国際紛争の解決を戦争という手段に頼らない、その新世界秩序の理念を具現化したのが日本国憲法
北朝鮮以上に人類にとって危険なアメリカ大統領トランプの平和秩序破壊
エコノミスト 2017年9月21日

しかしながらこの条約の基本を支える考え方は連合国側が日独伊枢軸国との戦いと、その後に続く平和組織、すなわち国連の構想、その両方に大きな影響を与えています。
戦争が終わったとき、ソビエト連邦に取り込まれた一部の例外を除き、勝利した連合国は枢軸国に征服されていた土地を本来の所有者に返還しました。
ニュルンベルク裁判は侵略戦争を行うことは犯罪行為であるという原則を確立し、少なくともヒトラーに付き従っていた取り巻きたちを戦争犯罪人としました。
国連の創設とハーグの国際司法裁判所の設立は完璧には程遠いものですが、非常にプラスの効果をもたらしました。
強国が弱小国に強要を行う砲艦外交は完全に19世紀の遺物と化し、時代錯誤となりました。
強国による侵略戦争も同様です。
もちろん、世界ではまだまだたくさんの戦争が発生しています。
しかし『新世界秩序』の誕生により再び世界大戦が起きるという可能性はほとんど考えられない状況になりました。
その代り今度は見落とされていた状況、「イントラナショナル」、すなわち国内において戦争が発生する機会が増えてしまいました。
国内情勢が不安定な国家は、かつてまずは強力な隣国に侵略されることを心配しなければなりませんでした。
しかし『新世界秩序』の下では、現状に不満を持つ指導者に率いられた反乱軍に国土を削り取られることよりも、内戦や残虐行為が頻発する暴動の犠牲者となることを心配しなければならなくなりました。

イスラム国家(誤った名称ですが)などの非国家グループは、機能不全に陥っている政府の国土を、少なくともある程度は掌握し、維持できるという事を証明して見せました。
憎むべき政権が支配する体制を打倒するとしてこれまで引き起こされた数々の戦争、目的自体には多少組むべき点があるにしても、戦争によって解決するという構想は誤りであり、しばしば悲惨な結末を導き出しました。
そして外交問題を現実的に解決しようとする人間たちは、一瞬で相手を壊滅させられる核兵器の存在によって、大国はもはやいちいち好戦的な国を相手に戦争などする必要が無くなったと指摘しています。
しかしこの本の著者たちは、過去70年のリベラル的秩序がいずれの選択肢よりも優れたものであり、これからも守り続けることにはきわめて高い価値があると力説しています。
著者たちはリベラル的秩序を現実のものにするため戦った人々にふさわしい敬意を表しています。
そのひとりがシカゴの弁護士サーモン・レビンソン(Salmon Levinson)であり、そのアイデアはケロッグ・ブリアン協定に直接つながりました。
アメリカの外交官、サムナー・ウェルズ(Sumner Welles)は将来戦争を引き起こそうとする国家に対し、武力制裁を課す能力を持つ国際組織を構想し、提案しました。

ポーランド系英国人の法学者ハーシュ・ラウターパチェト(Hersch Lauterpacht)は国際的に普遍性の高い価値観と人間の品性に基づく国際法の体制を整備するのに貢献しました。
カナダの学者であるジェームズ・ショットウェル(James Shotwell)はアストリッド・ブリアンとともに働き、ジュネーヴ協定を成立させた後、国際連盟の成立に貢献しました。
この本の著者であるハサウェイ氏とシャピロ氏は、戦争による国際紛争の解決は違法であるとした第2次世界大戦後のコンセンサスが今や危機に瀕していると警鐘を鳴らしていますが、その見解はまさに的を得たものです。
こうした脅威の中には、戦闘的なジハーディズムがあります。
自分たちの利害が反映されていないことに腹を立てているロシアと野心的な中国は、これまでの国際的なシステムに対抗する方向に向かうことになりそうです。
イランは戦闘的なジハーディストを始めとするテロ組織を支援している疑いが否定できません。
そして核兵器開発計画をやめさせようとする様々な外交的努力を、まるであざ笑うような姿勢を見せて受けれようとはしない北朝鮮。
しかしそれらにも増して人類にとって最大の脅威となり得るのは、現在のアメリカ大統領の在任期間でしょう。
国際的な秩序を軽蔑し、自由貿易を嫌って保護貿易をあからさまに主張し、さらには世界の法的秩序を維持していく上でアメリカが本来果たさなければならない役割を途切れることなく放棄し続けている、アメリカ大統領トランプです。

