玉城デニー氏の勝利は、日本における人種的多様性の拡大にもにつながっていく
玉城デニー氏の沖縄知事選の勝利は、安倍首相に政治的屈辱を与えることになった

モトコ・リッチ / ニューヨークタイムズ 2018年9月30日
米国軍事施設が集中している南西諸島の沖縄で選挙戦が終了し、9月30日日本人の母、米海兵隊の父を持つ玉城デニー氏が日本で初の混血の県知事に就任しました。
玉城氏の勝利は沖縄にある航空機の離発着等が頻繁に行われている海兵隊基地を宜野湾市から同じ沖縄本島の人口の少ない海岸沿いの地域に移転させるという日本政府と米国の計画の妨げとなります。
玉城氏が目指すのは沖縄から米軍基地を解消することです。
政権与党自民党の支援を受けていた佐喜真氏は、選挙直前まで宜野湾市長を務め、基地の移転計画を支持しています。
玉城氏(58)は、8月に膵臓がんの合併症で死亡したアメリカ軍の基地の存在を批判し続けてきた全沖縄県知事の翁長雄志氏の小西武氏の後任になります。
玉木氏はNHKの選挙速報で勝利を確認すると、選挙本部内にいた支持者に翁長前知事の遺志を引き継ぎ、安倍政権が進める新基地建設計画に反対することを表明しました。

(写真)沖縄の宜野湾市の米空軍基地内の海兵隊航空局の滑走路上のオスプレー機。
新知事は、米軍基地を沖縄からの撤去移転を望んでいます。
「小さな蟻も象の足を動かすことができるということを知っていただく必要があります。」
と玉城氏がこう語りました。
9年前アメリカ人との混血の日本人として初めて衆議院議員に選出された玉城氏は、沖縄本島北部の漁村である辺野古で新しい空軍基地の滑走路建設に使用される埋立処分の承認を認めない方針を明らかにしました。
日米両国の政府間で締結された合意では、新基地は島の南半分にある宜野湾市の中心部にある約1100エーカー(約4.45平方キロメートル・約1,346,000坪)に及ぶアメリカ海兵隊普天間基地の代替地として提供される予定になっています。
この場所は日本の本州からは約650マイル(約1,000km)南方にあります。
沖縄の人びとは長い間、騒音、暴力、航空機事故の脅威にさらされ続けながら、米軍基地の存在に抗議してきました。
沖縄には33のアメリカ軍関連施設があり、日本に駐留する全米軍の約半分の25,000人の兵士が駐留しています。

しかし玉城氏が主張するように、米軍基地を島から撤去させることは容易なことではありません。
日本政府を代表する安倍首相は、最高裁判所に対し玉城氏が新たな提出するいかなる異議申し立ても却下するよう強く迫る可能性があります。
さらに玉城新知事は沖縄県内の貧困率が高いことや、基地の存在と引き換えに日本政府から支給されている補助金に大きく依存していることにも取り組まなければなりません。
「沖縄県はこれまで十分な教育予算と開発予算を確保できませんでした。原因は貧困です。」
沖縄国際大学政治科学部教授の佐藤学氏がこう語りました。
「アメリカ軍の存在に対するいかなる種類の反対も、結局は資金を引き上げられることへの脅威によって押さえ込まれる可能性があります。」
玉城知事の誕生は日本人の母親を持ちハイチ系アメリカ人の父親を持つ大阪ナオミ選手が全米オープン女子テニス選手権大会で優勝してから1ヵ月も経たないうちに実現しました。

