ホーム » エッセイ » ウイルス感染の拡大を放置・助長、安部政権の失政が国民を追いつめている《前編》
「見知らぬ善人より見知った悪魔の方が首相に相応しい」日本人のその選択は正しいのか?
感染拡大が深刻になっていくのを数週間放置し続けた、日本の目くらまし政治家・安倍晋三
安部首相の『直接指揮』は危機的感染拡大を悪化させただけ
一部の報道機関を利用した政権延命の巧妙狡猾な宣伝工作
ベン・ドゥーレイ / ニューヨークタイムズ 2020年3月5日
コロナウイルスへの国内での感染が確認されてから数週間、安倍首相はできるだけ姿を見せないようにしてきましたが、ここに来てやっと直接的な対応を取り始めました。
しかしその結果は7年に及ぶ安倍首相の記録的な長い任期の中で発生した最大の危機をより一層悪化させただけでした。
東京—コロナウイルスが日本の人々の健康と経済を脅かしていたほぼ一ヶ月の間、安倍首相の姿はほとんど見えませんでした。
クルーズ船ダイヤモンド・プリンセンスでの問題だらけの感染予防対策が失敗した挙句、船内にいた数百人へ感染が拡大し、下船した乗客により一層の感染拡大が懸念される事態になった際、無能という批判の矢面に立たされたのは安倍首相ではなく日本の保健行政でした。
さらに日本の保健当局者に対しては、近隣諸国が最大10,000人の人々のウイルス検査をしているにもかかわらず、日本政府だけが未だに1日約900人の検査しかできていない理由についての説明責任が求められています。
しかし2月末、日本国内の感染防止体制の不備と混乱ぶりに国民が怒りをあらわにした段階で、安倍首相はやっと最前線における首相としての役割を担わざるを得なくなりまししたが、安倍首相の的外れの取り組みは、その7年を超える首相として日本で最長の在任期間の中、最大の政治危機をさらに大きくする結果になりました。
安倍首相への支持率は一部の世論調査では30パーセント代後半まで急落しました。
2月末、安倍首相は今回の危機に関する記者会見を初めて行いましたが、質問とその回答の大半は事前に首相官邸と打ち合わせ済みの形式的なものでしかありませんでした。
一部のジャーナリストが予定にない質問を行って大きな声で回答を迫りましたが、無視されました。
その直後、ツイッターは安倍首相の辞任を要求する100万件以上のツイートであふれかえりました。
その2日前、それまで何週間も自ら何の対策もとろうとしなかった安倍首相は、全国の学校に1か月間休校するよう求め、学校から締め出されることになった子供達のケアについて何の準備もしていなかった日本全国の親達に不意打ちをくらわせ、子育て世代を狼狽させることになりました。
こうした間にも新型コロナウイルスへの感染は増え続け、ウイルス検査体制が整っていないことも加わり、日本国内では確認されていない感染拡大が続いていることを多くの人々が恐れる事態となっています。
日本は3月4日に33人というそれまでで最大の感染者数の増加を記録しました。
翌日の5日にさらに14件の感染を確認し、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセスでの約700件のケースに加え、合わせて300以上の感染例が確認されました。
全部で12人が亡く なりました。
国内でも数十人が死亡した2009年の豚インフルエンザの爆発的感染拡大に対し、かつて安倍首相の下で厚生労働大臣として日本国内での感染阻止を指揮した舛添要一氏は、安倍首相が「あまりに長期間首相の座にあり続けた」ため、今回の日本政府の発生への対応は「まったくひどいもの」だと述べました。
安倍首相の長期政権による権力の集中は日本政府関係者に対する支配力を強め、政府が情報を隠蔽する傾向を悪化させ、官僚全体に無気力と無責任を蔓延させることになったと舛添氏が語りました。
「正しい情報を公開することは、ウイルスとの戦いにおいて非常に大切です。」
「すべての大臣が安部首相の支配下にあり、反対意見を言うことすら許されないのです。」
舛添氏はこう指摘し、次のように語りました。
「これこそが安倍政権の構造的な病根です。」
新型コロナウイルスは、当初の感染予防策を批判され、大統領選での再選を果たすためにアメリカ本土への感染を阻止しようとしているトランプ大統領を含め、世界中の政治指導者の能力を厳しく問いかけることになりました。
しかし一般国民がどれほど不満を募らせようと、新型コロナウイルスに対する日本政府の適切な対応を妨げていると思われる安倍首相への異常なまでの権力集中は、最終的に首相の座を揺るがせずに終わる可能性もあります。
日本の野党は未だに混乱状態にあり、かつてなかったほど権力に迎合的なニュースメディアは、居座り続ける安倍首相に代わる人材はいないという国内での印象操作を続けています。
「安倍首相ほど強力に政府を自分の意のままに操れる人間は他にはいません。」
多摩大学の法整備戦略センターにおける日本政治の専門家であるブラッド・グロッサーマン氏がこう語りました。
「この時点で野党には安倍首相に代わる信頼できる首相候補がいないため、その正体は悪魔だとわかっていても日本人は見知っているということに固執しているのです。」
グロッサーマン氏はこうつけ加えた上で、次のように指摘しました。
「この状況を見て、日本では本当はもう民主主義は機能していないという感覚が生まれています。」
新型コロナウイルスは国民の健康だけでなく、安倍首相の看板政策も危険にさらしています。
20年近い低迷が続いた日本経済を安倍首相は一度は回復に向かわせたかに見えましたが、現在は景気後退の瀬戸際にあります。
中国の指導者である習近平総書記は10年以上ぶりの共産党党首による初めての日本訪問を延期しました。
そして夏季オリンピック東京2020の中止の話題は日を追うごとに頻繁に話題として取り上げられるようになりました。
それは突然の運命の暗転でした。
65歳の安倍氏はこれまで『満足すべき人生』を送ってきました。
テンプル大学の政治学部のマイケル・キュセック准教授がこう語りました。
安倍首相は他の政治家ならとっくに辞任に追い込まれたはずの政治的スキャンダルを何度もすり抜けてきました。
過去1年だけを見ても安倍内閣からは2人の閣僚が辞任し、安倍政権は公的資金の不正に関連する記録を闇に葬ったとして非難され、自民党の少なくとも2人の国会議員は中国の賭博会社の買収に関わったとして摘発されました。
日本の検察は選挙資金規制法に違反したという告発に対し、安倍首相と緊密な関係にある国会議員の事務所を捜索しました。
《後編》に続く
https://www.nytimes.com/Shinzo Abe, Japan’s Political Houdini, Can’t Escape Coronavirus Backlash
+ - + - + - + - + - + - + - +
福島第一原発事故の後、政治不信の絶頂の中で誕生した安部政権。
当時を振り返り、民主党政権の原子力政策に失望していた私は、それに取って代わって安部政権が誕生するという現実に愕然となったことを今でも鮮明に覚えています。
安部政権誕生以降、その原子力政策、原発難民への過酷な扱い、難民差別、加計学園スキャンダル、森友学園スキャンダル、国内報道への政治圧力、等々数限りない海外メディアの記事を翻訳してきましたが、やっと
辞任
の文字を正面に据える記事が現れました。
安部政権誕生以降、日本は欺瞞、偽証、隠蔽、汚職、情実人事が当たり前の国になってしまいました。
それは国の運命の衰退に直結します。
この記事を一人でも多くの方にお読みいただき、日本の国の滅びに直結する政治をい知日も早く終わらせよう、そう決意する方が一人でも多く現れるよう祈っています。