ホーム » エッセイ » 「5割を超える国民が支持しない」首相、その憲法改変の資格を問う!
これ程国民に不人気な首相がこれ程偏った勝利を手にするなど、世界の先進諸国ではほとんどありえない
民主主義の基本に無理解であり、黒い関係と疑惑がつきまとう人間に、国家の規範を改める資格はあるのか?!
エコノミスト 2017年10月28日
自由で公平であるべき選挙において、これ程国民に人気の無い首相がこんな偏った勝利を手にすることは、世界の先進諸国の中ではめったに見られない事です。
安部首相は日本人全体の3分の1の支持を集める一方、国民の51%は不支持を表明しています。
しかし現実には10月22日に行われた選挙の結果、自民党と連立政党が衆議院の3分の2の圧倒的過半数の議席を手にしました。
こうして突然の解散・総選挙という賭けに出た安倍首相は、同じ手法を用いて失敗をした英国のテレサ・メイ首相と異なり、易々と勝利を手にしたのです。
安部首相の勝因の一つは反対勢力である野党の空中分解でした。
カリスマ性があると評価されていた小池東京都知事が率いる希望の党は、発足当初こそ誇大広告され盛り上がりましたが、選挙キャンペーンをやり損なった結果、議会ではなくラーメン店の座席をいっぱいにする程度の議席しか獲得できませんでした。
そして希望の党に合流したグループと袂(たもと)を分かち、リベラル派として安部首相の対抗勢力としての存在を急浮上させた立憲民主党でしたが、獲得議席は465議席中55議席に過ぎません。
安部首相は挑戦者たちの選択においても、ツキに恵まれました。
安心という選択
しかし安倍首相の勝利のもう一つの理由、それは心理的に不安に陥っていた有権者が安心を求めていたことです。
安倍首相が選挙前に指摘したように、日本は国民の高齢化と北朝鮮の脅威という2つの危機に直面しています。
北朝鮮は日本の領海内に何度もミサイルを発射する一方、そのミサイルに取り付ける核弾頭の開発を急いでいます。
ふたつの危機はともに深刻なものであり緊急性の高い問題ですが、高齢化は進行を遅らせたり少子化を逆転させたりして人口動態を変えるためには何十年という歳月を必要とする、長期的課題でもあります。
これに対し北朝鮮の脅威は飽くまで緊急性が高い問題です。
結局多くの有権者は、たとえ個人的には好ましいとは思っていなくとも、日本の安全を守ることに関しては安倍首相の方が他の選択肢よりも確実性が高いと判断したのです。
そして口ではそんなことは無いと否定しつつも、ドナルド・トランプ大統領はいついかなる時もアメリカが日本を助けるという保証はないという印象を日本国民に与えることによって、安部首相を助けました。
安部首相は長年平和主義に基づく日本国憲法を改定することを強く求めてきましたが、今回の選挙によってその信任を得たことになりました。
これは合理的な目標です。
しかし物事は額面通りに受け取ることはできません。
第2次世界大戦後に勝利したアメリカによって日本に課された現在の日本国憲法第9条は
「国際紛争の解決手段としての戦争を、日本は永久に放棄する」とし、
「陸海空軍その他の戦力を一切保持しない」と定めています。
ところが日本は70年以上にわたり陸、海、空軍を維持し、重大な憲法違反し続けてきました。
日本の軍事予算は世界で8番目の規模を持っています。
300,000人の自衛隊は世界標準から言っても最新鋭の装備を誇ります。
歴代の日本政府は、こうした現実に対しで何とか憲法とつじつまが合うように『自衛隊』というラベルを貼り、フィクションに固執してきました。
こうした法的な偽装は、現実とは異なる表現を書き記した付箋紙をべたべたと貼って、そこにある戦車を覆い隠そうとするようなものです。
安部首相がこれだけの規模の軍隊の維持を続けるため、憲法上規定を明快にしたいと考えるのは合理的と言えます。
法治国家において法による支配は重要な原則であり、政府自らがあからさまにその原則に反するようでは、国家としての体をなさなくなります。
さらに問題なのは、憲法第9条について『解釈の変更』に代表される何十年間に及んだ問題のはぐらかしが、日本が東アジア地域や国債社会の安全保障を維持する上でどのような役割を果たすべきかについての議論を混乱させてしまっています。
