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危うさを見せ始めた日本経済、その最中に消費税を10%に引き上げた安倍政権

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所要時間 約 10分

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長年続けてきた大規模金融緩和策の効果を吹き飛ばしかねない今回の消費税引き上げ
明らかに後退し始めた一般世帯の消費意欲、節約志向を強める消費者

              

               

山口まり/ AP 2019年10月1日

                 

写真 : 2019年9月30日の東京の大規模家電小売店。
日本経済を不況の中に沈める可能性があるという懸念の中、日本政府は消費税を8%から10%に引き上げましたが、影響を最小限に抑えるために各種の措置を講じています。

                  

日本は10月1日火曜日、消費税を8%から10%に引き上げました。
これは急速な高齢化と人口減少という状況の中、国の将来の財政安定のために採られた措置ですが、目の前の経済が打撃を受けるリスクがあります。

                  

これまでの増税は、1997年に3%から5%に、2014年にはさらに8%に引き上げられ、それぞれ景気後退をもたらしました。
安倍首相は世界第3位の規模を持つ日本経済のただでさえ弱々しい成長をさらに阻害する恐れがあるため、10%への引き上げを2度延期してきました。
しかしこれ以上は先伸ばしにはできないと語っていました。

                  

「私子供から高齢者まですべての世代が安心できるように、あらゆる世代の人々が恩恵をう開けられるように社会保障改革を進めています。これは最初の大きな一歩になるでしょう。」
安倍首相は記者団にこう語りました。

                

                 

消費税引き上げは衣服、電子機器から輸送費や医療費まで、ほとんどの商品とサービスを対象としています。
しかし政府は来年6月まで8か月間、中小規模のレストランやその他の小売店でクレジットカードや電子決済その他の「キャッシュレス」購入に対するポイント還元プログラムを開始する一方、住宅や車の購入に対する優遇税制措置を採ることにより影響を和らげようとしました。

               

しかし食料品の購入について低所得世帯に対する優遇措置などは無く、その代わり保育所の無償化や低所得年金受給者への一時金の支払いなどの対策を採っています。

               

麻生財務大臣は消費税の引き上げ当日、増税前の駆け込み需要がそれほど多くなかったことに言及し、増税後の買い控えの影響が過去ほど深刻ではない可能性があるとの見通しを明らかにしました。

              

公的債務を経済の2倍以上の規模にまで膨らませた数十年にわたる財政赤字の後、安倍首相は2025年までに財政の健全性を取り戻すことを約束しました。
しかしそのためには日本経済が健全なペースで成長する必要があります。

                   

消費税の引き上げは、今年9月に大企業の景況観測が2013年以降最悪のレベルまで悪化したという統計結果が公表されたタイミングで実施されることになりました。

                 

                  

結果は予想ほど悪いものではありませんでしたが、『短観』と呼ばれる四半期ごとのデータが12月に公表される際には、統計の数値はさらに悪いものになるとみられています。

                   

「特に影響を受けているのは最近の先物市場の動きを反映した鉄鋼や科学などの基礎材料の生産、そして米中貿易摩擦が再び拡大局面に入ったことによるリスクにさらされている汎用および生産機械の生産者です。」
オックスフォード・エコノミクスは解説の中でこう記しています。

             

今週発表された他のデータは8月時点で工業生産高が減少していることを示していますが、失業率は26年ぶりの最低水準である2.2%を記録しました。

            

経済は4月から6月にかけて年率換算で1.8%のペースで拡大し、予想を上回りました。
しかし輸出の減速と原油価格の上昇は今後数ヶ月の経済成長率を低下させると予想されています。

                 

アナリストは日本にとって最大の市場である米国と中国の関係悪化、そして日本と隣国の韓国とのさらなる関係悪化が進めば、消費税引き上げが今以上のデフレリスクをもたらすと述べています。

               

               

企業が投資意欲を高め、倹約に努める日本の家庭に財布の紐を緩めさせることを目的とした大規模な金融緩和策が続けられてきた日本ですが、その最中に消費税が引き上げられることになりました。 

                               

「現在の経済状況を考えると、タイミングが悪いものになりました。」
第一生命研究所のチーフエコノミストの長浜敏弘氏がこう語りました。

                

2018年後半から日本経済は減速しており、東京2020オリンピックの建設ブームによって生み出された需要も消えつつあると長浜氏は分析しています。
恐れなければならないのは、需要の低迷による物価の下落が経済成長の主な原動力である投資を押し下げるデフレ基調から逃れるための長年の努力が、今回の消費税引き上げによって水の泡になるかもしれない点です。

                

黒田晴彦日本銀行総裁が日本経済をデフレ基調から抜け出させるため、中央銀行の資産購入を通じて経済市場に数兆円規模の現金を注ぎ込む「大バズーカ」を開始してから6年以上が経ちました。
しかし賃金の伸び悩みにより支出の伸びは鈍いまま低迷しています。

                    

増税により推計で2兆円以上の追加負担が家計に加わることになります。

                 

批評家は新しい消費税制度に組み込まれた軽減税率とポイント還元制度などの優遇策が混乱を引き起こすに違いないと指摘します。
たとえば、スターバックス・コーヒーアウトレットで同じ商品の「持ち帰り」を選択すると8%の税金が課せられますが、店内での飲食を選択すると10%の税金を支払う必要があります。

                 

それでも買い物客は変化を何とか受けいれようとしているように見えました。
東京のスーパーマーケットで店員にクレジットカードを試すように説得されたある年配の女性は、購入した905円分の食料品のレシートから5%割引されているのを見て喜んでいました。
「これは、45円割り引いてもらったということですよね?」
NHKテレビのインタビューを受けたこの女性は笑いながらこう尋ねました。
「改めて計算してみると、ずいぶんとお得よね。」

                  

企業は顧客を獲得するため、値引きとキャッシュレスでの支払いに特典を提供するシステム導入に取り組んでいます。

                 

東京駅構内を歩いていた60代の主婦の松本順子さんがこう語りました。
「割引サービスを実施している店で買い物しようと思っています。それと高額な値札がついた贅沢品を買うつもりはありません。」
「消費増税はどうせ避けられないことでしたから。」

                   

2010年/2015年 日本の実質賃金伸び率

               

31歳のオフィスワーカーである横山徹さんは、それほど楽観的ではありませんでした。

                 

「消費増税を行う前に政府にはもっと他にするべきことがあったはずです。でも結局増税されてしまいました。こうなってしまってから自分でできることなどあまりありません」と横山さんはこう語り、次のように続けました。
「私自身の消費行動にされほどの変化はないと思いますが、以前ほど頻繁に旅行に行くことはもうできないかもしれません。」

https://www.apnews.com/93b48dfa5a0945fa9a6ba0a53c3ec1d9

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今回の消費増税に関連する軽減税率やポイント還元制などという政策は、まさにポピュリズムの最たるものであり、日本経済の足腰を強くしようというまっとうな姿勢は全く感じられない、そうお考えの方も多いと思います。

しかしそうした見え透いた人気取り政策を歓迎する一方、この時代の日本の厳しい現実を見ようとはしない日本人、その思考回路はまさにテレビのバラエティ番組的構造になっているのではないでしょうか。

自分で何かの価値を創造するわけでもない、普遍的価値について検証するわけでもない、ただ無為に目をさらし、時間を空費していく。

その先にあるのは日本人の劣化、日本の劣化なのではありませんか。

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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