玉城デニー氏の勝利は、日本における人種的多様性の拡大にもにつながります。
「これらのすべての出来事が日本人であるということが何をいみするか、という議論に貢献することになります。」
日本の近代史を専門とするコネチカット大学のアレクシス・ダッデン(Alexis Dudden)教授がこう語りました。
「日本人とはただ単に人種的純潔性を意味するのだというきわめて固陋な考え方を示された際、現実の日本人の定義をもっと広げることにもなるでしょう。」
玉城氏を支持した理由についてNPO法人の社員、リマ・リンダ・徳盛氏(31)は、玉城氏が他の多くの沖縄人同様に複数のルーツを持った人物だったからだと答えました。、
今回の選挙では安倍首相周辺の有力政治家が次々と沖縄を訪問して選挙運動をしていただけに、選挙結果は安倍政権に支援された佐喜真氏の当選を予想していたアナリストを驚かせることになりました。
複数のアナリストが今回の沖縄知事選の結果は安倍首相に政治的屈辱を与えることになったと語っています。
「自民党は国家の影響力と予算と選挙後に実現させる公約などを総動員し、やれる限りのことをやってきました。」
上智大学の政治学者、中野耕一教授がこう語りました。
「それにもかかわらず勝つことができなかったという事実は、自民党にとって相当なダメージになりました。」
沖縄県選挙管理委員会は、最終的に玉城氏が396,632票を獲得し、対立候補の佐喜真氏の316,458票を圧倒したと発表しました。
https://www.nytimes.com/2018/09/30/world/asia/okinawa-governor-election-us-base
同性愛者を「非生産的」と攻撃した51歳の議員を、「まだ若いんだから…」と不問に付した安倍首相
差別の先には迫害があることを、迫害の先に虐殺すら起こり得ることを歴史は証明している
ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 2018年9月26日

日本の有名な雑誌は与党自民党の右翼の国会議員によって書かれた同性愛者を攻撃する記事掲載し、激しい抗議を受けたあと廃刊することになりました。
『新潮45』は杉田水脈氏の見解をめぐって論争が続く中、出版元の新潮社が発行を中止すると発表しました。
掲載文中、杉田氏はLGBTの人々は「非生産的である」と述べ、これらの人々に対する公的福利厚生の提供について税金の使い途として疑問を呈しました。
杉田氏は同性カップルは「子供を産まない」と書いています。
「言い換えれば、彼らには生産性がなく、したがって国家の繁栄に貢献しない」
『新潮45』は激しい批判を浴びた後、最新版で「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」というタイトルで一連の記事を掲載した直後から深刻な危機に陥いることになりました。
出版元の新潮社は謝罪しました。
「部数低迷に直面し、試行錯誤の過程において編集上の無理が生じ、企画の厳密な吟味や十分な原稿チェックがおろそかになっていたことはひていできません。このような事態を招いたことについてお詫び致します。」
朝日新聞が伝えました。

『新潮45』は出版社の社長である佐藤隆信社長の特別な介入によって廃刊が決まりましたが、佐藤氏は『新潮45』の最新号の原稿には「常識を逸脱した偏見と認識不足に満ちた」表現がもあったと認めています。
7月に登場した杉田議員の記事は、政治家やLGBTの権利を認めるよう運動している人々から激しい非難を浴び謝罪するよう求められました。
杉田議員が所属する政権与党の自民党は当初何らかの処分を行うことを拒否していましたが、後になってその見解が「性的マイノリティ」の権利を自民党が支持していること反するものであることを杉田氏自身がすでに理解しているとの見解を示しただけでした。
杉田議員と同じ派閥の安倍首相は、杉田氏の記事について公の場で謝罪をしていません。
安倍首相は9月中旬、「彼女はまだ若い」ため、辞任等を要求していないと語りました。
杉田議員は51歳です。
新潮45は1982年に創刊され、自らを「少し危険な」存在であると主張し、伝えられるところでは右翼的主張を展開するフォーラムを提供したり、政治的に正しいと言われることも敢えて批判するなどして新しい読者を得る試みを行ってきました。