この注目すべき著作の中に重要人物として登場した「国際主義者」たちは、トランプ政治の有様を見て墓の中で切歯扼腕しているに違いありません。
《完》
https://www.economist.com/news/books-and-arts/21729415-it-was-underpinned-movement-make-waging-aggressive-war-illegal-and?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
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この稿を読むと、自滅志向の狂人政権が支配する国が近隣に存在することを理由に、その地域全体の安定のための秩序を、いきなり外交的管理から軍事支配体系に転換してしまう事の無謀さと危険性を思います。
現在のトランプ・安部ラインの発想は、何かあれば米日連合軍が本気で叩きに行くぞ、という発想が基本になっているように見えます。
大統領選挙期間中は『世界の警察官などもうやめる』と発言していたはずのトランプが、ここに来て『同盟各国へ武器を売りつけることは、どうやら巨額のビジネスになりそうだ』ということに気づき、同盟継続をネタに仲間内に『暴力支配』をすすめて回っているようです。
『銃社会』のアメリカ社会では無殺別殺人という理不尽な悲劇が激増していますが、東アジアの安全保障をイコール武器による武力支配に変えてしまった場合、同様の悲劇がもっと大きな規模で起きることになるような気がします。
中国の軍事的台頭に対しては、その軍体制の内部的な検証と分析が不十分なまま、こちらも同等の軍事能力を整備しようという発想では、巨額の予算を軍事に振り向けなければならない上、人的損耗も覚悟しなければなりません。
日本の10代~20代の若年層に、国際紛争の解決に武力の行使もあり得るという考えが拡大しているという調査結果があるですが、自分が前線に立たされ殺されるようになった時、愛国の士を迎えに天使が現れ真っ白な光に包まれて昇天していくというようなイメージでもあるのでしょうか?
実際には顔を半分吹き飛ばされたり、腹部に受けた傷口から内臓が外にはみ出したりして苦しみながら死んでいくのが戦場です。
そんな死を無数に作り続けるのが『武力による解決』だという認識が希薄な時代は、きわめて危険だと思います。
積極的に戦争を仕掛ける行為を違法とする規律によって支えられている21世紀の世界、その論理はきわめて正当
軍国主義を神聖化してしまったナチスドイツと大日本帝国が、世界を巻き込んで第二次世界大戦を引き起こした
エコノミスト 2017年9月21日

『ジ・インターナショナリスツ』
戦争を禁ずる急進的計画は、どのようにして世界を作り直すか?
オーナ・ハザウェイ、スコット・シャピロ共著 サイモン&シュスター社
第二次世界大戦の廃墟の中から生まれた、基本的に戦争はすべきでないというルールに基盤を置く国際秩序は、それまでのいかなる時代と比較しても、人類社会に大きな改善をもたらしました。
それは前例のない規模で貿易を刺激し、弱小国家であっても、略奪的な干渉を受けることを恐れることなく、潜在的能力を発揮できる世界を実現させました。
その一連の秩序の中心にあったのが、積極的に戦争の加害者となった国家に恩恵を与えてはならないという原則でした。
特に侵略によって領土を手に入れた場合は、国際社会はその行為を合法であると認めることはく、代わりに侵略者は制裁を受けるべきであるとされ、概ね経済制裁が科されることになります。
例外的に国連の承認のもとに多国籍軍が編成され、その軍事介入により侵略者が不法に略取した領土を放棄することを余儀なくされた例もありました。
しかし今、自国の立場同様手の国の立場も尊重するというリベラルな立場の国際主義が多方面からの攻撃の矢面にさらされています。
ドナルド・トランプの『アメリカ・ファースト』主義は国際主義を明確に否定しています。

