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2017/18年 世界の軍事支出

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所要時間 約 9分

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これ以上の軍事支出が本当に必要なのかどうか、私たちは真剣に検討すべきタイミングにさしかかっている

私たちは国際紛争を、武力行使とは別のやり方で解決することができる

 

カーステン・ニップ / ドイツ国際放送 2018年5月1日

ストックホルム国際平和研究所が新しい報告書を公開し、2017年の世界の軍事支出が冷戦以来最高水準となったことを明らかにしました。
ドイチェ・ヴェレはピーター・ヴェーゼマンに地域ごとの状況について取材しました。

 

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が公表した2017年の世界の軍事費に関する報告書は、わずかながら世界の軍事支出の増加を立証しました。

 

ドイチェ・ヴェレ:報告書によると、世界中合わせて軍事目的で1.73兆ドル(約189兆円)が支出されました。
2016年に比べて1.1%の増ですが、これは多いのでしょうか、少ないのでしょうか?

 

ピーター・ヴェーゼマン:集計方法がそれぞれ異なる点と、絶対に信頼できるデータは存在しないという事実を考慮に入れると、これは最小限の上昇に留まっていると言えます。
しかし世界規模では軍事支出が高水準に固定されたままであることも明らかです。
地域間の格差はかなり大きなものになっています。

ドイチェ・ヴェレ:例えば中国では支出は5.6%増加し、合計で2,280億ドルとなりました。

 

ピーター・ヴェーゼマン:ええ、中国の軍事支出はこれまでの20年間、一貫して増加を続けています。
中国の軍事支出は、国内総生産の伸びに比例しています。
ですから中国の軍事支出が劇的な増加しているという指摘は的を得たものではありません。
しかし中国は世界第2位の規模の軍事費を支出している国であることは事実です。
世界最大の軍事費を使っている米国とは比較できませんが、第3位以降の国々と比べるとはるかに多額の軍事費を計上しています。

 

ドイチェ・ヴェレ:これは各国の政治的野心について何かを表現するものなのでしょうか?

 

ピーター・ヴェーゼマン:中国は非常に大きな経済規模を持った、世界最大の人口を持つ国家です。
中国はアジアの大国の地位に留まり続けた具はありません。
世界規模のスーパーパワーになりたいという大きな野心を持っており、それが軍事支出にも反映されているのです。

ドイチェ・ヴェレ:あなたは米国の軍事費の増大について言及されましたが、その金額は2位から8位までの7カ国の総支出を合わせたものを上回っています。
これは何を意味するのでしょうか?

 

ピーター・ヴェーゼマン:無視することができないほど大きな反対意見に直面しているにもかかわらず、ドナルド・トランプ米大統領は大幅に支出を増やすことになる軍事予算の成立を押し通しました。
米国は国家予算の赤字が膨らんでおり、国内には政府の支出の削減を求める意見が強くなっています。
しかし当面はトランプがそうした意見をねじ伏せた形になっています
今後数年間、私たちは軍事予算を増やし続けるアメリカを目の当たりにすることになるでしょう。

 

ドイチェ・ヴェレ:高額な軍事支出は特に中東地域で目立っています。
中東では国内総生産に対して軍事費の割合が突出して高くなっている国が、10カ国中7カ国に上っています。
オマーン、サウジアラビア、クウェート、ヨルダン、イスラエル、レバノンなどです。
こうした中東情勢についてあなたの見解をお聞かせください。

ピーター・ヴェーゼマン:サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタールの各国は国内総生産のうち多額の予算を軍事費に回そうとしています。サウジアラビアを例にとるとその比率は10%を超えています。
これはこれらの国々が自分たちが置かれている状況をどのように捉えているか、端的に表しています。

サウジアラビアの軍事費はイランという最大のライバルをどう見ているかということを、数字で表現しているものだとも言えます。

 

そして現在シリアとイエメンで行われている戦争は、これらの国々が単に軍事支出を増やす原因になっているだけでなく、彼らが飽くまで武力によって目的を遂げようとしている姿勢を如実に表しています。

 

一方でイランの軍事支出は比較的少額に留まっています。
しかしその傾向はいつ変わるか予断を許しません。イランは軍事を増額しようとしているのですが、目下の経済状況がそれを許さないだけなののです。

(写真)2017年、ドナルド・トランプ大統領が就航させたアメリカ海軍の世界最大の空母 - ジェラルド・R・フォード

 

ドイチェ・ヴェレ:アフリカ大陸は全体でみると0.5パーセントのマイナスと最小限ながら減少を記録しました。あなたはこの状況をどのようにご覧になりますか?

 

ピーター・ヴェーゼマン:理由はさまざまです。
例えば、アンゴラは軍事支出を減らしましたが。これはアンゴラの主要資源である原油価格の下落のためです
石油収入に依存する他のいくつかのアフリカ諸国も同様に軍事費を削減しました。

しかし一部の国、例えばスーダンでは軍事支出が増加しています。
政府軍と反政府勢力との戦いが激化しているためで、それはアンゴラなどの軍事支出にも大きな影響を与えています。
しかしアフリカ全体を見渡せば、状況は国によって大きく異なっています。

オマル・ジョボ、5歳。

ドイチェ・ヴェレ:軍事支出は中部ヨーロッパでは12%、西ヨーロッパでは1.7%上昇していますが、これは各国がロシアに軍事的脅威を感じているということでしょうか?

 

ピーター・ヴェーゼマン:欧州諸国は何よりもまずウクライナの現状を見て、自分たちも同様に脅威にさらされつつあるという感覚を強くしています。
事実、ロシアはこの10年間で軍事費を大幅に増加させてきました。
その結果、ヨーロッパ諸国、例えばポーランドなどは軍事費を増額することを余儀なくされています。
NATOも兵力の拡大など、この地域の軍事力を強化している。

 

しかしロシアの軍事支出は 2016/17年度と比較し、今年度は増加していない点に留意するべきです。
西および中部ヨーロッパの人々が防衛費の増額を検討している一方で、ロシア側がその金額を減らしているのは重要な事実であるはずです。

軍事支出を減らすべきかどうか、私たちは真剣に検討すべきタイミングにさしかかっているのではないか、そのような視点を持つことも可能なはずです。
同時に私たちは国際紛争を武力行使とは違うやり方で解決することができる、そのことを実証することもできるはずです。

 

ピーター・ヴェーゼマン(Pieter Wezeman)はストックホルム国際平和研究所(SIPRI)で武器供与と軍費支出計画立案の研究を専門分野とする上級研究員です。

 

http://www.dw.com/en/sipri-global-military-spending-rose-to-17-trillion-in-2017/a-43610647

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