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【 安全保障関連法案は軍事的台頭を続ける中国に対し、効果的な一撃となり得るのか? 】

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台頭する中国の軍事的圧力の前に、国力の減衰を続ける日米両国の窮余の一策?
法案成立は多くの日本人の心の中に怒りの火を点じ、湧くような批判を煽ることになった
飽くまで日本を掩護するという政治的意思が、将来もアメリカに確実に存在し続けるのかどうか…

ドイチェ・べレ(ドイツ国際放送) 9月18日

海上自衛隊01
日本の参議院は、第二次世界大戦(太平洋戦争)以降、自衛隊の国外での戦闘行為に対する厳しい制限を取り払うための法律を可決成立させました。
この法案に対しては、国際紛争に進んで参加するという政策に疑問を持つ平和主義者や国民による大きな抗議活動に発展していました。

詰め寄り群がる野党議員たちを無視し、この日の未明安倍晋三首相の連立与党によって支配される参議院は、論争の的となる請求にその最終的な承認を与えました。
安全保障関連法案成立後の記者会見で安倍首相は
「国民の生命と平和な生活を守り、戦争を防ぐ目的のために必要な」法案だと強調したことをロイター通信社が伝えました。

しかしこの法案成立は多くの日本人の心の中に怒りの火を点じ、湧くような批判を煽ることになりました。
国民は国際紛争の場で、日本がより大きな軍事的役割を演ずることになることを恐れています。

安全保障法案04
新しい法律の下では日本に対する直接的脅威が発生していなくとも、自衛隊の名で知られる軍隊はアメリカを始めとする同盟国の援軍として戦闘行動を行うことが出来るようになります。

第二次世界大戦(太平洋戦争)の敗戦後に制定された憲法により、日本には自国に対する直接攻撃が行なわれた場合にのみ軍事力を行使できるという厳しい制限が課されることになりました。
しかし安全保障関連法案の成立により、日本は集団的自衛権の行使が認められることになり、同盟国の軍隊の援護を目的とした軍事力の行使に道が開かれることになりました。

▽軍事拡大路線への転換

イラクも含めこれまでも日本は国連の平和維持活動に参加してきましたが、これまでの日本の政権は海外での自衛隊の活動については、どれ程戦闘の危険があってもすべて日本国憲法による厳しい制約の下で行ってきました。

新たな法制度の下では日本は自国を目標としたものでなくとも、飛来するミサイルを途中で補足・撃墜することが出来るようになります。
また同盟国の軍艦が攻撃されれば、自衛隊はその掩護のため合法的に戦闘を行う事が可能になります。
ただし日本に対する「差し迫った重要な脅威」が発生していると判断された場合に、こうした行為が可能になります。

安全保障法案05
法案の成立に反対する人々は規定している内容があまりにも漠然としており、将来の政権担当者が解釈次第でどのようにも運用できる危険性を指摘しています。

多くの日本人は第二次世界大戦(太平洋戦争)後に平和で繁栄した社会が70年間続いた挙句、平和主義的方針のいかなる変更であれ、日本が国際紛争に巻き込まれる事態が発生することになることを懸念しています。
日本では安全保障関連法案の成立に反対する一般市民による大規模な抗議行動が、この数カ月間続いています。

これに対し政権側は北朝鮮や台頭を続ける中国の脅威に対抗する上で、積極的な軍事活動を行う事は平和の維持に貢献すると主張しています。

9月17日木曜日、渦中の安全保障関連法案は参議院の委員会で採択され、戦いの場は本会議場に移りました。
委員会の席では日本の政治シーンとしては異例の場面が展開され、法案の強引な可決に反対する野党議員は参議院の廊下に詰めかけ、採択を阻止するため深夜まで委員長の周囲を取り囲み抗議を続けていました。

安全保障法案03
アジア太平洋地区におけるアメリカの覇権に対抗すべく軍事的台頭を続ける中国に対し、効果的な一撃を模索していたアメリカ政府は、日本の安全保障関連法案の可決成立を歓迎しました。

