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福島第一原発事故発生から9年、日本の隠蔽は続いている《3》

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所要時間 約 11分

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原子力産業界が隠蔽を行っていることは明白、国民と国家を誤らせることになった

除染は常に部分的にしか行われなかったため、除染完了地区が再び汚染されることになった

数世代にわたる重大な健康被害が発生する危険性について、意図的に誤った認識が広められた

                   

アーニー・ガンダーセン、マギー・ガンダーセン / フェアウィンズ 2020年3月10日

                        

              

フェアウィンズはこう考えます。
原子力工学をきちんと学んだ者が科学的根拠に基づいて検証する限り原子力産業界が隠蔽を行っていることは明白であり、例えて言うならオズの魔法使いがカーテンの後ろから全てを操っている様子が丸見えです。

                   

メルトダウンからわずか11か月後、私は2012年2月に集英社からフェアウィンズの著作【 福島第一原発の真相と展望 】を出版し、日本人を含む東京のさまざまな場所で講演するために日本に向かいました。

                         

外国特派員記者クラブでも記者会見でも当時の私の見解の一部を明らかにしました。
「私はスリーマイル島の原子力事故の専門家でしたが、福島の事故現場でもアメリカ人がスリーマイル島で犯した過ちと同じ過ちを目にしました。スリーマイル島でも福島でも、プラント内にいて管理を担当していた人々は事故の本当の深刻さを理解していました。

                     

しかしどちらの場合も管理責任が現場を離れて本社に - それは米国ではゼネラルパブリックユーティリティ社(後にGPUと改名)、そして日本では東京電力でしたが - 移管されて30年以上が過ぎ、原子力発電所の管理基準は劣化し始めていました。

             

スリーマイル島で私が目撃したのは、現場にいた原子力発電所長が職員と周辺住民を避難させようとしていたにもかかわらず、運営企業が資産の保全を優先しようとして避難指示を行わないように命令したことでした。

                 

福島でも私は同様の事態を目撃しました。
事故発生当日と最初の週、現場の管理スタッフは事態の深刻さを本当に理解していたと思います。
しかしその上司であった本社の経営層の対応は、動機が何であったにせよ、必要なスピードに欠けていました…。

                   

スリーマイル島と福島で得られた教訓は、私に言わせれば原子力発電所を運営する企業の人員と体制の問題であり、必要とされる迅速な対応ができませんでした。
そして原子力発電所の現場と本社機能という東京電力内部の問題に加え、当然のことながら東京電力と日本政府との間にも問題がありました。

                  

2011年の3基の原子炉のメルトダウンの後、私は事故当時日本の首相を務めていた菅直人氏と知り合うことになりました。
私たちの両方が基調講演者である会場で、私は菅氏に当時あなたはメルトダウンについて正しい情報を提供していないと感じたことを伝えました。

              

菅氏は次のように答えました。
「私が東京電力と経済産業省(日本の原子力規制当局)から受け取った情報は、迅速さを欠いた上に正確なものでもなかったのです。」

                    

この発言の重大さについて、改めて考えてください。
一国の首相に対し情報操作を行えるほど強い力を持つ原子力産業界が、結局は国民と国家を誤らせることになったのです。

                

▽ 原子力発電所あるいは放射線事故とは何ですか?

              

                 

原子力発電所事故レベル5(スリーマイル)とレベル7(チェルノブイリ)の『人為的災害』の程度の違いは、技術的あるいはただ単に程度が違うといった単純な問題ではありません。
発生していた事態の深刻さを軽く見せようとして、数万数十万人の市民の安全を故意に危険にさらしたのです。

                  

原子力事故をどう分類するかという問題は、緊急避難計画と災害処理と直結する問題なのです。

                    

人間の命がかかっているのです!

                     

どのくらい早く、どこにいる人々が避難すべきか?

原子炉からどれだけの距離を設定し人々を避難させるべきか?

 

そしてどの方向に向けて避難をさせるべきか?
これは福島で実際に発生してしまったように、放射性物質が拡散していく方向に住民などが避難しないようにするために必要な措置なのです。

                  

2012年2月に東京の外国特派員記者クラブで講演するよう招待されたとき、私は対応が遅れたことによる人的被害について話をしました。

                          

              

地球上のすべての人々の中で、災害発生時の緊急対応を最も得意にしているのが日本人です。
世界で最も地震が多発する国土で暮らす人々は、緊急時には的確に対応する必要があることを理解しているからです。
しかしそうした日本で福島の問題が発生したことにより、世界的に見た場合、他の国々が極めて貧弱な対応をする可能性が高いということを私は学習しました。

                       

事故の最初の1週間、私はCNNテレビに出ずっぱりでしたが、その中で私は女性と子供たちは原子炉から少なくとも50キロ離れた場所に避難すべきだと訴え続けました。

                   

しかし …。
原子力発電所事故レベル7という判断がなければ、女性と子供を避難させることにはなりません。
日本政府と東京電力の本社が事故レベル7の事故の深刻さに対する理解の欠如と、女性と子供たちの避難についての彼らの不適切な対応との間には明確な関係性があります。

                    

要するに日本においては福島第一原発で3基の原子炉がメルトダウンしていたその最中に、東京電力が事態を制御できているように見せかけるため、女性と子供たちの命が重大な危険にさらされていたのです。

                     

イアン・トーマス・アッシュ『In the Grey Zone(避難準備区域の中で)』

                     

▽ 災害のコストを大幅に過小評価

                        

写真 : 福島第一原子力発電所敷地内に林立する貯蔵タンクには、原子炉建屋から汲み上げられた放射能汚染水が大量に保管されています。

                  

こうして日本で暮らしていたり働いていた人々と日本国民は、福島で発生していたメルトダウンの深刻さ、緊急避難の必要性、そして災害後に数世代にわたる重大な健康被害が発生する危険性について、意図的に誤った認識を持たされることになりました。

                      

さらには人々は、福島第一原子力発電所の深刻な損傷を受けた4基の原子炉を解体して廃炉にし、進行中の放射性物質の移動拡散から海と周辺地域を守るために必要な天文学的な金額の費用と、人間が生活する場所の放射能を除去する福島県内の部分的な除染を行うための費用総額についても、偽られることになりました。

               

ここで私は部分的な除染という表現をしました。
なぜなら放射能の除去は常に部分的にしか行われなかったからです。

                       

                 

山間地にも大量の放射性物質が吹き込まれ、山や森はプルトニウムを含む高濃度の放射性物質によつて汚染されたため、その放射能が消散(業界用語では放射性崩壊)するには数万年という時間がかかります。
雨が降ったり雪が溶けたり山から風が吹くたびに、山間地に会った放射性物質は遠くまで拡散し、除染が完了したとされる地域を再び汚染することになります。

                     

安倍政権の下で日本政府当局は、除染が終了し放射性物質が取り除かれた現在、避難していた人々は元いた市町村や自宅に戻るべきだと告げ、政府の補助金を打ち切り、すべての避難用仮設住宅が閉鎖されることを告知しました。
住む場所が無くなり補助金も打ち切られて収入が激減したら、事故以前に住んでいた場所に戻る以外の選択肢などというものはあるのでしょうか?

                       

《4》に続く
https://www.fairewinds.org/demystify/japans-nuclear-cover-up-continues-nine-years-after-the-fukushima-disaster
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