ホーム » エッセイ » 【 いちばんむずかしい願いをかなえてくれたサンタクロース 】
アメリカCBSニュー ス 12月23日
往々にしてこの世で最高のプレゼントには値札などついていませんし、動かすのに電池も必要ではありません。
CBSの特派員ステイーヴ・ハートマンは、出張先でまさにその通りの出来事を体験したようです。
サンタクロースがノース・キャロライナ州ラレイのそばにある、ター・リバー小学校を訪れたとき、彼は2年生の子供たち全員があらかじめサンタ宛の手紙で伝えていた、その通りのおもちゃをたずさえてやって来ました。
でも彼が持参したものは、それだけではなかったのです。
「みんな、頼んだ通りのものを受け取ったかい?」
サンタが子供たちに尋ねました。
「ありがとう!」と、子供たちが答えました。
確かに子供たち全員が望んだ通りのプレゼントを受け取りました。
たったひとり、ベサニー・アーノルドを除いて……
彼女が望んだのは、おもちゃではありませんでした。
サンタ宛の手紙に、ベサニーはこう書きました。
「サンタさん、私のおとうさんはイラクにいます。クリスマスになったらおとうさんを家に連れてきてもらえますか?」
「君はずいぶんと難しいお願いをした、ってわかっているかい?」
ハートマンは、ベサニーに尋ねました。
「わかってる。」と、彼女が答えました。
「一晩のうちに地球を半分回って来る、なんてできないことは知っているの…で もほかに欲しい物なんて、何もないから。」
ベサニーのおとうさん、ウィンダル・アーノルドが契約した仕事はイラクにありました。
彼はイラクで緊急に必要とされる、電気関連のインフラの整備に取り組んできました。
「私もお父さんがそこにいて、たくさんの人を助けなければならないことはわかってるわ。でも、やっぱりお父さんがいないのは、ものすごくさびしいの……」
ベサニーが言いました。
この2年間、ベサニーが父親と一緒に過ごすことができた時間は、2週間にも満たないものでした。
ベサニーと父親が最近、ドイツで一緒に休暇を過ごしたとき、2人はハート形のキーホルダーを交換しました。
父親はベサニーのキーホルダーを、ベサニーはお父さんのキーホルダーを身に着けることにしたのです。
「私はベサニーにこう言いました、『次に会った時、このキーホルダーを返してあげるからね。』と。」
ウィンダル・アーノルドが語りました。
残念なことにクリスマスを一緒に過ごしたいという親子の願いは、いつも合衆国政府の都合が優先されたため、かなえられることはありませんでした。
そこで今年はベサニーはもっと偉い人、そう、サンタクロースにお願いすることにしたのです。
彼女は学校でも、サンタクロース宛の手紙にこう書きました。
「サンタクロース様、クリスマスの日に、私はおとうさんに帰って来て欲しいのです」
さあ、そしてこれがベサニーの願いがかない始めた瞬間の映像です。
サンタはハート型のキーホルダーを取り出し、ベサニーに手渡しました。
そして、私たちにクリスマスの本当の意味を教えてくれたのです。
「おとうさん!」
やって来たサンタクロースが大好きなおとうさん、ウィンダル・アーノルドであることがわかると、ベサニーはサンタに抱きつきました。
受け取ったものがおもちゃであったなら、ベサニーもこれほど喜ぶことはできなかったでしょう。
「ほんとうに他に欲しいものは無いのかい?」
ウィンダルは、ベサニーに尋ねました。
「お父さんといっしょだから、もう充分にしあわせよ!」
彼女が答えました。
この大きな喜びを包むのに、サンタが持参した袋はちょっと小さすぎたかもしれません。
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この原稿を訳していた時、私は休日出勤した自分の席にいたのですが、3行訳すごとに目薬をささなければなりませんでした。
「ずいぶんと目がお疲れなんですね?」
という問いに
「ええ、まあ」
と答えながら、今度は鼻をかむ……
クリスマスイヴに、職場でパソコンをいじりながら涙を流している五十男。
これほどクリスマスに似つかわしくない光景も無いでしょう。
でもお読みいただいたみなさん、これほどクリスマスにふさわしいお話もない、そうお思いになりませんか?
みなさんにも、メリー・クリスマス!