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福島第一原発事故・東京電力の役員に無罪判決・シリーズ6:世界のメディアはどう伝えたか?!《アルジャジーラ》

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チェルノブイリ以降世界最悪の原子力発電所事故に対し、誰も刑事責任を負わない日本
東日本大震災から復興の早さは、福島第一原発事故の影響の重さによって全く違うものになった

これほどの地震多発国にこれほど多くの原子力発電所を作ってしまった日本

                 

               

ケリー・オルセン/ アルジャジーラ 2019年9月19日

              

福島第一原子力発電所の事故は津波による大災害の最中、数十万人の人々を自宅を捨てざるを得ない状況に追い込みました。

                    

9月19日、東京地方裁判所は、2011年の福島第一原子力発電所の原子炉メルトダウン事故がもたらした巨大災害に関する刑事責任を問う裁判で、原子力発電所を運営する会社の元幹部3人を無罪としました。

               

2011年3月11日午後、日本の東北地方の海岸沖で発生したマグニチュード9.0の地震は東京電力福島第一原子力発電所に殺到した巨大な津波を引き起こしました。

                

高さ14メートルの津波に襲われた福島第一原発が原子炉のメルトダウンと水素爆発ほ引き起こした結果、大量の放射性物質が大気中に放出され、数十万人規模の住民が避難し、1986年のチェルノブイリ以降の最悪の原子力事故が発生しました。

                

福島第一原発事故は日本中に衝撃を与えました。
それまで数十年にわたり世界第3位の経済圏にとって安価な電力供給源であった原子力発電所がすべて停止する事態となりました。

                 

今回の刑事訴訟を特別検察官として担当した弁護士は、東京電力の勝又恒久元会長、武藤栄元副社長、竹黒一郎元副社長の3人を過失致死傷の容疑で禁固5年を求刑していました。

              

               

NHK、共同通信社その他の主要メディアは、東京地方裁判所が3人全員を無罪にしたと一斉に伝えました。
東京地裁の永淵健一裁判長は判決理由の中で、「電力事業者が津波が引き起こす可能性があるあらゆる事態を予測し、必要な措置を全て講じなければならなくなったら、原子力発電所の運営は不可能になってしまう。」と述べたと共同通信が伝えました。

                

環境保護団体グリーンピースは今回の判決について声明を発表し、日本の法制度が再び福島第一原発事故の犠牲者の「人権を守ろうとはしなかった」と批判しました。

              

グリーンピースの原子力問題の専門家であるショーン・バーニー氏はアル・ジャジーラの取材に、この裁判の背後には「極めて政治的」な意図があり、判決は大方こんな結果になるだろうと予測がついていたと語りました。
「私の本音を言わせて貰えば、これこそが福島第一原発の問題解決より自分たちの責任を回避するため、原子力産業界が国を巻き込んで行っているやり方なのです。その姿勢は現在もかわっていません。唯一異なるのは、日本の一般市民は原子力発電に反対するという立場を共有していることです。」

                 

「今回の判決には全く失望させられますし、後退であることは明らかですが、日本の人々は福島のような事故が二度と起こらないようにするためには、日本のすべての原子炉を停止させるために戦い続けなければならないということを、今や完全に理解しています。」

                 

                       

東京地方裁判所の広報担当の女性は、東京電力の元役員3人全員に無罪の判決が言い渡されたことを確認しましたが、詳しい情報提供を拒否しました。

             

東京電力のスポークスマンを務める原氏は判決へのコメントを拒否し、「東京電力福島原発事故が福島県民の皆さんと県全体に大変なご苦労とご心配をおかけしたことに誠実な謝罪を申し上げます。」と述べるにとどまり、次のように語りました。
東京電力は「引き続き、原子力災害の補償、廃炉措置、除染に全力を尽くすとともに、揺るぎない決意で原子力発電所の安全性を高めるための対策を実施していきます。」

               

検察側は福島第一原発近くの病院の患者を含む44人が死亡した責任について、東電の元役員3人が責任を負うべきだと主張していました。
この44人は福島第一原発の事故が作り出した極度の混乱の中で、死亡せざるをえなくなったと述べました。

                   

争点となったのは元役員3人が地震や津波が発生しやすい日本の国土において巨大事故の可能性を予見し、沿岸部に建設された原子力発電所を守るため十分な対策を講じたかどうかでした。

                

検察側は大規模な津波が発生する可能性があるという東京電力の研究結果を引用し、元役員が危険を事前に察知していたと主張しました。
弁護側はそれを否定し、研究結果の信頼性が低く、そのため元役員がこれほどの津波が襲うことを予測することは不可能な上だったと述べました。
元役員3人は2017年に裁判が開始された当初から無罪を主張していました。

