ホーム » エッセイ » 【 路上で立ちあがった若者たち、SEALDs -『日本の自由で民主的な社会を守るための緊急アクション』】《前編》[GRD]
私たちは政治に関心を持たないように、権力を握っている人間の言葉に疑問を持たないように、そう教育されてきた
事実と正面から向き合い、懸命に考え、公の場に堂々と姿を現し、しっかりと自分自身の意見を述べる若者たち
安全保障関連法案の強引な可決・成立は、民主主義と立憲主義の破壊につながっていく
ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 9月17日
その日の夜、日本の中心にある国会議事堂周辺の夜気を切り裂いていた、戦争法案に反対するスローガンを叫んでいた人々の中心にいたのが、年金生活者などの年齢の高い人々でなかったことは明白でした。
人びとは声を合わせ、そして声を張り上げてこう叫んでいました。
「安部、やめろ!」
まず最初に普通にスローガンを叫ぶと、次に彼らはヒップホップのリズムに乗せて、純粋な、そして何ものにも侵されていない怒りを爆発させていました。
そして今度は英語でシンプルなスローガンを叫んでいました。
今年の日本の夏を象徴するこの光景は世界に伝えられましたが、この年代の人々がこうした行動によって脚光を浴びたのは初めての事でした。
「これこそは民主主義を表現するための行動です」
労働組合や市民グループが掲げる色とりどりの旗やのぼりの中で、見るからに若い世代の人々が日本語と英語、とりどりのプラカードを掲げていました。
戦後70年を経て防衛政策が根本から変えられようとしている状況の下、日本全国で人々が抗議のために立ちあがりましたが、中心的役割を果たしているひとつが新しい世代の人々、若者たちです。
9月の大型連休の前の週、安倍晋三首相と連立与党は国際紛争の解決手段としての戦争を禁止している日本の憲法の『再解釈』を行い、第二次世界大戦(太平洋戦争)後初めて日本の自衛隊が海外での戦闘行動を可能にするための一連の法律、安全保障関連法案を可決成立させることになっています。
安倍首相は台頭する中国の軍事的脅威、核兵器開発を止めない北朝鮮、そしてイスラム教徒によるテロリズムから日本を守る防衛活動をより強化するため、防衛政策の根本的変更が必要だと主張しています。
しかし世論調査の結果は、大多数の有権者が安倍首相の政策に反対していることを明らかにしました。
しかし安倍首相は9月後半の5日間の連休前の18日金曜日には何としても安全保障関連法案を可決成立させるという意思を明らかにしました。
これに対し多くの国民が憤り、予想をはるかに超える数の人々が路上に繰り出して抗議の声を挙げ、国民の怒りが並々ならぬことを明らかにしました。
安倍首相が与党と連立与党による議会内の絶対多数という政治的な力を濫用しているというのではないかという疑いが、過去に例がない程多くの10代、20代の若者たちを路上に集結させました。
その中で最も存在感が際立っているのがSEALDs- Students Emergency Action for Liberal Democracy(シールズ -日本の自由で民主的な社会を守るための緊急アクション)です。
彼らは2013年に安倍政権が成立させた、国家機密を漏えいさせた内部告発者やジャーナリストを犯罪者として禁固刑を科すことが出来るようにした国家機密法に対する抗議行動にそのルーツがあります。
国会議事堂周辺に集まったあらゆる年代の抗議者の中にあってSEALDsのメンバーは、路上で抗議を行う人々が、ある特定の年代、あるいは特定の思想に凝り固まった人、あるいはマルキシズムにかぶれた人々というこれまでの考え方にも挑戦しています。
彼らはファッションと音楽に対する個人的興味を別に隠そうとはしません。
そして前の世代がとった過激な行動に対し、彼らは自由と民主主義に対するシンプルな信頼を現実のものにしようとしています。
上智大学の政治学専門の中野孝一教授は次のように語りました。
「彼らは、他の年代の人々にとって大きな刺激になりました。」
「SEALDsの若者たちは、政治がファッションを楽しむことと同様の日常生活そのものであるという事実を、改めて印象付けたのです。」
▽ ファッション業界で働きながら
「私は去年、ひとりでデモに参加し、たくさんの若者がいること気がつきました。それまで私には政治について議論する機会がそれ程なかったので、同年代の人びとと一緒に抗議行動をする事に喜びを感じました。正直言って、私はいつも政治に関心を持っていた訳ではありません。ニュースは常に見ていましたが、自分自身も抗議活動をするつもりはありませんでした。
それが大きく変わったのは、自衛隊についての議論でした。初めてデモに参加してみて、私は抗議をしている一般市民の考え方の方に妥当性があると感じました。
そして私にももっともっとやるべきことはある、そう感じました。」
「たとえ日本自身が攻撃されなくとも、同盟国、たとえばアメリカが攻撃を受けたら、一緒になって戦わなければならないというのは理不尽です。
日本が援軍として戦えばアメリカ軍は評価してくれるでしょうが、そうして始まった戦いからアメリカ軍は最後まで私たちを真美ってくれるでしょうか?