訳知り顔の首脳たちと称されるEU指導者の内少なくとも2人は、トランプ大統領の移民排斥主義者としての過度な発言について少しは抑えたものにして欲しいと思いつつも、基本的な姿勢は似たようなもののようです。
5月に掲載されたウォール・ストリート・ジャーナルの記事には、トランプ政権で安全保障問題の顧問を務めるH.R. マックマスターとケイリー・コーンがそれぞれ、次のように記しました。
「世界はグローバルなコミュニティではなく、国家、NGO、企業が自分たちが少しでも有利な立場を得ようと、相手を出し抜くためにしのぎを削り合っている場所である。私たちは自分たちのフォーラムに他とは比較にならない程強力な軍事的、政治的、経済的、文化的、道徳的な強さをもたらすつもりである。我々は国際情勢の本当の状況を否定することなく、私たちはそれを進んで受け入れる立場をとる。」。
ともに文化的に優れた、あるいは道徳的に優れているという表現が当てはまらない2人、政治的介入と軍事的介入によって自分たち影響力を発揮できるエリアを拡大し、国際社会における自由主義的秩序を弱らせようとしているウラジミール・プーチンも習近平も、トランプの取り巻きが発したこの声明の中に、反対すべき何ものも発見しない事でしょう。

プーチン大統領は2014年にクリミアをロシアに併合しましたが、これは第二次世界大戦戦後初めてヨーロッパの国境が力づくで変更された事例になりました。
この際ロシアはウクライナ東部の分離独立を目指す武装勢力の支援支援を得て、隠密侵攻を行いました。習近平は国際法に反して人工島を作り、南シナ海にある世界の商業用航路の半分以上を中国の領海に繰り入れようとしています。
イエール大学の法学部教授であるオーナ・ハザウェイとスコット・シャピロによる 『インターナショナリスツ”(Internationalists)』は、自由主義的国際秩序が世界史の中でどのようにして形成されたのか、そして今だからこそそれが守らなければならない、その理由について堅牢な歴史観の下、情熱的に語られています。
1928年の彼らはこの体制を新世界秩序と呼び、17世紀オランダの学者であるヒューゴ・グロティウスが提唱した『旧世界秩序』と明確に区別し、1928年のパリ不戦条約にその基礎を置くと記述しています。
パリ不戦条約は第一次世界大戦後に締結された多国間条約であり、条約締結国同士の国際紛争を解決する手段としての戦争を放棄し、平和的手段により解決することを規定した条約です。
最初フランスとアメリカの協議から始まり多国間協議に拡大したことにちなみ、米国国務長官フランク・ケロッグ(冒頭の写真右端の人物)とフランス外相アリスティード・ブリアン(同前列左端の人物)両名の名をとってケロッグ・ブリアン協定とも呼ばれるこの条約には、当時の大国を含む50以上の国々が署名しました。

この条約は1914-18年の第一次世界「大戦」がもたらした直接的な成果でした。
第一次世界大戦は実際に旧世界秩序を崩壊させた戦いであり、1,100万人の戦闘員が犠牲となった世界史上初めての世界規模の戦争でした。
条約の目的が目的とするところは侵略戦争と領土征服を禁止することでした。
しかし条約の実際の施行に問題がありました。
1931年の日本による満州占領はまさに旧世界秩序の下で行われていた侵略行為と同じものであり、新しい条約の下では決して正当化されませんでしたが、日本が侵略した土地を放棄させるまでの力はありませんでした。
そしてその後の10年間、条約の締結国も国際連盟も軍国主義の台頭を抑えようともしませんでしたし、抑えることもできませんでした。
そして軍国主義を神聖化してしまった日本やドイツが第二次世界大戦を引き起こすことを阻止することはできなかったのです。
《後編に続く》
https://www.economist.com/news/books-and-arts/21729415-it-was-underpinned-movement-make-waging-aggressive-war-illegal-and?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
欠陥のある選挙制度と戦後2番目に低い投票率の選挙での勝利に、国民は納得していない!
立憲民主党は平和主義を守り、安倍政権下で拡大した貧富の格差を縮小に取り組む姿勢を打ち出した
国際紛争解決のため軍事力の行使を禁止する憲法、その条文の削除もねらっている安倍首相
エコノミスト 2017年10月27日