将来日本が武力攻撃を受けた場合、アメリカは日米安全保障条約に基づき日本を防衛するために戦闘行動を起こさなければなりません。
しかし実はアメリカ国内には、その時点でそれだけの国力を維持できているかどうか、あるいは飽くまで日本を掩護するという政治的意思が本当にあるのかどうか、疑問視する声があります。

http://www.dw.com/en/japans-parliament-approves-controversial-security-bill/a-18722083
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【 10月8日の報道写真から 】

アメリカNBCニュース 10月8日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

難民03
10月8日ギリシャのレスボス島、トルコからエーゲ海を横断してきた定員オーバーのゴムボートから、難民の少女の上陸を手助けするボランティア。
今週末、EU首脳はイタリアとギリシャに滞留している数万人の亡命希望者を域内各国に移転させることに各国が合意したため、計画を実施に移すと発表しました。
http://www.nbcnews.com/news/photo/today-pictures-october-8-n441431

【 難民の受け入れよりも、優先すべきことがある 】

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日本もシリア、イラク難民を受け入れるよう求める声に、安倍首相は日本人の生活水準を改善することの方が先だと回答
大規模な移民の受け入れと、それに伴う日本国内での生活文化の変化について公の議論を行う事はタブー

ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 9月30日

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これまでわずか11人しかシリア難民を受け入れていない日本の政策に対する批判について、安倍首相はそうした批判はあたらないとする見解を示しました。

中東で大量の難民が発生している問題で16億ドル(約1,920億円)の資金援助を発表した後、紛争に巻き込まれ国外への脱出を続けているシリア、イラク難民を日本も受け入れるよう求める声に対し、安倍首相は日本人自身の生活水準を改善することの方が先だとする回答を行いました。

ほどほどの人数であっても難民の受け入れについて安倍首相は一貫して拒否し続けており、亡命者の保護に関する日本の厳しさに対する批判が高まっています。
昨年日本は5,000人という記録的な数の難民申請を受け付けましたが、許可されたのはわずか11人に留まっています。
ニューヨークの国連総会の演壇で安倍首相は、出生率の低下による少子化問題と人口高齢化によってもたらされる危機、そして労働市場に出来るだけ多くの女性の参加を促す政策に日本は何よりまず取り組まなければならないと主張しました。

Day09
「これは人口統計学の問題です。」
安倍首相は国連総会での演説の後、記者団の質問にこう答えました。
「移民や難民を受け入れる前に、日本は女性や高齢者がもっと活躍できる社会を作る必要がある、そして出生率をもっと上げるべきだと私は考えています。移民や難民を受け入れる前に、日本には優先して取り組まなければならない数多くの課題があるのです。」
日本は国連の常任理事国入りを目指していますが、難民問題の発生原因について、
「日本は我々自身が果たすべき役割を果たすつもりだ。」
と付け加えました。
「日本は難民を生み出している状況を改善することに貢献したいと考えています。今日の事態を招いているのは暴力とテロリズムに対する恐怖です。国際社会は彼らが貧困から抜け出すための道筋を見つけ出す必要があります。」

日本の最新の援助パッケージは、シリアとイラクにおいて戦争と混乱から逃れるために難民化した人々、そして避難を強いられている人々への援助として昨年実績の3倍の額8億1000万ドル(約970億円)、 そして中東・アフリカにおける平和を構築するための活動資金として7億5000万ドル(約900億円)を提供することになっています。

Mig 2
人権保護団体は日本、そしてロシア、シンガポール、韓国などの高額所得国の実態をハイライトしました。
これらの国々は第二次世界大戦以降最悪の状態になっている、中東の周辺とヨーロッパの各国大量の難民の流入圧力を軽減するためにはほとんど協力していません。

日本は国連難民機関に米国に次ぐ多額の資金提供を行っていました。
その金額は1億8160万ドル(約220億円)に上りましたが、シリアやその他の地区から逃れてきた難民を直接救済することについては、その気前の良さ程の熱意は示しませんでした。