杉田議員は過去、第二次世界大戦の戦前戦中に日本人兵士が従軍慰安婦を使役していたというのは韓国による捏造だと主張していました。
今回の論文掲載についてLGBTの権利を認めるよう運動している人々は杉田議員の謝罪を要求していますが、『新潮45』は杉田議員をかばう動きをしているとみられています。
新潮45の最新号に掲載された中の一つ、文学評論家の小川榮太郎による記事には、性的マイノリティの権利を保証されるのなら、男性が列車で女性に痴漢行為をする権利も社会が認めなければならないのかと疑問を持たざるを得なかったと書かれていました。
「この雑誌の編集チームは販売部数の増加にとらわれるあまり、記事の厳格なチェックを怠っていたようだ」
新潮社の伊藤幸人広報担当ディレクターがこう語ったと、毎日新聞が伝えました。
https://www.theguardian.com/world/2018/sep/26/shincho-45-japan-magazine-homophobia-mio-sugita-shinzo-abe
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なんだこの品性の低さは!
冒頭の写真を見て、うんざりしました。
何の因果でこんな下卑た写真を処理しなければならないのか、まったくもってうんざりしますが、元の記事のアイコンである以上仕方がありません。
時代が動くとき、この議員や問題になっている『文芸評論家』のような『権力迎合主義』ともいうべき人間が次々現れ、腐敗臭を放つ暗雲で時代を覆い隠してしまいます。
1930年代の大日本帝国ではこの暗雲に乗じて軍国主義が台頭し、無数の『権力迎合主義』人間が現れ、平和や自由や平等を求める人々を非国民と罵り、無数の命を無益に殺すことに手を貸しました。
この歴史だけは繰り返させない、その思いをできるだけ多くの日本人が共有したいものです。
近頃は諸欲が枯れてしまい、晴れた日に清々しい朝を迎えるようなことをこの上なく幸せに感じたりします。
反対に人間として腐敗臭を放っているような人間たちが権力に群がり、貪ったり差別を繰り返したりしている有様を見ると本当に腹が立ちます。
歴史は証明しています。
差別の先には迫害があることを。
関東大震災や第二次世界大戦では、迫害の先に虐殺すら発生しました。

差別などという行為ができるということは、人間として何ごとかが欠けている証拠でもあります。
差別は許さない。
万人の当たり前の思いではないでしょうか?
安倍首相には社会の下の方で暮らしている人々の面倒をもっとちゃんと見てほしい
首相の権力が強くなりすぎて周囲にはイエスマンしかいなくなる。そんなことでこれからの日本は大丈夫なのか?
モトコ・リッチ/ ニューヨークタイムズ 2018年9月20日

公共放送のNHKが今月実施した世論調査では、今年秋に憲法改定法案が国会に提出された場合、憲法改定を支持する人はわずか18%に過ぎないことが明らかになりました
全体の3分の1がこの秋の国会にそのような議案を提出する必要はないと回答し、約40%はわからないと答えています。
安倍氏が自民党総裁として第3期の任期まで手に入れたことは、その政治的地位が劇的に転換したことの証です。
2006年から2007年まで第一次安倍内閣では不祥事が相次ぎ、選挙では致命的な敗北を喫するなど散々な結果に終わりました。
2012年に再び首相の座に返り咲くと、安倍氏はアベノミクスと名づけた経済政策の下で低金利政策と財政出動(主にインフラ整備)政策を推進し、経済再生に焦点を当てました。
二度目の安倍内閣の下で、自民党は衆参両議会における支配力を強固なものにしました。
「2012年に首相の座に返り咲く以前、安倍氏は成熟したスキルを身につけていました。」
京都大学で国際政治を専攻する中西寛教授がこう語りました。
「安倍首相の権力基盤は経済にあると考えられます。」

しかし減少と高齢化が同時に進行する人口問題、国家的経済規模の2倍以上にまで膨らんでしまった財政赤字ということを考えると、そしてもし世界規模の貿易戦争が拡大激化する方向に向かうことになれば、安倍首相の意のままになる分野は極めて限られたものになるはずです。
「ここから先には懸念材料がたくさんあります。そして安倍首相はすでにアベノミクスを通じて、広げられるだけ手を広げてきました。」
元衆議院議員で早稲田大学社会科学部教授中澤幹子氏がこう語りました。
「安倍首相はすでに使えるものはすべて使い切ったはずです。」
これまで日本の一般市民は安倍氏の経済政策の恩恵を受けてきたと必ずしも感じていません。
「何も変わりませんでした。」
東京に隣接する埼玉県在住の養護老人ホームの管理人、石森美輪さん(46)がこう語りました。
「少なくとも給料は上がりませんでした。私は安倍さんには社会の下の方で暮らしている人々の面倒をもっとちゃんと見てほしいと思っています。」

