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日本経済は回復途上、急な解散総選挙はこの国の運命を危険にさらすだけ

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『北朝鮮の脅威』を超える日本にとっての脅威、それは構造改革途中放棄した安倍首相の政治姿勢

『とにかく改憲』それが安部首相の本音、本当の目的。日本経済回復は選挙期間中だけの表看板

 

エコノミスト 2017年9月30日

 

日本経済の停滞は極めて長期間に及んでおり、いまだ多くの国民は回復の兆しを感じていません。
しかしよーく見てみると、回復の兆しは各所に見え始めています。
何年もの大規模な財政緩和策と金融刺激がようやく何らかの影響を及ぼして始めているように見えます。
失業率は3%を下回りましたが、これは23年ぶりの最低水準であり、少なくとも非正規労働者の賃金は上昇しています。
日本銀行が目標としている2%のインフレ目標ははるかに下回っていますが、物価もじわじわと上昇しています。

 

外部の人間には、こうした話は迫力に欠けるつまらないものかもしれません。
しかし30年近くも景気後退とデフレに苦しんできた国にとっては、脱出への出口がみえはじめたということになるのです。

過去18ヶ月間続いてきたゆるやかな景気回復は、この10年間で途切れなく成長が続いている期間の記録を更新中です。

 

この本格的復活の序章ともいうべき回復の立役者は安倍晋三氏であり、1990年代に発生した日本の大規模なバブル崩壊以降最長記録に近づくほぼ5年間首相の座にあります。
今週安倍首相は10月22日を投票日とする衆議院の解散総選挙を突如発表しました。
しかし結果はほぼ予想される範囲に収まるでしょう。
安倍首相と連立与党の公明党は現在衆参の全議席の3分の2以上の過半数を占めていますが、もし彼らが政権の座を守ることができなければ、それこそ驚くべき逆転と言うべきでしょう。

しかし安倍首相に関係する一連のスキャンダルが発覚し、安倍首相の政権基盤を損なっており、楽勝するだろうと考えていた選挙で、より厳しい戦いに直面する可能性があります。
今後の政治の展開次第では未だ回復途上の日本経済を再び脱線させる可能性があり、世界で3番目に大きな規模を持つ経済をもう一度泥沼に突き落とす可能性があります。

 

在任期間を通し安倍首相は、財政出動と金融緩和が政策として終了した後日本経済を支えることになる重要な構造改革を、国民に不人気だとの理由で先延ばしにしてきました。

構造改革の中身はこのままでは維持が困難な年金制度の改革、一部の業種の保護を目的に導入された各種の規制を撤廃し市場原理に任せること、終身雇用を保証されてきた給与所得者の中途での解雇を可能にすることなどの経済制度の変更です。

いずれの制度変更も、もっともらしい理由により実施が延期されました。

政治的な思惑と経済的な理由によって、国民にとって好ましくなく感じる構造改革は日本経済の充分な回復が実現されるまで待つのが理にかなったやり方だとされたのです。

 

▽ 安倍氏の悪い習慣

 

しかし現在の政治状況は安倍首相のこうした及び腰の姿勢をむしろ歓迎するような展開となっています。

安部首相は予定を1年以上繰り上げ、衆議院の解散選挙を宣言しました。

これは恐らく安部首相自身の国民の支持率が今後14カ月間に改善される見通しはないとの観測にもとづくものです。

一つの大きな懸念は、小池百合子東京都知事が率いる「希望の党」と結成、そして最近になって自民党を離党し希望の党に入党する人間が現れはじめたことです。

新党は年初に行われた東京都知事選挙で自民党を敗北に追い込んだ同じく小池百合子が率いる都民ファーストの会と合体する予定です。

 

そして現在野党第1党である民進党の国会議員をも取り込むことにより、安倍首相率いる連立与党の対抗軸を形成しようとしています。

前回までの選挙とは異なり、安部首相は今回は不人気な経済改革の実施に対する有権者の気持ちを和らげる準備をしていたようには見えません。

安部首相はこれまで経済問題については、選挙演説中は年金制度も含め様々な分野に財政出動を行うという約束しかしてきませんでした。

そして経済の再生、あるいは根本的に経済を立て直し日本を再び強国として甦らせるための唯一の手段である構造改革にはさほどの熱意はもっておらず、平和主義に基づく憲法を改定することにこそ強い意欲を持っているという事実をあっさりと認めました。

 

今回の選挙は日本の不安定な状況を悪い方向に向かわせる可能性があります。

結果いかんでは安部首相の政治基盤にダメージを与える可能性があり、そうなれば構造改革への意欲はますます後退することになるでしょう。

最小限に見積っても自民党は議席を減らす可能性がありますが、その理由は単に現在の議席数はどう見ても多すぎるというものです。

もし自民党が予想を超えて議席数を減らす事態になれば、党内に安倍首相を総裁の座から追い出そうとする勢力が現れる可能性があります。

 

しかし自民党の過半数の程度がどうなろうと、最終的にだれが責任を採ることになろうと、日本経済を復活させる仕事を道半ばで放りだすことは致命的な間違いになるでしょう。この場合、時間が経つにつれて事態は悪化していくだけです。

公的負債は今やGDPの250%を超えてしまいました。

人口は高齢化し、労働人口は減少を続け、経済成長の足取りは一層重くなりっています。

 

北朝鮮の今にも戦争を始めるかのような姿勢は、一部の有権者の注目を経済から国家安全保障にシフトさせたかもしれません。

こうした状況は安倍首相に有利に働いています。

金正恩(キム・ジョンウン)に対抗するには、扱いの難しい味方であるドナルド・トランプのアメリカとうまく連携できる強力なリーダーが必要かもしれません。

しかし長期的には景気後退を回避できなければ、日本の安全保障は内側から大きな脅威にさらされることになってしまいます。

経済的停滞は長い間続いており、国民も政治家もこの問題を放っておいても日本は何とかやっていけると考えているかもしれません。

しかし巨額の財政出動も金融緩和政策も、しょせんは一時しのぎの政策であり、日本が抱え込んでいる問題を本質的に解決するものではありません。

残された時間が限られる中、日本経済が大きな惨状に落ちこむことなく数々の問題を改善に向かわせる機会は、突然の解散総選挙により一層遠のくことになりました。

 

https://www.economist.com/news/leaders/21729747-whatever-outcome-reforms-must-continue-japans-early-election-puts-its-economic-recovery

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今回の選挙の要点は改憲派である安部派と小池派の主導権争い、それに対抗する立憲民主・社民・共産のリベラル陣営という事だと私は思っています。

一時小池氏の希望の党が民進党離党者の内リベラル系の議員は排除すると宣言し、それこそ日本の政界からリベラル派の議員を排除する動きが見えた際は怒りがこみ上げましたが、幸い枝野氏が立憲民主党を立ち上げ、何とかリベラル派の陣容が整いました。

あとは私たち有権者が投票所に行くだけです。

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