すでに日本国内で生活しているシリア難民60人のうち、難民申請が受理されたのは3人です。
そして日本の難民支援協会によると、約30名に人道的理由により長期滞在許可が与えられました。

日本国内の専門家は来たるべき数十年間に、日本の人口が劇的に縮小すると警告しています。
それは労働人口の減少にもつながり、年金生活者の増加に伴い社会保障費もかつてないほど膨らむことになります。

シリア難民 3
しかし、この問題を解決するための現実的な選択肢として、移民の受け入れを提案する日本の政治家はほとんどいません。
「目前に迫っている劇的な人口減少は日本にとって危急存亡とも言うべき重大な問題ですが、その解決のための具体的選択肢として大規模な移民の受け入れと、それに伴う日本国内での生活文化の変化について公の議論を行う事は、日本においてはほとんどタブーに近いものです。」
静岡大学の現代日本文化史学のMGシェフトール教授がこう語りました。
「日本では、政界の大物がこの問題を持ち出すことは政治的な自殺行為になりかねません。」

欧州評議会のドナルド・タスク議長は、具体的国名には一切言及しませんでしたが、ヨーロッパ諸国に対し十分な難民を受け入れていないと批判しておきながら、自分たちは一切難民を受け入れようとはしない湾岸諸国の「偽善」について、厳しい口調で非難しました。
「湾岸諸国に代表されるこれらの国々はきわめて単純明快な方法でこの問題に対処しています。
すなわち難民にも移民にも、一切自分たちの国土に足を踏み入れることを許さないというやり方です。」

http://www.theguardian.com/world/2015/sep/30/japan-says-it-must-look-after-its-own-before-allowing-syrian-refugees-in

【 なぜ彼らは戦争を欲するのか?! 】《6・最終回》

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突如やってきて無警告殺害を実行するドローン…アメリカの『対テロリスト』軍事作戦に苦しむパキスタン国民
一歩間違えば核兵器保有国同士の全面紛争に発展する危険があった、ビン・ラディンの殺害作戦

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ノーム・チョムスキー / ガーディアン 2014年8月6日

アメリカ合衆国現職のバラク・オバマ大統領は、核兵器の廃絶という平和を願う市民なら誰もが歓迎する提案を行いました。
しかしこの提案と同時にオバマ大統領は、これからの30年間アメリカが現有する核兵器を維持するために1兆ドルの予算をつぎ込むことに同意していたのです。
モントレー国際研究所のジェームズ・マーチン核拡散防止推進センターの研究によれば、オバマ政権の軍事予算の予算総額に占める割合はロナルド・レーガン政権時代とほぼ同じ規模です。

オバマ大統領は自らの政治基盤を強くするために、危険な賭けをする事にもためらいを見せませんでした。
その代表的なものがネイビー・シール(海軍特殊部隊)によるウサマ・ビン・ラディンの殺害です
オバマ大統領は2013年5月、暗殺が成功したことについて国家安全保障にとっての重要な成果だとする演説を行いました。
この演説は世界中の報道機関が大きく取り上げましたが、そのほとんどがある重要な一節を見落としていました。

オバマはこの作戦の成果を歓迎しましたが、こうした手法が今後の規準にはならないと付け加えたのです。
その理由は『危険が大きすぎる』というものでした。

ビン・ラディン殺害
特殊部隊による攻撃は、より大規模な銃撃戦に発展してしまう危険性がありました。
幸いそうはなりませんでしたが、
「パキスタンとの外交関係、そしてパキスタン市民の対米感情の悪化は見過ごせないレベルにまで大きいものなってしまいました。厳しい現実が待っていました。」

一般には知られていない2、3の事実についてご説明しましょう。
特殊部隊はウサマ・ビン・ラディンを確保したら直ちに撤退するよう予め命じられていました。
もし「大規模な銃撃戦に発展してしまっていたら」、特殊部隊の任務も安全もまったく違ったものになっていたに違いありません。
そしてアメリカ軍はすべての力を、特殊部隊の救出に向けなければならなかったでしょう。