安倍首相はその経済計画の一環として多くの女性を職場に進出させ、女性たちが「輝く」社会を作り出すことの重要性を訴えてきたはずでした。
しかし批評家たちはその遅々として進まない進捗状況を指摘しました。
世界経済フォーラムのグローバル・ジェンダー平等性ランキングで、日本は144カ国中114位というのが現実です。
この事実についてワシントンにある外交問題評議会の日本専門家であるシーラ・A・スミス氏は次のように語りました。
「社会における女性の役割についての疑問に関し、安倍政権は私が思っていたよりもはるかに社会保守主義的傾向にあると思われます。」
野党の力が極端に弱い日本で安倍氏の政権運営が長期に及ぶことについては、安倍氏とその与党があまりにも多くの力を持ちすぎるという懸念が生じています。
「これだけ長く首相の座に留まり続けたら、もう誰も「いいえ」と言えなくなる状況に陥ってしまうのではないでしょうか?それが心配です。」
東京都内の歌舞伎劇場で助手を務める岩崎紀子(46)さんがこう語りました。
「首相の権力が強くなりすぎて、周りにはイエスマンしかいなくなる。そんなことで大丈夫なのでしょうか?」

しかし国際情勢が混沌とする中、国内的には政権が転覆するよりはましだとする意見もあります。
東京都内のデパートの生鮮食品売り場に勤務する天野進(57)さんがこう語りました。
「私たちの生活はそれほど素晴らしいとは言えませんが、悪いという程でもありません。」
「あまり急激に変わっても困りますから。」
[完]
https://www.nytimes.com/2018/09/20/world/asia/japan-shinzo-abe-election
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これから3年安倍政権が続いて本当に日本は「変わらない」のでしょうか?
心ある人々が懸念しているのは、その逆なのではないでしょうか?
平和憲法の下での日本は、ベトナム戦争のときもアメリカにどれほど圧力をかけられても『派兵』だけはできませんでした。
おかげで日本はベトナムの地で太平洋戦争で犯した過ちを繰り返すというリスクを回避することができたはずなのです。
戦場は人間の感覚を狂わせてしまいます。
ベトナムの地ではアメリカ軍はもちろん同盟各国の兵士たちも精神を壊し、現地で残虐な行為をするのみならず、狂気と荒廃を母国に持ち帰ることになってしまいました。
ベトナム、イラク、アフガニスタン…アメリカは大規模な海外派兵を重ねていくにつれ軍産複合体が影響力を強めていく一方で、心を壊し、結果的に人生まで壊してしまう人間の数が増え続けていったはずなのです。
戦争そのものに崇高さなどありません。
ドキュメンタリーではありませんが、『プライベート・ライアン』『バンド・オブ・ブラザース』『シンドラーのリスト』等々、繰り返し描かれてきたのは極限状態に置かれた人間同士が最後まで心を通い合わせる『人間としての崇高さ』であって、戦争そのものは野蛮で残酷で、しかも愚劣きわまりない行為です。
それを美化する人間を首相として据え置くことの危険きわまりなさを、自衛隊は正義軍となった以上徴兵は当然だと言い出しかねない状況を作り出すことの危険さを私は憂えています。
自ら膨らませた財政赤字、追い詰められる国民生活、トランブ政権からの強力な圧力 - 得点の無いアベ政治
多方面に影響が及んだ森友・加計スキャンダル、成長しない日本経済、性差別…混迷する日本の社会と経済
モトコ・リッチ/ ニューヨークタイムズ 2018年9月20日

