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日米豪の専門家が読み解く、安倍首相の選挙戦の一方的勝利と今後の日本

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所要時間 約 13分

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枝野幸男氏が立ち上げた立憲民主党が燃え上がらせた炎により、日本のリベラリズムは息を吹き返した

日本の小選挙区制度の欠陥が、世論と国会における議席配分との間に大きな隔たりを作りだしている

政治の世界での男女平等の実現に、日本の政党の中で最も強く反対してきたのが自民党

 

ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 2017年10月23日

安倍首相が10月22日投票の衆議院議員選挙で野党に対し決定的勝利を得たことで、日本という国と周辺地域がどこに向かうことになるのか、日本と世界の専門家5人がそれぞれの見通しを語りました。

 

▽ 平和主義について充分に話合う必要がある

[グリフィス大学(オーストラリア・クイーンズランド・ブリスベーン)准教授マイケル・ヒーズル]

 

憲法改定についての慎重な議論は、まさに日本が今必要としているものです。

この問題は他を圧する程に重要なものですが、日本国内では左右両翼のイデオロギー対立により意見が大きく割れたままです。

左派は日本の平和主義の土台となっている憲法第9条には手を触れるべきでないと主張しています。

しかしその姿勢は世界情勢の変化によって現実的なものとは言えなくなっており、憲法第9条が掲げる理想的平和主義と現実の国際情勢との食い違いが目立つようになっています。

中国の海洋進出と国際社会への影響力を強めようとする野心と、アメリカが東アジア太平洋地区においてこれまでと変わらないやり方で地域の安全保障に貢献し続けるのかどうか米国の意欲に対する中国の野心と不確実性を伴い、現在の環境でそれを維持することは現実的ではない。

 

日本とオーストラリア国はそれぞれの地域の現状維持のためにもっと貢献する必要があります。

私自身の見解としては、中国と北朝鮮という例外を除けば、東アジア地区の安全保障に対するこれまでの日本の姿勢に反対している国はありません。

東南アジア諸国とオーストラリアが日本の軍国主義の復活を懸念していた時代は終わりました。
日本と米国との関係において、米国との同盟関係を維持しつつ他国との安全保障関係を構築したいのであれば、日米両国の利益は両立させなければなりません。

すでに明らかとなっている通りアメリカには自分たちが構築・維持している安全保障体制に他国をただ乗りさせる余裕はなくなっているのです。

▽ 日本の体制変更への宿願達成の鍵を手にした安倍首相

[テンプル大学(東京キャンパス)アジア研究センター所長 ジェフ・キングストン]

 

政治の重心が右に移動したために、21世紀の日本のリベラリズムは生命維持装置につながれることになりました。

しかし今回選挙で枝野幸男氏が立ち上げた立憲民主党が放った火により日本のリベラリズムは息を吹き返し、立憲民主党は今回の選挙のシンデレラ・ストーリーの主役を演じることになりました。

 

枝野氏が主張するのは憲法の改定に対し妥協することない姿勢をとり続けることであり、多くの国民が反対している2015年に成立した安全保障関連法案の廃止です。

また安倍政権の目玉であるアベノミクスが富裕層に一層有利な経済環境を提供した結果、日本社会では格差が拡大しているという一般市民の認識についても取り上げています。

枝野氏は現在、多くの国民にとって自由民主主義のよりどころとなっています。

現在立憲民主党が掲げている炎は風の中で揺らめいて見えるかもしれませんが、いずれ安倍政権の政策の欠陥や矛盾を明らかにしていくための格好の立場を手に入れました。

一方の安部首相は長年の宿願であった憲法の改定が、今や自分の手中にあることを実感しているでしょう。

国会で憲法改定への提案が議決された後に実施される国民投票において、国民の支持を取り付けるため、これから巨大な規模のPRキャンペーンが展開されることになるでしょう。

多少北朝鮮と中国政府からも応援を得て(原文通り)、今回は安部首相が望むものを手に入れる可能性が高いという方に私は賭けます。

 

▽ それ程大きな変化は期待しにくい

[明治大学国際総合研究所客員研究員 奥村 準]

 

安倍首相率いる連立与党が衆議院においてぎりぎり全議席の3分の2を確保したことで、憲法改定法案を可決成立されることが容易になりました。

一方で経済政策に大きな変化はないでしょう。

安全保障問題については日米同盟を重視し、北朝鮮に対しては強硬姿勢をとり続けることになるでしょう。

希望の党は現在の連立与党に代わり得る、現実的な選択肢として短期間で浮上しました。東京都の小池百合子知事は、敢えて言うなら彼女の最悪の面を再び露呈したと言って良いかもしれません。

慎重を要するはずの政策決定において自分の好みを表に出さず、忠告を謙虚に受け止める能力の欠如によって、最大野党であった民進党との連携を台無しにしてしまいました。

 

日本は21世紀前半、少なくとも東京オリンピックが開催される2020年までは、見た目だけ小春日和といった状況でのろのろと進む可能性が高いでしょう。

しかし現在西側社会のいくつかの国々 – そこには当然日本も含まれるわけですが - で現実となっている事を考えると、日本の状況は間違いなくこれから悪化していく可能性があると考えています。

 

▽国民の信託の無い安倍首相の一方的勝利

[上智大学政治科学教授 中野 晃一 ]

 

