ホーム » エッセイ » アフガニスタン : 人々の生活を改善するために人生を捧げた日本の医師、銃撃され死亡
毎日74人の男性、女性、子供が殺されているアフガニスタンで献身的人道援助を続けた中村博士
アフガニスタンの生活改善、水利事業発展、ダム建設、伝統的な農業の改良に全生涯を捧げてきた中村博士
英国BBC 2019年12月4日
銃撃した犯人たちは、プロジェクトの進行状況を確認するために車で移動中の中村哲さん(73)を待ち伏せして攻撃したものと当局は見ています。
ジャララバード市内で発生したこの襲撃により、55人のアフガニスタン人も殺害されました。
中村博士はアフガニスタン国内で水利の改善を目的とした灌漑事業を進める日本の慈善団体のリーダーを務めていました。
今年10月、中村博士は人道的活動に対してアフガニスタン政府から名誉市民権を授与されたばかりでした。
現時点ではいかなる組織からも犯行声明等の公表はなく、また動機も不明のままです。
カブールにある米国大使館は「援助活動に従事する人材を標的にしてはならない」と非難、日本の安倍首相も中村博士の死に「ショックを受けた」と述べました。
国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)は、殺害に対する「言いようのない憤り」を表明しました。
しかしこうした類の襲撃はアフガニスタンでは日常的です。
アフガニスタンでは先週、国連のために働いていたアメリカ国民が国連の車両ごと爆殺されました。
BBCの調査によると、アフガニスタンでは8月だけで平均74人の男性、女性、子供が毎日殺されています。
▽ 襲撃はどのように実行されたのか?
中村博士は、12月4日水曜日の朝、襲撃された東部のナンガハール州のジャララバード市にある車両で移動していました。
中村博士は右胸を撃たれ首都カブールの近くの病院に移送途中、ジャララバード空港で死亡が確認されとアフガニスタン当局がAFP通信に伝えました。
3人の警備員、運転手、および同僚1人も殺害された、とナンガハール州知事の広報担当者が明らかにしました。
襲撃現場の写真には、フロントガラスに少なくとも3発の銃弾の穴がある白いピックアップトラックが写っていました。
▽ 中村哲博士の人物像
中村博士は1946年に福岡県福岡市で生まれました。
日本国内の国家試験で医師としての資格を得た後、彼はハンセン病患者の治療のため1984年にパキスタンに移りました。
2年後中村博士はアフガニスタンに赴き、ナンガハールの人里離れた村に最初の診療所を開設し、非政府組織であるピースジャパンメディカルサービス(PMS)を設立しました。
ピーク時にはPMSは10か所で診療所を運営し、ハンセン病患者と難民の支援を行いました。
中村博士は、きれいな水が手に入りにくい状況により多くの人がコレラやその他の病気に苦しんでいる事実を目の当たりにし、農村部で井戸の建設を進めるとともに、灌漑事業にも深く関わっていました。
2003年、彼はアジア地区で人道活動に従事する人々に授与されることで広く知られノーベル賞にも相当するとされるラモン・マグサイサイ賞を受賞しました。
2014年にインタビューを受けた中村博士は、日本の英字紙ジャパンタイムズの取材に対し、安全を確保するため毎日異なるルートで仕事を続けていると語っていました。
一方で中村博士は、取り得る最良の予防策は「誰とでも友人になる」ことだと語ってもいました。
「私は極力敵を作らないようにしてきました。たとえ私が原理原則に外れると言われたとしても、まずは誰とでも友人関係を築くことが大切なのです。それがアフガン国内の異なる場所にいる人々と信頼関係を築くための唯一の方法なのです。」
「そしてその方が銃を携行して歩くよりも驚くほど効果的です。」
▽ 世界各国各分野の反応
アフガニスタン大統領アシュラフ・ガーニのスポークスマンは、政府はアフガニスタンの「最大の友」に対する「凶悪で卑劣な攻撃」を強く非難するとの声明を発表しました。
「中村博士はアフガニスタンの生活を改善し、水利事業の発展とダム建設に取り組み、伝統的な農業の改良に全生涯を捧げてきた人でした。」
セディク・セディックはこうツイートしました。
カブール在住のオランダのエルンスト・ノルマン大使は、自分の人生を「アフガニスタンの平和と発展」に捧げてきた中村博士のような人物を殺害することは全く「無意味」であると語りました。
ナンガハール州のシャー・マフムード・メヤハイル知事は、「ナンガハールのすべての人々」は、中村博士の死を深く悲しみ、長年にわたり彼が人々を助けてきたことを心から感謝していると語ったと、アフガニスタンのカブールに拠点を置くメディアのトロニュースが伝えました。
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中村哲博士については心から哀悼させていただきます。
『その後』の記事を待つうちに少々時期を逸した感がありますが、今日アルジャジーラにアフガニスタンの画家たちが中村博士の壁画を製作したという記事が掲載されましたので、まず事件のニュースの翻訳を掲載いたします。
引き続きアルジャジーラの『'Son of Afghanistan': Murals honour slain Japanese doctor』
Afghan artists' group paints murals in Kabul and Jalalabad of Dr Tetsu Nakamura, who was shot dead last week.
記事を次回ご紹介いたします。