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安倍首相のタカ派的防衛政策、その展望と目的に疑問!

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所要時間 約 16分

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一流の平和主義国家であった日本が、なぜ二流の軍事国家を目指さなければならないのか?
続く市民たちの抗議、中での激しい応酬、国民の多くが安倍首相の本当の展望と目的に疑問

              

ジョナサン・ソブル / ニューヨークタイムズ 2015年9月20日

                     

国会で日本の戦闘行動を可能にするための法案が可決されようとしていたその直前の金曜日夜、数万人の市民が国会議事堂の周囲に集まりました。

その日の深夜、法案の成立に反対する野党の議員たちの必死の戦いも虚しく、安倍晋三首相は数十年間続いた自衛隊の役割を日本の防衛のみに限ってきた法体系をひっくり返し、一連の安全保障関連法案を成立させ、自衛隊による国外の戦闘行動を可能にする道を開きました。

                  

一連の法律の成立ははじめからわかっていました。
安倍首相の与党は衆参両院において、絶対多数の議席を確保済みだったからです。

          

しかしアナリストは、国会議事堂の中では激しい応酬が繰り広げられ、議事堂の外では何日間も多くの一般市民が抗議の声を上げ続け、これにより国民の多くが安倍首相のタカ派的な防衛政策の展望と目的に疑問を抱くようになり、それに伴い政権の支持率も低下していると指摘しました。

テレビ放送された議論では日本の最重要同盟国、すなわちアメリカ合衆国についての見解をめぐっても戦われましたが、その多くは否定的なものでした。

              

                    

「この法律が通ってしまえば、日本は大義なきアメリカの戦争に絶対に巻き込まれてしまいます。」
小さなリベラル派野党のリーダーである山本太郎議員は17日の国会の委員会質疑の場でこう主張しました。
しかし結局この日の議論は委員長が一方的に質疑の打ち切りを宣言し、詰め寄った議員たちとこれを阻止しようとする与党議員たちが折り重なるようにして乱闘する場面で終わりを迎えました。

                  

金曜日の本会議で山本議員は、投票と議案の成立をなんとか遅らせようとして、投票の際に牛歩戦術を行いました。
他の反対派の野党は安倍首相や自民党閣僚に対する問責決議案などを提出、あるいは議事の進行を遅らせるため、日本の軍事行動の範囲を拡大することはアメリカが行う大義のない戦争に巻き込まれる危険性が増すだけだという確信について度々繰り返す長時間のスピーチを行いました。

                    

「私たちは殺人の共犯者になるべきではありません!」
社民党の福島瑞穂議員はこう主張しました。
同じ趣旨の発言はより抑えた表現で繰り返されました。
各新聞の論評、政治学者や一般市民が設立した団体のメンバーたちによって。

反対の妨害者戦術は午前2時過ぎまで安倍首相の勝利を遅らせましたが、阻止するまでには至りませんでした。

                     

                  

安倍首相に批判的立場をとる人々は、安全保障関連法案について様々な角度からの問題を指摘しています。
そもそも憲法違反だという法的安定性の問題だけにとどまりません。
複数の調査において、憲法専門家の90パーセント以上が安全保障関連法案が日本の基本的な法律である憲法に違反していると考えていることが明らかになりました。
日本国憲法は第二次世界大戦後のアメリカ軍の占領下で起草され、国際紛争の解決手段としての戦争を放棄しています。

                

しかしアメリカが世界各地で行っている「戦争に巻き込まれる」という懸念は日本にとって漠然としたものではなく、日米同盟に関する問題などは普段あまり関心を持たない一般市民が、安全保障関連法案には反対する強い動機にもなりました。

                

日本はアメリカ合衆国による占領終了後、いわば永遠にアメリカの保護を受け入れ、原罪は日本国内に約40,000人以上の米国軍人が配置されています。
それでもここ日本においては多くの人が、今回の法案の成立により日本は平和主義国家としての独立性を犠牲にすることになったと考えています。

                   

今や日米同盟において日本はアメリカの保護を受ける見返りに、要請を受ければいつでも兵士を危険な場所に送り込む、これまでにない重要な役割を引き受けることになりました。