安倍首相は総選挙の翌日、自分が自民党に新たな歴史を刻んだことを誇示しました。
彼が率いる仏教団体の創価学会に支えられる公明党との連立与党は2017年10月22日に投票が行われた衆議院議員選挙で大きな勝利を収め、衆議院議員選挙において3回連続で地滑り的勝利を収めた事になります。
参議院選挙も含めれば5回連続で勝利したことになります。
この結果を受け、総理大臣としての任期を4年延長することになれば、第2次世界大戦以降日本最長の首相となる可能性が出てきました。
この見通しは今回の選挙前に支持率が急落しただけでなく、政治的立場が危機的状況に陥ることが多く、多数の有権者から徹底的に嫌われている政治家、すなわち安部晋三氏にとっては願っても無い素晴らしい展望です。
安倍首相は現在、日本国憲法の平和主義的表現を書き換えるという、長年抱き続けてきた目標を達成するチャンスをその手に握っています。

自民党は現在衆議院において465議席中281議席を占め、安倍氏が勝敗ラインとした単独過半数をはるかに超えている議席を持っています。
この結果は衆議院で10議席削減される中での結果であり、安部自民党が全体の中でより大きなシェアを持つことを意味しています。
公明党が得た結果はそれほど良くはありませんでした。
しかし公明党の29議席に加えて3人の無所属候補者の支持により、安部首相は衆議院において3分の2の議席を支配することになり、たとえ参議院の承認が得られなくとも大部分の法律を通過させる能力を持つことになりました。
しかしこうした結果に多くの国民は納得していないように見えます。
今回の選挙の投票率は戦後2番目に低いものになりました。投票日に台風が接近し、各地で大雨になったためです。
自民党への投票理由の多くは現状維持を望むか、あるいは朝鮮半島の緊張が高まり続けることへの不安によるものでした。

自民党の勝利はまた、対立する野党の分裂と混乱の恩恵も受けました。
野党第一党の民主党の首脳は、東京都知事の小池百合子氏が設立した新党「希望の党」の旗の下での候補者選出を決めました。
一時は与党側に対し深刻な脅威を与える可能性も取りざたされましたが、結果は選挙前に民進党として保有していた57議席のうち7議席を失うという結果に終わりました。
政策の行方が有権者にわかりにくいということも一因でしたが、小池氏が自分の保守的な方針に従う民進党議員のみを受け入れ「他は排除する」と表明したことが、多くの有権者を去らせることになりました。
行き場を失った民進党の左派系議員が再結集し、投票日の3週間前に結成されたのが立憲民主党でした。
希望の党の200人に対し、立憲民主党が擁立できた候補者は78名に留まりました。
しかし立憲民主党は善戦し、衆議院において自民党に次ぐ勢力を持つ野党第一党になりました。
選挙前と比べ約3倍に議席数を増やしたという事実は、安倍首相に対し有権者が大きな不満を持っていることを象徴するものです。
立憲民主党は憲法に基づく日本の平和主義を守り、安倍政権下で拡大した貧富の格差を縮小したいと表明しています。

しかし立憲民衆党が安部首相の前に大きく立ちはだかるというわけにはいかないでしょう。
安部首相は選挙戦に勝利した翌日、日本が他国並みに軍事力を制限している日本国憲法の改定が「主要政策」のひとつとであると表明しました。
安部首相は自衛隊を正規の日本国軍として明記するよう、憲法第9条の条文を変更したいと考えています。
そして国際紛争解決のための軍事力の行使を禁止している憲法の条文も削除してしまう事を望んでいますが、平和主義の存続を願う多くの日本国民と敵対することを恐れ、この点についてはあまり強くは言っていません。
安倍首相の目標は、現状に合わせて憲法の条文を変えようというものです。
自衛隊は世界でも有数の規模と装備を持った軍隊です。
2014年には憲法の解釈変更を行い、同盟国が攻撃を受けた場合には日本は援護のための軍事行動ができるようにしました。
2015年に制定された複数の安全保障関連法案は、同盟国の「集団的自衛権行使」のために自衛隊を海外の紛争地域への派遣を可能にしました。

