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放射能汚染水の海洋投棄、追いつめられる東京電力と日本

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最高濃度の『処理済み』放射能汚染水には1リットルあたり250万ベクレルのトリチウムが含まれている

緊急を要する放射能汚染水の処理方法の決定、しかし決定にはすべての利害関係者が関与すべきである

議論もしない・説明責任も果たさない安倍政権の下で、海洋投棄はやるべきではない

               

写真 : 2019年10月8日の福島第一原子力発電所地基地内の汚染水貯蔵タンク。

                        

アーロン・クラーク、スティーブン・スタプチンスキー / ブルームバーグ・ニュース 2019年10月17日

                   

日本の東京電力は巨大事故を引き起こした福島第一原発から、オリンピックの大規模なプール400杯分に相当する量約100万立方メートル、オリンピックの大規模なプール400杯分に相当する量の処理済み放射能汚染水を太平洋に投棄する計画を検討しています。
この措置もまたチェルノブイリ以来最悪となった原発事故をの収束と放射能除去のため、約2,000億ドルの費用をかけて行われている作業に連なるものです。

                   

福島第一原発内で作り続けられている貯蔵タンクは2022年半ばまでに容量が限界に達し、もうそれ以上タンクを設置する場所もほとんどなくなります。
ひどすぎると感じる海洋投棄ですが、原子力産業界では慣例的なやり方であり、今回の東京電力の投棄も世界基準のガイドラインに沿ったものになるでしょう。
しかしそれでも地元住民や漁業関係者、そして韓国など隣国の怒りをなだめることはできそうにありません。

                  

1. 汚染水はなぜ発生するのか?

2011年に発生した史上最強の地震とその後に続いた巨大津波により、東京の北約220キロメートルの場所にある福島第一原発の原子炉建屋に構造的に破壊されました。
そこに毎日約100立方メートルの地下水が流れ込み、その場所にある溶け落ちた核燃料と混じり合い放射能に汚染されます。

                  

放射能汚染水は汲み上げられ、アドバンスト・リキッドプロセッシング・システム(ALPS)と呼ばれる装置の中を通り、福島第一原発の敷地内にある約1,000基のタンクに保管されます。
ALPSはトリチウムを除くほとんどの放射性元素を除去します。
日本の経済産業省によれば、放射能汚染水、いわゆるトリチウム水は海洋投棄される前にすべての放射性物質の残留量が安全基準を満たすよう、再処理されます。

              

                    

2. トリチウムとは何か?

                  

水素は2つの余分な中性子を持つことにより弱い放射性を帯びることになります。
これが三重水素、トリチウムと呼ばれるものです。
大気圏の上層部で自然生成されますが、原子力発電の一般的な副産物でもあります。
人工的な用途は多岐にわたり、核兵器製造、生体実験用トレーサー、出口標識や時計の文字盤に使われる放射性夜光塗料の材料など、さまざまな用途があります。

                   

3. 危険の程度は?

                   

高いレベルの発がん性があります。
トリチウムのベータ粒子(放射性崩壊によって放出される粒子)は低エネルギーで人間の皮膚を通過しませんが、吸入または摂取すると(通常は汚染水を介して)体内に蓄積します。
しかしカナダ原子力安全委員会は数十億ベクレル単位のトリチウムによる内部被ばくがあって初めて人間の健康に影響が現れるとしています。
東京電力が3月31日に公開したデータによると、福島第一原発内のタンクの中の最高濃度の汚染水には1リットルあたり250万ベクレルのトリチウムが含まれています。
比較するとバナナには15ベクレル、1キログラムのウランには2,500万ベクレルのトリチウムが含まれています。

              

写真:福島第一原子力発電所のクレーンと排気筒の間に見える1号機原子炉建屋。

                  

4. 処理方法は?

                

業界団体である世界原子力協会の政策アナリストであるデビッド・ヘス氏によると、ほとんどの原子力発電所は少量のトリチウムおよび他の放射性物質を河川や海洋に放出しています。
米国原子力規制委員会によると米国の場合、いわゆるトリチウム水の「認可済みの放出」は「定期的かつ安全に」行われ、その情報は完全に公開されています。
世界的な規制の標準を設定している国際放射線防護委員会の勧告は、液状の放射性廃棄物の制限について、影響を受ける公共の場所での空間線量が年間1ミリシーベルト(mSv)未満になるよう求めています。

                 

世界原子力協会が提供したデータをもとに比較すると、自然界に存在する放射線により人々は平均すると年間2.4 mSvの被曝をし、骨盤のCTスキャンをすると被験者は10 mSvの日履きをすることになります。

                   

5. 汚染水タンクのさらなる増設はできないのか?