安倍晋三首相は9月19日、自民党総裁選挙で勝利を収めたことにより念願の日本の政治史上最長の首相になる可能性が現実のものとなったと同時に、宿願である平和主義憲法の改定に向けた意欲をたくましくしています。
安倍首相は相次いだ自分と関係のある政治的スキャンダル、停滞しままの労働者の賃金、そして特に北朝鮮の核開発問題に関すして明らかになったトランプ大統領に対する影響力の低下などいくつものマイナス要因を抱えながら、一人だけの対立候補に勝利しました。
この勝利により自由民主党総裁としての新たな3年の任期が63歳の安倍氏に与えられ、自動的に首相としての留任が保証されます。
2012年12月に選出されてから7年後の2019年11月まで在職していれば、20世紀初頭の明治時代に首相としての長寿記録を作った桂太郎を上回ることになります。
しかし安倍首相は幾つもの困難な課題を抱えこんでいます。
増え続ける国家的債務、気候変動に起因するとみられる自然災害の脅威の増大、急速に高齢化が進む社会、2020年の東京オリンピックなど見渡せば数かぎりない課題に直面しています。

安倍氏は自民党総裁の就任演説でこう語りました。
「みなさんと協力して、子どもたちの世代が希望と誇りを持てるような日本を引き継ぐため、全力を尽くしたいと思います。」
政治アナリストたちは安倍氏が安定した立場を利用して強い政治力を発揮できる背景にあるのは、それ以前めまぐるしく首相が交代することに日本国民が疲れてしまっていたという事情だと分析しています。
第二次世界大戦以降、日本の総理大臣の平均在任期間は約2年です。
一方の安倍氏は来年末までに首相に留まっていれば、第一次安倍内閣時代を含め在任期間が約8年の桂太郎を超えることになります。
安倍氏に批判的な人々は、多方面に影響が及んだスキャンダルや経済成長の低迷、あるいは長年約束してきた性差別撤廃のための対応に失敗するなど、事態がもつれてしまっていることに失望しています。
しかし今回対立候補として立候補した元防衛大臣の石破茂氏は、方針変更を正当化するだけの十分な支持を集めることはできませんでした

ワシントンにある外交問題評議会の日本専門家であるシーラ・A・スミス氏は、次のように語りました。
「日本の人々は安倍首相の3選を必ずしも手放しでは喜んでいないでしょうが、それじゃあ誰だったらもっとうまくやれるのか?答えを知っている人はいないと思います。」
「それが自民党内であろうと日本の有権者全体の話であろうと、トランプ政権の問題を別にしても目下日本が直面している全ての課題を考えれば、今はみんながリスクを回避することを優先すべきだと考えているのだと思います。」
トランプとの親密な関係構築を絶え間なく続けてきた安倍氏は、ニューヨークで開催される国連総会への出席の機会をとらえトランプとの首脳会談を行う予定です。
安倍首相は日本製の自動車関連製品に輸入関税を課すと脅かすトランプ政権の声明を受け、日米の二国間貿易交渉を受け入れるよう圧力を受ける可能性もあります。
トランプは大統領に就任してわずか1週間のうちに包括的貿易交渉であるTPP(環太平洋パートナーシップ)からの米国の離脱を決めましたが、安倍首相はアメリカを再び交渉に参加させるべく日本を率いてきており、二国間貿易交渉を諦めさせるためには合理的説明を求められることになるでしょう。

