ホーム » エッセイ » 【 中国政府、自国の経済指標をねつ造か?】〈前篇〉
世界の政府・金融機関、中国政府発表の経済指標について相次いで調査を開始
ウィリアム・ワン / ワシントンポスト 2月5日
中国政府が予想を上回る経済数値を発表したことについて、世界の大手金融機関(ゴールドマン・サックス、スイスの金融機関UBS、オーストラリアのANZ銀行等)は、発表された数値には疑問があるとの態度を明らかにしました。
引き続いて数日後に中国政府が、国内の貧困層と富裕層の所得格差は縮小傾向にあると発表するにおよび、各金融機関の疑念は一層深まりました。
大気汚染が今後改善するとの楽観的見通しから、オリンピックに出場する体操選手の年齢に到るまで、中国政府が公にする数字については、これまでもすべてが疑いの目で見られてきました。
そしてかつての目覚ましい経済成長が一段落し、経済失速への懸念が世界中の投資家の間に広がっている現在、中国政府が発表した経済指標については世界中の金融機関や各国政府の間で、これまでで最も強い疑念が生じ、各機関は詳細な検証を行っています。
「すべてがバラ色なら、さしたる問題にはならないのですが…。」
北京清華大学商学部のパトリック・ゴバネック教授がこう語りました。
「しかし。中国経済が急激に失速することへの懸念が人々の間に広り、経済不振の程度がどれ程なのかはっきりさせようとしている現在、人々は敏感にならざるを得ないのです。」
なぜ中国政府がこうした数字を発表したのか、そしてどれほどのねつ造が行われているのか、外国の経済学者の見解を検証することにより、世界が今、中国経済がどうなっているのか、おおよその状態を把握することが可能です。
この発展途上国が、数値上の目標をクリアするために正確な数字を公表しているのか、あるいは世界の金融機関の厳しい目をかいくぐり、都合の良い数値をねつ造して自分たちの身を守ろうとしているか。
複数の専門家が以下のように指摘しています。
いかなる動機があろうと、ねつ造された経済指標により、最も悪い影響を被るのは国内経済である。
複雑かつ巨大な経済問題に取り組まなければならない中国指導部が、それによって誤った政策を採用した場合には、その結果は一層深刻なものになります。
「信号機が機能しなくなった道路で、車を運転するようなものです。」
香港にあるソシエテ・ジェネラル銀行の経済専門家であるウェイ・ヤオがこう指摘しました。
「たとえば現在のインフレ率が高いか低いか判断できないのに、どうやって金融政策を立てることが出来ますか?こうした政策は正しい経済指標が無ければ、立てようがありません。」
昨年12月に中国政府が発表した、近隣諸国からの輸入額を含む、貿易収支その他の経済指標が明らかにされた後、今年1月になって世界の金融機関の間で一連の批判が巻き起こりました。
それらの数字を突き合わせていくと、あちこちで矛盾が生じることが解ったのです。
各国の経済専門家たちは普段の穏やかな仮面をかなぐり捨て、「ありえないことだ!」と批判し、「馬鹿げている」とこき下ろし、挙句「明らかに間違っている」と断定したのです。
このように正確な状況がつかめない中、国内産業が著しい成長を続けているという分析に対し、主に海外の金融関係機関からの疑念が生じ、それが伝わっていったのです。
彼らは『信頼できる』政府筋の公表データも鵜呑みにせず、何か隠されてはいないか詳細に検証します。
電気の使用量、鉄道による貨物輸送量、ビジネスマンの渡航回数や新築されたビルの延べ床面積などまで検証し、独自の結論を得ているのです。
さらに2007年にアメリカの外交筋から入手した情報により、中国政府が公表した国内経済に関する指標はねつ造されたものであると批判し、次世代の中国政府の要人の一人、経済運営を引き継ぐことになる李克強でさえ、その政策は鉄道輸送、銀行からの借金、そして電力消費量に頼り過ぎていると槍玉にあげました。
しかし、彼らが分析の根拠としている詳細な数値ですら、操作されたものである可能性があります。