しかし憲法の文言は、日本人兵士を危険な戦場に送り込むことに反対する政治家に有利です。
米国を含む一部の国々は、安倍首相が日本はこうした制約を撤廃すべき段階に至っているという主張を支持しています。
太平洋戦争の戦前戦中に日本軍の残忍な統治支配の記憶が悪夢として記憶に刻みつけられている中国や韓国を除けば、この段階で日本軍国主義の復活を恐れる国はほとんどありません。
しかし憲法の変更は容易ではないでしょう。
安倍首相が率いる連立与党は国会の両院の3分の2を支配し、憲法改定の発議に必要な要件を満たしています。
日本第二の都市である大阪に支持基盤を持つ維新の党と希望の党も改憲に前向きです。
しかし憲法第9条に手をつけることは、政治的には難問のままです。
いかなる変更も国民投票により半数以上の支持を獲得しなければなりません。
そして結果がどうなるか、確実な見通しは存在しません。

▽ 間合いを測る
安倍首相がどのタイミングで改憲に着手するのか現時点では不明です。
彼はすべての政党の同意を得て改憲を実現したいと語っていますが、その希望に立憲民主党が沿うことは不可能でしょう。
2018年9月に予定されている自民党の総裁選挙に勝利し、新たな任期を手にした上で会見に着手するだろうと見ている人々もいます。
2019年には統一地方選挙と参議院選挙があり、翌年には東京オリンピックが開催されます。
こうした状況から、安倍首相は来年末までに改憲法案を国会に提出したいと考えているかもしれません。
他の分野における政策はあまり変わり映えがしません。
安倍首相は2019年10月に予定されている消費税の増額による収入の一部を幼稚園の無料化に充てると公約する一方、日本が直面するもう一つの大きな課題、すなわち人口の高齢化にどのように取り組むべきかについてはほとんど言及していません。
選挙中に実現を約束した優先事項は、残業時間を制限するだけでなく、悪名高い日本のストレスのかかる労働環境を変える『働き方改革』法案の整備を推進することです。

選挙戦には勝利したものの、安部首相の立場はもろさを露呈し続けるでしょう。
来年予定されている自民党総裁選挙で、安倍首相に挑戦しようとする人間は今のところ現れていません。
しかし今年の初め、2件のスキャンダルに関係しているとの疑惑を持たれた後、安部首相の支持率が急落したことを、ライバルと目される人々、そして有権者も忘れてはいません。
保守的なメディアの編集者でさえ、安倍首相が経済政策をおざなりにしたまま改憲に夢中になったりしないよう警告しています。
彼は彼の政治的な抜け目のなさを充分証明しました。
しかし安倍首相に対する国民の負託は脆弱なものです。
https://www.economist.com/news/asia/21730551-mr-abe-wants-japan-be-normal-military-power
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アメリカ大統領トランプ来日の際の日本の首相の阿諛追従ぶりには、右派左派を問わず心ある日本国民が失望や失笑に似た感想を持ったことでしょう。
フランスやドイツの首相ならもっとずっと毅然としていたに違いありません。
しかしゲッペルス率いるナチスドイツの宣伝省並みに国家の宣伝機関と化した『国営放送』NHKの報道などを見る限り、そうした国家的愚劣さとも言うべき様子は伝わってきません。
国営放送局から『国策放送局』に変質してしまったNHK職員諸氏であっても、1944年から1945年にかけて『大本営発表』と称して虚報を日本中にばらまいた戦争犯罪とも言うべき報道によって、最終的に国民がどれ程悲惨な目に遭わされたか、その知識が無い訳ではないでしょう。
しかしもう、かつて『映像の世紀』や『オリバーストーンが伝える現代アメリカ史』のような「NHKならではの」スペシャル番組など、「後のたたりが怖くて」作りたくないのかもしれません。
だからこそ、こうしたエコノミストの記事に代表される『はるかに広い視野を持った正論』を、何とか一本でも多くご紹介しなければならないという思いを新たにしています。
広島、長崎…この世界が実際に人間に対して核兵器を使用したのは、日本人に対してだけ
ほぼすべての戦場の大規模爆撃で使用されているクラスター爆弾、その犠牲者のうち民間人の割合は98%に上っている
アンナ・ニグマチュリナ、シャキーブ・アズラル / アルジャジーラ 2017年10月28日

