ホーム » エッセイ » ただ平和を願っているだけ、そうした人々の祈りも軍備拡張に利用する現政権《前編》
外交的配慮より、自分の周囲の国家主義者への配慮を優先?
「平和を祈念するための絶好の機会?」安倍首相の靖国訪問、実は周到な計算の下に行われた
エコノミスト 12月27日
7年という時間、日本の首相が論争の的となっている靖国神社を訪問することはありませんでした。
そして靖国は神道の考え方によれば、約250万人の戦争犠牲者に加え、14人の最高レベルの戦争犯罪人の魂を祀っています。
しかし12月26日、報道陣のカメラが靖国神社の神官の後に従い、聖域とされる場所を進む安倍晋三首相の姿をとらえました。
ニュースは日本国内にいる右翼の国家主義者たちを喜ばせる一方、中国と韓国を激怒させることになりました。
さらにはアメリカも非難する声明を発しました。
「日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動を取ったことに、米国政府は失望している。」
日本の事情に通している人にとっては、安倍首相の靖国参拝はさほど驚くべき事ではありませんでした。
安倍首相は首相としての最初の任期である2006-07年、靖国に参拝できなかった事について強い遺憾の意を表明していたからです。
当時、それ以前総理大臣を務めていた小泉純一郎氏による参拝の繰り返しは、中国との外交関係を著しく損なっていました。
隣国にとって、靖国神社は過去の日本の軍国主義の象徴とみなされています。
そしてそう考えているのは、日本国外の人間だけではありません。
多くの日本人もまた、靖国神社とそれが象徴するものを非難しています。
その一方で何万人もの日本人が特にA級戦犯の合祀を意識する事なく、ただ戦争の犠牲者となった家族や友人を悼むためだけにその場所で祈りを捧げています。
昨年政権への復帰を果たした記念日に靖国神社を訪問した事は、2007年に政権から滑り落ちた後も安倍氏を支持してきた人間たちを安心させましたが、一方で参拝は彼らの要求でもあったのです。
就任1年目、安倍首相は何より経済の復活に専念する事を公約していたはずであり、これほど早く挑発的な行動に出ると予測されてはいませんでした。
この直前まで安倍首相は靖国神社の儀式には、供物だけを贈り続けてきました。
一年も押し詰まったこのタイミングでの安倍首相の信念の発露は、日本の外交に大きなダメージを与えましたが、しかしこのタイミングは周到に計算されたものだったのです。
〈後編に続く〉
http://www.economist.com/blogs/banyan/2013/12/japans-shrine-and-regional-tensions?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
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年末、NHKが放映したドキュメンタリー『オリバーストーンが語る、戦後のアメリカ史』全10回を録画し、時間を見つけては見ていました。
そして日本の現政権がやっている事が、経済政策のみならず、国全体を右傾化させるキャンペーンについてもレーガン政権のやり方をそっくり真似ているのではないかと感じました。
詳しくは番組をご覧いただくしか無いのですが、要は当時のソビエト連邦がゴルバチョフの登場によって民主化に向かい始めていたにもかかわらず、レーガン政権は『危険な共産党政権』というプロパガンダを執拗に展開、アメリカの軍産複合体を徹底的に太らせたというのが主要な論点のひとつでした。
ゴルバチョフと習近平は違うようですが、反中国感情を煽り続ける一部の日本メディアの宣伝もあり、日本人の対中国感情は急速に悪化しつつあり、それが日本の軍拡に利用されようとしています。
そして安倍首相やその周辺の『日本は自立しなければならない』という持論が、アドルフ・ヒットラーの主張と重なる事にも気がつきました。
「ドイツは自立する!」
誰にも邪魔はさせない、と。
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【 読者が選んだ2013年のベストショット 】《第3回》
アメリカNBCニュース 12月26日
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