国内では、戦後アメリカによって占領されていた1947年に制定された日本国憲法の戦争放棄を宣言する条文の改定に着手しようとした段階で最大の試練に見舞われるでしょう。
安倍首相は自民党総裁選で3選を果たした際、「皆さんと一緒に憲法改正を進めたい」と述べました。
彼の祖父である岸信介元首相も平和憲法の平和主義条項の改定に取り組みましたが、失敗しました。
それゆえ、憲法の改定は安倍首相の最大の宿願となっています。
しかし事情に詳しい人々は、いかなる内容であっても憲法を改定するためには議会だけでなく一般国民の幅広い支持が必要であり、安倍首相は無視できないリスクに直面することになるだろうと見ています。
慶応大学で国際政治を専攻する細谷裕一教授が次のように語りました。
「もし国民投票で支持を得られなければ、憲法改正は安倍首相にとって自殺行為になるでしょう。」
《後編に続く》
https://www.nytimes.com/2018/09/20/world/asia/japan-shinzo-abe-election
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アベ3選の先に何があるか?
あってはならないのは私たちの生活の根本的転換、質的転換です。
憲法の改定は私たち戦後日本の社会と経済を大きく変えてしまう可能性、否、危険性があります。
今の日本社会は変わるべきなのか?
現代の世界事情と齟齬があるとしたら、それはどの点なのか?
『厳しさを増す安全保障環境』とは具体的に何を指すもので、現状のままでは状況はどのように変化する可能性があるか…
等々、憲法を変えるというのであれば、こうした問題について綿密で丁寧な議論が必要です。
それが「自衛隊は一生懸命やっているのに今のままではかわいそうだから、憲法に自衛隊は日本の正規軍だと明記しましょう。」
などというのは議論でもなんでもありません。
議論というのはそういうものではありません。
民主主義国家の首相の発言とは到底思えません。
経済再生の公約をかなぐり捨てて改憲に向かうことは、日本の将来にとって最悪の選択
憲法改定より経済改革をまず達成しなければ、無駄に長く政権にとどまった人物として歴史に名を残す
エコノミスト 2018年9月20日

前任者までは日本の首相はすべて短命に終わってきましたが、安倍晋三氏は前任者の5人と比べるとはるかに長い期間首相を務めています。
今週は自民党総裁に3期連続での勝利をやすやすと手にしました。
昨年行われた衆議院議員会選挙での自民党の圧勝を考えると、安倍氏は2021年まで首相を続けることは確実な状況です。
彼が新に手にした任期を全うすると、彼は1885年に日本の内閣制度が創設されて以降最長の任期を務めた首相ということになります。
彼の下で衆議院選挙では3度、参議院議員選挙では2度の勝利を手にしました。
連立与党の議席を合わせると、安倍首相は国会の3分の2以上を手中にしています。
最も印象的と言って良いのは、自民党の体質的弱点ともいうべき派閥争いを許さなかったことでしょう。
自らが関係する様々なスキャンダルが明るみに出たにもかかわらず、自分自身が3期目の首相を務めることができるように党則の変更を仕組んだため、権力をしっかりと手中にしています。
安倍氏は3選を果たしました。

安倍氏はかつて無いほど強いこの権力を、経済政策を完成させるために利用すべきです。
代わりに日本の平和主義憲法を改定することに目の色を変えれば、泥沼に足を取られ身動きできなくなるでしょう。
安倍首相の長期政権はそれなりに日本に貢献し、政策立案の一貫性を可能にしました。
何十年もの長期間不況に在った日本のGDPは、ゆっくりとですが成長しています。
インフレ率は低いままですが、、安倍氏の在任期間の大部分において経済動向については少なくともポジティブであったと言うことができます。
そのパフォーマンスによって得られたものを見る限り、安倍氏の政権運営は1980年代以降最もうまくいったものの一つです。
それを実現させたものは大規模な財政出動と最大限の金融緩和政策であり、この2つが安倍政権の経済政策のすべてでした。

的を外れた『3本の矢』
安倍氏の下で日本は世界紛争において軍事力の行使を想定した役割を演じようとしています。
安倍首相は日本の「自衛隊」をさらに強力なものに仕上げ、国連平和維持活動に参加すべく海外の紛争地帯に送り込みました。
そして9月中旬、中国の力で勢力範囲を拡大しようとする行動への広範な対抗措置の一環として、安倍政権は戦後初めて南シナ海に潜水艦を派遣することを承認しました。
そして同盟国が攻撃を受けた場合、これまではタブーとされてきた軍事的援護を可能にする安全保障関連法案を可決成立させました。
安倍首相はさらに常設の軍隊の保持を禁止する現在の憲法を修正し、すでに既成事実化している「自衛隊」の常設軍としての地位を法的に明快なものにしたいと考えています。
これは中国の軍事的台頭という点を考えると、まったく合理的な考えです。
しかし憲法の改定は言葉以上に日本では複雑な問題です。
それはそのまま戦前の軍国主義国家同様の侵略的海外政策のイメージにつながるためです。

