ホーム » エッセイ » 安部改憲 – 祖父がやり残した家業の集大成は実現するのか?
憲法改定の目的を第9条の改変から別の問題にすり替えようとしている安部首相
太平洋戦争の負の遺産である数々の外交問題を解決する取り組みは、すべて行き詰まったまま
安倍首相が公約した日本経済の復活のための数々の課題は実現できないまま散らかしっぱなし
エコノミスト 2019年8月10日
1950年代、当時の岸信介首相は第二次世界大戦の敗戦によるアメリカ占領下で成立した日本国憲法の改憲を目指しました。
そして失敗しました。
現在、彼の孫である日本の安倍晋三首相は2021年秋の任期満了前に同じ目的を成し遂げようとしています。
個人的背景だけが、安倍首相が憲法改定を目指す理由ではありません。
声高に掲げてきた国家主義に基づく動機、そのために安倍氏は改憲に執着してきました。
そして日本で最も長い就任期間を持つ首相の一人として(11月中旬まで今のままの状態が続けば、安倍氏は史上最長の任期を務めた首相になります)、自分には憲法を変えるだけの力があると思っています。
中国の国営通信社はかつて、安倍首相の改憲は「軍事力を法的規制から解放し野に放つに等しい」と表現しましたが、そうした『雑音』は安倍首相の耳には入らず、十分に挑戦する価値があると思っています。
日本国憲法は現実に合っていない、それが安倍氏の主張です。
第9条は日本の平和主義の基礎を形成し、同時に常設軍を保有することを放棄することを宣言していますが、自衛隊の存在は明らかにそれを逸脱しています。
この点が今回会見の焦点とされている4つの項目の中で最も論議を呼んでいるものであり、日本が戦争できるようにするのではなく
自衛隊の存在を公式に認めるという提案は、国民の反発をかわすため当初の自民党の多くが望んでいた原案を妥協的にしたものです。
他の3項目は参議院選挙区であり、教育の無償化、そして内閣に緊急事態権限を付与する条項です。
日本人自身が憲法を変更したいというのであれば、やるべきではないという制限はありません。
アメリカ合衆国憲法は1788年の公布以来27回変更されました。
しかし、日本人はその平和主義に誇りを持ち、他国の軍事紛争に巻き込まれないよう切望しています。
実質的国営メディアであるNHKによる7月の世論調査では、調査対象者の29%が憲法改定を支持する一方、反対しているのは32%でした。残りの39%は解らないもしくは無回答です。
しかし質問が第9条に限った場合、その比率は大きく異なります。
朝日新聞の世論調査では、改定賛成が33%であったのに対し、反対は59%に上りました。
野党も反対しています。
首相の衆議院の解散権の乱用を防ぐために制限を加えようとする考え、あるいは市民の「知る権利」などの新しい理念を明確な表現で追加するために議論されてきました。
自民党が憲法第9条をまったくの骨抜きにすることを妨げることかできるほどの大野党は存在しません。
一方で連立与党の公明党はまずは最初に議論を行うべきだと示唆しています。
こうした状況から安倍氏がどのようにして憲法改定を実現できるのか、それを理解するのは困難です。
憲法を変更するには、衆参両院の国会の3分の2の賛成が必要であり、続いて国民投票で過半数の支持を獲得することが必要です。
そして先月、安倍連立政権は参議院の議席の3分の2を失いました。
政治日程もタイトです。
今年行われた天皇の退位と新天皇の即位、そして2020年開催予定のオリンピックと続くためですが、日本周辺各国の動きも安倍首相の動きに有利とは言えません。
アメリカが同盟各国に呼びかけているホルムズ海峡における船舶の拿捕を防ぐための哨戒活動、すなわち有志連合に参加してもし軍事紛争に巻き込まれるようなことになれば、憲法第9条を改定すれば何が現実になるのかを完璧に証明してくれることになるでしょう。
「これまで示された様々な数字は憲法改定を現実に近づけるものではありません。有権者も憲法改定を望んでいません。さらに現在の中東情勢も憲法改定への悪材料を提供するでしょう。」
ワシントンに有るシンクタンク、スティムソンセンターの結城辰巳氏がこう語りました。
安倍首相は改定のための妥協の道を探っています。
結城氏は安倍首相は野党を土俵にのせるため、憲法改定の焦点を第9条の改変から国民の権利と政府運営のガバナンスの問題に変えるつもりだと見ています。
野党第2党の国民民主党の玉城雄一郎代表は、改定内容のための議論が必要だという安倍首相の主張に同意しました。
参議院選挙の後、安倍首相は憲法改定のための「積極的な議論」を望むと語り、「憲法改定は政府ではなく国会次第だ」と強調しました。
安倍首相は現実主義者ですが、祖父がやり残した事業を自分が実現させたいと望んでいます。
ロシアとの間の北方領土返還交渉を始め、太平洋戦争の負の遺産である数々の外交問題を解決する取り組みはすべて行き詰まっています。
安倍首相が公約した日本経済の復活のための数々の課題は未解決のまま散らかしっぱなしです。
憲法改定は難しいテーマですが、日本が優先的に解決しなければならない数々の難問に比べれば、安倍首相にも手が届く課題なのです。
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皆さんは安倍政権による日本のモラルや常識の破壊が、政治の中にとどまらず私たちの日常生活にまで及んでいるということを噛んだことはないでしょうか?
「やったが勝ち」
「明確に犯罪の範疇に入る行為がこじつけや隠蔽、とんでもない理屈の言い訳や開き直りによってなかったことにされる。
正論や合理的思考によって結論が出されるのではなく、権力を持つ人間に対する阿諛追従の方が評価される、まかり通る。
そんな光景が私たちの周囲で日常化しているのではないでしょうか?
私も国政の腐敗というものが、これほど国民生活の隅々にまで及ぶものなのか!と驚いています。
こんな体制の下で改憲など冗談ではありません!
これ以上、日本という国が壊されていくのを見たくはありません!
そうではありませんか ?!