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東日本大震災・英国人記者の感動に満ちたノンフィクションが英国文学賞を受賞

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所要時間 約 7分

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リチャード・L・パリー氏、3.11の大惨事のありのままを6年を費やして直接取材した、心揺さぶられるドキュメンタリー

ノンフィクション作品がこれほどの文学的美しさで表現されるとは、誰も期待していなかった

 

シアン・ケイン / ガーディアン 2018年5月8日

その自然現象は地球の軸を6分の1インチ傾け、日本列島と米国の間を4メートル近づけました。

 

2011年日本で1万8000人以上が死亡した東日本大震災、その中のひとつの事件についてレポートした「悲惨で感動的な」記録が英国のラスボーン・フォリオ賞を受賞しました。

リチャード・ロイド・パリー氏の作品『ゴースト・オブ・ツナミ』は、モハン・ハミド氏の『製法への脱出』ジョン・マグレガー氏の『第13貯水池』、サリー・ルーニー氏の『友人たちとの会話から』など並み居る高いレベルのライバル作品を押しのけ、英語で書かれ英国内で出版された最も優れた文献に贈られるラスボーン・フォリオ賞を受賞し20,000ポンドの賞金も手にしました。

※ 星の金貨newでは【 津波の下に消えてしまったこどもたち : 3.11の想像を絶する悲劇の真相 】
《1》http://kobajun.biz/?p=31801
《2》http://kobajun.biz/?p=31812
《3》http://kobajun.biz/?p=31831
《4》http://kobajun.biz/?p=31872
《5》http://kobajun.biz/?p=31892
《6》http://kobajun.biz/?p=31935
として翻訳し、ご紹介しました。

 

今回ラスボーン・フォリオ賞にはノンフィクションは『ゴースト・オブ・ツナミ』に加え、リチャード・ビアード氏の回顧録『行方不明の日々』とシャオルー・グオ氏の『むかしむかし』の3つの作品がノミネートされました。
同賞は2年前からノンフィクション作品も選考対象に加えるようになりました。
これはそれまで文学作品に限られていた受賞対象をノンフィクションにまで拡大することで、最も質の高い文章を選考対象とすることができるよう採られた措置です。

ロイド・パリー氏は英国のインディペンダント紙とタイムズ紙の受賞経験を持つ特派員として、巨大地震が発生した後約30メートルの高さの津波が沿岸を襲い、福島第一原発で原子炉がメルトダウンする事故を起こした東日本大震災の発生当時、東京に住んでいました。

 

彼はその後6年に渡り18,000人以上の人々を殺害した災害を記録し、凶悪な津波が去った後もなお人々を苦しめ続けた悪夢の正体を明らかにするため、被害にあった人々を一人一人訪ね歩き、数百に上る体験談を直接聞き取る取材を続けました。

 

ロイド・パリー氏は、津波がもたらした悲しみや死についてひとりひとりの状況を日本人の立場に立って徹底的に掘り下げながら、遺体すらもう二度と回収できなくなってしまった人を含め、自分は生き残ったものの愛する人を失ってしまい喪失感に苦しんでいる人々の他に例のない悲惨な話を丹念に綴りました。
それは多くの場合亡くなった家族の痕跡を求め、思い出をつなぐ何かに救いを求めようとする人々の姿でした。

死者の姿を目撃したという話が増えるに従い、無念の思いを残したまま他界した人びとの霊を慰めるため、キリスト教の司祭、神道の神官、仏教僧たちが繰り返し呼び出されることになりました。
その中のひとりは自分が暮らしている仮設住宅に亡くなった女性の霊が現れてしばらくの間会話をしたと証言し、彼女が立ち去った後座っていたクッションが湿っていたと語りました。

 

何百という証言をひとつひとつ聞き取った後、ロイド・パリー氏は次のような理解を示しました。
「ひとりひとりその悲しみは異なっています。命を失ったその時の状況に応じて細かい点が微妙に違っているのです。」

 

「ノンフィクション作品が、これほどの文学的美しさで表現されるとは誰も期待していなかったでしよう。しかも現実世界での事実を鏡で写したように伝える正確性はいささかも揺らぐことなく、事実をありのままに見事に伝えているのです。」
審査員を務めた作家のジム・グレイス氏、ニケシュ・シュクラ氏、ケイト・サマースケール氏が口を揃えてこう賞賛しました。

「印象的だったのは、ドキュメンタリー報道と質の高い文学が見事に融合していた点でした。私はこの本を読み終えた後、私は自分と日本とのギャップが一気に縮まったと感じました。さらには自分が持つ固有の文化と世界中の文化との共通点、普遍性ということに開眼した思いでした。」
「私はこの著作が意義深い価値の高いものであることを承知しているつもりですが、将来私が出会う可能性のある他の地域や他国の文化についてそれを素直に受け入れる能力、理解力を向上させてくれる人類の普遍性をも感じさせてくれました。これほどの体験は滅多にできるものではありません。これは文化と文化の違いを乗り越える、人間としての普遍性が得られる作品です。」

 

ロイド・パリー氏は5月7日の夜、ロンドンで受賞式に臨みました。

 

https://www.theguardian.com/books/2018/may/08/ghosts-of-the-tsunami-wins-folio-prize-for-deeply-felt-reportage-of-2011-disaster

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