ホーム » エッセイ » イルカ漁に反対するひとりの男性の孤独な戦い
2009年のドキュメンタリー映画「The Cove」はアカデミー賞を受賞、公開された漁の様子は観衆に衝撃を与えた
捕鯨発祥の地で反対意見を明らかにし、激しく排斥された男性
ジャスティン・マッカリー/ GRD 16 2019年5月16日
毎年行われている漁はイルカの虐殺だとして非難を浴びている日本の漁業の町太地町出身の男性が、19日前例のない裁判のため出廷することになります。
ガーディアンの独占インタビューに対し、この男性は裁判所における意見陳述が終了するまで本名を明かさないよう依頼しました。
原告でもあるこの男性は太地町で生まれ育ちましたが、一大決心をしてイルカ漁に対し反対意見を明らかにしたところ、町民たちから排斥されてしまいました。
53歳のこの男性は和歌山地方裁判所で、ロンドンを拠点とする動物福祉団体のイルカのためのチャリティ・アクションと日本のNGOであるLife Investigation Agencyによる訴訟において証言する予定になっています。
どちらのグループも、太平洋岸位置する太地町の漁師の行為は動物福祉法に恒常的に違反するものであり、政府が設定した漁獲制限枠を超えていると主張しています。
動物福祉団体のイルカのためのチャリティ・アクションは太地町のイルカの追い込み漁の様子を詳述し、小さな群れを広い海から狭い入り江に追い込んでいくそのやり方は『ことの外残酷』なものであるとしています。
こうしたやり方では動物たちは苦痛にさいなまれながらゆっくりと死んでいかなければならないと語っています。
これに対し地元の漁師たちは漁獲制限を超えたりイルカを非人道的に殺害しているという指摘を否定し、漁の継続を誓っています。
地元の捕鯨船に40年間にわたり乗り組んでいた父親を持つ原告の男性は、イルカの追い込み漁が人口3,300人の太地町の世界的な評判を傷つけたと主張し、さらに彼自身が「普通に暮らす権利を剥奪された」と語りました。
さらに原告の男性は地元の漁師たちが追い込んだイルカを囲い込んでおく漁網を男性が切り裂いたと身に覚えのない罪をかぶせられた上、妹は住民たちから口汚ない罵りの言葉を浴びせられてきたと語っています。
「ある日本料理店のオーナーからは私が捕鯨に反対している態度に言及した際、もう店には来ないでくれと言われたこともあります。」
今回の訴訟は日本が30年以上ぶりに日本の沿岸海域での商業捕鯨を開始する準備を終えたことがきっかけとなって起こされました。
最初の漁は今年7月に始まる予定ですが、この漁には太地町の漁師も参加する予定になっています。
太地町の捕鯨の歴史は古く、その起源は17世紀の始まりにまで遡ります。
イルカのためのチャリティ・アクションはイルカ漁を禁止する訴訟に勝つことができれば地方自治体によって発行されている漁獲許可は取り消され、イルカ漁の継続は法的に許されなくなると述べています。
同グループの広報担当者であるアンジー・プラマー氏は次のように語りました。
「私たちは訴訟に大きな期待を寄せており、説得力のある証拠を揃えることが出来れば勝訴するチャンスがあると考えています。」
「これは日本人が訴訟の当事者となるべき問題であり、日本にもイルカ漁はもう終わりにさせたいという強い動機があることを証明しています。日本国内でもイルカ漁に対する不快感が高まりつつあり、それと同時にイルカの肉の消費は着実に減少しています。」
2009年のドキュメンタリー映画「The Cove」はアカデミー賞を受賞しましたが、公開されるとその漁の様子は観衆に衝撃を与え、太地町は一気に世界的な悪評を得ることになりました。
活動家によると太地町で捕獲されたイルカの何割かは殺され、その肉はスーパーマーケットやレストランで売られていますが、状態の良い個体は一頭数百万円という取引価格で水族館に販売されます。
2015年、イルカのためのチャリティ・アクションは世界動物園水族館協会に対して訴訟を起こしました。
その結果、62ある日本の水族館は太地町で捕獲されたイルカの購入を中止することに合意しない限り、協会を除名されることになりました。
しかし太地町立くじらの博物館は抗議のために世界動物園水族館協会の日本支部から脱退し、鯨類の展示と海外の一部地域で捕獲されたクジラ類の肉の販売を続けています。
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ひとつだけ言わせていただきたいのは、伝統というものは不変でなければならないか?ということです。
社会情勢や環境の変化により、都度都度に賢明な判断を行いながら少しずつ形を変えながらも歴史を刻んでいくという行き方はないでしょうか?
またいくら生計が関わる問題だからといって、違う考えを持つ人間を激しく排斥するといことには強い違和感があります。
私自身は過去にも書きましたが、鯨の肉もイルカの肉も食べようとは思いませんし、馬刺しなどについても同じ考えです。
イルカも鯨も馬も私と同じようにたったひとつだけの命を授かり、懸命に生きているのであれば、それを敢えて侵す理由は私にはありません。