ホーム » エッセイ » 世界最強の軍隊・アメリカ軍!なぜ勝てないのか?《4》
ベトナムでもイラクでもアフガニスタンでも、腐敗と機能不全に陥った統治機構がはびこっていた
『敵を太らせるだけ?』アメリカの納税者から集めた莫大な資金の行方
戦争と現実の世界についての誤った理解のため、記念碑的とも言える代償を支払ったアメリカ
アーノルド・アイザック / ルモンド・ディプロマティーク 2018年5月6日
20世紀、我々アメリカ人がベトナムで支援し続け、そして崩壊した軍隊と政権、21世紀に支援したのもまた同じ性格のものであったことはもう明らかです。
ベトナムでもイラクでもアフガニスタンでも、腐敗と機能不全に陥った統治機構がはびこり、アメリカの目的達成の障害であったことを証明することになりました。
そしてこれらの問題のすべてにおいて、アメリカ人が何をしてもほとんど効果はなかったのです。
ジャーナリストのダグラス・ウィッシングが著書『敵への資金提供』に書いているように、腐敗に対して効果的な対策をとる代わり、アフガニスタンであらゆる分野に及んでいた腐敗に関する大規模な調査報告を、米国政府その大部分を「無視あるいは公開しただけで何もしなかった」のです。
外交的に配慮した表現が用いられてはいますが、アフガニスタン復興特別監察官による多数の報告書の結論ははっきりしていました。
タリバンがアメリカの資金をどうやって利用しているかそのさまざまな手口にいて具体的な説明をした後、手に入れた資金でタリバンが武器、オートバイ、携帯電話などを手に入れていると書いています。
タリバンが南ベトナム軍と違うのは、宗教的良心によって資金を利用している点です。
「少なくともタリバンは、米国の納税者から集めた現金を個人的に着服したりはしていない。」
ウィシングはこう皮肉っています。
▽ 新しいドラマ、でもシナリオはいつも同じ
2018年の世界は、半世紀前の世界とは大きく異なっています。
ベトナム、アフガニスタン、そしてイラクは全く異なる国々であり、それぞれの戦争は原因も状況も異なっています。
今日の米軍はかつてベトナムで戦った米軍とはほとんど別物です。
したがって、比較することはそれほど簡単ではありません。
それでもそれぞれの戦争をつき詰めていけば、話は驚くほど似ています。
無制限の火力を持つ大編成のアメリカ軍は、はるかに貧弱な装備しか持たない敵を相手に何年も費やしながら、まるで終わりが見えません。
その間アメリカの援助当局者は多額の現金と助言を与え続け、機能的な政府と繁栄している国家、あるいは少なくとも必要最低限の機能性とそこそこの繁栄を実現した国家を創り出すことを目指しています。
その成功によって現地の市民たちがごく自然にアメリカの側に立つことを選択するよう仕向けています。
しかし結局、アメリカ人が悪戦苦闘して手に入れようとした目標は達成できないままです。
すなわち自力で体制を防衛する能力を持ち、市民の目から見ても公正な体制であり、そして米国の国益にも好意的な安定した現地政府です。
最終的には我々アメリカ人が自分たちの手で任務を達成することは諦めた上で、現地の人々にどうすれば目的が達成できるのか、我々の成功体験を教えることになります。
ただしそこにはもう有り余るほどの物資補給はありません。
具体例を挙げれば、たとえ金持ちのアメリカ人たちがまだそこにとどまっていたとしても、現地政府軍はより少ない機数のヘリコプターを使って負傷兵を救出できるようにしなければなりません。
当然ながら、そうした方針はあまりうまく機能しません。
こうしたシナリオが、特に2度目(イラク)または3度目(アフガニスタン)の際、しょせん錯覚にすぎないということになぜもっと早くそして多くの関係者が気づかなかったのかわかりません。
部分的にはそれは疑いなく、実態がどういうものなのか、ゆっくりとしか明らかになっていかないという状況にあったからだと考えられます。
そしてアメリカ政府も国防総省の考えは、アメリカ人が思い出すことが苦痛である記憶についてはそれを美化という傾向に、さらに拍車をかけたものです。
国防総省のベトナム戦争に関するサイトがその良い例です。
起きたことを正確に記録することを避けているのです。
たとえそうだとしても、ベトナム戦争の後、アメリカ国内の戦争の専門家も、そうでないアメリカ国民も、これまでの数十年間に起きた事実と向き合わなければ、イラク介入以降、アフガニスタン介入以降、引き続きは津制している混乱を収束させることはできません。
それは現場の将軍達も自問自答していることですが、私たちアメリカ人が達成したいことは何なのか、現地の政府や軍にはその達成能力はあるのかということです。
当たり前のことですが、何が問題なのかを書き出すことは、問題を解決することよりも簡単です - ずっと簡単です。
必要なのは根本的構造、信念、そして組織的にも個人的にも自己の利益に関わる大規模で、しかも痛みを伴う変更です。
(それでもなお私たちアメリカは、米国が世界最強の軍隊を持っていると自負できますか?)
私たちは戦争と現実の世界についての誤った理解のため、記念碑的とも言える代償をすでに支払いました。
今になっても尚その教訓を生かそうとしないのであれば、その代償は悲劇的なほどに高くつくことになるでしょう。
《 完 》
https://mondediplo.com/openpage/why-can-t-the-world-s-best-military-win-its-wars
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