しかし米国はすでにその2倍近い額の経済政策の実施を公表しています。
日本はこれまで借金に依存する景気刺激策に頼りすぎているという批判を受けてきましたが、現在はその規模が十分ではないために非難されるという珍しい立場にあります。

                  

安倍首相は日本政府は日本経済のテコ入れをするため、さらに多くの方策について話し合っていると述べた。

                 

日本の厳しい労働市場と従業員を容易には解雇できないる厳格な雇用慣行によって、雇用の喪失が引き起こされる可能性があります。
バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのデヴァリエ氏は、人々の雇用を保障するだけでは、内需を回復させるためには不十分です。
「雇用の喪失に関しては、日本は他の国、特に米国よりもはるかに良い結果を出すでしょう。しかしだからと言ってそれは賃金と所得が下がる、そして消費者マインドに悪影響が出ないということを意味するものではありません。」

                 

            

デヴァリエ氏は、これらの諸条件が「逆フィードバックループ」を引き起こす可能性があると述べています。
国内需要の回復に遅れが生じることで人々の消費行動が慎重になり、内需をさらに押し下る悪循環です。

                   

それを避けるためにも家計と企業のためにより多くの援助を行う必要があるだろうとデヴァリエ氏は指摘します。
「それは日本政府による対策がもっともっと必要になるだろうという事実に行き着くことになります。」

               

https://www.nytimes.com/Japan Falls Into Recession, and Worse Lies Ahead

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