日本の小選挙区制度には欠陥があり、主要問題に関する世論と国会における議席配分との間には大きな隔たりがあります。

今回の選挙で自民党は一方的勝利を得ましたが、安倍首相が憲法の改定について本当の意味での負託を手に入れたとは言えません。

このような低い投票率の下で実施された選挙で、自民党と安倍首相があたかも国民全体からの支持を得たかのように言う事は間違っています。

 

今回の選挙結果もまた選挙制度の機能不全と分裂した野党の恩恵を受けて自民党が勝利した事例がまたひとつ増えたというに過ぎません。

 

憲法改定は日本の国論を2分する最も大きな問題であり、先の英国のEU脱退問題に似ています。

それは誰が最も大きな利益を受け取るのかという利害を中心に据える政治から、国民のアイデンティティを重視する政治への転換が進む世界的傾向を反映しています。

アメリカにおいては移民と人工中絶であり、英国においてはEUからの離脱問題、そして日本においては憲法の改定が最も大きなテーマです

戦後に確立した自由民主主義社会に満足しているのか、それとも戦前の日本に象徴される旧体制の日本とその価値を復活させたいのか、今日本人が問われているのはその事なのです。

この問題はきわめて感情的な問題です、特に安倍首相にとっては…。

安部首相はすでに集団的自衛権の行使を可能にする法案の解決成立を強行しており、これ以上憲法の改定に拘泥する理由は無いはずですが、感情が許さないのです。

日本において差し迫った問題は経済の停滞であり、高齢化社会などの問題であるはずであり、他の政治家も一般国民も憲法についてこれ程思い悩む必要はないはずなのです。

 

政権与党は現在衆参両院において安定多数の議席を確保しています。

しかし憲法の改定については、国民の意見は大きく分かれていると言えるでしょう。

憲法を改定するためには国民投票において過半数の賛成票を獲得することが必要ですが、安倍首相がその票を獲得できるかどうかはまだ流動的です。

イギリスのEU脱退のための国民投票の結末を見れば、現在政権の座にある者がわざわざ国民投票を求める必要性はないということがわかるはずです。

▽ 今回も置き去りにされた女性の政治的地位の向上

[RMT大学(オーストラリア・メルボルン)日本語講師 博士 エンマ・ダルトン]

 

今界の選挙では実質的に解散した野党民主党に代わり、2つの新しい政党が出現し、多くの興奮をかき立てました。

もう一つ目立ったのは一般的な問題であるにもかかわらず残念ながらほとんどの場合顧みられない問題、すなわち女性の政治的立場の進歩です。

 

日本の政治社会における男性優位は長年にわたり続いてきた問題であり、今さら取りざたされなければならない問題ではありません。

世界の中の経済強国、すなわちOECD諸国の中で健康福祉と教育分野では人権と女性の社会的立場の向上に見るべき成果があるものの、こと政治と経済の分野で女性の地位が著しく低いという状況は、日本の民主主義と平等に対する疑問を提起しています。

 

長年政権の座に座り続けている自民党への強力な権力集中と、日本の女性たちの政治的立場の脆弱さは無関係ではありません。
22日に投票が行われた衆議院選挙で、自民党の候補者のうちわずか8%が女性でした。

これまで20年間、女性グループは政治の舞台に相応の数の女性を参画させて男女平等を図るようキャンペーンを行ってきました。
この政治の世界で男女平等を実現するという考え方に、日本の政党の中で最も強く反対してきたのが自民党なのです。

事実、安倍首相が今回、突然の衆議院解散総選挙を決定した際、政党内の男女の比率を適正な比率に改めるよう促す法案が事実上廃案になりました。
今回再び自民党政権が信任された以上、日本の政治社会における女性の地位向上は望むべくもない状況になりました。

 

https://www.theguardian.com/world/2017/oct/23/what-now-for-japan-after-abes-landslide-election-victory

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なるほど、自民党はレイシズムだけでなく、性差別も常態化している組織なのか…色々な記事を読んでみるものだな、と思いました。

 

ところで立憲民主党の誕生でリベラリズムの火が再び勢いを盛り返しました。

気になるのは初動期に安保法制廃止に力を入れ過ぎると、予想もしない方向から妨害が入らないか?ということです。

田中角栄元首相は中国との国交正常化を達成した後、アメリカ側から情報が『提供された』スキャンダルによって失脚しました。

自民党の金丸信氏は同じく北朝鮮との外交関係を改善させた直後、失脚しました。

民主党政権はアメリカに対する日本の外交的立場を引き上げる交渉を持ちかけた後、崩壊しました。

安倍首相はなぜ復活できたのでしょうか?背後に誰かがいるのではないでしょうか?

 

私の脳裏に刻みつけられたシーンがあります。

チリで穏健派社会主義政権を誕生させたアジェンデ政権の崩壊です。

米国のオリバー・ストーン監督が監修しNHK・BSで10回シリーズで放映された『オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史』の中で語られたアジェンデ政権の崩壊は、CIAの謀略というものがどういうものかを如実にもの語っています。

 

せっかく灯ったリベラリズム、『お互いさまの民主主義』の火を守っていきたい、そう考える人間のひとりとして、立憲民主党はまずは市民と語りあい、市民とともに着実に成長していけば良いと思っています。

自民党は日本社会に利害の根を張り巡らせて『地盤』を作り、今回の選挙で 『組織力』を見せつけました。

支持者と利害を共有する自民党に対抗するのに、立憲民主党は何を支持者と共有するのか。

これからが正念場です。

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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