独立国家であるパキスタンは、強力な、よく訓練された常設の軍隊を持っています。
しかもパキスタンは核兵器保有国です。
一方で狂信的イスラム教徒であるジハード戦士やその関係者が、パキスタンの核兵器セキュリティ・システムに侵入してくることを絶えず警戒しなければならない状況にあります。

パキスタンの国民が突如やってくる無人攻撃機ドローンによる無警告殺害を始めとするアメリカ政府の『対テロリスト』軍事行動に苦しみ、反米感情が高まり先鋭化していることは秘密でも何でもありません。

kobani04
アメリカの海軍特殊部隊がまだビンラディンの隠れ家で作戦を遂行していたまさにそのとき、パキスタンの総参謀長は急襲作戦が実行されていることを把握していましたが、パキスタン軍に対し「どんな未確認の航空機に対しても、必要な対応措置」をとるよう命令しました。
彼は対立関係にある「インドからの攻撃である可能性がある。」と部下たちに説明しました。

一方隣国のアフガニスタンのカブールでは、駐留しているデイビッド・ペトレイアス米軍司令官が、もしパキスタン側が「ジェット戦闘機を緊急発進させた」ならば場合には、直ちに「対応軍事行動をとるよう」指揮下の戦闘機部隊に命じていました。

後にオバマ大統領が語ったように、運にめぐまれたおかげで、最悪の事態は起こりませんでした。
しかし一歩間違えば核保有国同士の全面衝突に発展する危険性がありました。

パキスタン軍
そして以下のバトラー将軍の懸念が現実となって繰り返されてきたことを、痛感せずにはいられません。

「これまで人類が滅亡せずに済んだことは、奇跡に近いと言わなければなりません。
しかし幸運などというものは、いつまでも続くものではありません。
これから先も私たち人間が必要な努力をするのではなく、神のご加護に頼り、奇跡が永遠に続くことを願う、そんなことでいいのでしょうか?」

〈 完 〉
http://www.theguardian.com/commentisfree/2014/aug/06/hiroshima-day-nuclear-weapons-cold-war-usa-bomb
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安全保障関連法案に関する掲載をいったんお休みして、【 なぜ彼らは戦争を欲するのか?! 】最終回を掲載させていただきました。
思い出したことがあります。
この【星の金貨】でご紹介したかどうかは思い出せないのですが、アメリカ・ロシアを合わせると地球上の全人類を(確か…)35回皆殺しできるだけの核兵器を保有している、という事実です。

軍事上のパラノイアというものが、つくづく常軌を逸したものだという事を痛感します。
健全な社会を築くという事は、こうした類いの人間を決して権力に近づけてはならないという事と同義ではないでしょうか?

安倍首相のタカ派的防衛政策、その展望と目的に疑問!

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一流の平和主義国家であった日本が、なぜ二流の軍事国家を目指さなければならないのか?
続く市民たちの抗議、中での激しい応酬、国民の多くが安倍首相の本当の展望と目的に疑問

              

ジョナサン・ソブル / ニューヨークタイムズ 2015年9月20日

                     

国会で日本の戦闘行動を可能にするための法案が可決されようとしていたその直前の金曜日夜、数万人の市民が国会議事堂の周囲に集まりました。

その日の深夜、法案の成立に反対する野党の議員たちの必死の戦いも虚しく、安倍晋三首相は数十年間続いた自衛隊の役割を日本の防衛のみに限ってきた法体系をひっくり返し、一連の安全保障関連法案を成立させ、自衛隊による国外の戦闘行動を可能にする道を開きました。

                  

一連の法律の成立ははじめからわかっていました。
安倍首相の与党は衆参両院において、絶対多数の議席を確保済みだったからです。

          

