ホーム » エッセイ » 『失政!アベノミクス』【 一層の格差を生み、一般国民を置き去りにした安倍政権の経済政策 】
アベノミクスが救済したのは日本経済では無く、大企業と富裕層の投資家たち
置き去りにされた一般国民にとって、アベノミクスの政策的失敗はすでに明らかである
世界市場では原油価格は低迷、にもかかわらず円安により日本だけが燃料費の高騰に苦しんでいる
冷静に振り返ってみればアベノミクスの経済的恩恵など何もなかった、多くの日本人がそう考え始めている
エコノミスト 11月8日
10月31日金曜日、日本銀行が予想外の発表を行った結果、世界の金融市場は大きな反応を示しましたが、日本国内においてその措置はデフレ脱却を図る安倍政権にテコ入れするためのものでした。
日本のGDPの16%に相当する年間あたり80兆円の日本国債を買い入れるという思い切った措置の発表は、このところ続いていた安倍政権の閣僚による一連のスキャンダルから国民の目をそらすのに充分な威力を発揮しました。
安倍政権の経済政策はこのところうまくいっていませんでした。
4月に実施された消費税の引き上げは、消費者がかつてない程厳しく支出を控える結果を招きました。
日本の経済にインフレを起こそうという政策の効果は消滅しかかっていました。
そして日本銀行内では保守派の意見が支配的となり、『何が何でもインフレを実現させる』という黒田日銀総裁が宣言した政策の妨害が行われているといううわさが広まっていました。
それは今回黒田総裁が発表したさらなる金融緩和策が、わずか1票差で可決された背景を物語るものであったかもしれません。
10月31日に開催された量的緩和拡大の是非を問う投票では、4人が反対票を投じたのです。
このように日銀の中ですらコンセンサスが出来ていなかった事実は、量的緩和策そのものと同じくらいの物議を醸すことになりました。
しかし今回の日銀の金融緩和策の強化は、日本の政界におけるもうひとつのコンセンサスについては、その実現性を高めることになりました。
安倍首相は2015年10月、消費税の2度目の引き上げ、すなわち8%から10%への引き上げるかどうかの決断をもうすぐ迫られることになっています。
もし消費税の引き上げを見送るのであれば、安倍首相は年内にそのための法改正を行う必要があります。
2014年度第2四半期の経済数値が明らかになり、GDPが年率換算で7.1%も下落したことが解り、安倍首相の経済顧問の多くが消費税の引き上げが政策として誤りであったことを確信しました。
現在、膨らみきった日本の財政赤字を削減しようと取り組む財務省と首相官邸の間では、消費税引き上げを実施するかどうかの激しいやり取りが行なわれています。
現在は消費税引き上げの実施を見送ろうという意見が優勢になりつつあります。
重要閣僚のひとりである甘利明経済産業大臣は、予定通り消費税を引き上げる対応を支持しているものと見られています。
現実問題として、日本の国家財政の信用を守るためには消費税の引き上げは必ず実行しなければならないと考える黒田総裁の今回の思い切った措置は、安倍首相が引き上げを見送るという選択肢を大きく遠のかせた可能性があると、アメリカ、コロンビア大学のジェラルド・カーティス教授が主張しています。
2014年第3四半期の間の最終的なGDP数値が12月上旬に発表される予定ですが、安倍首相はこの段階で消費税引き上げの可否について判断するものと見られています。
第3四半期のGDPの速報値は11月17日に明らかになる予定です。
消費税の問題がこれほど大きくなっているのは、まさに消費拡大を求められている一般国民に対し、その影響が大きく広範囲に及ぶからです。
アメリカ、そしてヨーロッパ同様、安倍政権の金融緩和政策によって潤ったのは、大量の株式や東京と2、3の大都市に不動産などの資産を所有している大企業と裕福層の人びとでした。
日本の一般国民、特に過疎化が進む地方の住民などは経済の回復など実感すること無くここまで来ました。
多くの日本人が、冷静に振り返ってみればアベノミクスの経済的恩恵など何もなかったという事を感じ始めており、その分安倍政権への支持も弱まってきています。
消費税の引き上げに加え、一般家庭は円安の進行による電気代、ガソリン代や燃料代などの高騰と戦い続けてきました。
世界ではここ数週間需要の減少から原油価格が低迷しているにもかかわらず、日本だけが燃料費の高騰に苦しんでいます。
黒田総裁が一層の金融緩和策を実行したことで、少なくとも一つだけは成果を感じ取ることが出来ました。
直ちに市場が反応し、円安が一層進んだことです。
政府の年金基金が外国株を含む株式の保有額を二倍にするというニュースは株価平均を大きく押し上げると同時に、一層の円安の進行をも促すことになりました。
今回の金融緩和措置の衝撃が大きすぎたため、安倍政権のもう一つの課題である構造改革についてはほとんど言及されなくなってしまいました。
安倍政権は折に触れ大胆な構造改革の効用を繰り返し宣伝してきましたが、現実になったのは退職金と引き換えに永久就職の社員を解雇する代わり、数百万人の非正規雇用労働者を生み出すことを日本の企業に許すことでした。
こうした政策の実施による効用は、女性の就労機会が増えたことです。
2012年末の安倍政権の誕生以来、約820,000人の女性が労働人口に加わりました。
政府は大企業に対し、女性を役員に任命し、その数を公表するよう強く求めることになっています。
公務員の採用者の中、今年度は女性が5分の2を占め、女性採用者が大幅に増えました。
先月、安倍政権の2人の閣僚が金銭上のスキャンダルから辞任せざるを得なくなりましたが、このことがいったんは拡大基調に乗った女性採用の道を再び狭くすることが無いように望まれます。
そして今、別の舞台ではこれまで高額の関税等を課すなどして保護されてきた農業分野なといくつかの部門において、思い切った自由化を行うかどうかの交渉が続けられています。
安倍首相の顧問を務める竹中平蔵氏は、この分野における現在の政府の取り組みは大幅に後退していると語っています。
竹中氏はかつての小泉政権において、政府指導の自由化を強力に推進しました。
政権与党内で政治資金スキャンダルが相次いで明らかになった後、敵対勢力を沈黙させるため、安倍政権が年内に抜き打ちで衆議院の解散総選挙を行うとの観測が有力となってきました。
現在小党分立の上、党内の統制も取れなくなっている野党勢力は確かに選挙を戦える状態にはありません。
解散総選挙の噂は日本銀行の金融緩和策の発表後、さらに強いものになりました。
しかし安倍政権は衆参両院で過半数を制しており、求められる改革を本当にするつもりがあれば出来ないことはありません。
要は、安倍首相がそれを使い切れるかどうかということです。
http://www.economist.com/news/asia/21631106-prime-minister-has-been-given-opening-will-he-take-it-riding-rescue?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
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記事中にもある解散総選挙が現実のものになりつつあるようですが、その本当の理由についてこれまで読んできた各国記事の中身から、私個人は次の可能性があると思っています。
① TPPの交渉において、日本がアメリカに対し大幅な譲歩をせざるを得なくなっている
② 日本の2014年第4四半期の経済数値が壊滅的なものになる恐れがある
いずれにせよ安倍政権にとって致命的な失点となり支持率が急落する恐れがあります。
これに加え野党の状況が戦後最低レベルにある今、政権の延命の勝負時だと判断したのではないでしょうか?
皆さんはどうお考えでしょう。