「日本は常に日米同盟のしがらみと、アメリカに見放されたらどうしようという恐怖の間を行ったり来たりしています。」
東京財団政策研究グループの上級研究員の渡邉恒雄氏がこう語りました。
「その理由の一つが自国の政府に対する不信感です。日本国民は米国にはノーと言えるほどのリーダーは日本にはいないと考えています。」

                               

                 

しかし多くの日本人が疑問に感じていることがあります。
安倍首相の主張通りに戦争行為に対する厳しい制限を緩めれば、日本はアメリカと対等な立場に立つことができるのでしょうか?
そして批判的意見が指摘する通り、アメリカ政府が手を引くと同時に、代わって日本は『東アジア地区の警察官』として巨額の国費を投じ、新たに大きな軍事的プレゼンスを形成するつもりなのでしょうか

 

安全保障関連法案に最も強力に反対しているのは主にリベラル系の政治家や平和運動家などですが、実はそれだけではありません。
安倍首相よりも一層強硬な保守派の人びとも、この法案がもたらす結果に懸念を抱いています。

               

右派の著述家で漫画家でもある小林よしのり氏もその一人です。
小林氏は外国人特派員協会の会見場で、安倍首相の政策に反対であることを表明しました。
「日本はアメリカが行なう侵略戦争に、巻き込まれるべきではありません。」

                 

小林氏の発言はイラク戦争を念頭に置いたものですが、少なくともベトナム戦争以降、アメリカが行なってきた戦争には多かれ少なかれこうした疑いがついて回りました。
この戦争では日本政府はアメリカ合衆国を支持することを繰り返し表明し、自衛隊の名で知られる軍隊をアメリカ占領下のイラクに派遣しましたが、再建事業など非戦闘行動に活動を限定していました。

               

                  

小林氏は法制度の変更の本来の目的は、日本周辺での偶発的事態の発生に対し日米両軍が連携して対応できるようにするためのものであるべきだと語りました。
小林氏は不安定な朝鮮半島を実例として挙げ、日本から遠く離れた場所の紛争には巻き込まれないようにするべきだと語りました。
そして軍事情勢のもつれは日米双方にとって危険なものだと語りました。
例えばアメリカ政府内には、東シナ海の尖閣諸島を巡る日中両国の紛争に巻き込まれることを警戒する意見があります。
「そうした意見は日本国内では聞かれません。」
藤原氏がこう語りました。
「日本国内で聞かれるのは、もし可能性があるとすれば、アメリカが日本を戦争に巻き込むだろうということです。」

                   

安倍政権は、新しく成立させた安全保障関連法案の中で自衛隊の軍事行動の範囲に関する制限を一応維持しました。

                   

安全保障関連法案の成立により自衛隊は同盟軍を防衛するための海外での戦闘行動が可能になりますが、それには他に平和的解決手段がなく、そのままでは「日本国民の生命と日本国の存立が脅かされる場合」という制限がつけられています。
しかしこの基準は危険な程漠然としているという批判があります。

 

安倍首相はイラクの場合のような戦争に日本が巻き込まれることは『考えられない』と語ったことがありますが、いったん安全保障関連法案が成立すれば歯止めがきかなくなるという多くの一般市民の懸念を拭い去ることはできませんでした。
5月に報道機関などが行なった各種の世論調査の結果を見ると、安倍首相のこのいわば『約束』を信用すると答えたのは6人に1人という割合でした。

               

                    

                  

金曜日夜、国会議事堂周辺で抗議活動をしていた人々はこうした疑いを当然のように抱いていました。
参議院での投票に先立つ3日間、国会周辺には警察と日本のニュースメディア発表で、ピーク時で10,000~30,000人の市民が抗議のため集まってきました。

「アメリカの力は総体的に弱まり、巨額の軍事負担を賄いきれなくなっているため、日本にその一部を肩代わりするよう求めてきているのでしょう。」
東京の北、栃木県から抗議活動に参加するためやって来た会社員の山之内武人さんがこう語りました。

「アメリカの要請に応じた日本が安全保障関連法案の成立を図っているという印象を私は受けています。」

                   

史学科の学生である馬場芳江さんは、日本が中東地区などでアメリカ軍の後方支援を行なえば、危険な敵対勢力を呼び寄せる結果につながることを懸念しています。
「日本がアメリカと同じ政治信条を持っているとみなされれば、英国など他のアメリカの同盟国と同様に、テロリストの標的にされてしまう危険があります。」
「私は、日本が紛争その他のトラブルに巻き込まれてしまうことを心配しています。」

