ホーム » エッセイ » 原子力発電の復活を図る安倍政権のエネルギー政策目標
各電力会社は厳しい安全基準をクリアために高額なコストを支払うのではなく、経年劣化した原子炉の廃炉を選択した
稼働期間の延長や新しい原子炉の建設がなければ、日本では2050年までに実用可能な原子炉がなくなる
AP通信 / ニューヨークタイムズ 2018年5月16日
日本には2011年の福島第一原子力発電所の事故以降解決しなればならない様々な深刻な問題があるにも関わらず、安倍政権は今後10年間の原子力発電の大規模な継続を前提とするエネルギー計画を5月16日に提案しました。
日本政府の任命により編成された委員会によって提示されたこの草案は、2030年度までに原子力発電が日本の総発電量の20~22%を占めるべきだと述べています。
2015年に経済産業省がまとめた計画草案は再生可能エネルギーの目標を22~24%に設定しており、残りは化石燃料を使った火力発電によって賄うとしています。
安倍政権は7月頃にこの計画を承認する予定です。
各電力会社は福島第一原子力発電所の事故の後導入された原子力発電所に関する厳しい安全基準をクリアために高額なコストを支払うのではなく、経年劣化した原子炉の廃炉を選択したことを考慮に入れると、安倍政権が設定した目標を達成するのは難しいように見えます。
さらには人口密度の高い島国で、大量の放射性核燃廃棄物をどうやって処分すべきか現実的なプランがないまま原子力発電を再開することは、もう一つの大きな懸念材料です。
さらに安倍政権は核燃料再処理計画の継続もうたっていますが、その過程で生み出されるプルトニウムの備蓄量が増え続けていることについて、国際社会の懸念が高まっています。
今回策定される計画は、発電目標を達成するために新たな原子力発電所を建設するという日本国民が強く反対している問題に触れようとしていません。
コマツの顧問である坂根正弘委員長は、こうした日本政府の姿勢について「不都合な真実」から目を背けようとしていると批判しました。
2011年の福島第一原子力発電所の事故以降日本国内のほとんどの原子炉が停止していたため、原子力発電は日本の電力生産のわずか2%以下にとどまっています。
現在稼働している原子炉は5基に留まっています。
日本の電力会社は福島第一原発の事故以降、福島県内の6基を含め15基の原子炉の廃炉を決定したため、稼働可能な原子炉の数は39に減少しました。
専門家は現在停止している16基は再稼働の準備に手がついておらずこのまま廃炉になる可能性が高と語っています。
政府の委員会のメンバーで東京理科大学教授でエネルギー問題の専門家である橘川武郎(きっかわたけお)氏は、残された原子炉には従来40年間の稼働が許可されていますが、これらを20年以上延長する許可が与えられない限り、安倍政権が策定した目標を12年以内に達成することは不可能だと述べました。
稼働期間の延長や新しい原子炉の建設がなければ、日本には2050年までに実用可能な原子炉がなくなることになる、橘川教授がこう語りました。
さらに橘川教授は原子力による発電量が少ないということは、日本の排出削減約束とは対照的に、化石燃料への依存度が高いことを意味する、と指摘しました。
日本は2030年までに2013年比で26%、2050年には80%二酸化炭素の排出量を削減するという目標を設定しています。
福島事故以来、原子力発電に反対する運動を行っている小泉純一郎元首相は、東京新聞の取材に次のように答えました。
原子力発電は新たに導入された安全基準に適合させるため、そして非現実的な燃料再処理計画のためにきわめて高額なものになっています。
そうした意味からも原子力発電から再生可能エネルギーへの転換を加速すべきです。
https://www.nytimes.com/Targets for Nuclear Energy
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最近痛感することはドイツのメルケル氏と日本の安倍氏の、首相としての資質の違いです。
最大の違いはメルケル首相が人間、国民、市民というものに最も大切な価値を見出していることでしょう。
そして森友学園・加計学園の問題を考えると、日本の首相には資質だけでなく資格もかけているのではないのか?とお考えになる方が多いと思います。
安倍政権の下での官僚制度の腐敗と劣化が、5年後10年後20年後の日本に深刻な悪い影響をもたらすだろうということは、以前にも書きました。
それはモラルの低下、機能不全、あるいは社会現象として具体的になるでしょうが、エネルギー政策はそれ自体具体的なものです。
抽象的な概念に関しては異論を唱えることは前提条件の設定からして難しいことですが、エネルギー政策は具体的なものです。
危険であり、異常に高コストであり、利益が上がれば消費世帯に還元されるのではなく電力業界の族議員などに還流していくのが原子力発電。
しかも最先端科学をもってしても、原子力発電をすれば必ず作り出される放射性核廃棄物の処理は不可能です。
こんな理不尽なシステムを続ける理由は、私たち市民の側にはありません。