▽核兵器(大量破壊兵器)
核兵器が実際に戦争で使用されたのは、第二次世界大戦中アメリカが日本の広島と長崎の2都市に核爆弾を投下した時だけです。
第二次世界大戦が終了すると、アメリカを中心とする西側社会とソビエト連邦を中心とする東側社会との冷戦が始まり、核兵器の開発競争が激化、この間核兵器実験と備蓄量は飛躍的に増大し、そのまま今日に至っています。
その後東西の融和が進み締結された多数の条約によりほぼすべての核兵器実験が禁止され、世界の核兵器の備蓄量は1985年の6万発以上をピークに低下を続け、現在は約15,000発にまで削減されました。
各条約に署名した国々は2022年までにさらに約7,000発にまで核弾頭の保有量を削減することを約束しています。
核兵器廃絶のための国際キャンペーン(ICAN)はこうした取り組みを実現させるため多大な貢献をしたとして、2017年のノーベル平和賞を受賞しました。

[核兵器保有国が行なった核実験実施年表]
▽ 対人地雷(通常兵器)
人間を標的とする対人地雷は歴史を通じて使われてきましたが、第二次世界大戦中に最も広範に使われました。
対人地雷は戦争や紛争が終結した後も尚、そこから除去されない限りいつまで見いつまでも民間人の殺傷を続けることになります。
1997年に締結された対人地雷全面禁止条約(オタワ条約・正式名称:「対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約」)は、地雷の生産と使用を制限することを目的としています。
条約の実施以来、159の加盟国はこれまで5千百万個の地雷を破壊し、もはや備蓄していないことを宣言しました。
戦争や内戦、深刻な武力紛争が起きたボスニア、カンボジア、アフガニスタン、ミャンマー、エジプトなどでは今日もなお地雷除去作業が続けられ、その荒廃ぶりは歴然としています。
そしてこの条約に非加盟の国は未だに量の地雷を保有しており、世界はなお廃棄に向けた取り組みを継続して行かなければなりません。
地雷禁止キャンペーン(ICBL)は「対人地雷の禁止と除去のために」大きな貢献をしたことが認められ、1997年のノーベル平和賞を授与されました。
また従来型の地雷の備蓄量が減少する一方で、国家では無い武装グループがスマート地雷を使用する事例が増加し、近年再び民間人の死亡や怪我が増加傾向にあります。


[地雷禁止条約発効以前の地雷使用状況(上)と条約発効後の地雷使用状況(下)]
▽ クラスター爆弾(通常兵器)
第2次世界大戦中にソビエト連邦が史上初めて使用して以来、ほぼすべての戦場の大規模爆撃で使用されています。
その犠牲者中、民間人の割合は98%に上っています。
襲撃の標的とされた地域では、広範囲にわたり多数犠牲者が出るとともに、残された不発弾によっても多数の犠牲者が作り出されています。
2008年のクラスター弾に関する条約(クラスター弾の使用や保有、製造を全面的に禁止する条約。クラスター爆弾禁止条約あるいはオスロ条約とも呼ばれる)には108カ国が署名しましたが、サウジアラビアやシリアを含む世界の約半数の国々がこの条約に署名しておらず、現在も戦争や武力紛争で使用を続けています。

[世界には約100万発のクラスター爆弾があると見られていますが、オスロ条約解明国が廃棄できたのはその18%に留まっています。]
▽ 軍縮のこれからの課題、悪意ある革新的軍事技術の開発
潜在的に悪意を持った兵器使用の可能性を伴う技術的進歩は、これからの軍縮への努力に新たな課題を提起しています。
こうした努力に対し、多くの軍事技術の開発と進歩が国家ではなく民間部門主体で進められているという事実によってさらに複雑になっています。
この結果条約などに加盟する国家の制約が及ばないことになり、技術開発や改良に対する規制が一層難しくなっているのです。
サイバー攻撃、致命的な破壊力を持つ全自動の兵器、無人航空機(ドローン)、合成バイオテクノロジー(遺伝子工学)、衛星技術、人工知能など、こうした技術が新しい悪意のある兵器として生まれ変わる可能性があるのです。

