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「この悲痛な想いが癒えることはない…」『正義の実現』を待ち望む大日本帝国の強制労働の被害者

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所要時間 約 9分

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94歳、戦時中無報酬で強制労働を課された補償を求めて法廷闘争を続ける唯一の生存者
技術者として教育してくれるという約束を信じて日本へ、待っていたのは無報酬の強制労働

ヘンジャミン・ハース、ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 2018年11月7日

 

写真:10月、ソウルの裁判所に到着した李春植(イ・チュンシク)氏、戦争中の日本人はエンジニアになるという希望を台無しにしたと語りました。

 

彼が日本の製鋼所を去ってから約80年が過ぎた今も、李春植(イ・チュンシク)氏は未だに殴打、火傷、そして強制労働の記憶にさいなまれ、涙を流し続けています。

 

17歳になった時、李氏は彼を技術者として教育してくれるという約束を信じて朝鮮半島の故郷を出て日本に渡りました。
1910年から1945年、朝鮮半島は日本の植民地でした。
しかし1941年に釜石に到着したと同時に、李氏は囚人同様の境遇に落とされたのです。

 

賃金が一切意払われることがなかったもかかわらず、日本の警備要員は李さんの仕事ぶりが気に入らないと容赦なく殴りつけた、李さんがこう語りました。

「当時のことは思い出したくないのです」
「当時のことを思い出そうとすると、胸が締めつけられ、悲しみでいっぱいになり、泣いてしまうのです。」

 

今や李氏の存在は、北朝鮮の核開発計画に対しアメリカが同盟国間の連携を強化しようと取り組む中、同盟関係に亀裂を生みかねない問題として日本韓国間の外交問題の焦点として急浮上しています。

 

先週、大韓民国最高裁判所は、李氏を含めた4人が新日鉄住金から1億ウォン(約1千万円)の賠償を受ける権利を認定しました。
最初にこの訴訟が起こされてからすでに14年が経過していますが、一緒に訴訟を起こした他の男性3人はすでに死亡しました。
生きて判決を聞くことができたのは李さん一人だけでした。

病気がちの94歳の李さんにとって、裁判所があるソウルまでの往復の道のりと判決後の報道陣とのやり取りはかなりの負担になりました。

日本で強制労働をさせられた時代のトラウマは、エンジニアになるという夢までも困難なものにした、李さんがこう語りました。

第二次大戦後、アメリカ軍の占領下にあった時代に警官として働いた後、ガソリンスタンドやツアー会社の経営など、李さんの職業はなんども変わりました。

 

韓国最高裁判所の判決は、現在光州市南部にアルワンルームのアパートで暮らす李さんにひとまずは一段落したという思いをもたらしました。
部屋の中にあるのは色褪せた家族の写真と処方された薬が詰まった紙袋です。

 

「今はやっと一息ついたな、というほっとした思いです。判決のおかげで賠償金が支払われる目処も立ちました。」
李さんがこう語りました。
「これまで判決を待つ間どれほど辛い思いをしてきたか、口で説明することは困難です。賠償金を受け取って初めて、その記憶を忘れることができると思います。」

しかし日本側はこの判決を不当なものだとするため迅速に対応しました。
安倍首相は、国連の国際司法裁判所に訴訟を起こすことも検討していると警告しました。

「韓国政府が国際法に則ったしかるべき措置を講ずるよう、強く望んでいる。」
安倍首相は議会の委員会の席上、こう述べました。
そして韓国最高裁の判決を
「信じられない。」
「日韓両国が良好な関係を築く努力に逆行するものだ。」
と批判しました。

そして訴訟や最近の出来事が二国間関係に悪影響を与えていることを「極めて残念な事態」とだと表現しました。

日本は太平洋戦争に起因するすべての補償請求は、1965年の二国間条約によって「完全かつ最終的に」解決されたという立場を繰り返しています。
企業側は新日本製鉄という会社は戦後合併して誕生したものであり、李さんをはじめ多くの韓国朝鮮人に強制労働を課した会社とは別の会社だと主張しました。

 

韓国最高裁はこれらの主張を却下し、二国間条約は被害者たちが耐えなければならなかった『非人道的で不当な』扱いについて、個人的に訴訟を起こすことを妨げるものではないと判断しました。

 

現在、三菱重工業のような日本の著名な大企業や日立造船のような技術系企業を含む14社に対し類似の訴訟が起こされています。

韓国のムン・ジェイン大統領はこの問題について沈黙を守っていますが、李洛淵(イ・ナキョン)首相は韓国政府は「司法の判断を尊重する」と述べました。

 

ソウルの韓国外務省は11月6日夜遅く、日本の政治指導者たちが「問題の根本的な原因を無視し、引き続き我が国の国民感情を逆なでする発言を行っている。」
との声明を明らかにしました。

日韓の外交的緊張は李さんにとってはほとんど問題ではありません。
李さんが望むのは75年遅れであっても、強制労働に対する補償金を受けることだけです。
「一緒に訴訟を起した他の被害者は亡くなってしまいました。諦めずに戦っているのは私一人だけになってしまいました。」
李さんがこう語りました。

 

「若い時に日本に連れて行かれ、強制労働という苦難を体験させられました。願うことなら生きている間にこの問題が解決されるのを自分の目で確かめたいものです。」

 

https://www.theguardian.com/world/2018/nov/07/i-still-feel-sad-and-cry-korean-victim-of-japanese-forced-labour-awaits-closure

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この記事を読んで思ったのは当たり前のことですが、強制労働の問題もまた人間の問題だ、ということでした。

そして強制労働を課された人々の苦しみに、あまりにも無知であったということです。

私たちは高校で日本史を習いましたが、律令時代の井田法とは、あるいは飛鳥文化と天平文化の仏像様式の違いについて、などということはずいぶん詳しく覚えさせられた記憶がありますが、太平洋戦争時代の強制労働労働の問題については、教科書には1〜2行程度の記述しかなかったのではないでしょうか?

 

同じガーディアンに次のような記事がありました。

これらの記事をお読みいただけば、太平洋戦争当時の日本の強制労働の惨烈さについて同じ日本人として考え込まざるを得ません。

 

歴史の証人たちが死に絶えるのを待って歴史を歪曲する、そんな卑劣な行為が許されるはずがない

【「私は戦争中の日本人を決して許さない!」泰緬鉄道から長崎まで:地獄を歩かされた英国人70年目の告発 】ガーディアン - http://kobajun.chips.jp/?p=24281

 

「太平洋戦争中の残酷な歴史の中でも、従軍慰安婦にされてしまった女性たちの悲惨な境遇は長く記憶されるべきものである」

【『従軍慰安婦』への視点 : 癒しがたい傷を癒やすことへの第1歩 】ガーディアン - http://kobajun.chips.jp/?p=26417

 

強制労働に従事させられた人々の苦しみを歴史に誤りなく記録し、ひとり一人の命の重さについて真摯に受け止めるべきである

【 強制労働の事実の存在確認と世界遺産登録 】ガーディアン - http://kobajun.chips.jp/?p=23992

 

 

 

 

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