ホーム » エッセイ » 【 報道の自由を脅かす安倍政権 – 非難姿勢を明らかにした国連の特別報告者 】《前篇》
政府の圧力によって妨げられる福島第一原発事故の真相報道、第二次世界大戦(太平洋戦争)の史実の追及
声高に『偏向報道』について実質的圧力をかけ続ける安部政権
ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 2017年6月13日
表現の自由に関する調査を行ってきた国連の特別報告者は、日本が報道機関の表現の自由を侵し、3基の原子炉がメルトダウンを起こした福島第一原子力発電所の事故や第二次世界大戦(太平洋戦争)中に日本軍が行なった行為に関する一般市民の議論に対し圧力をかけたとして非難しました。
国連人権委員会に提示される予定の報告書の中で、特別報告者のデイビッド・ケイ教授は、日本における表現の自由に関するこれまでの記録を検証した結果、「際立って懸念すべき兆候」を確認済みであると語っています。
今回の調査は報道機関に対する日本政府の圧力が強まり続けているという懸念を受け、表現の自由に関し初めて日本において国連が調査を行うことになりました。
そうした事例の一つとして批評家は、2011年3月に福島第一原子力発電所で3基の原子炉がメルトダウンを起こした事故の際にも、事故の深刻さを日本政府が曖昧にしてしまおうと国内の報道機関に圧力をかけた結果、国民が事実を知るのが遅れた事例を指摘してきました。
2014年には朝日新聞に対して安倍政権が圧力をかけ、福島第一原発で事故が発生した直後、当時同原子力発電所の吉田所長が職員に対し持ち場に留まってできる限りの努力を続けるよう求めたにもかかわらず、650人の東京電力の職員が持ち場を放棄して避難したという報道を撤回させした。
朝日新聞は後に、吉田所長の内部発言の意味を誤って解釈したために、間違った内容の記事を掲載してしまったと認めました。
しかし報道内容を撤回したことによる最も著しい影響は、それまで福島第一原発の日本政府による事故対応について、批判的なスクープ記事を何度も掲載していた朝日新聞の調査のチームの解体につながったことでした。
ケイ教授は福島第一原発事故に関する特定の記事については言及しませんでしたが、日本国内の学校教科書から従軍慰安婦問題に関する記述が削除された件について強い懸念を表明しました。
ケイ教授は「従軍慰安婦」に関する記述が段階的に削除されて行った点に注意を促しました。
従軍慰安婦は第二次世界大戦(太平洋戦争)の戦前戦中に日本軍の売春施設で働くことを強制された、大部分は朝鮮半島出身の数万人の女性たちです。
1997年当時の教科書検定では、中学校で使用される全7冊の歴史教科書にこの戦争中の性的ないわば奴隷制度について記述がありました。
しかし2012-15年の間、この問題に関する記述があった教科書は一冊も無く、2016年になって1冊の教科書だけその記述がありました。
ケイ教授は第二次世界大戦(太平洋戦争)中の日本軍の事歴について日本の社会一般における議論が欠如していること、そしてそうした調査を妨げる規制が存在する点に触れ、さらには政府の圧力が報道機関の『自己検閲姿勢』を強める結果に結びついていると指摘した上で、
「これらの問題が日本の民主主義の基盤を少しずつ損ないつつあることに、注意を喚起する必要があります。」
と語りました。
日本は安倍政権の下で報道の自由が危険にさらされているという主張に、かなり感情的に応じました。
日本の伊原純一国連大使は、ケイ教授が日本の表現の自由と日本政府の関わりについて、『不正確な』認識を広めるものだと批判しました。
6月12日国連人権委員会宛ての声明の中で、伊原大使は次のように述べています。
「[ケイ教授による]報告書の一部が日本政府による説明と立場に関する正確な理解が無いまま作成されたことは、残念です。」
伊原大使はさらに、日本政府が『偏向報道』を理由にテレビやラジオの放送免許を放送局から取り上げることが法律上可能だとし、政治上微妙な問題の存在を放送しないようにしたり、大きくは取り上げないように番組制作責任者に圧力をかけるために使われていたとするケイ氏の主張にも反論しました。
しかし昨年高市早苗総務大臣は、度重なる警告にもかかわらず政治報道において公正な報道を行なわなかった放送局からは放送免許を取り上げることもあり得ると発言し、各方面から抗議を受けた事実があります。
そしてこの後間もなく政府関係者に厳しい調子で質問することで知られていた3人のベテランのニュース・アンカーたちが、ほとんど同時に職を追われることになりました。
申し立てによればそのタイミングは、安倍首相やその側近たちと各放送局の取締役たちが一緒にプライヴェートの夕食をとった際に、政権側がこれらのニュース解説者に関する不満を伝えた後のことだったのです。
〈後篇に続く〉
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日本の国家公務員というものは国民のために理想の体制を作ろうとするのではなく、権力者におもねって虚説を展開してみせるのが本分なのか、と国連大使の発言を読んで感じました。
記事中の国連大使の発言は、言ってみれば日本政府の行為について「皆さん、よってたかってこれをグレーだとおっしゃるが、わが国の規準ではこれは灰白色、すなわちシロなのです。」と主張しているのも同然で、国を代表する政府の高官がこうした屁理屈をこねる日本という国を国際社会がどう評価するか、これはもう考えるまでも無いことです。