            

                  

この安全保障関連法案は具体的にはどのような効力を発揮するでしょうか?
これらの法律が発効することで、日本の軍隊=自衛隊が国際紛争の場でアメリカや他の同盟国とより密接に共同作戦を実施することになります。

その中には国外で同盟国軍を掩護するために戦闘するという行為も含まれますが、それが許されるのは他の平和的解決手段を選択しようがなく、かつ『日本人の生命あるいは日本国の存立が脅かされている場合』に限られます。
現在の法体系では、日本は直接攻撃を受けない限り、武力を行使することはできません。

               

ではこれに対する賛成意見、そして反対意見にはどのようなものがあるのでしょうか?
安倍首相は第二次世界大戦(太平洋戦争)後にアメリカの占領下で起草された日本国憲法による制約の下では、現状の潜在的脅威には対応しきれないと主張しています。
さらに安倍首相は安全保障関連法案の成立は、日本を軍事的により一層アメリカと対等のパートナーにするものだとも主張しています。

                     

               

これに対し反対の立場を取る人々は、安全保障関連法案が憲法に違反し、日本を本来なら関わる必要が無い海外紛争に巻き込んでしまう可能性があると主張しています。

                    

日本国内では次にどのようなことが起きるでしょうか?
安全保障関連法案に関わる法廷闘争が展開されることが予想されます。
多くの憲法学者はこれらの法案は平和憲法に違反していると語っています。
しかしながらこれまで日本の裁判官は、安全保障問題について政府の方針に逆らおうとしたことはありません。

〈 完 〉

                  

http://www.nytimes.com/2015/09/19/world/asia/japan-parliament-passes-legislation-combat-role-for-military.
  • – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – +

                   

イスラム国(ISIS)に対しアメリカを中心とする『有志連合』が空爆を続けていますが、一般市民が巻き添えを食う被害が拡大するばかりで、肝心の作戦は思うように進展していないようです。
かつてのイラク戦争の場合、相手はサダム・フセイン大統領旗下の正規軍であり、T60戦車程度の装備の主力軍を砂漠でも時速100キロで走行可能な最新式戦車エイブラムズやアパッチヘリを使って殲滅し、あとは作戦中枢さえ破壊してしまえば敵は機能しなくなってしまうという『容易さ』がありました。
しかしイスラム国(ISIS)のようなゲリラ部隊は、一個一個が頭脳をもって機能しており、結局は地上軍を投入して1対1の殺し合いを延々と繰り返さないと、作戦は完了させられません。

その地上戦でものを言うのが動員能力です。
日露戦争を例にとるとわかりやすいのですが、奉天会戦の後日本は動員能力が尽きかけていたのに対し、大国のロシアは完成したシベリア鉄道を使って満州の戦場にいくらでも戦場に兵を動員できるという状態にありました。
このため日本は講和を急いだのに対し、ロシア側は日本海海戦で主力艦隊が殲滅させられ日本の補給線を脅かすことが不可能になっていたにもかかわらず、交渉の場では終始強腰でした。

                

安倍政権は対中国を念頭に安全保障関連法案を成立させましたが、人口1億強、しかも高齢化と人口減少が続く日本が、人口13億、しかも経済規模と生産能力で日本を上回ってしまった中国を本当に仮想敵国にしてしまうことは戦略的にどうなのか、という事です。
国民に重税を課し、なお且つ公的負債を際限もなく増やして軍備の拡充をしても、限界は見えています。

全面戦争など想定していないというかもしれませんが、相手はそうは考えていないかもしれません。
第二次世界大戦(太平洋戦争)直前、盧溝橋で中国軍を相手に銃撃戦を始めた日本軍は、こうなった以上はいずれアメリカとの全面戦争に発展せざるを得ないと覚悟していたでしょうか?

                

要は戦争など絶対始めてはならない、という事ではありませんか?
前々回にご紹介したザ・インディペンダント紙(英国)の社説にあったように、世界一流の平和主義国家であり続ければ( http://kobajun.biz/?p=25106 )日本に武力で手出しすることは国際環境が許さなかったはずです。
しかし二流の軍事国家であれば、どうでしょうか?

一流の平和主義国家であることを捨てて、なぜ二流の軍事国家を目指さなければならないのでしょうか?

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