ホーム » エッセイ » 【 21世紀社会が抱える深刻な課題 : ノーム・チョムスキー 】《1》
人類にとって世界史上最も危険な組織、それが現在の米国共和党
人類史上最強の自由世界のリーダーは、地球環境保護の取り組みを積極的に弱体化させる方向に向かう
デモクラシー・ナウ 2017年5月29日
反体制の立場に立つ政治学者、言語学者、著作家として世界的に有名なノーム・チョムスキー氏はマサチューセッツ工科大学の名誉教授であり、同校ですでに50年以上教鞭をとり続けてきました。
最新の著作は『アメリカン・ドリームへのレクイエム:富と権力の10原則』です。
今回、『デモクラシー・ナウ!』は特別版としてノーム・チョムスキー氏への1時間にわたるインタビューを行いました。
私たちが4月に行った公開討論では、気候変動、核兵器、北朝鮮、イラン、シリアの内戦、ウィキリークス創設者であるジュリアン・アサンジ氏に対する告発が意味する民主主義への脅威、そしてチョムスキー氏の新しい著作は『アメリカン・ドリームへのレクイエム:富と権力の10原則』などについて話し合いました。
マサチューセッツ州ケンブリッジにあるファースト教区教会に、数百の人々がこの公開討論に参加し、会場は超満員になりました。
エイミー・グッドマン:あなたはアメリカの共和党が世界史上人類にとって最も危険な組織だと発言されましたが、その主旨についてお聞きしたいと思います。ご説明をお願いできますか?
ノーム・チョムキー:私はこの発言についてはかつてない程斬新なものだとも言いました。でも皆さんはそれが真実かどうかということが気がかりだと思います。
私が言いたかったのは、人類史上、人間の手により作られた本来なら人間社会に貢献するためだったはずの組織が、人々のコミュニティに対するこれ程の破壊者になり得るものなのか?という事でした。米国共和党、いまや私はこれを政党と呼ぶことについてすらためらいがありますが、史上最大の人類の敵になりつつあるということが疑いようのない現実になっているのです。
共和党の最新のキャンペーンを見てみましょう。
カネのかかった派手な宣伝を行っていますが、中身というほどの重要な事実に対する意見が述べられている訳ではありません。
共和党の選挙候補者に共通していることは、今起きている現実を認めようとはいない、あるいは事態が深刻なものであっても曖昧にぼかしてしまうか、そのどちらかです。
例として深刻な環境破壊が起きている現実について、ジョー・ブッシュ氏のどのような発言を行っているか検証してみましょう。彼はこう語っています。
「たしかにそうした現実があるのかもしれません。しかし私たち全員が事態を完全に把握している訳ではありません。大丈夫です、(シェールガス採掘のための)地中破砕工法はちゃんと機能しています。だから私たちはもっとシェールガスを採掘してかまわないのです。」
その発言が行なわれた同じ部屋に、『大人の対応をする』といわれている人間がいました、名前はジョン・ケイシック。
「その通り、確かに地球温暖化が進行中ですが、私たちにとってはたいした問題じゃない。」
彼はオハイオ州の知事です。
「オハイオ州では、これからも火力発電を続けるつもりだし、そのことに関して謝罪するつもりもありません。」
彼は地球と人類に対して災厄をもたらそうとすることについて何とも思わない、100%の確信犯です。
そしてその後、何が起きたでしょうか。
まずは 11月8日アメリカ大統領選挙が行なわれ、ドナルド・トランプが大統領になりました。
この時、私自身が非常に重要だと考えている会議が北アフリカのモロッコの首都マラケシュで開催されました。
約200の国連加盟国が参加したこの会議は、先の2015年2015年12月にパリで開かれた地球温暖化防止のための会議で合意したいくつかの事項について、その実現を図ることを目的としたものでした。
パリ協定は地球温暖化を食い止めるため実効性の高い条約へ発展することが期待されていましたが、人類史上人間にとって最も危険な組織のため、実現が不可能になりました。
共和党が支配するアメリカ議会は地球規模での環境保護に関するいかなる国際協定も受け入れるつもりはないでしょう。
そのために世界の国々は協定の文言をその手に持ちながら、それが実現される保証を得ることはできないのです。
昨年2016年11月8日、とにかくこの時点で世界は環境保護への取り組みを前進させようとしていたのです。
11月8日、世界気象機関は一通の報告書を公表しました。
これの報告書は地球環境の現状と将来の起こりうる事実についての非常に悲観的な分析結果を明らかにしたものであり、地球は危機的状況に近づいていると指摘するものでした。
パリ交渉の目標はまさにこうした状況に立ち至る前に、何とか危機的状況をぎりぎりで回避し、この報告書やその他予測されている環境破壊を未然に食い止めようとするものでした。
しかしその日会議に参加していた人々は皆、一様に議場で凍りつくことになりました。
新しいアメリカ大統領が誰になったのか、その第一報が飛び込んできたからです。
その結果、人類史上で最も強力な国家であり、現在最も富める、最も強力な、最も影響力のある自由世界のリーダー、アメリカ合衆国は持てる力を地球環境保護の取り組みを支持しないだけでなく、その取り組みを積極的に弱体化させる方向に向かうことを決定したのです。
世界には環境問題の解決のために多くの取り組みを行っている国々があります。地球規模での成果を上げているとは言えないかもしれませんが、文字通り国家として相当な取り組みを行っているデンマークのような国々が一方にはあります。そしてそれとは正反対の位置にあるのが、世界から孤立したまま、人類史上最も危険な組織が率いる国家、アメリカ合衆国です。
アメリカはこう言っているのです。
「我々は温暖化を防止するための国際的な取り組みに参加するつもりはない。現実にはその取り組みを弱体化させる方向に向かっている。」
「我々はこれからも化石燃料をどんどん使い続ける。その結果、環境破壊は危機的状況へと落ち込む転換点を突き破ってしまう可能性がある。それでも我々はパリ協定の順守に向け気候変動の問題について取り組みを行なおうとする開発途上国に、そのための資金を提供するつもりはない。我々は地球環境に壊滅的な影響を与えかねない二酸化炭素、そしてメタンやその他危険性の高いガスの排出制限など、要らざる規制を破壊していく。」
《2》へ続く
https://www.democracynow.org/2017/5/29/noam_chomsky_in_conversation_with_amy
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この稿を訳して自然に頭に浮かんだのは、「ならば戦後日本にとって史上最も危険な組織、それが現在の安部自民党」という事でした。