ホーム » エッセイ » 大阪ナオミ選手は日本人になろうと思っているか?
世界ランキング1位のテニス・チャンピオン・大阪ナオミ選手は日本人の人種意識について何を感じているか?
有名でもなんでもない混血の人々の日本での日常は厳しいままであり、当たり前のように学校でいじめに遭ったりしている
エコノミスト 2019年1月31日
1月26日に大阪ナオミ選手が全豪オープンで優勝して世界一の女子テニス選手になったとき、北海道の北端にある母の故郷の根室の住民たちも祝杯をあげました。
祝賀のためのバナーが市役所に飾られました。
ナオミ選手のサイン入りラケット、衣服、その他彼女のテニス関連の道具類などの展示を見るため地元の住民たちが集まってきました。
インタビューを受けたナオミ選手の祖父は彼女のパフォーマンスを賞賛しました。
このような光景は別にふしぎでもなんでもありませんが、一般的に日本では両親ともに日本人であり、日本語を流暢に話し、いかにも日本人らしい風貌を持ち、さらには『日本人らしく振舞う』場合にのみ日本人と見られます。
大阪さんはアメリカで育ったいわゆるハーフです。
彼女の父親はハイチ人です。
彼女は日本語よりも英語での会話が得意です。
彼女の祖父は大阪さんの母親が外国人男性との結婚を考えていると彼に打ち明けると、最初は親子の縁を切ると語っていました。
誰もが勝者を愛していますが、日本が大阪さんを日本人として賞賛することは偽善者ぶった態度だと批判する人々もいます。
そうした見解は製麺会社の日清食品が肌と髪を明るい色に変えた大阪さんをフィーチャーした広告を出したときに正当化されたように見えました。
(批判が相次いだため、日清食品はその広告を中止しました。)
日本のテレビは長い間、異なる人種との混血の有名人を呼び物にしてきましたが、人目をひく『商品』として役立ててきました。
しかし別に有名でもなんでもない混血の人々の日常は厳しいままであり、当たり前のように学校でいじめに遭ったりしています。
しかし日本は異なる人種の人々に対してもっと寛容になるでしょう。
例を挙げれば、大阪さんは過去の美人コンテストに参加した混血の受賞者よりも暖かく受け入れられています。
「大阪ナオミ選手のような人が国際舞台で日本を代表することは、数十年前には不可能だったでしょう」
と語ったのは、共同監督作品の映画「ハーフ(hafu)」を完成させた西倉めぐみさんです。
それはある程度、数字の問題です。
結婚した日本人の3.4%が外国人の配偶者を持っており、10年前と比べ今日では3倍以上の外国人が日本で暮らしています。
それにもかかわらず日清食品のような広告が現実に作られたという事実は、「まだまだ課題は解決されていないということを示す」ものである、と西倉さんが語りました。
日本は制度上22歳以上の人の二重国籍を認めていないので、ナオミ選手は理論的には10月までにアメリカ国籍を放棄してこれから日本人選手としてプロ生活を続ける決意が持てるほど自分は日本人であると感じているかどうか、結論を出さなければなりません。