[国連の軍縮委員会は現在、兵器として使用可能な、あるいは悪用される恐れのある最新技術について、規制や管理の強化を検討しています]
http://www.aljazeera.com/indepth/features/2017/10/disarming-world-171024071441249.html
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ここで紹介されている他にも、残虐な兵器はまだまだあり、それを最初に開発したのは大体がアメリカです。
例えばアメリカがイラク戦争やアフガニスタン戦争で使った劣化ウラン弾などはその最たるものです。
投下された瞬間の実写フィルムを見たことがありますが、要するに超小型核爆弾ともいうべきもので、『通常兵器」としては凄まじい破壊力を発揮します。
問題なのは落とされた方が被る、放射能汚染です。
イラク国内でこの爆弾を投下された地域では、『子供を作るな、産むな』と言うキャンペーンが行われているという記事を翻訳・ご紹介したことがあります。(気がつけば投稿数が1,600を超えてしまっており、もう自分でもその記事を見つけることができなくなってしまっています。お詫びします。)
人間として生まれてきて「あなたはすでに汚染されてしまった。子供をつくってはいけない…」と言われることは、どれほどの悲劇でしょうか?
今回アメリカ大統領のトランプが来日し、国家の負債が記録的金額に上っている日本に対し、もっと米国製の武器を買えと放言し、日本の首相はヘラヘラ笑っていました。
ご紹介した記事にある、残虐な兵器を少しでも減らそうとしている世界の取り組みに対し、まさに冒涜というべきではないでしょうか?
国家予算を教育に回せば、教育された人間はその後の何十年をどんどん良い方に変えていくことができます。
しかし驚くほど高額な最新鋭の武器は、10年も経てばガラクタです。
イラク戦争でソ連製のT55やT60戦車で戦場に向かっていたイラク軍の兵士が、米軍のアパッチヘリの集団の襲撃を受けて『屠殺』されるように殺されたことはすでにご紹介した通りです。
一定の防衛能力を装備することは否定しません(永世中立国のスイスは国防軍を持っています)が、直接交戦する可能性は極めて低いのに仮想敵国の脅威を煽り続けて、極めて高価なその実不要な武器を積み上げていくことの真の目的は何なのでしょうか?
北朝鮮問題に対するトランプの独善的なやり方は、解決へのどんな糸口も導きだすことはできなかった
トランプには人権問題への関心が完全に欠如、他国の人々が残酷な運命に落ち込もうと気にもしていない
ガーディアン[社説]2017年11月2日

アメリカ合衆国大統領は今、アジア地区への最初の旅に取り掛かろうとしています。
北朝鮮をめぐって緊張し中国が野望を逞しくしている中、この地域について無知と言って良いトランプは、自身の中にくすぶり続ける外交上の不満をどうするつもりでしょうか?
11月に入って間もなく、ドナルド・トランプは大統領として初めてアジア各国を訪問することになりますが、これは就任以来最長の海外出張になります。
1週間半をかけて、日本、韓国、中国、ベトナム、フィリピンを訪れる予定です。
これらの国々の指導者たちが場当たり的対応をするのか、挑発的言動に及ぶのか、あるいは一国の指導者として無能をあらわにするのか、そのあたりは様々な可能性があるでしょうが、トランプ氏はものの言い方について気をつける必要があります。
今という時代が間違いなく「アジア世紀」だということであれば、いかなる結果になるにせよ米国大統領のアジア歴訪は多くの事実を明らかにすることになるでしょう。
しかしその多くは懸念材料である可能性があります。

トランプ氏はこれまで予測不能の発言と行動をするという評判を「得て」きましたが、多くの場合はあからさまにツジツマの合わない話であったり、あるいは米国が長年培ってきた外交方針についての無知や無理解を露呈するものでした。
貿易摩擦問題に関しては激しい中国叩きを行った挙句、結局トランプ大統領はマル・ア・ラーゴの自分の別荘で中国の習近平氏と顔をそむけ合うような『友情ショー』を披露する羽目になりました。
そして10月末には『中国の皇帝の再来だと言う人々もいる』と見え透いたお世辞を口にしました。
しかし競合する互いの国家的利益のバランスを取るためには、お世辞や追蹤などよりもっと大切なことがあるはずです。
ミサイル発射と核実験を繰り返す北朝鮮問題に対するトランプの独善的なやり方は、解決に向かうためのどんな糸口も導きだすことはできず、結局中国からさらなる協力を取り付けることが今回の歴訪の最重要課題となっています。
トランプは中国を通貨操作をおこなっている国家と決めつけるという、大統領就任直後にとった姿勢に何度か戻ったことがあります。
彼は『恐ろしい金額』の貿易赤字に取り組む能力を誇示したいと考えているのかもしれません。