しかしアナリストは、国会議事堂の中では激しい応酬が繰り広げられ、議事堂の外では何日間も多くの一般市民が抗議の声を上げ続け、これにより国民の多くが安倍首相のタカ派的な防衛政策の展望と目的に疑問を抱くようになり、それに伴い政権の支持率も低下していると指摘しました。

テレビ放送された議論では日本の最重要同盟国、すなわちアメリカ合衆国についての見解をめぐっても戦われましたが、その多くは否定的なものでした。

              

                    

「この法律が通ってしまえば、日本は大義なきアメリカの戦争に絶対に巻き込まれてしまいます。」
小さなリベラル派野党のリーダーである山本太郎議員は17日の国会の委員会質疑の場でこう主張しました。
しかし結局この日の議論は委員長が一方的に質疑の打ち切りを宣言し、詰め寄った議員たちとこれを阻止しようとする与党議員たちが折り重なるようにして乱闘する場面で終わりを迎えました。

                  

金曜日の本会議で山本議員は、投票と議案の成立をなんとか遅らせようとして、投票の際に牛歩戦術を行いました。
他の反対派の野党は安倍首相や自民党閣僚に対する問責決議案などを提出、あるいは議事の進行を遅らせるため、日本の軍事行動の範囲を拡大することはアメリカが行う大義のない戦争に巻き込まれる危険性が増すだけだという確信について度々繰り返す長時間のスピーチを行いました。

                    

「私たちは殺人の共犯者になるべきではありません!」
社民党の福島瑞穂議員はこう主張しました。
同じ趣旨の発言はより抑えた表現で繰り返されました。
各新聞の論評、政治学者や一般市民が設立した団体のメンバーたちによって。

反対の妨害者戦術は午前2時過ぎまで安倍首相の勝利を遅らせましたが、阻止するまでには至りませんでした。

                     

                  

安倍首相に批判的立場をとる人々は、安全保障関連法案について様々な角度からの問題を指摘しています。
そもそも憲法違反だという法的安定性の問題だけにとどまりません。
複数の調査において、憲法専門家の90パーセント以上が安全保障関連法案が日本の基本的な法律である憲法に違反していると考えていることが明らかになりました。
日本国憲法は第二次世界大戦後のアメリカ軍の占領下で起草され、国際紛争の解決手段としての戦争を放棄しています。

                

しかしアメリカが世界各地で行っている「戦争に巻き込まれる」という懸念は日本にとって漠然としたものではなく、日米同盟に関する問題などは普段あまり関心を持たない一般市民が、安全保障関連法案には反対する強い動機にもなりました。

                

日本はアメリカ合衆国による占領終了後、いわば永遠にアメリカの保護を受け入れ、原罪は日本国内に約40,000人以上の米国軍人が配置されています。
それでもここ日本においては多くの人が、今回の法案の成立により日本は平和主義国家としての独立性を犠牲にすることになったと考えています。

                   

今や日米同盟において日本はアメリカの保護を受ける見返りに、要請を受ければいつでも兵士を危険な場所に送り込む、これまでにない重要な役割を引き受けることになりました。

「日本は常に日米同盟のしがらみと、アメリカに見放されたらどうしようという恐怖の間を行ったり来たりしています。」
東京財団政策研究グループの上級研究員の渡邉恒雄氏がこう語りました。
「その理由の一つが自国の政府に対する不信感です。日本国民は米国にはノーと言えるほどのリーダーは日本にはいないと考えています。」

                               

                 

しかし多くの日本人が疑問に感じていることがあります。
安倍首相の主張通りに戦争行為に対する厳しい制限を緩めれば、日本はアメリカと対等な立場に立つことができるのでしょうか?
そして批判的意見が指摘する通り、アメリカ政府が手を引くと同時に、代わって日本は『東アジア地区の警察官』として巨額の国費を投じ、新たに大きな軍事的プレゼンスを形成するつもりなのでしょうか

 

