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自民党『失言防止マニュアル』

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所要時間 約 9分

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安倍政権は何もわかっていない。表面だけ取りつくろえば良いと思っている 
問題なのは発言そのものではなく各大臣や議員の人間性であり、安倍政権流適材適所である

                 

                    

サイモン・デンヤー / ワシントンポスト 2019年5月16日

                

「戦争には言及しない」
「女性の権利について本音を言わない」
「被災者の人権をないがしろにしない」

一連の恥ずべき発言が国民の怒りを買って数名の安倍政権閣僚の辞任につながったことを受け、これ以上の失言を防ぐ目的で自民党は党の国会議員に向け『失言防止マニュアル』を配布したと15日毎日新聞が報じました。

             

このマニュアルには、「『失言』や『誤解』を防ぐために」というタイトルが付けられていますが、「遊説活動ハンドブック」の号外として配布されたと毎日新聞が伝えました。

               

新聞などの「タイトルに使われやすい『強めのワード』に注意」との部分では、問題になりやすいテーマについて5種類をリストアップしました。
その中では報告書の原稿を作成した担当者が心に留めておくべきだった注意点についていくつかの具体例を挙げています。
その大部分は与党自民党のものですが、中には野党の政治家の例も取り上げられています。

                 

             

1. 歴史認識や政治信条に関する個人的見解
言い換えれば、日本の戦争記録には言及しない、ということです。
「歴史認識」については「謝罪もできない」との解説文も掲載されています。
日本の戦時史について修正主義的見解を持つことで知られている稲田朋美防衛大臣(当時)は、南京大虐殺を含む1937 - 1938年に旧日本軍が中国大陸で行った残虐行為について日本側に過失責任があると考えているかとの質問をかわし続けていましたが、2016年に防衛大臣に就任すると同時に中国からの非難を浴びることになりました。

               

しかし2012年、地域政党減税日本の代表で名古屋市長の川村たかし氏は、さらに踏み込んだ発言を行い、大量の殺人や強姦などの行為は一切なかったと発言、あったのは通常の戦闘による死亡だけだったと主張しました。

               

さらに2017年には麻生太郎財務相はヒトラーは「ダメだが、彼の動機は正しかった」との悪名高い発言を行いました。

            

2. ジェンダー、LGBTについての個人的見解
この分野の失言には事欠きませんが、中でも2018年に麻生財務相が女性ジャーナリストからセクシャルハラスメントで訴えられた元財務省事務次官をかばおうとした際の発言が際立っています。
官僚の発言を不快だと思ったら女性記者はその場を立ち去れば良いと発言したと伝えられ、さらに財務省ついては男性記者のみを担当させれば良い、セクシャルハラスメントという犯罪はない、などと発言していました。
その結果、日本国内の「#MeToo」運動に火がついて、路上での大規模な抗議運動に発展しました。
そして麻生財務大臣の発言は調査の結果、2018年の最も性差別的な発言に選ばれたのです。

                 

              

その麻生財務大臣に僅差で迫り、数千人の人々の路上での抗議を導いたのが杉田水脈衆議院議員です。
彼女は出生率が低下している日本社会において、同性同士の結婚を促すような税金の使い方は納税者のお金を無駄にすることであり、やるべきではないと示唆しました。
同性愛者は子供を産むことができず、「非生産的」だと主張したのです。

             

3. 事故や災害に関し配慮に欠ける発言
サイバーセキュリティ担当兼オリンピック大臣の桜田義孝氏は2019年4月、同僚の与党議員の選挙資金募金のための集会で「被災地復興よりも同僚の与党議員を守る方が大切である」と発言し、2011年3月の東日本大震災の被災者を侮辱した後辞任に追い込まれました。

             

               

桜田氏は以前、サイバーセキュリティ担当大臣という職にありながらコンピューターを使いもしない、そして当然のことながらサイバーセキュリティを理解していないことを明らかにし、国内のみならず世界を呆れさせていた人物です。
今村雅弘元大臣は、東日本大震災の壊滅的被害が首都圏ではなく東北地方で発生したことは日本にとって幸いなことだったという趣旨の発言をし、2017年に辞任しました。
これら一連の発言は、東日本大震災の被災者を大きく傷つけたものだったとみられています。

                          

4. 病気や老いに関する発言
さらに麻生氏は2013年1月には終末期医療療に言及した際、「いいかげんに死にたいと思っても『生きられますから』と生かされたらかなわない。「さっさと死ねるようにしてもらわないと」と言い放ちました。
(麻生氏は財務大臣の座にあり続けているだけでなく、副首相の兼任も続いています。)

               

               

5. 身内と話すようなウケねらいの雑談口調の表現
この分野の発言については、ジャパン・タイムズに最悪の失言とその後の展開を記録としてまとめた記事があります。
2011年、福島への放射線被爆に関する視察旅行から戻ってきたところで、当時の鉢呂吉雄経済産業大臣が取材を行っていた記者に放射能防護服を擦りつけ「放射能」と、冗談を言ったと報じられ、辞任しました。
彼は台風に襲われ冠水していた地域で政府職員の背におぶさって視察を行うという恥ずべき件について、彼は寄付金を募るパーティの席上、「長靴業界はこれでだいぶもうかったのではないか」と冗談を言った後、2017年に復興大臣政務官を辞任しました。

                 

自民党のマニュアルに付け足すべき項目をもっと挙げることができます。

             

6. メディアの前で話をする前に酔っ払ってはいけません
例えば、地元紙の報道によれば日本維新の会の国会議員は、酔った挙句ロシアと領有権をめぐって争いとなっている北方領土について「戦争によって取り戻すという選択肢を考慮すべきだ」という趣旨の発言を行い、辞任を求められています。

                

与党とは別の保守政党・日本維新の会の丸山穂高参議院議員は第二次世界大戦の末期にソビエト連邦に奪取された北方4島のうちの1つであるロシア支配の国後島に元島民とともに視察旅行を行った後のこの発言により、自身の所属政党の党首も含め日本国内から広く非難され、「多くの人々を不快にさせてしまった」ことを謝罪しました。

                  

                     

そして最後に、おそらくマニュアルにもこうは書けないでしょうが
7. 人種差別的な発言を公の場でしないでください。
中曽根首相(当時)は1986年にこうコメントして物議をかもしました。
「アメリカの知的レベルは黒人とメキシコ人、そしてプエルトリコ人の構成比が著しく高いために、日本よりもはるかに低い」

              

毎日新聞によれば、自民党に近い取材相手はこのようなマニュアルが必要とされるという現実について、『情けない』と語りました。

                

76歳の野党党首、小沢一郎氏は恵まれない人々への配慮を示すべきだとの表現について強調し、失言を防ぐことに問題があるのではなく、与党自民党の基本姿勢に問題があるとツイートしました。
「安倍政権は何もわかっていない。いまだに表面だけ取り繕えば良いと思っている」 
「問題なのは、発言そのものではなく各大臣や議員の人間性であり、安倍政権流適材適所である。人の痛みがわからない政権。これを国難と言わずして何と言うのか」

https://www.washingtonpost.com/
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