ホーム » エッセイ » 過去の呪縛:韓国人強制労働被害者への補償金支払い拒否を世界はどう見ているか?!
ドイツ企業はナチスの強制労働犠牲者への補償のため、ドイツ政府と協力して共同基金を設立
安倍首相の祖父である岸信介氏は、傀儡国家・満州国の戦時生産性を上げるために強制労働の利用を主張した
エコノミスト 2018年12月18日
第二次世界大戦中の日本の行動は、特に韓国において長い影を引きずることになりました。
朝鮮半島の日本の植民地化が終わってから20年後の1965年になって初めて、両国は外交関係を再構築することに同意しました。
しかしそれ以来、両国関係はとげとげしいものであり続けました。
ソウルの最高裁判所が日本企業の2社、三菱重工業と新日鉄住金に対する下級裁判所の判決を支持し、戦争中に強制労働に従事させられた韓国人に補償金を支払う義務を負わせたときから、深刻な騒ぎが始まりました。
同様の事例について、韓国内の裁判所に次々と提訴が行われることになりました。
日本の弁護士、山本誠太氏によると、少なくとも1つの事例については、日本企業が中国の元強制労働者と民事において和解を成立させたことがあると語っています。
韓国の判決で確定した補償金額は、原告1人当たり8,000万から1億5,000万ウォン(約780万円から1,460万円)の間で、妥当な金額であると考えられます。
しかし日本政府は判決を「容認できない」ものだとという見解を示し、日本企業に支払いを拒否するよう求めています。
さらに韓国政府に対し、この問題に介入するよう求めました。
しかし韓国のムン・ジェイン大統領は、司法制度への干渉はできないと返答しました。
日本側は条約によって再構築された日韓関係により、原告の主張は無効なるべきものだと強く主張しています。
当時の韓国への経済援助は、戦時中の人権侵害への賠償を目的としたものであったとも主張しています。
日本の裁判所は同様の賠償請求を棄却しました。
日本の政府高官はこう発言しました。
もし賠償金が犠牲者の手元に届かなかったのであれば、それは韓国政府に責任があります。
韓国の裁判所、そして韓国政府はこうした解釈に異議を唱えています。
韓国の司法、行政当局者は1992年を含めた数年間、日本の当局者が大日本帝国の戦時体制下の犠牲者が個人として補償を求めることができるという考えを受け入れたと指摘しています。
日本は太平洋戦争を終結させるため米国と結んだ条約の中で個人が米国に対し賠償を求める権利を放棄しましたが、日本の官僚は広島と長崎の原爆の被爆者は米政府を訴えることは可能だという判断を示したはずなのです。
しかし日韓関係の問題はこうした法的議論よりもさらに深刻です。
「裁判所の判決は日韓関係悪化の原因にもなりますが、一方ですでに悪化している日韓の二国間関係の影響を受けた結果でもあるのです。」
慶應義塾大学の西野純也氏は述べています。
韓国人は、日本が過去に対して完全な責任を取っていないと感じています。
例えば西ドイツは、第二次世界大戦後の占領軍によって行われた裁判に加え、ドイツ自身の手によって大戦中の戦争犯罪の摘発を試みました。
そして2000年、ナチスの下で強制労働者を使役したティッセンクルップをはじめとするドイツ企業は犠牲者に補償するために、ドイツ政府と協力して共同基金を設立しました。
2007年に閉鎖されるまでに、170万人の被害者に対する44億ユーロの補償金の支払いを完了しました。
日本はこうした取り組みをしていません。
1995年、日本政府は戦時中の侵略行為を認め、アジア各国の犠牲者に謝罪しました。
しかし現在の首相である安倍氏の下で日本は、逆方向に舵を切り始め、企業などにも足並みを揃えるよう迫っています。
安倍氏の祖父である岸信介氏は、日本が中国から東北部を切り離して傀儡国家の満州国を建国した際、戦時生産性を上げるために強制労働の利用を主張しました。
その岸信介氏は1950年代に首相になりました。
「これまで日本は度々謝罪を行ってきましたが、私が考える限り、日本人は心の底から太平洋戦争中の行為について反省しているわけではありません。」
東京で強制労働の犠牲者のためにロビー活動を行っているNGO代表の矢野英樹氏がこう語りました。
当時独裁体制にあった韓国政府が日本と結んだ平和条約は、問題解決の役には立ちません。
経済面にばかり焦点を集め、歴史や正義の実現については省りみられていないからです。
「韓国の民主化が実現するまでは、誰も被害者の話に耳を傾けようとはしませんでした。」
新日鉄に対する訴訟を行った原告のリム・ジェソン弁護士がこう語りました。
戦争中に性的強制労働を余儀なくされた朝鮮半島の女性に対する補償に関する韓国政府の一貫性のない対応により、日韓のいがみ合いは尚一層救い難い状況に陥りました。
韓国の弁護士たちは、新日鉄が12月24日までに判決が命じる賠償金の支払いを開始しない場合、韓国内の新日鉄の資産凍結に移行すると述べています。
そうなった場合は一切厳しい対抗措置をとらざるをえなくなる、日本政府関係者はこう語っています。
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「西ドイツは、第二次世界大戦後の占領軍によって行われた裁判に加え、ドイツ自身の手によって大戦中の戦争犯罪の摘発を試みました。
そして2000年、ナチスの下で強制労働者を使役したティッセンクルップをはじめとするドイツ企業は犠牲者に補償するために、ドイツ政府と協力して共同基金を設立しました。
2007年に閉鎖されるまでに、170万人の被害者に対する44億ユーロの補償金の支払いを完了しました。
日本はこうした取り組みをしていません。」
「安倍氏の祖父である岸信介氏は、日本が中国から東北部を切り離して傀儡国家である満州国を建国した際、戦時生産性を増やすために強制労働の利用を主張しました。
その岸信介氏は1950年代に首相になりました。」
このような記述は日本のメディアには到底期待できません。
エコノミストの『私訳』をしている意味をかみしめられるような記事です。
特に安倍政権下における日本の大手メディアの恥ずべき特徴は
1. 権力にとって都合の良い情報のみを伝え、そうでない情報は伝えない
その結果全体像が歪み、結果として事実が歪曲される
しかし『嘘は言っていない』と開き直ることができる
2. ある事実について、権力にとって都合の良い解釈をし、その見解を広める
ということが、2大特徴のように思います。
Shame on You!