安全保障関連法案に最も強力に反対しているのは主にリベラル系の政治家や平和運動家などですが、実はそれだけではありません。
安倍首相よりも一層強硬な保守派の人びとも、この法案がもたらす結果に懸念を抱いています。

               

右派の著述家で漫画家でもある小林よしのり氏もその一人です。
小林氏は外国人特派員協会の会見場で、安倍首相の政策に反対であることを表明しました。
「日本はアメリカが行なう侵略戦争に、巻き込まれるべきではありません。」

                 

小林氏の発言はイラク戦争を念頭に置いたものですが、少なくともベトナム戦争以降、アメリカが行なってきた戦争には多かれ少なかれこうした疑いがついて回りました。
この戦争では日本政府はアメリカ合衆国を支持することを繰り返し表明し、自衛隊の名で知られる軍隊をアメリカ占領下のイラクに派遣しましたが、再建事業など非戦闘行動に活動を限定していました。

               

                  

小林氏は法制度の変更の本来の目的は、日本周辺での偶発的事態の発生に対し日米両軍が連携して対応できるようにするためのものであるべきだと語りました。
小林氏は不安定な朝鮮半島を実例として挙げ、日本から遠く離れた場所の紛争には巻き込まれないようにするべきだと語りました。
そして軍事情勢のもつれは日米双方にとって危険なものだと語りました。
例えばアメリカ政府内には、東シナ海の尖閣諸島を巡る日中両国の紛争に巻き込まれることを警戒する意見があります。
「そうした意見は日本国内では聞かれません。」
藤原氏がこう語りました。
「日本国内で聞かれるのは、もし可能性があるとすれば、アメリカが日本を戦争に巻き込むだろうということです。」

                   

安倍政権は、新しく成立させた安全保障関連法案の中で自衛隊の軍事行動の範囲に関する制限を一応維持しました。

                   

安全保障関連法案の成立により自衛隊は同盟軍を防衛するための海外での戦闘行動が可能になりますが、それには他に平和的解決手段がなく、そのままでは「日本国民の生命と日本国の存立が脅かされる場合」という制限がつけられています。
しかしこの基準は危険な程漠然としているという批判があります。

 

安倍首相はイラクの場合のような戦争に日本が巻き込まれることは『考えられない』と語ったことがありますが、いったん安全保障関連法案が成立すれば歯止めがきかなくなるという多くの一般市民の懸念を拭い去ることはできませんでした。
5月に報道機関などが行なった各種の世論調査の結果を見ると、安倍首相のこのいわば『約束』を信用すると答えたのは6人に1人という割合でした。

               

                    

                  

金曜日夜、国会議事堂周辺で抗議活動をしていた人々はこうした疑いを当然のように抱いていました。
参議院での投票に先立つ3日間、国会周辺には警察と日本のニュースメディア発表で、ピーク時で10,000~30,000人の市民が抗議のため集まってきました。

「アメリカの力は総体的に弱まり、巨額の軍事負担を賄いきれなくなっているため、日本にその一部を肩代わりするよう求めてきているのでしょう。」
東京の北、栃木県から抗議活動に参加するためやって来た会社員の山之内武人さんがこう語りました。

「アメリカの要請に応じた日本が安全保障関連法案の成立を図っているという印象を私は受けています。」

                   

史学科の学生である馬場芳江さんは、日本が中東地区などでアメリカ軍の後方支援を行なえば、危険な敵対勢力を呼び寄せる結果につながることを懸念しています。
「日本がアメリカと同じ政治信条を持っているとみなされれば、英国など他のアメリカの同盟国と同様に、テロリストの標的にされてしまう危険があります。」
「私は、日本が紛争その他のトラブルに巻き込まれてしまうことを心配しています。」

            

                  

この安全保障関連法案は具体的にはどのような効力を発揮するでしょうか?
これらの法律が発効することで、日本の軍隊=自衛隊が国際紛争の場でアメリカや他の同盟国とより密接に共同作戦を実施することになります。