                

                 

福島第一原発事故の責任の問題は、意見の一致を重視する日本社会の中で、特に多くの人々の生活が台無しにされた被災地において、触れれれば飛び上がるほど敏感な問題です。
3基の原子炉がメルトダウンした後、160,000人以上が避難生活を強いられましたが、第一原発周辺の一部の地域では人間の居住が不可能なままになっています。

               

事故をめぐる東京電力への民事訴訟では住民側が何度か勝訴していますが、東電の職員も原子力産業の管理帰省を担当していた政府職員も、誰一人刑事責任を負った人はまだいません。

              

「誰も責任を負わない、それがここでの本当の大きな問題です。」
京都に拠点を置き日本の原子力発電の終了を訴え続ける環境団体グリーン・アクションの役員、アイリーン・ミオコ・スミスさんがこう語りました。
スミスさんは福島第一原発の問題について、銀行や他の金融機関などの無責任な行動が大きな経済的損害を引き起こしたものの、最終的に誰も責任を取らず刑務所に入れられた者も皆無だった2008年の世界的な金融危機に状況が似ていると指摘しました。
「状況が極めて似ており、その原子力発電バージョンです。」
スミスさんがこう語りました。

                 

津波は東日本から東方地方の太平洋岸を広範囲に吞み込み、車、家、建物をなぎ倒し、海に投げ出し、船舶やボートも多数転覆させました。
公式統計によると、津波による死者または行方不明者を合わせた犠牲者数は22,000人を超えています。

               

福島第一原発事故の影響が軽微だった沿岸や福島第一原発から遠く離れた居住が可能な市町村は、損傷の修復や残骸の後片付けに大きな進展がありましたが、事故の直接の被害を受けた地区の環境被害と経済被害に加え、心に受けた傷は容易に癒えるものではなく、今後何十年も影響が続くと予想されています。

                    

           

日本政府は2016年、福島第一原発の事故収束・廃炉作業に約21.5兆円の費用がかかると予想しました。
今年2019年の初頭に日本経済研究センターが行った民間機関としての推計では、費用は81兆円と政府の試算のほぼ4倍に達する可能性があることを明らかにしました。

                  

2019年9月、安倍首相によって新たに環境大臣に任命された小泉進次郎氏は初めての記者会見で、日本は原子力発電から離脱する必要があると述べました。
小泉環境大臣は、「原子炉を維持する方法ではなく、廃炉にする方法を研究したい。」と述べました。
「別の原子力発電所事故を起こしてしまったら、私たちは破滅することになるでしょう」

                 

小泉環境大臣は丸一日を費やしての初めての福島訪問で福島県知事と面会し、福島の復興支援を全力で行うと発言しました。
「非常に深刻な問題が数多くあり、私としては皆さんと協力して復興を進めたいと考えています。」
引退後に反原子力発電運動家として活動している小泉純一郎元首相の息子である小泉環境大臣は記者団にこう語りました。

                   

▽ 地震が多発する国土ゆえの危険性

               

小泉首相を内閣に任命した安倍首相は2016年、日本の原子力発電の廃止はあり得ないと語りました。

しかし福島第一原発事故により現実の方が変わり、日本は原子力発電の継続を再考することを余儀なくされ、電力需要における発電割合が急激に減少しました。

                 

アイリーン・スミスさんによると、原子力発電は現在日本の発電割合の2.7パーセントを占めているに過ぎず、ピークだった事故前の約30パーセントから大幅に減少しました。
福島第一原発事故発生当時、日本には54基の原子炉がありましたが、廃炉等の措置の結果としてその数は33基にまで減少しました、とスミスさんが語りました。
そのうち9基がすでに再稼働し、さらに16基が稼働のための承認を待っています。

                

               

しかし反対運動を行っている人々は、数の多少にかかわらず原子力発電は日本にとって危険だと指摘します。
「確かに運転中の原子炉の数が激減した分、リスクも低くなりました。」
バーニー氏は判決前のインタビューでこう語っていました。
「しかし安倍政権の原子力政策は、今後数年間のうちに最大30基の原子炉を再稼働させることです。」
バーニー氏は安倍首相の原子力政策についてこう語りました。
「それだけの数の原子炉が稼働できるとは思いませんが、しかし日本には大惨事を引き起こした福島第一原発とほとんど変わらない条件の下にある原子炉がまだ存在するのです。」

                

スミスさんも同意見です。
「国土の全域でこれほど地震活動が活発な国は他にはないのに、これだけ多くの原子力発電所がある国は、世界中どこにもありません。」

                      

https://www.aljazeera.com/news/2019/09/japan-court-set-rule-fukushima-disaster-trial-190919000654856.html
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