日本政府が同盟国を援助するためにもっと積極的な対応をしようとする度、あるいは国連の平和維持活動に積極的に参加しようとする度、日本の平和主義者は「違憲」であると叫んでいます。
ほとんどの場合、正しいのは彼らです。
たとえその主張が容れられなくとも、物事を遅らせることはできます。
昨年まで自衛隊は日本の近海などで攻撃を受けている同盟国を掩護するため武力行使することはできませんでした。
そして国連平和維持活動のための国外への自衛隊の派遣は、ジョークだと陰口をたたかれてきました。
イラクに派遣されていた自衛隊は基地を攻撃してきた武装勢力に武力で反撃することが許されなかったため、オーストラリア軍によって保護してもらわなければなりませんでした。
そして2017年、アフリカの紛争国として典型的とも言うべき南スーダンに駐留していた自衛隊の平和維持部隊は、その場所が危険だという理由で撤退しました。
続く7月、安部政権の防衛大臣がこの周知の事実を隠蔽していたとして辞任に追い込まれました。
憲法第9条を改変することは簡単なことではなさそうです。
安倍首相は第一段階として衆参両議会の3分の2以上の賛成を得るため、彼らを納得させられるだけの口実を考え出さなければなりません。
それは安倍首相お気に入りの強硬派の議員だけでなく、穏健派の同僚議員たちの支持も取り付けなければならないということです。
そして次に国民投票で過半数の国民の賛成を得なければなりません。
この段階では『闘い」になる可能性もあります。
憲法第9条を書き換えることになれば、中国と北朝鮮は1930年代から1940年代にアジア東部を侵略した日本の軍国主義復活への第一歩だと非難するでしょう。
しかしそんな批判は的外れです。
たの多くの国々同様、日本には自国を防衛する権利があります。
裕福な国家として民主主義制度が整備されています。
そして世界の平和と安定を保ち続けるため、そうあるべきであるというそれなりの貢献もしています。
そして高齢化が進み減少が続く人口動態、そして70年という歳月をかけて平和主義がしっかりと根付いた日本は、もう誰にとっても脅威ではありません。
しかし残念なことに、安倍首相自身はこうした事実とは逆の印象を与え続けています。
もし安倍首相が憲法の改定の実現を望み、海外の反対意見を減らしたいのであれば、靖国神社との関わりを断たなければなりません。
どのように抗弁しようとも、靖国神社には侵略された国々はもちろん自国民にすら無残な死を強いた戦争犯罪人が祀られています。
日本が戦前戦中に行った残虐行為の非を認めなければなりません。
そして太平洋戦争中に植民地支配を担当する大臣として何万という中国人に強制労働を課した過去を持ちながら、戦後首相になった自分自身の祖父を賞賛することもやめるべきです。
もし日本が実力にふさわしい国際的地位を手に入れたいのであれば、本当の歴史を受け入れなければなりません。
https://www.economist.com/news/leaders/21730646-its-pacifist-wording-hindrance-global-peacekeeping-time-japans-prime-minister
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エコノミストの記事には日本のメディアには無い視点から書かれたものがあります。
これなどその典型です。
そうです…忘れていました。
この首相に国家の規範である憲法を変えてしまう資格はあるのか?!
私たち日本国民は、まずそのことを問わなければなりません。
憲法というのは国の規範であり、私たちの生活の基盤を形成するものの中で最大の存在です。
それを変えるというのであれば、きわめて公平で無私な人間な人間の手に委ねるべきです。
この記事はその事を改めて教えてくれるとともに、反省もさせてくれました。
さすが世界の『ウルトラ中立』メディアの自認と自信が無ければ書けない記事です。