その中には国外で同盟国軍を掩護するために戦闘するという行為も含まれますが、それが許されるのは他の平和的解決手段を選択しようがなく、かつ『日本人の生命あるいは日本国の存立が脅かされている場合』に限られます。
現在の法体系では、日本は直接攻撃を受けない限り、武力を行使することはできません。

               

ではこれに対する賛成意見、そして反対意見にはどのようなものがあるのでしょうか?
安倍首相は第二次世界大戦(太平洋戦争)後にアメリカの占領下で起草された日本国憲法による制約の下では、現状の潜在的脅威には対応しきれないと主張しています。
さらに安倍首相は安全保障関連法案の成立は、日本を軍事的により一層アメリカと対等のパートナーにするものだとも主張しています。

                     

               

これに対し反対の立場を取る人々は、安全保障関連法案が憲法に違反し、日本を本来なら関わる必要が無い海外紛争に巻き込んでしまう可能性があると主張しています。

                    

日本国内では次にどのようなことが起きるでしょうか?
安全保障関連法案に関わる法廷闘争が展開されることが予想されます。
多くの憲法学者はこれらの法案は平和憲法に違反していると語っています。
しかしながらこれまで日本の裁判官は、安全保障問題について政府の方針に逆らおうとしたことはありません。

〈 完 〉

                  

http://www.nytimes.com/2015/09/19/world/asia/japan-parliament-passes-legislation-combat-role-for-military.
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イスラム国(ISIS)に対しアメリカを中心とする『有志連合』が空爆を続けていますが、一般市民が巻き添えを食う被害が拡大するばかりで、肝心の作戦は思うように進展していないようです。
かつてのイラク戦争の場合、相手はサダム・フセイン大統領旗下の正規軍であり、T60戦車程度の装備の主力軍を砂漠でも時速100キロで走行可能な最新式戦車エイブラムズやアパッチヘリを使って殲滅し、あとは作戦中枢さえ破壊してしまえば敵は機能しなくなってしまうという『容易さ』がありました。
しかしイスラム国(ISIS)のようなゲリラ部隊は、一個一個が頭脳をもって機能しており、結局は地上軍を投入して1対1の殺し合いを延々と繰り返さないと、作戦は完了させられません。

その地上戦でものを言うのが動員能力です。
日露戦争を例にとるとわかりやすいのですが、奉天会戦の後日本は動員能力が尽きかけていたのに対し、大国のロシアは完成したシベリア鉄道を使って満州の戦場にいくらでも戦場に兵を動員できるという状態にありました。
このため日本は講和を急いだのに対し、ロシア側は日本海海戦で主力艦隊が殲滅させられ日本の補給線を脅かすことが不可能になっていたにもかかわらず、交渉の場では終始強腰でした。

                

安倍政権は対中国を念頭に安全保障関連法案を成立させましたが、人口1億強、しかも高齢化と人口減少が続く日本が、人口13億、しかも経済規模と生産能力で日本を上回ってしまった中国を本当に仮想敵国にしてしまうことは戦略的にどうなのか、という事です。
国民に重税を課し、なお且つ公的負債を際限もなく増やして軍備の拡充をしても、限界は見えています。

全面戦争など想定していないというかもしれませんが、相手はそうは考えていないかもしれません。
第二次世界大戦(太平洋戦争)直前、盧溝橋で中国軍を相手に銃撃戦を始めた日本軍は、こうなった以上はいずれアメリカとの全面戦争に発展せざるを得ないと覚悟していたでしょうか?

                

要は戦争など絶対始めてはならない、という事ではありませんか?
前々回にご紹介したザ・インディペンダント紙(英国)の社説にあったように、世界一流の平和主義国家であり続ければ( http://kobajun.biz/?p=25106 )日本に武力で手出しすることは国際環境が許さなかったはずです。
しかし二流の軍事国家であれば、どうでしょうか?

一流の平和主義国家であることを捨てて、なぜ二流の軍事国家を目指さなければならないのでしょうか?

このサイトについて
ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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