昨年明らかになったところでは、電力消費量に関する数値が政府にとって望ましい値に落ち着くと、石炭消費量を始め、その他のエネルギー関連の数値が軒並み書き換えられていたという事がありました。
このような状況について専門家は、中国経済が政府の管理能力を超える所まで拡大してしまった結果、信頼性の問題が生まれているという側面がある、と指摘しました。
そして場合によっては、集めたデータすべてが食い違い、使い物にならないケースもあると語りました。
「あなたはそれが気象観測のように、正しいデータだと思うかもしれません。」
北京に本拠を置く調査・投資会社の共同設立者であるアン・スティーブンソン-ヤン氏がこう語りました。
「しかし中国では、経済指標は国家機密扱いなのです。政府以外こうした数値を集めたり、公表したりすることは許されません。」
もう一つの問題は、公表されるデータの透明性の問題です。
用いられた統計手法などについては一切明らかにされません。
また、最終的な数値を割り出すためにどのようなデータが使われたのかも、明らかにされることはめったにありません。
こうした理由から、中国の指導部は経済が好調であることを内外に印象づけるため、経済指標を操作していると信じる専門家が複数います。
一般大衆の怒りをなだめるため、そして市場の混乱を招かないよう、中国政府はGDPの値を当初目標として掲げた数値まで引き上げ、失業率と所得格差については極力小さく公表する『ねつ造』を行っていると信じています。
〈つづく〉
http://www.washingtonpost.com/world/asia_pacific/chinas-economic-data-draw-sharp-scrutiny-from-experts-analyzing-global-trends/2013/02/04/f4de4b84-6ae0-11e2-af53-7b2b2a7510a8_story.html
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中国の油断ならないところは、北朝鮮の核実験問題に対し少しばかり強い態度を見せ、対外的に「少し態度が変化した」と思わせていることです。
これにより北朝鮮について強い懸念を持つアメリカなどに、「今、中国を刺激して、せっかく変化した姿勢を後戻りさせたくない」と思わせることが出来ます。
そうしておいて、近隣諸国に対しては強く出る。
アメとムチの使い分け、一種の分断政策を行っているのかもしれません。
それもこれもこの記事が伝える、経済発展による「国力伸張」の結果ですが、その数字には裏があるようです。
かつての毛沢東、周恩来体制の頃は純粋に内治に専念していましたが、今は対内問題を対外問題にすり替えることを常套手段とする国と化してしまった中国。
尖閣諸島を巡る問題では、そもそもの始め、日本側が相手が作った土俵にうかうか乗ってしまうという思慮の浅い反応をしてしまったため、思うような対応ができずにいますが、世界の世論は「中国の横暴さ」に目を向け始めました。
しかしフォークランド紛争の際の英国のようにはいかないでしょう。
対応を誤ると、せっかく好転してきた世界の世論の風向きが変わるかもしれません。
「いいように」されないよう虚々実々の駆け引きをしながら、相手の正体を見通す目が必要です。
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写真集【 米国郵政今昔物語 】
アメリカNBCニュース 2月6日
(写真をクリックすれば、大きな画像をご覧いただけます)
馬そりとスキーを使っての郵便配達。1950年頃。(写真下・以下同じ)
雪の日の郵便配達。2002年、ニューヨーク市内。
一斉にクリスマスの日の郵便配達に出発する。1955年ごろ、ニューヨーク市内。
道路わきの郵便受けに郵便物を入れる。メイン州、1930年夏。
日系アメリカ人同士が郵便物のやり取りをする、ワシントン州ピュオーラップ郵便局内。1942年ごろ。
故郷に手紙を書く米西戦争の従軍兵士。1898年。
故郷宛ての電子メールを書くアメリカ海兵隊隊員。2004年イラク。