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なぜ日本では、それほど多くの成人の養子縁組が行われるのですか?
エコノミスト 4月16日
アメリカと日本は世界の中で養子縁組の数が著しく多い国ですが、その内容は大きく違っています。
アメリカの養子縁組はそのほとんどが、経済的に余裕がある人々が恵まれない環境の子供たちを養育するために行われます。
これに対し日本の場合は、そうした例はわずか2パーセントです。
そのかわり20代から30代までの成人が98パーセントを占めています。
日本で2000年に80,000件あった養子縁組は2008年には90,000件に増えましたが、そのうちのほとんどがこの成人を養子に迎えるものでした。
ではなぜ日本ではこんなに多くの、成人の養子縁組が行われるのでしょうか?
その動機は子供たちに対する人道的配慮などではなく、ビジネスそのものなのです。
商才や技術に関する才能は、確実に子供たちに遺伝していくとは限りません。
インドを例にとると、活況を呈する経済の中で、多くのインドの企業が好成績を誇っていますが、代替わり以降もその繁栄を続けられるかどうかは定かではありません。
ひょっとしたら、後継者にふさわしい人材を見つけることができないかもしれません。
そうなればインドを代表するコングロマリットであるタタ・グループの後継者に、一族ではないサイラス・ミストリー氏が選ばれたような事態が続出するかもしれません。
200年以上企業の同族経営を行っている、世界の37家族が親睦団体を作り、交流しています。
その中で世界最古の創業を誇るのが日本の2社、781年設立の日本の企業ホシ、そして仏教寺院建設業の西暦578年創業の株式会社金剛組です。
第二次世界大戦以前、日本の社会では企業やその家の財産は男性のみ、その年長者が受け継ぐものとされていました。
もしその家族に女の子しかいない場合には、適当な男性を養子として迎え、一族の繁栄と名声の維持を託すことにしていました。
嫡出子、婚外子に関わらず血を受けた子供たちに適当な人材が見当たらない場合にも、養子縁組が行われ遺産を引き継ぐことが行われていました。
そして若い息子が余るほどいる家庭では、息子たちを養子に出すことを望み、そのために様々な働きかけをおこなったりもしました。
一族の後継者の妻として選ばれた女性は『見合い』を行い、結婚相手に決まった男性=義理の息子、日本では『婿養子』は姓を変え、一族に仲間入りすることになります。
今日、多数の結婚仲介会社と結婚コンサルタント会社が、日本企業の『優れた後継者』を得るために奔走しているのです。
第二次世界大戦以降、日本社会は必ずしも長子相続を求めなくなりましたが、企業においてはまだそこまで思い切ることができずにいるようにも見受けられます。
日本の少子高齢化は、男性長子相続制度の維持をさらに難しいものにしています。
企業の中には一族の中からでは無く、優れた役員の中から後継者を選ぶ企業も現れるようになりました。
自動車メーカーのトヨタ、スズキ、エレクトロニクス企業のキャノン、建設会社の鹿島などはすべて養子縁組による後継者が巨大企業を率いています。
こうした傾向は、今後も続くものと見られています。
後継者に選ばれた男性の両親は、場合によっては多額の現金を受け取る場合もあります。
『婿養子』に選ばれるということは、日本の企業社会においてきわめて名誉なことなのです。
この結果、役員間の競争は自ずとし烈なものになります。
こうして同族会社も、非同族会社同様、優秀な後継者の確保が可能になるのです。
長年この問題を扱ってきた研究者は、日本企業においてはもはや養子縁組による後継者が、血族後継者の数を上回っていることを確認しました。
ということはつまり、血族の長子相続人であっても真剣に自らのスキルアップを心がけないと、部外者のために蹴落とされてしまう可能性があるということなのです。
http://www.economist.com/blogs/economist-explains/2013/04/economist-explains-1