ホーム » エッセイ » 『アベ友』新薬の承認を急ぐ日本 – サリドマイド同等の副作用・未実証の治療効果・新型コロナウイルス vs.アビガン《前編》
強力な売り込み姿勢をあらわにする安倍首相、ゆがめられる医薬品承認プロセス
有効かどうか未実証の新薬に多額の国費をつぎ込む安倍首相・なぜ?!
必要な治験データが揃うまでは、どんな薬が本当に有効なのか判断できないはず
ベン・ドゥーレイ / ニューヨークタイムズ 2020年5月5日
安倍首相は日本製の医薬品を使用して新型コロナウイルスの世界的な流行と闘うよう求めていますが、実際に効果があるという証拠はほとんどありません。
感染爆発を起こしているコロナウイルス治療薬を探し出すための絶望的な取り組みの中で、トランプ大統領が抗マラリア薬の効果を称賛していたとき、その同盟国のうちの1か国の首相は自国の「切り札」である少し青みがかった黄色い錠剤を世界に売り込もうとしていました。
この一筋の光明であるはずの新薬はアビガンと呼ばれる抗ウイルス薬であり、最も強力な売り込み姿勢をあらわにしているのが日本の安倍晋三首相です。
安倍首相は記者会見や各国首脳との会談の場でトランプ大統領や他の先進7カ国首脳との電話会談などの場で、自国で製造された新薬を売り込みました。
そして現在あるアビガンの国内の在庫を3倍に増やすために140億円の国費をつぎ込むと明言しました。
さらに安倍首相は彼はアビガンを他の何十もの国に無料で提供することも申し出ました。
しかし、首相は重要な事実の1つについては触れようとしませんでした。
アビガンが実際に新型コロナウイルスCovid-19に対して有効であるという確固たる証拠はありません。
アビガンは動物実験においてエボラ出血熱のようないくつかの致命的な病気に効果がある可能性が示されましたが、人間のさまざまな病気に応用できるという症例は限られています。
一般名がファビピラヴィル(favipiravir)であるアビガンには特異な規制の歴史、そして1つの危険な副作用 - 先天性欠損症を発生させる可能性があります。
安倍首相自身も5月11日の記者会見で、副作用は1950年代と60年代に数千人の赤ちゃんに奇形を引き起こした「サリドマイドと同じ」であることを認めました。
同時に安倍首相はアビガンについて、5月中にCovid-19に対する使用を承認するよう求めました。
抗マラリア薬ヒドロキシクロロキンに関してトランプが発言したのと同様、安倍首相が特定の薬物療法の売り込みを行うことは、首相があってはならない介入をすることにより本来慎重であるべき医薬品承認プロセスがゆがめられる懸念が生じています。
首相のこのあからさまな介入は日本国内の1,000を超える医療施設がアビガンを導入する後押しをする結果となり、日本の外務省も80か国ほどがアビガンの供給を要望していると語っています。
「私たちはみんな焦りました。すでに時代遅れだと思っていた薬が必要だというのですから。」
ペンシルベニア大学で臨床試験の設計を専門であるスーザン・エレンバーグ教授がこう語りました。
「しかし必要な治験データが揃うまでは、どの薬が本当に機能するのか判断できません。」
世界中で新型コロナウイルスの治療薬が強く必要とされ、医師たちはさまざまな薬剤をテストしています。
アビガンの試験については、米国を含む多くの国が計画中あるいはすでに始めています。
各国の首脳にとって適切な治療法を支持することは、国民の命を救うことによって自分の政治的基盤を強化し、国際的な名声を勝ち取り、開発企業の利益を大きく伸ばすことができます。
しかし、誤った薬の後押しをすればその結果は悲惨なことになります。
先週、米国の食品医薬品局(FDA)は、ヒドロキシクロロキンと関連薬物のクロロキンが心拍数に危険な影響を与える可能性があると警告しました。
極端な症例としては、アリゾナ州の男性がクロロキンと同じ有効成分を含む水槽用添加剤を誤飲し死亡しました。
医療監視機関はアビガンの台頭を遅らせるほど強い疑問を抱いてはいません。
アビガンには日本で最も強力な大企業の1つである富士フイルムという後ろ盾があり、開発したのはその子会社である富山化学です。
中国政府も新型コロナウイルスCovid-19に対する安全性とアビガンの有効性を証明しています。
日本のテレビでは医師たちがアビガンの錠剤を世界的な救世主になる可能性があると語り、服用経験がある有名人は称賛する証言を行っています。
しかし、その証拠は完全に裏付けに乏しいものである、こう語るのは2016年に政府の委員会でこの薬を新型インフルエンザに対する最後の砦と考えるべきだと判断した大阪のりんくう総合医療センター感染症責任者での大和雅也医師です。
「私はこの薬には効果がないと言っているのではありません。新型コロナウイルスにアビガンが効くという証拠はまだ充分ではないと言っているのです。」
大和博士はこう語りました。
富士フイルムの広報担当である松本カナ氏は、同社は日本と米国で「この薬の有効性について充分な証拠を得るために」新型コロナウイルスCovid-19に対する臨床試験を実施していると語りました。
アビガンは他のほとんどの抗ウイルス薬とは異なる機能を持っています。
ウイルスの細胞への侵入を止めるのではなく、ウイルスの繁殖を妨害する働きを持っている点が今回新型コロナウイルスへの効果が期待されています。
動物を使った実験では、特に早期に投与した場合にエボラ出血熱のような特定のウイルスの増殖を抑制する効果が見られました。
一方でアビガンには大きな問題があります。
動物実験における先天性欠損症の証拠により、日本は、錠剤の使用と生産を異例に厳しい管理をすることになりました。
新型コロナウイルス感染拡大の以前は、臨床試験並びにエボラ出血熱を治療するための最終手段としてのみ人間に投与されていました。
この点について大和博士は、いずれの場合にもアビガンは人間のさまざまな疾患への有効例はなく、一般的な種類のインフルエンザでさえ治療効果があったという明確な証拠を提供したことはなかったと語りました。
《後編》に続く
https://www.nytimes.com/This Drug May Cause Birth Defects. Japan’s Pushing It for Coronavirus
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私は母親の薬物摂取によって先天性欠損症となって生まれてきた5歳ほどの女の子と会ったことがあります。
天使のように可愛い子でしたが、両腕がなく、両方の手のひらが肩についていました。
薬物の恐ろしさ、運命の残酷さに涙が出ました。
そういう薬を『もう子供を作ることはないのだから、大丈夫だろう』とばかりに、高齢者にはどんどん使えという姿勢は理解できません。
記事を読む限り、副作用はあるものの主作用は間違いなく新型コロナウイルスを抑え込む、という保証はないようです。
《後編》には例によって安倍首相の『身内』、『アベ友』企業人が登場します。
全てはその点に集約されているようです。《後編》をぜひご確認ください。