米中間の貿易戦争の話はすでに過去のものである可能性もありますが、そうでない場合も考えられます。
トランプ大統領自身を国際社会の取りまとめ役としてのキャリアを望んでいますが、新しい枠組みを構築するというよりはこれまでの合意を破ったり弱体化させたりしています。
彼は欠点の多い12カ国が参加する環太平洋パートナーシップ貿易協定をからの撤退を決定しましたが、代わりに提案した「インド - 太平洋地区」協定の中身については説明も何もありません。
こうした状況を見て、アジア太平洋地区全体でトランプ率いる米国の指導力に対する疑念が拡大し、中国を利することになりました。
トランプ氏はこれまでで最大の『不支持を獲得した』スキャンダルだらけの大統領として登場しました。
一方の習近平は共産党大会において信認を新たにし、個人的な影響力を行使するための人事を強化し、国際社会における中国のリーダーシップの新しい時代を約束しました。

バラク・オバマ前大統領は、自分を米国「初の太平洋大統領」と呼び、米国とアジアの関係を「改めて均衡したものにする」と語りました。
トランプの今後の方針は国内への政治的配慮やアメリカ人労働者を守るという公約を大きく逸脱したものにはならないでしょう。
結局国家戦略を練りあげる作業は、現政権の将軍たちである旧来の権力階級を代表する人間たちに委ねられることになりました。
ただしそれもいつツイートの大洪水によって邪魔をされるかわかりません。
防衛に関する同盟関係の先行きを懸念する日本と韓国については、日韓が自国の防衛のために核兵器を所有すればその防衛力が「向上する」だろうという彼の発言は、さすがに今はすっかり影を潜めました。
とりわけ日本の安倍首相とゴルフコースを共にラウンドしてからは、こうした発言をしなくなりました。
しかし、トランプ大統領と安倍首相のコンビは、日本国憲法の平和主義条項・第9条を廃止するべきかどうかという日本国内の議論に火をつけました。
フィリピンに関してホワイトハウスは、ロドリゴ・デュアルテとの「温かい交流」を自慢げに語っています。
しかしこれはトランプ政権には人権問題への関心が完全に欠如しているということを証明するものであり、デュアルテ政権が裁判もなしに12,000人の殺人事件を犯した「麻薬戦争」を問題視しないということの意思表示です。

訪問先の各国の政治指導者たちは、トランプが阿諛追従に弱いということを知っています。
トランプのエゴを喜んで受け入れさえすれば、対米関係を後々楽なものにすることができます。
しかしトランプがこれまでのアメリカ大統領と最も違っている点は、国際社会において不安定かつ戦略上最も重要な部分の舵取りをするのは自分だと考えていることです。
訪問先の国々はこの点を不安視しており、世界中が心配しています。
https://www.theguardian.com/commentisfree/2017/nov/02/the-guardian-view-on-trump-in-asia-brace-yourselves
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トランプが自分の周囲にいる人間以外の『人権』に無関心だという指摘には全く同感で、アメリカ大統領戦以来アメリカのメディアを中心に報道された内容はその指摘を裏書きするものばかりでした(http://kobajun.biz/?p=29205など)。
北朝鮮については、問題の本質はキム・ジョンウン体制、その世襲制度による北朝鮮支配というものであり(http://kobajun.biz/?p=29067など)、トランプがちらつかせる『軍事的選択』など日本・韓国・北朝鮮の市民や兵士が大量に死傷するだけで、問題の『本質的解決』につながるのかどうかきわめて疑問です。
トランプ・安部ラインというのは、アメリカの軍産複合体に奉仕し、日本にもそれに似た体制を作り上げようという底意に基づいて政治を壟断している、そしてその視界に『基本的人権』という言葉は無い、そんな感じがします。