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福島第一原発事故・東京電力の役員に無罪判決・シリーズ5:世界のメディアはどう伝えたか?!《ニューヨークタイムズ》

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所要時間 約 11分

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史上最悪の原子力発電所事故に誰も刑法上の責任を負う必要はないのか

東電の役員は津波の危険性について自分でも計算をしていながら、事実を隠し続けていた

                  

ベン・ドゥーリー、エミ・ヤマミツ、井上まりこ / ニューヨークタイムズ 2019年9月19日

                   

今回の東京地裁の判決は、何世代にもわたる深刻な被害をもたらした2011年の原子炉メルトダウン事故について、誰も刑法上の責任を負う必要はないという考え方すらあり得るのだという判断を示しました。

                     

福島第一原子力設備を動かした会社から前経営陣の無罪判決に抗議する東京地方裁判所の前の集会。

                      

東京地方裁判所は9月19日、福島第一原子力発電所で発生したメルトダウン事故において安全対策の実施を怠ったとして刑事訴追された東電の元役員3人に無罪判決を言い渡しました。

               

この判決は歴史上最悪の原子力発電所事故において、誰も刑法上の責任を負う必要はないという考え方すらあり得るのだという判断を示したことになります。
福島第一原発事故は原子力発電に対する世界的な反対運動を巻き起こしましたが、日本国内にあっては数世代にわたる深刻な環境破壊が続くことになりました。

                 

今回の判決により東京電力は刑事責任を免れたかもしれませんが、2011年3月に発生した巨大地震と巨大津波により3基の原子炉がメルトダウンしたことによって発生し、現在も続いているあらゆる問題を取り除かなければならない重い責任といくつもの民事訴訟に直面しています。

                    

写真:福島、静けさと不気味さと
2017年3月10日時点の福島第一原子力発電所周辺の立ち入り禁止区域内。
当時安倍政権は避難命令を解除しようとしていましたが、住宅も商店も放棄されたままになっていました。

                        

東京電力の役員だった勝又恒久前会長、武藤栄元副社長、武黒一郎元副社長の3人は、東日本一帯で16万人以上の人々自宅を捨てて避難し、原子力発電所の周辺地域を居住不可能にした巨大災害へとつながった事故を起こした原子力発電所の管理について、唯一刑事責任を問われた人々でした。

                  

地震と津波によって2万人近い人々が死亡しましたが、検察側はこれとは別に44人の人々が福島第一原発の事故が作り出した混乱の中で死亡したと述べました。
これらの人々が死亡したのは、事前に警告を受けていたにもかかわらず東京電力の元役員が原子力発電所事故への適切な対策を怠ったことに原因があったと考えています。
ただし放射線被曝に起因する疾病等による死亡はありませんでした。

            

3人の元東京電力役員は前例のない巨大災害によって引き起こされる損害を予測するのは不可能だったと主張し、9月19日に東京地裁が下した判決はその主張をそのまま認めたような内容でした。
東京地裁の永淵健一裁判長は、「電力事業者が津波が引き起こす可能性があるあらゆる事態を予測し、必要な措置を全て講じなければならなくなったら、原子力発電所の運営は不可能になってしまう。」と述べたと共同通信が伝えました。

                 

福島第一原発事故発性当時、勝又氏は東京電力の会長であり、武藤氏と竹黒氏は副社長として原子力部門の責任者を務めていました。

                

                    

東京電力のスポークスマンを務める原氏は判決へのコメントを拒否し、「東京電力福島原発事故が福島県民の皆さんと県全体に大変なご苦労とご心配をおかけしたことに誠実な謝罪を申し上げます。」と述べるにとどまり、次のように語りました。
東京電力は「引き続き、原子力災害の補償、廃炉措置、除染に全力を尽くすとともに、揺るぎない決意で原子力発電所の安全性を高めるための対策を実施していきます。」

                

今回の裁判で検察側は、事故の3年前、当時の役員が福島第一原発が15.7メートル(約52フィート)の津波に襲われる可能性があるという事実を警告されていたと述べました。
検察側は元役員たちが耳を傾けさえていれば、マグニチュード9.0の地震によって引き起こされた高さ30フィート以上の津波が福島第一原発の防潮堤を乗り越え、大事故を引き起こすことを防げた可能性があると指摘していました。