                  

東京電力福島第一原発の敷地内にはもはやタンクを設置するスペースがありません。
東京電力はすでに鳥保護区に隣接する500平方メートルの土地の樹木を伐採し、約1,000基の汚染水タンク用の場所を確保しています。

                   

                    

6. 海洋投棄に反対する人々の立場とは?

                 

福島県の漁業関係者は県産の水産物の評判をさらに悪化させ、福島の漁業の生死にかかわる問題だとして強く反対しています。
(現在20か国以上の国々が日本産の食料品について輸入制限を課しています。)
韓国政府当局も海洋投棄の可能性について懸念を表明していますが、海流の関係で投棄された汚染水が韓国の海岸近くに流れていくことはないと考えられます。

                   

東京電力ホールディングスの川村隆取締役会長と原子力規制委員会の田中俊一元委員長会長は、どちらも海洋投棄を支持しています。
安倍政権はこの問題に対する見解を明らかにしていません。

                  

7. 決定はどのように行われるか?

                

経済産業省のタスクフォースは、海洋投棄、空中への気化、地中への汚染水注入またはコンクリートと混ぜ合わせて埋め立てるなどさまざまな計画を検討した後、勧告を行うことになっています。
一方で日本政府は地元の利害関係者および影響を受けることになる他の関係者からの意見聴取を行っています。

               

一連の検討が済めば具体的な計画が東京電力に示され、それを基にエンジニアが技術的な詳細を決定することになります。
具体化された計画は最後に国の原子力規制委員会によって承認されなければなりません。

                   

国際原子力機関は9月に作成した報告書の中で、決定は緊急を要するとし、さらに決定にはすべての利害関係者を関与させるべきだと述べています。

                  

写真:10月2日に福島第一原子力発電所の水処理施設ALPSを見学する各国の報道関係者。

                

8. 福島第一原発のそれ以外の事故収束作業の状況は?

                

2011年3月11日、日本の東日本太平洋沿岸で発生した地震とその後に発生した津波により、約16,000人の死亡が確認され、福島第一原子力発電所の3基の原子炉がメルトダウンする事故を含む広範な被害が発生しました。
8年後の現在、福島第一原発における事故収束作業は着実に進むんでいますが、東京電力はこれからさらに30~40年かかると推定しています。

                  

2019年始め、東京電力はロボットを送りこみ、1基の原子炉の下部にある溶け落ちた核燃料の存在を初めて確認しました。
これは溶け落ちた核燃料を取り出して処分する装置の開発に必要なステップです。
地下の凍土壁と排水システムが設置されたことにより、破壊された原子炉内に流入する地下水の量を約半分に減らしました。

                 

現場作業員の作業環境と生活環境も改善されました。
ハードプラスチック製のマスクで顔を覆い全身を白いスーツで覆わなければならないのとは対照的に、福島第一原発の敷地を歩き回る際は、ほとんどの場所で手術用の薄いマスクで対応可能です。
敷地内の放射線レベルが低下し、敷地内外の作業可能なエリアが拡大しました。
2016年には敷地内にオコンビニエンスストアもオープンし、新設されたカフェテリアでは温かい食事を提供しています

https://www.bloomberg.com/news/articles/2019-10-16/why-japan-s-radioactive-water-may-end-up-in-the-ocean-quicktake

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福島第一原発の汚染水問題について保守系メディアと言われるブルームバーグのこの報道はニューヨークタイムズやワシントンポストとはだいぶ肌合いが違って、「東京電力に寛容過ぎるのではないか?」という気もします。

それでも

汚染水問題の解決は緊急を要するものであること

処理方法の決定には、被災地住民や漁業関係者を含めたすべての関係者が関与すべきである

とはっきり指摘しています。

                    

そして海洋投棄イコール希釈とそればかりが強調されていますが、放射性物質はヒラメやカレイ、エビなどの甲殻類にはむしろ「集積」される傾向があると、早くから指摘されていました。

これは漁業関係者にとって極めて深刻な懸念です。

                    

このように放射能汚染水の海洋投棄などという、その影響がどのようにどこまで及ぶかわからない重大問題については、極めて丁寧な検証とその結果の詳細な報告と説明が必要です。

ところが現在の安倍政権にまさに全く欠けているのがそうした姿勢です。

安倍政権が続く限り、汚染水の海洋投棄などは絶対にやるべきではありません。

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