私たちは中国が日本の国家の安全保障についてどれ程の脅威であるか常に聞かされていますが、それは本当に現実のものなのでしょうか?」
「私たちを自己中心的だと非難する政治家がいることは私も知っています。でも戦争に反対することが自己中心的だというなら、私は自己中心的でかまいません。
日本の若者は他の国の若者と比較すると、政治に対する関心は高い方ではありません。それはそうなるように教育されてきたからです。」
「日本国内では権力の中枢にある人間が大丈夫だと言っている以上、たぶん大丈夫なのだろう、そんな考え方が支配的です。
安倍首相が日本が戦争に巻き込まれる恐れはない、そう語っていることも同じように受け取られているのです。」
▽ 19歳大学生
「私が反戦運動に参加するようになったのはごく最近の事です。
今年6月の自分の誕生日に、私は初めて座り込みによる抗議行動に参加しました。
そこにはたくさんの高齢者の方がいましたが、中のひとりの方が私にSEALD’Sのパンフレット渡してくれたのです。」
「安全保障関連法案が国会で強引に成立させられようとしていますが、そのやり方は民主主義と立憲主義の破壊につながります。
日本の憲法は人権尊重を保証しており、平和主義の理念を掲げています。
そしてすべての国民がその理念を理解し、力を合わせることを求めています。
そして今安倍首相が登場し、人権尊重と平和の理念を破壊する決心を固めています。」
「私は自由を守るために自分たちが果たさなければならない義務から逃げてはいけないという、ジョン・F・ケネディ大統領の演説に、常に背中を押されてきました。
その考え方は、日本の憲法にも表現されています。
1人の人間がまるで絶対君主か何かのように現れ、そうした権利も理念もすべて無効だと宣言することを、私は受け入れることはできません。
政治の要点は公益を追及することであるはずです。
私たちの取り組みは利己主義とは正反対のものです。
私たちは人権を守るための闘いをしているのであって、民主主義社会において人権が守られるのは当然のことであるのと同様、私たちは当たり前のことをしているだけなのです。」
〈 後篇に続く 〉
http://www.theguardian.com/world/2015/sep/16/japanese-anti-war-protesters-challenge-shinzo-abe
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【 なぜ彼らは戦争を欲するのか?! 】《6・最終回》の掲載の前に、こちらの記事を先にご紹介させていただくことにしました。
『現実を直視し、勇気を奮って真実の議論を行い、正しい認識を求める人々を敵視する』現在の日本の体制
これはフェアウィンズの【 時を超え、場所を変え、作られ続ける原子力クライシス 】という記事( http://kobajun.biz/?p=18143 )をご紹介した際の一文ですが、SEALDsについてGOOGLEで検索をしていた際、その事を強く感じました。
ここに掲載したガーディアンの記事において、彼らは自らの姿を堂々と現しています。
対して彼らをネット上で誹謗中傷する悪罵のほとんどが本名を隠した匿名のものであり、品性劣悪で読み続けるのに耐えられないものが多数ありました。
そして再び、記事中に登場する政治や国の制度について真摯に向き合い、一生懸命考えようとしている若者たち。
彼らについて『利己的』と批判する政治家がいますが、その考えの浅はかさには唖然とします。
民主主義社会において戦争を否定することを利己的というなら、ナイチンゲールもガンジーもキング牧師も、皆利己的人間になってしまいます。
彼らを利己的と批判する日本の政治家とマーティン・ルーサー・キングを比べた際、どちらが信頼に足るべき人物かの判断はお任せします。
ソ連と共産圏各国が崩壊した後、大量の東欧製の武器が世界中に密輸され、そこに武器の高性能化と小型化が加わり、紛争解決のために戦争を行うことは、より一層危険なことになっています。
イラク戦争にアメリカは完勝しましたが、バグダッドなどに多くのアメリカ企業が進出したものの、国土が荒廃した挙句、大量の国民が逃げ出さなければならないような場所になってしまいました。
私たちが守るべきものは、いったい何でしょうか?
公衆の面前に堂々と姿を現し、しっかりと議論することかできる彼らのような若者たちをまず守るべきではないでしょうか?
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【 混乱の極、ハンガリー国境 : シリア難民 】
アメリカNBCニュース 9月17日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)
ハンガリー政府が非常事態を宣言し、セルビアとの国境を封鎖したため、行き場を失い自暴自棄になったシリア、イラク、アフガニスタンなどからの難民と警官隊との衝突が続発する事態となっています。
9月16日、セルビア領内のハンガリーとの国境の脇で抗議集会を開く難民。(写真上)
過激化する難民の抗議行動、燃やされるハンガリー国旗。(写真下・以下同じ)
国境を封鎖し、難民の流入を阻止するハンガリー警察。
有刺鉄線越しにハンガリー領内を見やる難民。
混乱に乗じ、国境のフェンスを乗り越えようとする難民たち。
ハンガリー警察が放った催涙弾のガスを浴びて泣く少年。
国境近くの駅前でメッセージを記した紙を掲げる難民。
http://www.nbcnews.com/news/world/chaos-hungary-serbia-border-migrants-clash-police-n428921