安倍首相は第3期の在任期間のうちに比較的容易に国会議員と国会の同意を得て国民投票に持ち込み、憲法改定を実現できると考えているかもしれません。
その考えは間違っています。
安倍首相は外交分野において日本も米英のような武断的政策を実現できるようにしたいと意欲を燃やしているのかもしれませんが、日本に最も必要なのは「あたりまえの」経済です。
安倍首相がさんざん宣伝してきた政策 - アベノミクスは未完成です。
財政出動と大規模金融緩和、その最初の『2本の矢』は最も重要な第3の矢の政策、すなわち永続的な日本経済の成長を可能にするための本格的な構造改革に着手するまでの時間を稼ぐためものであったはずです。
確かにいくつか着手したものもあります。
安倍首相はTPP交渉の合意によって、これまで日本政府の手厚い保護のもとにあった日本の産業界を本格的国際競争の場に立たせるため12カ国の国が参加したTPP交渉を妥結させました。
ただしトランプのアメリカは安倍首相の説得にもかかわらず途中で手を引きました。

また年金支給開始年齢の引き上げや年金受給者の医療費負担額の増額などにも取り組むなど、多様な政策を実行することを公約しています。
安倍首相がまずしなければならないことは、こうした公約を現実のものにすることです。
さまざまな分野で、安倍首相の改革はあまりにも後手に回り続けています。
人口の減少が続く日本では、女性の社会進出を容易にしなければなりません。
しかし安倍首相は保育所の数を増やすことしかやっておらず、それすら満足なものではありません。
安倍首相は日本の一般市民に移民政策が日本経済に貢献しうるという説得さえしようとはしませんでした。
代わりにひそかに訓練生としての短期滞在労働を認めはしたものの、それではせっかく日本語を学んでも長く滞在することはできません。
一方、労働市場は過度な規制が敷かれたままです。
労働者は一旦雇い入れると解雇することが難しく、税法上も既婚女性がフルタイムで働くことは不利なままです。
とどのつまり安倍政権は日本の労働者と同じく、長期政権でありそれなりのスキルがあるにもかかわらず、生産性は不十分です。

安倍首相はその政治力を本来向けるべき方向に向けるべきです。
経済改革は憲法改定よりも優先すべき事項です。
それは日本が中国に対等に渡り合っていくためには今以上の経済力が必要であるということだけが理由ではありません。
さもなければ安倍氏は長期政権を実現させた首相としてではなく、大切な時間を無駄に費やしただけの人間として歴史に名を残すことになるでしょう。
https://www.economist.com/leaders/2018/09/22/japans-prime-minister-is-more-of-a-survivor-than-a-reformer
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これまで訳した記事を見る限り、日本が採るべき経済政策に関するエコノミストの主張は一貫しています。
完全自由化と合理化です。
しかしそれには大きな痛みが伴い、生活の基盤を脅かされてしまうという人々も少なくないでしょう。
それを国民を追い詰めることなく、いかに日本経済と世界経済の潮流との整合性を取っていくかというのが善政のはずです。
ところが安倍首相の本音は改憲一本槍であり、経済政策はそこに国民の支持をつなぎとめるための表看板にすぎません。
そのために安倍政権の経済政策は他人任せでおざなりです。
張り切って『財政出動』するのは決まって国政選挙の後であり、『大型景気対策』と銘打ったその中身は選挙で自分たちに票を入れた支持層に対する税金を使ったバラまきです。
これで日本経済の本当の改革が実現できるはずもありません。
現に私たちの生活は所得税に住民税、健康保険料に介護保険料に厚生年金、どんどん重くなるばかりです。
その先に合理的な解があるのならまだ我慢もできますが、皆さんはアベ政治の先に多くの一般市民が納得できる合理的な日本があるとお考えですか?