            

これに対し弁護側は、福島第一原発の津波の危険性に関する専門家の意見は分かれており、提示された報告書の信頼性は低く、当時の役員は服がそれほど巨大な津波に襲われることが現実になるとは到底予測できなかったと主張しました。

            

原子力発電に反対する弁護士グループのリーダーの1人、海渡雄一弁護士は19日、東京電力は2008年以降大津波の危険性を認識していたにもかかわらず、対策を取っていなかったと指摘しました。
「彼ら自身が計算を行っていながら、3年間その事実を隠していたのです。」

                  

                 

「この事実を唯一確認できたのが今回の裁判ですが、裁判所は不公平な判決を下しました。」
海渡弁護士がこう語りました。

              

検察庁は証拠が不十分であると主張し、2013年と2015年の2回にわたり東電の元役員に対する告発を拒否しました。
しかし被災地の地域住民と反原子力発電運動家が協力して検察庁の決定に異議を申し立て、検察官の不起訴判断を不服とする者の求めに応じ、判断の妥当性を審査し、検察庁の判断を覆すことができる制度を活用し、検察庁の決定を覆しました。

               

無作為に選出された11人の民間人で構成される検察審議会は、第2次世界大戦後、裁判を起こすかどうかを決定する独占的な裁量権を持つ検察官の権限を確認するために設置されました。

                          

こうして市民をメンバーにする検察審議会が東京電力の元役員を刑事裁判にかけるべきであると決定した後、自動的に刑事裁判の立件手続きが行われ、裁判所で任命された弁護士が検察官の代理を務めました。

                

日本における刑事裁判の有罪判決率はほぼ100%です。
しかし東京電力の元役員に関する状況は際立って異なるものになりました。

                  

                  

19日の判決以前、検察審査会は検察庁の決定を8回ほど覆したことがある、と明治大学法学部の大塚裕史教授が語りました。
そのうち被告が有罪とされたのは2回にとどまっています。
「これらはいずれも検察庁が起訴を断念した事件です。ある意味、これらの裁判の多くが無罪に終わるのは仕方のないことなのです。」
大塚教授がこう語りました。

              

9月19日の東京地裁の判決は、2011年に発生した東日本大震災級の巨大災害への準備を東京電力と日本政府が怠っていたことに対する少なくとも30件の民事訴訟に続くものでした。

            

今年2月横浜の民事裁判では東京電力の過失を認め、福島第一原発原子力発電所周辺地域から避難したの152人に42億円の損害賠償を命じました。
この判決は東京電力に対する民事裁判における8回目の判決であり、これまでのところ福島第一原発のメルトダウン事故をめぐっての訴訟すべてで敗訴しています。

                

福島第一原子力発電所事故は、1986年のチェルノブイリ以降最悪の原子力発電所事故になりました。
日本における原子力発電の利用を事実上終了させ、発電手段としての原子力に対する世界的な反対運動を引き起こしました。
事故直後、日本はすべての原子炉を停止させました。
現時点で日本国内では数十基の原子炉のうち、10基に満たない数の原子炉が稼働しています。

               

東京電力は福島第一原子力発電所を廃炉にし、事故によって汚染された周辺地域を元の状態に戻すことを誓約しました。
しかしこれから何世代もの人々の重荷にならざるを得ない大量の放射性核廃棄物の処理方法を含め、事故の影響を収束させるために多大な困難に直面しています。

              

東京電力は福島第一原発の破壊された3基の原子炉の溶融してしまった核燃料を冷却するために使用された後の放射能汚染水を保管能力が、2022年までに限界に達することを明らかにしています。
2019年8月時点で、施設の敷地内にある977基のタンク内に、数種類の放射性物質を取り除いた約120万立方メートルの汚染水が保管されていました。

              

日本政府当局はこの一部処理済み汚染水を海洋投棄する計画について議論し、希釈によってほとんど無害化されると主張しています。
しかしこうした考えについては、環境保護に取り組む人々と地元の漁業関係者からの強い反発を受けています。

                 

https://www.nytimes.com/Fukushima Nuclear Disaster Trial Ends With Acquittals of 3 Executives

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