ホーム » エッセイ » トランプ訪日、対米従属姿勢に大喜びする日本人《前編》
常識の一線を越えてトランプに媚びる安部首相、果たしてそれが日本の国益に適うのかどうか疑問
アメリカ大統領にまで『天皇家の政治利用』を提案していた安倍首相
安倍首相の取り組みは日本が本当に必要としている戦略を台無しにする
ケイティ・ロジャース、モトコ・リッチ / ニューヨークタイムズ 2019年5月24日
世界各国の首相級の大物であっても、誰もが現在のホワイトハウスで開催される誕生会でケーキを振舞ってもらえるわけではありません。
しかしトランプ大統領と本当に貿易上の取引をしたいと考えている人間の中で、日本の安部首相は何としてでもトランプ一家の親しい友人の中に加わりたいとと考えています。
先月メラニア・トランプの49回目の誕生パーティーがワシントンで開催された際、訪米中の安部首相夫妻は誕生パーティーのケーキカットの席に招待されました。
合意形成が困難な状況にあるな貿易交渉と北朝鮮のミサイル発射による脅威が続く中、今度はトランプが夫妻として初めて、4日間国賓として日本を訪問しました。
そして安部首相は一ヶ月前のお返しの『おもてなし』することになりました。
二人の前には解決が難しい二つの大きな課題が横たわっています。
一つは貿易交渉、そしてもう一つが北朝鮮からの新たな挑発です。
ホワイトの関係者によれば、トランプは大統領選に勝利した2016年以降、安部首相とは40回以上打ち合わせを行ってきました。先に述べたような逆境にあっても尚、たまさかにゴルフ仲間にもなる世界最強国家の大統領であるトランプとの間の親密な関係を維持したい安部首相は、カネを積んだたけでは実現が不可能な『おもてなし』の数々をプランニングしてきました。
こうした安部首相のプランの数々は、日本がアメリカにとってアジア地区における最も重要な同盟国であると同時に最も親密な友人であることをトランプに何としても再認識させることでした。
トランプは大相撲観戦の後、優勝した力士にアメリカ大統領杯を手渡すことになっています。
新天皇との会談も予定されています。
そして国賓として最大限にもてなされることになるでしょう。
安部首相がこれだけ媚びを売る理由は、外交を個人技を披露する場所としか考えていないトランプを側にいて観察を重ねてきた挙句の結論なのです。
しかしこうした両者の関係について2年半の間観察を続けてきた国内そして海外の一部のオブザーバーは、トランプに対しこれだけのことをして、それが果たして日本の国益に適うのかどうか疑問視しています。
日本経済の景気減速に追い打ちをかけるように、安部政権はトランプ政権との二国間貿易協定の締結を迫られています。
さらにはずっと続いているトランプ政権による日本製自動車に対する追加関税の適用をなんとか回避しようと努めています。
しかしホワイトハウス当局者は、今回のトランプ訪日では、貿易協定締結に向けた具体的な動きがあるとは考えていないと語りました。
安全保障関連の課題では、トランプは北朝鮮の指導者キム・ジョンウンと対話の窓口を開きましたが、この問題で脇に追いやられることを恐れている日本人をやきもきさせ続けています。
ホワイトの関係者によれば日本の近隣諸国の侵略意図は日米の同盟関係によって阻止されるべきものだとしながらも、今回の訪問は多分に儀式的なものであると強調しています。
法政大学法学部教授で政治学が専門の山口二郎氏は次のように語りました。
「安倍首相はトランプ大統領の訪日をまるでエンターティメントのように演出し、政治的スペクタクルにしようとしています。」
「しかし言わなければならないことは、安倍首相はこうした外交活動によってどのような成果を上げたこともないし、何か結果に結びついたこともないということです。今回の政治的スペクタクルは安倍首相のこうした外交的失敗を表面だけ隠してしまおうとするものなのです。」
トランプ政権が現在中国、北朝鮮と厳しい対決を迫られている隙に乗じ、安倍首相は徹底的にトランプの機嫌をとることによって米国政府の日本に対する圧力をかわそうとしてきました。
しかしはたしてこのような態度が日米間の信頼に基づく健吾な外交関係を築くに至るかどうかは疑問です。
安倍首相はトランプの右寄りの政策を度々賞賛していますが、トランプ自身はそんなに強いリーダーシップを発揮しているわけではないということを自認しています。
しかしいくら日本のおもてなし文化が有名なものであっても、安倍政権のトランプ接待イベントの数々は度を越した贅沢なものです。
本来日本の国技として煩瑣なほどの伝統に縛られた大相撲の千秋楽において、安倍首相は相撲の競技よりもトランプ接待をメインイベントとして利用するるつもりです。
さらには駄目押しとして、トランプがアメリカ大統領杯を優勝力士に手渡すことになっています。
これら一連のトランプ接待について、ホワイトハウス関係者はこうコメントしました。
「大いに結構だ。」
そしてトランプ訪日のハイライトは月曜日にやってきます。
85歳で退位した明仁上皇に代わり新天皇として即位した59歳の徳仁天皇との会見です。
トランプは今月即位したばかりの徳仁天皇に会見する最初の海外の首脳になります。
会見の後は、日本の国を挙げての接待が続きます。
徳仁天皇の時代には『令和』という元号が使われますが、安倍政権はこの言葉について『美しい調和』という意味だと解説しています。
そして安倍首相は自分とトランプとの関係がこの概念によって定義されることを望んでいると明らかにしました。
ウィルソンセンターの北東アジア担当シニア研究員の後藤志穂子氏が次のように語りました。
「日本は最初からトランプとの間に個人的な友好関係を構築することを戦略目標にしてきました。」
「日本をトランプの『お気に入り』にさせるためには、何より個人的に機嫌をとり結ぶことが大切なのです。」
《後編》に続く
https://www.nytimes.com/2019/05/24/us/politics/trump-japan-abe-flattery
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安部政権というのは、それまで存在していた日本の政治の『良識』というものを徹底的に無視して国政を運営している組織です。
中でも特異なのが『天皇家の政治利用』です。
そんなことは太平洋戦争の敗戦によって『二度と許されない行為』になったはずのものであり、1957年生まれの私はこれまでそうした事例を目の当たりにすることはなかったと記憶しています。
ところが安部政権はどうでしょう?
自分のみならず、トランプにまで新天皇の『政治利用』を薦めたというのです!
アメリカ大統領にまで天皇の政治利用を薦める日本の首相など、前代未聞です。
考えさせられるのは、『度を越した贅沢の限りを尽くした安倍政権のトランプ接待イベント』のまさにその現場で、嬉々としてスマホで記念写真を撮る日本人の姿です。
「やすやすと利用されている」その姿には、80年前に延々と補給線が伸びきってしまっている危険も顧みず中国や東南アジアを次々侵略していった大日本帝国の軍部に歓呼の声を挙げていたかつての日本人の姿がオーバーラップします。